日本心臓血管外科学会雑誌
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47 巻 , 4 号
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巻頭言
症例報告
[先天性疾患]
  • 重久 喜哉, 松葉 智之, 上田 英昭, 緒方 裕樹, 井本 浩
    2018 年 47 巻 4 号 p. 157-161
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    乳幼児の僧帽弁疾患で僧帽弁形成術が困難な症例では僧帽弁置換術(MVR)が必要となるが,弁輪より過大な人工弁を用いてMVRを行うためには大きさの違いを解消するための工夫を要する.今回われわれはSungらの方法を参考にし,expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)graftを人工弁のスカートとして使用した弁輪上部僧帽弁置換手術(Supra-annular MVR)を2例の乳幼児に施行した.症例1は1歳4カ月,6.7 kg,Shone症候群,僧帽弁狭窄症,パラシュート僧帽弁,大動脈縮窄症,心室中隔欠損症の男児.大動脈縮窄症修復術,心室中隔欠損閉鎖術後に僧帽弁狭窄症が顕在化しMVRを行った.症例2は5カ月,4.9 kg,多脾症,中間型房室中隔欠損症,左側房室弁閉鎖不全症の女児.3カ月時に心内修復術を行ったが,術後徐々に左側房室弁狭窄兼閉鎖不全症が進行し弁置換術を施行した.いずれの症例も術後の人工弁機能は良好であり,今回行った方法によるSupra-annular MVRは乳幼児の狭小な僧帽弁輪に対し有用な手術手技と考えられた.

[成人心臓]
  • 坂本 大輔, 永吉 靖弘, 坂本 滋
    2018 年 47 巻 4 号 p. 162-165
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    患者は68歳男性.2012年に生体弁での僧帽弁置換術(Mitral valve replacement以下,MVR),三尖弁形成術施行後であった.39.0度の高熱にて救急外来を受診し,敗血症性ショックを呈しており,心エコー検査にて人工弁の弁尖に嵌頓する形で最大径20 mmの疣贅を認めた.疣贅は巨大で複数あり,浮遊性であった.また,高度な人工弁逆流も認めた.血液培養よりCandida grablataが検出されており,真菌感染による人工弁感染性心内膜炎(Prosthetic valve endocarditis以下,PVE)の可能性が高く,緊急手術を施行した.人工弁には巨大な疣贅が複数付着しており,弁尖は破壊され,陥頓に近い状態であった.前回の人工弁を摘出,再僧帽弁置換術を施行し手術を終了した.術後はアムホテリシンBリポソームにて抗生剤加療を行った.その後,感染兆候の再燃は認めず,術後50日目に独歩退院となった.本患者の疣贅は巨大であり嵌頓に近い状態であったが,弁尖の破壊が高度であったことが嵌頓死を防いだと考えた.このような巨大疣贅にて嵌頓死を起こさずに独歩退院できた報告は文献を検索する限りいまだになく,また,真菌性であることも考慮するとかなり稀な症例であると考える.真菌性心内膜炎(以下,真菌性IE)の場合,自己弁か人工弁かを問わず,最適な治療は,感染組織のデブリードマンと徹底した病巣の除去,そして弁置換術もしくは弁形成術と長期の抗真菌剤を組み合わせた治療であると考え,われわれは積極的に早期に手術を施行する方針である.

  • 矢野 大介, 桑原 史明, 山田 真史, 芦田 真一, 平手 裕市
    2018 年 47 巻 4 号 p. 166-169
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,女性.14年前に感染性心内膜炎に対して僧帽弁置換術を施行した.今回,構音障害,頭痛を主訴に当院を受診し,多発脳梗塞の診断のため入院となった.経食道超音波検査にて人工弁に巨大な疣贅を認めたため,塞栓を伴う人工弁感染(PVE)と診断し,準緊急で生体弁を用いた僧帽弁の再置換術を施行した.体外循環心停止下に,疣贅の付着した感染人工弁を摘出し,僧帽弁再置換術を施行したが,体外循環離脱時に房室間溝付近の左室後壁より拍動性出血を認めたため,左室破裂と診断し,再度心停止下に再置換した僧帽弁位人工弁を摘出した.僧帽弁輪左室側の僧帽弁後尖中央部のやや内側に心内膜の亀裂があり,同部位の破裂と診断した.左室後壁乳頭筋付着部から左房後壁に至るまで,exclusionする形でウシ心膜パッチを縫着した.さらに心外側から出血部を直接縫合閉鎖して,undersizeのステントポストのない機械弁に変更して僧帽弁置換を終了した.術後7日目の心臓超音波検査およびコンピュータ断層撮影(CT)にて,左室後壁に仮性瘤を認めた.再々手術の適応と判断していたが,術後肺炎の存在と脳梗塞による筋力低下があり,患者の強い希望により脳梗塞に対するリハビリを継続した.その経過中にCTおよび超音波検査で仮性瘤の追跡を行ったが,徐々に仮性瘤は拡大していったため,前回手術より112日目に再々手術を施行した.大腿動静脈から体外循環を確立して左前側方開胸を行い,低体温心室細動下に仮性瘤を切開してその開口部をウシ心膜を用いてパッチ閉鎖した.仮性瘤の開口部より左室内腔を観察したが,前回手術時のウシ心膜パッチや置換された僧帽弁位人工弁の位置は確認できなかった.術前のCT所見における開口部の位置と併せて考えると,前回破裂部をexclusionする目的で縫着したウシ心膜パッチのさらに左前方,房室間溝からやや距離のある部分に仮性瘤開口部が存在すると判断された.術後経過は良好であり,術後28日目に退院となった.左側開胸下低体温心室細動下の開口部閉鎖術はその視野は良好で手術操作は容易であり,僧帽弁置換術後の左室後壁仮性瘤に対する手術として1つの選択肢となりうると考えられた.

  • 河合 幸史, 三島 健人, 若林 貴志, 登坂 有子, 中澤 聡
    2018 年 47 巻 4 号 p. 170-173
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性.2日間の頭痛と不眠を主訴に救急外来を受診した.6年前に急性大動脈解離に対して上行大動脈人工血管置換術を施行された.大動脈弁閉鎖不全による心不全の診断で当院循環器内科入院となった.入院加療にもかかわらず心不全の増悪を認め,入院時の経胸壁心エコー検査では認めなかった大動脈交連部の結節影を第2病日の経食道心エコー検査で指摘された.感染性心内膜炎が疑われ,準緊急で手術の方針となった.術中所見では左冠尖と右冠尖の間の交連部の断裂を認めた.病理検査と培養結果でも感染を示唆する所見は認めなかったが,粘液腫様変性を認め,本症例における交連断裂の原因と考えられた.

  • 平岡 大輔, 真鍋 晋, 平山 大貴, 安川 峻, 葛井 総太郎, 内山 英俊, 大貫 雅裕, 広岡 一信
    2018 年 47 巻 4 号 p. 174-177
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    外科治療は術後の甲状腺ホルモンの動態に多大なる影響を及ぼす.特に心臓手術の術後では,血液中の甲状腺ホルモンはしばしば低値を示すが,実際に症状を伴うことは稀とされている.これは心臓手術のような大きな侵襲行為の後には,甲状腺ホルモンが代償性に低値を示す “non thyroidal illness”(NTI)と呼ばれる病態が発生するためであり,NTIは視床下部-脳下垂体-甲状腺ホルモン系統そのものには異常がないにもかかわらず,甲状腺ホルモンの低値を中心とした甲状腺機能検査異常を引き起こす病態と定義されている.NTIは一般に生体防御機構の1つと考えられ,病的意義は少なく,積極的な薬物治療の対象とはされていない.そのため,開心術後の血液生化学検査において,甲状腺機能低下がみられたとしても,慎重な解釈が必要とされる.今回,われわれは高齢者に対する大動脈弁置換術後に,甲状腺ホルモンの異常低値を伴う,著明な倦怠感と軽い見当識障害が出現し,薬物治療にて改善した症例を経験したので報告する.

  • 吉本 公洋, 川崎 正和, 國重 英之, 井上 望, 石橋 義光
    2018 年 47 巻 4 号 p. 178-182
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    冠動脈壁の高度石灰化を伴う左冠動脈主幹部に起始する冠動脈嚢状瘤の手術を経験したので報告する.症例は67歳男性,糖尿病性腎症により12年間の透析歴がある.心不全に対し当院循環器内科にて加療および心精査が行われた.冠動脈造影にて左冠動脈主幹部+二枝病変および左冠動脈主幹部の冠動脈嚢状瘤を認め当科紹介となった.治療として冠動脈バイパス術(二枝)および冠動脈瘤切除+冠動脈形成術を予定した.心嚢内に強固な癒着を認め剥離ののち,体外循環補助心停止下に肺動脈本幹を離断し瘤に到達し切開,瘤内に位置する冠動脈主幹部壁に穿孔を認めた.大伏在静脈でのパッチを用いて孔を閉鎖しさらに瘤壁で被い,併わせて冠動脈バイパス術を行った.摘出した瘤壁の病理検査では冠動脈解離の所見を認めた.術後の冠動脈造影では冠動脈瘤は消失,順行性の血流が保たれ,グラフトの開存が確認された.

[大血管]
  • 陣内 宏紀, 力武 一久, 三保 貴裕, 古賀 佑一
    2018 年 47 巻 4 号 p. 183-186
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    大動脈4腔解離の報告は少なく,非常に稀であるが,破裂の危険性は高いと考えられている.症例は70歳,女性.Marfan症候群を指摘されていない.他疾患の精査目的に撮影されたCTにて最大径68 mmの上行大動脈瘤を認めた.造影CTでは偽腔開存型のStanford A型の4腔解離を認め当科に紹介となった.発症時期は不明であるも,サイズや形態から破裂の危険性は高いと考えられ,手術予定となった.手術は超低体温循環停止下に上行大動脈人工血管置換術を行った.右心不全のため,人工心肺離脱が困難で右冠動脈へのバイパスを追加したが,それでも離脱が困難であり経皮的人工心肺(PCPS)サポート下に手術を終了した.術後3日目にPCPSを離脱した.その後は特に大きな異常なく,術後56日で退院となった.動脈瘤の病理組織では硝子化を伴った粥状硬化のみられる組織で,嚢胞状中膜変性の所見はなかった.4腔解離は非常に稀であるが,破裂のリスクは高く,早期の手術介入が必要と考えられた.今回われわれは,非Marfan症候群の4腔解離の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 弘瀬 伸行, 西森 秀明, 福冨 敬, 山本 正樹, 木原 一樹, 田代 未和, 渡橋 和政
    2018 年 47 巻 4 号 p. 187-191
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,男性.弓部大動脈瘤に対してelephant trunk法を用いた全弓部置換術,腹部大動脈瘤に対してY型人工血管置換術を施行されていた.嗄声を契機に受診され,CTにて弓部人工血管末梢吻合部仮性瘤を認めた.アクセス血管が細く,腹部人工血管はseroma形成を繰り返しており,TEVARは困難であった.開胸による下行大動脈人工血管置換術を施行した.瘤を切開しelephant trunkをとらえる際に必要な中枢側遮断が人工血管周囲の高度癒着のため困難であり,循環停止や大出血を回避する目的で大動脈閉塞バルンを用いた.術後経過は良好であった.本症例は高齢であり,中枢遮断部位の周囲の剥離を要しないバルンによる大動脈遮断法は,手術侵襲を最小限にするために有用であった.大動脈閉塞バルンの使用にあたっては,TEEを有効に活用することによって,elephant trunk内への円滑な挿入と遮断部位の正確な同定,遮断血管への過負荷のない確実な血行遮断が可能であった.

  • 内山 博貴, 伊藤 寿朗, 渡邊 俊貴, 安田 尚美, 仲澤 順二, 黒田 陽介, 原田 亮, 川原田 修義
    2018 年 47 巻 4 号 p. 192-195
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,男性.6年前に他院で食道癌に対して食道全摘術および胃管による胸骨後再建を施行されている.意識障害で当院に救急搬送され,造影CTにてStanford A型急性大動脈解離の診断で緊急手術となった.本症例は,術前造影CTで胃管が胸骨柄の裏面を通り,胸骨体では胸骨裏の右側に沿って走行していたため,胸骨の裏面を胃管が横切る上部では,あらかじめ左肋間から胸骨裏に指を挿入して,胃管がないことを確認しながら胸骨左側を切開した.前縦隔には胃管の他にそれに付随する大網と考えられる組織が心膜前面を覆っていたため,心臓右面がやや視野不良であったが,再建胃管の損傷も認めず,上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した.術後は胃管の通過障害などの消化器症状や縦隔炎は認めず,術後24日目に自宅退院となった.食道癌術後患者の胸骨正中切開による心臓血管手術の報告は少なく,特に急性大動脈解離に対する胸骨正中切開の報告は2例のみであり,今回本症例を報告する.

  • 吉岡 祐希, 田村 健太郎, 大月 優貴, 石田 敦久, 近沢 元太, 平岡 有努, 都津川 俊範, 鈴木 龍介, 吉鷹 秀範, 坂口 太一
    2018 年 47 巻 4 号 p. 196-200
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    肺血栓塞栓症(PTE)は致死的な疾患であり,ショック症例および心肺停止症例の治療成績は不良である.今回,広範囲の急性PTEに対し,通常の体外循環を確立し心停止させ,肺動脈から直視下に血栓を摘除した後,左室ベントを抜いた右上肺静脈より左房に送血管を追加挿入し,肺循環に逆行性に送血することで残留血栓や空気を除去する方法である,逆行性肺灌流法を併用した肺塞栓摘除術を施行し,良好な経過を得た2症例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

[末梢血管]
  • 服部 将士, 青見 茂之, 笹生 正樹, 新冨 静矢, 宮本 卓馬, 新浪 博士
    2018 年 47 巻 4 号 p. 201-205
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性で,胸部X線写真で上縦隔に異常陰影を認め,CT検査で解離を伴う右鎖骨下動脈瘤と慢性大動脈解離を伴う上行大動脈の軽度拡大を認め,手術の方針とした.手術は右鎖骨下動脈バイパス術を含む上行部分弓部大動脈置換術を施行した.人工心肺下に右鎖骨下動脈をePTFE人工血管にて末梢側で再建し,超低体温循環停止下に逆行性脳灌流法を併用し左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で離断し,上行部分弓部大動脈置換術を行った.左右総頸動脈を人工血管第2,3分枝でそれぞれ再建し,最後に右鎖骨下動脈に吻合したePTFEと人工血管第1分枝と吻合した.右椎骨動脈はWillis動脈輪の発達を確認していたが,右優位であったため温存するように右鎖骨下動脈の断端形成を行った.術後の脳神経学的合併症の発症はなく,経過良好であった.超低体温循環停止併用逆行性脳灌流法は,分枝に血栓があり選択的脳灌流が行いにくい症例では有効であることが示唆された.病歴からは外傷や胸郭出口症候群ではなく,動脈硬化性病変に上行大動脈にエントリーを持つ大動脈解離を生じたことによる鎖骨下動脈瘤と考えられた.鎖骨下動脈瘤は末梢動脈瘤の中で稀であり,その中で解離性鎖骨下動脈瘤はきわめて希少と思われ報告した.

Proceedings
第48回日本心臓血管外科学会学術総会U-40企画コラム
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