日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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47 巻 , 6 号
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巻頭言
原著
  • 佐藤 公治, 新宮 康栄, 若狭 哲, 加藤 伸康, 関 達也, 大岡 智学, 加藤 裕貴, 橘 剛, 久保田 卓, 松居 喜郎
    2018 年 47 巻 6 号 p. 257-262
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    [背景]腹部ステントグラフト内挿術後に持続するエンドリークは瘤径拡大や破裂の原因となる.特にType IIエンドリークに対する標準術式は存在しない.最近Type IIエンドリークによる瘤拡大に対し,開腹下に腰動脈を結紮しステントグラフトを温存しつつ瘤を縫縮する方法が報告されるようになってきた.[目的]Type IIエンドリークに対する腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術を施行した5例の術後成績と瘤径変化を検討する.[方法]持続するType IIエンドリークを有し初回腹部ステントグラフト内挿術時から10 mm以上瘤径が拡大するか,最大短径65 mm以上となった症例を手術適応とした.腹部正中切開し,腎動脈下の近位側のランディングゾーンで大動脈をバンディングした.大動脈を遮断することなく大動脈瘤前壁を切開し,血種を除去してType IIエンドリークの原因となっている腰動脈や正中仙骨動脈を大動脈瘤の内腔もしくは瘤壁の外側で結紮した.最後にステントグラフトを被覆するように瘤壁を縫縮した.[結果]初回手術から今回の腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術までの期間は平均47±17カ月であった.手術時間は215±76分,4例に他家輸血を要した.術後平均在院日数は26±20日で在院死亡を認めなかった.術後合併症として誤嚥性肺炎を1例に,創感染を1例に認めた.瘤径は術前68±8 mmから術後47±5 mmに減少した.さらに677±322日の最終フォローアップ時における瘤径は36±7 mmであり早期の瘤縮小効果を認めた.[結語]持続するType IIエンドリークに対する腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術は開腹の侵襲を考慮し,適応は慎重に検討すべきであり,長期成績については今後のフォローアップを要するが,比較的根治性と安全性が高く,標準術式となりうる.

症例報告
[先天性疾患]
  • 佐々木 花恵, 小渡 亮介, 鈴木 保之, 大徳 和之, 福田 幾夫
    2018 年 47 巻 6 号 p. 263-266
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は日齢17女児で,診断は肺動脈スリング,動脈管開存,左上大静脈遺残である.動脈管が太く,出生直後の呼吸状態は安定していたが,徐々に頻呼吸となり,日齢13に気管挿管された.術前のCTや気管支鏡検査では明らかな気管狭窄を認めなかった.日齢16に動脈管離断の方針としたが,麻酔導入時に換気不全となり,CTと気管支鏡検査で気管狭窄が顕在化していることが判明した.そのため日齢17に正中アプローチ,人工心肺下での動脈管離断,肺動脈スリングの修復,気管形成を行った.動脈管を離断し,左肺動脈は右肺動脈からの起始部で離断して主肺動脈に移植した.気管を離断し,slide tracheoplastyによる気管形成を行った.術後呼吸状態は正常化し,CT上でも気管狭窄が解除されていることを確認した.新生児期に気管への介入が必要な肺動脈スリングの報告は少ないが,気管狭窄合併例では気管と肺動脈に対する同時手術は有用な治療法であると考えられた.

[成人心臓]
  • 神谷 賢一, 潟手 裕子, 宮内 忠雅, 福隅 正臣, 手取屋 岳夫
    2018 年 47 巻 6 号 p. 267-271
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    ステントレス生体弁(SOLO SMART)はステント生体弁に比べて有効弁口面積が大きく,圧較差が少ないため血行動態的に有利と考えられている.われわれの施設では21 mm以下のステント生体弁19 mmしか使用できない症例では,SOLO SMARTをAVRにおける選択肢の1つとして用いている.しかし不均一なValsalva洞を伴う二尖弁症例では,人工弁を均等に縫合するための指標が乏しく,正しい位置に配置が困難であるため,推奨されていない.今回われわれは,二尖弁AS症例に対して術前のCTデータから大動脈基部を3次元計測し,人工弁の適切な縫合位置を術前に決定したうえでSOLO SMARTによる生体弁置換術を行い,良好な結果を得たので報告する.

  • 森 秀暁, 林 弘樹, 石川 和徳
    2018 年 47 巻 6 号 p. 272-275
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,男性.1973年,19歳時に僧帽弁狭窄症に対し,Björk-Shiley Delrin弁による僧帽弁置換術の既往がある.当院受診時は右半身不全麻痺,構語障害等の脳梗塞後遺症のため生活支援施設で生活していた.Björk-Shiley Delrin(BSD)弁の植え込みから38年が経過し,2011年胸痛(構語障害のため正確な表現ではない可能性がある)を主訴に当院を紹介受診した.2012年経食道心エコー検査で明らかとなった人工弁不全と大動脈狭窄兼閉鎖不全および三尖弁閉鎖不全に伴ううっ血性心不全に対し,僧帽弁位再弁置換,大動脈弁置換,三尖弁輪形成術を行った.術後経過はおおむね良好であった.摘出した人工弁のdiscは摩耗による溝と双方向性の亀裂を認め,discの断裂が危惧される状態であった.入院時の経胸壁エコー所見では経人工弁逆流はmild to moderateであった.この時点では人工弁の異常だけでは症状発現の可能性は低いと思われた.しかし,その後施行した経食道エコー検査の結果から連合弁膜症の状態に加え,discの異常による人工弁の経弁逆流が心不全を来した原因と判断した.今回,経食道心エコーによる精査が人工弁の明らかな異常の発見につながり,Disc断裂による重大な心事故を未然に防ぐことができたと推察された.本人工弁植え込み長期経過例では経胸壁エコーで軽微な人工弁の異常であっても,経食道エコー検査は人工弁を詳細に評価するうえで非常に有用である.経食道エコー検査で人工弁の異常を認めた場合,早期手術介入が必要であると考えられた.

  • 松村 祐, 早川 美奈子
    2018 年 47 巻 6 号 p. 276-279
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性.幼少時より心雑音を認め,大動脈閉鎖不全症と診断されていた.今回,動悸,倦怠感を主訴に当院を受診し,大動脈弁逆流III度,上行大動脈最大短径51 mmと拡大を認めた.心臓カテーテル検査では左冠動脈入口は閉塞しており,右冠動脈からの側副血行により逆行性に造影され,入口部に造影剤の貯留を認めた.術中所見では低形成大動脈弁左冠尖が左バルサルバ洞を覆い隠すように大動脈壁に癒合することで,左冠動脈入口部を完全閉塞させていた.低形成大動脈弁左冠尖を切除し,大動脈弁置換術,上行大動脈人工血管置換術を施行し良好な経過を得た.稀少な症例を経験したので報告する.

  • 立石 直毅, 松本 和久, 谷口 賢二郎, 永冨 脩二, 上田 英明, 井本 浩
    2018 年 47 巻 6 号 p. 280-283
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    今回われわれはヘパリン起因性血小板減少症(HIT : Heparin-induced thrombocytopenia)患者に対して左室形成術を施行し,良好な経過をたどった症例を経験したので報告する.症例は67歳男性.拡張型心筋症に伴う心不全で入院した.入院中脳梗塞を発症したためヘパリンを使用したところ血小板減少を認め,HITの診断に至る.心不全はカテコラミン離脱困難であり,左室拡大も急速に進行してきていることから手術の方針とし,左室形成術,僧帽弁形成術を施行した.人工心肺中に血栓症などの合併症は認めず,出血再開胸に至ることなく術後経過は良好であった.術後1年6カ月のフォローでも自宅で心不全症状なく経過している.

  • 峠 幸志, 重久 喜哉, 下石 光一郎
    2018 年 47 巻 6 号 p. 284-288
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    左室右房交通症はGerbodès defectとも呼ばれ比較的稀な先天性の疾患であるが,稀に後天性のものとして感染性心内膜炎,心筋梗塞,外傷,先行する心臓などの合併症として報告がある.われわれは大動脈弁位感染性心内膜炎に起因する左室右房交通症の1例を経験したので報告する.症例は69歳,女性,大動脈弁位感染性心内膜炎に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症に伴う鬱血性心不全の診断で当院循環器内科に入院となった.心不全に対する利尿剤の投与ならびに厳重な抗生剤投与にもかかわらず,心不全症状が改善しないため手術適応と判断された.左室右房交通症は弁上型であり左室側,右房側から交通孔をパッチ閉鎖し,大動脈弁については生体弁を用いた弁置換術を施行した.

[大血管]
  • 平岡 大輔, 真鍋 晋, 広岡 一信, 平山 大貴, 安川 峻, 葛井 総太郎, 内山 英俊, 大貫 雅裕
    2018 年 47 巻 6 号 p. 289-292
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    高安動脈炎に起因する狭窄または拡張性動脈病変には外科的治療は原則として炎症をコントロールしてから非活動期に行うことが望ましいとされている.しかし,大動脈瘤を形成した場合,大きさによっては外科的治療を先行せざるを得ない症例もあると考えられる.今回われわれは高安動脈炎と判断された2症例のうち,弓部大動脈瘤症例には準緊急手術を施行し救命し得たが,Valsalva洞瘤症例では抗炎症剤の開始直前に急性大動脈解離(Stanford A)を発症し失った.高安動脈炎による大動脈瘤に対する手術時期決定には,炎症反応のみならず,症状の発現形式や動脈瘤の形状などから総合的な判断が必要と考えられた.

  • 東 修平, 森田 雅文, 真野 翔, 島田 亮
    2018 年 47 巻 6 号 p. 293-297
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,下行大動脈にエントリーを有する慢性B型解離の偽腔の拡大に対して,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を施行した症例を報告する.症例は78歳,男性.発症時期不明のB型解離に対して過去に2回のTEVARによる治療歴がある.外来フォロー中に残存偽腔の拡大傾向を認め,胸部下行大動脈の最大径が58 mmとなったために手術適応となった.大動脈造影CTでは胸部下行大動脈に明らかなエントリーを有し,右腎動脈は偽腔から起始しており,その根部はリエントリーを形成していた.その他の腹部分枝はすべて真腔から起始し,また,術前大動脈造影検査にて,右腎動脈起始部以外に明らかなリエントリーは認めなかった.手術は,VIABAHNを腹部大動脈真腔から偽腔を通過して右腎動脈に留置したうえでTEVARによるエントリー閉鎖を行った.術後経過良好で,脊髄梗塞等の合併症を認めることなく,偽腔は完全に血栓閉鎖され,右腎動脈血流も良好であった.術後10日目に独歩退院となった.術後10カ月目のフォローアップのCTでは血栓化偽腔の縮小傾向を認めた.慢性大動脈解離に対するTEVARにおいては,エントリーおよびリエントリーの位置等によっては,偽腔血流が残存して,期待どおりの大動脈リモデリングが得られない症例が存在する.特に腹部分枝が解離によりパンチアウト状態でリエントリーを形成している症例では,分枝は偽腔起始となり,TEVARによるエントリー閉鎖だけでは不十分となる可能性がある.今回われわれの経験した,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を行う方法は,慢性B型大動脈解離における偽腔拡大に対するTEVARにおいて有用な方法である可能性があり,報告する.

  • 畠山 正治, 板垣 皓大, 神田 桂輔, 増田 信也, 永谷 公一
    2018 年 47 巻 6 号 p. 298-302
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は92歳女性.65歳時に腹部大動脈瘤に対して腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術後27年経過した2015年に下血を主訴に当院搬送となり,二次性腹部大動脈腸管瘻の診断となった.初回手術は局所修復と大網充填を施行したが,発熱を認めたため初回術後15日目にCTを施行したところ中枢側吻合部に後腹膜血腫と造影剤の血管外漏出を認めたため,緊急で人工血管中枢側吻合部にステントグラフトを留置した.術後,感染の再燃や出血を認めず独歩退院後2年経過したが感染の再燃なく外来へ通院している.

[末梢血管]
  • 小林 豊, 川上 敦司, 辻 龍典
    2018 年 47 巻 6 号 p. 303-306
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    深部静脈血栓症を伴う急性肺塞栓症は突然死をきたす重篤な疾患であり,その再発予防に下大静脈フィルターが留置されることがある.しかしながら留置による合併症も報告されており,適応について見直されてきている.今回われわれは下大静脈フィルター挿入直後に位置移動を認め,開胸開腹下に摘出した症例を経験したため,その適応についての考察も含めて報告する.症例は53歳,女性.下肢深部静脈血栓症に対して回収可能型下大静脈フィルターを留置された.抗凝固療法を施行したうえで後日回収すべく位置を確認したところ,下大静脈フィルターは腎静脈より中枢に移動していた.経皮的に回収を試みたが不可能であったため,直視下に摘出すべく当科に紹介となった.画像診断では肝静脈から腎静脈にかけて下大静脈フィルターが存在していた.直視下に確認しつつ回収する方針として当院外科,心臓血管内科と合同で手術を施行した.右第7肋間付近から胸骨下端下方に向けて皮膚を切開,肋骨弓を切断して肋間から胸腔内に到達し胸腔内で下大静脈を確保した.横隔膜を切開して腹腔内の剥離を進めた.肝臓裏面の静脈叢を尾状葉枝を含めて丁寧に切離して左右腎静脈まで露出した.下大静脈フィルターは触知可能であり,上端は尾状葉枝の直下,下端は右腎静脈内に認めた.透視下で用手的に静脈との接合を外してカテーテルでの回収を試みたが不可能であったため,静脈を単純遮断することとした.下大静脈を各枝で単純遮断して静脈を切開すると,下大静脈フィルターは中枢側先端が静脈の内膜に食い込み,末梢側のフックの一部は静脈を穿孔していた.慎重に各所を剥離して静脈を修復した.術後の経過は良好で,合併症なく独歩で退院となった.

  • 五十嵐 仁, 山中 一朗, 岩倉 篤
    2018 年 47 巻 6 号 p. 307-311
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー

    腎動脈瘤は無症状で経過することが多く,治療適応について一定の見解はないとされている.今回われわれは,画像検査にて偶然指摘され,手術を施行した3例を経験した.いずれの症例も泌尿器科医師が腎・副腎手術で用いるアプローチ法により腎動脈瘤を露出し,腎保護液を投与したのちに,腎動脈瘤の切除術を施行した.良好な術野を得ることができ,腎機能の悪化を認めずに経過した.腎動脈瘤手術における到達経路・再建方法・腎保護法は十分に満足されるものであった.

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