日本心臓血管外科学会雑誌
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48 巻 , 1 号
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巻頭言
総説(依頼)
  • 平田 康隆, 平原 憲道, 村上 新, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2019 年 48 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    [目的]日本心臓血管手術データベース(JCVSD)先天性部門は現在,参加施設数約120施設となって全国の施設をほぼカバーしている.今回,われわれは2015~2016年のデータを用い,頻度の高い20術式の死亡率と術後合併症の検討を行った.また,主な術式がどのような規模の施設によって行われているかの検討を行った.[方法]JCVSD先天性部門のデータから2015~2016年の先天性心疾患手術データを抽出し,20術式についての死亡率(90日または在院)および合併症率を算出した.また,施設の規模を年間人工心肺症例数によって3群に分類し,主な術式がどの群の施設によって行われているかの分布を算出した.[結果]心房中隔欠損閉鎖術,心室中隔欠損閉鎖術の在院死亡率は1%未満,ファロー四徴症手術,完全房室中隔欠損症修復術,大動脈縮窄複合修復術,ラステリ手術,両方向性グレン手術,フォンタン手術などの在院死亡率は2~4%程度と良好であった.ノーウッド手術,総肺静脈還流異常修復術などの在院死亡率は依然として10%以上であった.これら難易度の高い術式は大きな規模の施設において行われている傾向にあった.[結論]JCVSDの分析により,2015~2016年に本邦で行われた先天性心疾患の主な術式の死亡率ならびに合併症の頻度,施設分布などを明らかにした.

  • 齋藤 綾, 平原 憲道, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2019 年 48 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    2015年および2016年の日本心臓血管外科手術データベース登録の単独冠動脈バイパス術症例について術前状態および術後短期成績,グラフト選択の現況,前下行枝血行再建へのグラフト選択(年齢別)について分析した.単独冠動脈バイパス術については55.0%(29,395例中16,173例)に人工心肺が使用された.左前下行枝の血行再建にはLITAが72.1%(29,392例中21,217例),RITAが17.4%に使用され前回の報告から微増した.手術死亡率は待機的手術では1.7%(On-pump CABG : ONCAB 2.5%,off-pump CABG : OPCAB 1.1%,p<0.001),緊急手術では8.8%(ONCAB 12.9%,OPCAB 4.0%,p<0.001),全体では3.0%であり,その他合併症も含めOPCABで有意に成績が良好であった.(手術死亡率:術後30日以内の死亡または在院中の死亡.)

  • 阿部 知伸, 中野 清治, 平原 憲道, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2019 年 48 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    [目的]先回の報告に続き,JCVSDのデータより2015~2016年の本邦における弁膜症手術につき,治療法の選択,特に人工弁選択に着目して,弁位別,年代別,術式別の手術死亡率,機械弁・生体弁の使用比率を明らかにし,また2013~2014年からの経時的傾向についても検討する.各弁位,各術式につき手術合併症の発生率を検討する.[方法]JCVSDデータベースより2015年と2016年の心臓弁膜症手術データを記入の手引きの項目に基づき,先回の報告の定義を踏襲して弁位別に抽出した.経カテーテル的大動脈弁置換術は新たに項目を設けた.年齢層別,弁位別の機械弁・生体弁の選択数,術式別の手術数,手術死亡率を得た.各年齢層での弁置換の人工弁選択について生体弁の比率を示し,2013~2014年の結果と比較した.透析患者については別途集計を行った.各術式について,手術死亡率に加え今回新たに合併症率を示した.各術式の死亡率について2013~2014年と比較した.[結果]2015~2016年の総大動脈弁置換術数は26,054例で,2013~2014年から微増した.経皮的大動脈弁植え込み術はJCVSDに登録された数で3,305例であった.僧帽弁置換は5,652例,僧帽弁形成は12,024例と2013~2014からほぼ変わらなかった.人工弁選択について,生体弁の比率が大動脈弁置換術において80代,70代,60代でそれぞれ96.5%,92.7%,63.5%と2013~2014年と比べ有意に高くなった(p<0.05).一方50代以下ではその傾向はみられなかった.血液透析患者において一般患者より機械弁の選択が多い数値で2013~2014年と同様の傾向であった.手術死亡率は大動脈弁置換術,僧帽弁置換術,僧帽弁形成術,三尖弁置換術でそれぞれ4.1%,7.1%,2.2%,10.5%,Strokeは2.7%,2.8%,1.5%,1.0%などであった.僧帽弁形成術において2013~2014年から手術死亡率の有意な低下(p<0.05)がみられた.[結語]2015~2016年の本邦における弁位別,年代別の各術式での手術死亡率,機械弁・生体弁の使用比率,その経時的傾向が明らかになった.生体弁使用比率が上がっている傾向が明らかとなった.

  • 志水 秀行, 平原 憲道, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2019 年 48 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    [背景]大動脈疾患治療には人工血管置換術(OAR),ステントグラフト治療(TEVAR),ハイブリッド手術(HAR)があり,その治療選択は時代とともに変化しつつある.[方法]日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)から抽出した2015~2016年の胸部・胸腹部大動脈手術データから,疾患(急性解離,慢性解離,非解離・破裂,非解離・非裂),部位(基部,上行,基部~弓部,弓部,下行,胸腹部),治療法(OAR,HAR,TEVAR)ごとの手術数,30日死亡率,主な合併症(脳卒中,対麻痺,腎障害)の合併率を調査した.[結果]全体の症例数は35,427例(死亡率7.3%),OARの施行率は64.0%であった.2013~2014年との症例数の比較では,総数で17.0%,OARが2.4%,HARが126.1%,TEVARが34.9%の増加であった.弓部治療後の脳卒中合併率は全体としてHAR 10.1%,OAR 8.4%,TEVAR 7.3%の順であったが,非解離・非破裂例ではOARが最も低率であった.対麻痺の合併率は下行・胸腹部大動脈でHAR 6.3%・10.4%,OAR 4.3%・8.9%,TEVAR 3.4%・4.6%の順であった.腎不全の合併率はTEVARが最も低率であった.[結論]本邦における胸部・胸腹部大動脈の治療症例数は増加しているが,OARの症例数は横ばいであった.多くの場合TEVARの死亡率や合併症の発症率が低かったが,真性弓部瘤の術後脳卒中に関してはOARが最も低率であった.

総説
  • 渡橋 和政, 上田 敏彦
    2019 年 48 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    心臓手術の黎明期から,心内遺残空気は解決すべき問題の1つであった.経食道心エコー法による空気の可視化により空気除去がルーチン化されてきたが,その手法は施設によりさまざまであり,必ずしもその手法に根拠があるとは言えない現状がある.心臓血管外科に関与する外科,麻酔科,臨床工学技士の3学会が合同で開催するCVSAPシンポジウムの2016年のテーマとして『de-airing』が取り上げられ,それに先だって全国アンケート調査が行われた.回収率は外科で77.9%(278/357),麻酔科で83.3%(85/102)と高く,関心の高さが明らかとなった.いずれも90%以上が空気除去を重要と位置づけている.空気塞栓に関するイベントが実際に起こっており,なかには無視し得ないレベルのものも含まれていた.De-airingのルーチン手技として体位変換,肺の加圧,ベント吸引がほとんどで行われ,直接穿刺は1/3程度と少なかった.炭酸ガス吹送法は82.5%の施設で行われ,吹送量は2~3 L/minが多かったが,その意義については懐疑的な施設も多かった.外科医の多くは麻酔科医の協力に満足していたが,情報共有での改善を望むコメントもあった.また,臨床工学技士には,空気除去に関するさらなる理解と,タイムリーな装置の操作が期待された.さらに,空気を除去するための簡便なデバイスを期待する声とともに,TEEで描出される気泡をどこまで除去すべきか,炭酸ガス吹送法はどこまで有効かなど,今後の検討課題も明らかとなった.

症例報告
[先天性疾患]
  • 川人 智久, 江川 善康, 細谷 祐太, 下江 安司, 吉田 誉
    2019 年 48 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    呼吸器症状を契機に発見された2歳10カ月の右肺動脈近位部欠損の女児に対し,右肺動脈末梢の成長を促すため自己の奇静脈をfree graftとして用いたBlalock-Taussig変法を行ったところ,右肺動脈末梢の成長が得られ,さらにgraftとして用いた奇静脈も十分な太さに拡張していた.3歳8カ月時に右肺動脈再建手術を行ったが,術中所見から拡張した奇静脈の強度も十分と判断されたため,末梢側吻合はそのままとして奇静脈graftの中枢側を主肺動脈に吻合した.術後経過は良好で,呼吸器症状も消失した.本例のように肺動脈再建にあたってなんらかの補填物を要する場合,成長も期待できるgraft materialとして,長期予後不明であるものの,奇静脈が有用な選択肢の1つになりうると考えられた.

  • 折居 衛, 伊藤 敏明, 前川 厚生, 澤木 完成, 柳澤 淳次, 所 正佳, 尾関 貴啓, 雑賀 俊行
    2019 年 48 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    稀な疾患である冠静脈洞型心房中隔欠損(CS-ASD)に対し右肋間経由3ポート完全内視鏡下にパッチ閉鎖を行ったので報告する.症例は15歳男性.肺体血流比2.0以上のCS-ASD(unroofed coronary sinus : type IV)の診断で手術適応となった.右第4,第3肋間に3 cmの主創,3D内視鏡ポート,左手器具ポートの3ポートを配置し右大腿動脈送血,右大腿静脈経由2ステージ脱血,心停止下に手術を行った.CS-ASDを右側左房切開経由で視野展開し牛心膜パッチ閉鎖した.手術時間1時間52分,術後経過は良好であった.CS-ASDに対する過去の手術報告では右房切開が一般的であるが,右肋間経由右側左房切開はCS-ASDの露出が非常に良好であった.

[成人心臓]
  • 伊藤 仁人, 舩津 俊宏, 鎌田 創吉, 八木原 俊克
    2019 年 48 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は70歳男性.他院で食道癌化学療法中(5FU+CDDP)に腹痛の原因精査目的で造影CTを施行されたところ,偶然上行大動脈後面にlow-density massを認めた.血栓を疑いヘパリンの投与を開始するも腫瘤の縮小傾向はなく,摘出術目的に当院転院搬送となった.腹痛は自然軽快し,その他明らかな塞栓症状は認めなかった.手術は低体温循環停止下に血栓摘除術,大動脈壁修復術を施行した.術中の経大動脈エコーでは,血栓が血流によって浮動する様子が観察できた.術後経過は良好で第18病日に退院となった.上行大動脈内血栓症は稀な疾患であり,その多くは末梢動脈の塞栓症状で発見されるが,無症候で発見される症例はきわめて少ない.今回,塞栓症状なく偶然発見された上行大動脈内血栓症に対して,血栓除去術を施行し良好な結果を得たので報告する.

  • 日野 阿斗務, 細田 進, 勝部 健, 椎川 彰
    2019 年 48 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は45歳女性.僧帽弁後尖逸脱による中等度僧帽弁逆流症の診断で,定期的な外来経過観察をされていた.二週間前発症した蜂窩織炎を契機に呼吸苦を認め,来院した.来院時の心電図にてV4,V5,V6にST上昇と血中クレアチニンキナーゼの上昇を認め,胸部レントゲンでは肺うっ血像を,経胸壁心臓超音波検査にて大動脈弁および僧帽弁に高度逆流と両弁尖に複数の可動性を有する疣贅を認め,さらに前壁の壁運動低下を認めた.頭部MRIおよび全身造影CTで右前頭葉脳梗塞像,脾臓梗塞,右腎臓梗塞を認めた.感染性心内膜炎による大動脈弁と僧帽弁の高度逆流による急性心不全および心筋梗塞を含めた全身塞栓症と診断し,緊急手術の方針とした.全身麻酔導入後,カテコラミン不応の著明な血圧低下を認め,持続性心室頻拍へ移行し,ショック状態に陥った.電気的除細動無効のため,胸骨圧迫を開始し,急遽経皮的心肺補助装置を装着した.血行動態安定後,手術を開始した.術中所見では,大動脈弁,僧帽弁および左房壁に疣贅の付着と僧帽弁後尖の広範囲の腱索断裂を認めた.疣贅郭清後,僧帽弁および大動脈弁置換術,および三尖弁形成術を施行し,手術を終了した.術後高度肺水腫と循環不全が長期化したが,徐々に回復傾向を示し,第52病日に独歩にて退院となった.9カ月後の現在も感染再燃を認めずに経過している.冠動脈塞栓を伴う感染性心内膜炎は重篤で死亡率も高いとされるが,その報告は稀で,文献的考察を加えて報告する.

  • 小川 博永, 桐谷 ゆり子, 関 雅浩, 武井 祐介, 緒方 孝治, 柴崎 郁子, 福田 宏嗣
    2019 年 48 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    感染性心内膜炎(IE)の発生巣は左心系(僧帽弁位,大動脈弁位)に多く,右心系感染性心内膜炎(RSIE)の頻度はIEのなかでも5~10%程度と少ないと言われている.また,RSIEの原因は心室中隔欠損症(VSD)などの先天性心疾患や,ペースメーカーリード感染,三尖弁位人工物感染などの続発性の病態が多いと言われており実臨床で遭遇する機会は多くない.今回われわれは,未治療の齲歯起因のVSDシャントから続発したRSIEおよび重度三尖弁逆流症(TR)を呈した症例に対して,新鮮自己心膜を用いた三尖弁形成術と人工弁リングを用いた三尖弁輪形成を行い,良好な結果を得た1例を経験したので報告する.症例は23歳男性.13歳時に学校検診でVSDを指摘されたが短絡量が少ないため経過観察となっていた.齲歯を原因とするRSIEを発症し,三尖弁に疣腫付着とsevere TR,大動脈弁にRCCP, moderateARを認めた.内科抗生剤治療の後に疣腫縮小し待機手術予定となって退院したが,退院後2週間で胸痛を認め,疣腫による肺塞栓診断となり再入院した.経胸壁超音波にて三尖弁の疣腫拡大を認め早期手術の方針となった.術中所見は三尖弁前尖は弁腹の中央1/2に感染が波及し半月状に欠損していた,また,大動脈弁は感染兆候はないが2カ所の小さい瘻孔が空いていた.術式は自己心膜補填での大動脈弁形成,VSD direct closure,新鮮自己心膜を用いた三尖弁形成と人工リングを用いた三尖弁輪形成を行った(三尖弁輪径を測定すると45 mmと拡大を認めていたので,遠隔期の逆流制御を考慮した).術中の逆流テストおよび術直後の経食道超音波所見でTRなきことを確認し手術を終了した.術後1年経過した時点でもTR出現,感染の再燃なく経過している.

  • 大山 翔吾, 大﨑 洸, 田林 東, 岩瀬 友幸, 熊谷 和也, 小泉 淳一, 鎌田 武, 坪井 潤一, 金 一
    2019 年 48 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性.2017年1月に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術(CEP MAGNA 25 mm Edwards Lifescience Corporation,Irvine,USA)および無症候性心筋虚血に対して大伏在静脈(saphenous vein graft;以下SVG)を用いた冠動脈バイパス術2枝(SVG-#7,SVG-4PD)を施行した.2017年11月近医外来に1週間以上続く,微熱を主訴に来院した.微熱以外の自覚症状は特に認めなかった.心臓超音波検査で人工弁感染性心内膜炎(Prosthetic Valve Endocarditis;以下PVE)を疑われ,当院へ紹介となった.入院翌日に胸部不快感を自覚し,緊急心臓カテーテル検査を施行したところ,左冠動脈主幹部に血栓によると思われる病変が認められ,血栓吸引を行った.しかし,血流の改善が得られず,冠動脈バイパス術を施行されていない回旋枝の血流改善目的に経皮的古典的バルーン血管形成を追加し,血流の改善が認められた.この際に吸引した血栓を培養に提出したところ,入院時に提出した血液培養と同様のStreptococcus pasteurianusが検出された.経食道心臓超音波検査で左冠尖に相当する弁尖に感染性疣腫を疑う所見を指摘された.以上よりPVEおよび疣贅に伴う冠動脈閉塞再発予防を目的とし,再大動脈弁置換術(Crown PRT 23 mm Sorin Group,Burnaby,Canada)を施行した.術後29日目に抗菌薬による加療継続目的に近医へ転院となった.

  • 寺本 慎男, 荒木 善盛, 寺田 貴文, 小西 康信, 川口 鎮
    2019 年 48 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性.労作時呼吸苦を主訴に近医を受診し,胸水貯留を指摘された.当院呼吸器内科を紹介され精査にて結核性胸膜炎,心嚢液貯留と診断した.初診時,心機能は保たれており,抗結核薬による保存的治療を開始した.1カ月後に呼吸苦の増悪を認めて来院した.NYHA 4度,頻脈,下腿浮腫を認めて循環器科を紹介された.心臓超音波検査で心膜肥厚と拡張障害を認めた.両心カテーテル検査にてdip-and-plateau patternに近似した波形を認め,PCWP 31 mmHg,RAP 21 mmHgと高値であった.収縮性心膜炎の診断で手術適応と判断した.手術は左第五肋間前側方開胸にて人工心肺非使用下に超音波メスを用いて心膜剥離・心外膜切開術(waffle procedure)を行った.術中に心収縮・拡張能の改善とCVP,PAPの低下を確認した.術後はNYHA 1度に改善し,下腿浮腫も消失した.術後5日目に右側胸水の乳び胸を認めたが,絶食治療により改善し術後29日で退院した.結核性収縮性心膜炎に対して左前側方開胸による人工心肺非使用下心膜切開術は有用な術式であると考えられた.

[大血管]
  • 高木 淳, 蒲原 啓司, 古賀 秀剛, 吉田 望
    2019 年 48 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は,53歳女性.急性大動脈解離A型に対して,上行弓部置換(J-graft 24 mm,Open Stent Graft併用),CABG(SVG-RCA)を施行した.術後,退院にむけてリハビリテーションを励行中(術後33,38日目)に右下肢急性動脈閉塞を発症し,血栓除去を行った.どちらも右総大腿動脈閉塞で器質化血栓を認めた.周術期不整脈はなく,CTで明らかな左心内血栓も認めなかったため,器質化血栓飛散の原因検索目的に血管造影検査を施行したところ,遠位弓部大動脈に位置したOpen Stent Graftの先端にentryを認め,同部から偽腔内の順行性血流を認めた.Re-entryを介した偽腔内血栓飛散による塞栓症と考え,術後48日目にTEVAR(cTAG)を施行し,以後塞栓症をきたすことなく,リハビリテーション病院へ転院の運びとなった.

  • 平野 雅大, 恒吉 裕史, 植木 力, 山中 憲, 佐藤 博文
    2019 年 48 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.発熱,腰痛を主訴に前医を受診し後腹膜膿瘍,化膿性脊椎炎の診断で入院した.血液培養ではKlebsiella pneumoniaeが検出され抗生剤加療が行われた.第19病日にCTで後腹膜膿瘍の悪化と腹部大動脈破裂の所見を認めたため,同日当院に緊急搬送となった.血液検査でWBC 10,400(/μl),CRP 12.3(mg/dl)と上昇を認め,胸腹骨盤部造影CTで右腸腰筋に及ぶ後腹膜膿瘍と,腹部大動脈から膿瘍内への造影剤流出を認め,感染性大動脈瘤の破裂と診断した.緊急で腹部大動脈ステントグラフト内挿術を行う方針とした.術中造影では腎動脈下で腹部大動脈外への造影剤漏出を認めExcluder® アオルタエクステンダー23 mm×3.3 cmを2個留置した.術後抗生剤はミノサイクリン(MINO),アンピシリン(ABPC)経静脈投与を行い,術後造影CTではエンドリークはなく膿瘍の縮小を認めた.術後4週間後に抗生剤をMINO,シプロフロキサシン(CPFX)経口投与に切り替え,6カ月継続した.術後2年の時点で感染再燃なく経過している.感染性大動脈瘤破裂に対しEVARのみで救命できた症例を経験したため文献的考察を加えて報告する.

  • 有馬 大輔, 梅木 昭秀, 山本 哲史
    2019 年 48 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    心肺蘇生の際の胸骨圧迫に伴うさまざまな合併症が報告されている.大動脈解離術後に心肺停止に陥り胸骨圧迫による偽腔破裂を呈したと考えらえた症例を経験した.症例は79歳の女性.上行大動脈にentryを呈した急性大動脈解離(Stanford A型,DeBakey I型)の診断で,緊急手術を施行した.術後は特に問題なく経過し,POD 5にICUを退室するも,POD 6に痰詰まりから心肺停止となり,胸骨圧迫が施行された.蘇生したが,左胸腔ドレーンから血性排液が増加したため,施行した造影CT検査で下行大動脈偽腔から左胸腔に造影剤の流出を認めた.硬膜外血腫も同時に呈しており,保存的加療と低体温療法を施行した.幸い輸血と止血剤の投与で血管外漏出が停止した.開心術症例の胸骨圧迫後には,造影CTなどで出血の確認をするべきで,大動脈解離術後の胸骨圧迫では,稀ではあるが偽腔破裂が生じ得る可能性が示唆された.

  • 仁田 翔大, 神尾 明君, 塩瀬 明, 梅末 正芳
    2019 年 48 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は41歳の男性.急性A型大動脈解離に対する初回手術として大動脈基部置換術を施行し,術後8カ月目に慢性解離性大動脈瘤に対して2回目手術(全弓部置換術+frozen elephant trunk(FET))を行ったところ,FET末梢端が位置する下行大動脈に新たなintimal tearを生じた.その後,再手術から3カ月後に下行大動脈破裂に至り,3回目手術(緊急下行大動脈置換術)を要した.FETを併用した全弓部置換術は有用な手段であるが,慢性解離性大動脈瘤に対して使用する際は,その施行時期,FET留置の位置やサイジングなどに注意する必要があると考えられた.文献的考察を加えて報告する.

  • 上平 聡, 金築 一摩, 花田 智樹, 山内 正信
    2019 年 48 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    症例は85歳男性,特発性間質性肺炎で治療中に胸部CTで拡大傾向を有する嚢状型弓部大動脈瘤を指摘された.大動脈瘤は腕頭動脈分岐部付近より左側方に突出する形態であり,全身状態や瘤の解剖学的な位置から,人工血管置換術や現行デバイスを用いたステントグラフト内挿術の治療は困難であった.Relay Plus® に12 mm径の孔を作製した.全麻下に左右腋窩-左総頸動脈を8 mm径のリング付きT字型e-PTFE製人工血管でバイパス術を先行作製した.左大腿動脈アプローチで開窓したステントグラフトを腕頭動脈起始部に開窓孔を合致させて留置した.さらに右総頸動脈から逆行性に分枝ステントグラフトを腕頭動脈から開窓孔を通して上行大動脈内に展開し完成させた.留置後のDSAではendoleakを認めず術後経過は順調であった.本法は作製も容易であり,上行大動脈に中枢側Neckを求めるステントグラフト内挿術において有用な治療法と思われた.

  • 金澤 祐太, 山田 靖之, 柴崎 郁子, 緒方 孝治, 桒田 俊之, 堀 貴行, 小川 博永, 武井 祐介, 菅野 靖幸, 福田 宏嗣
    2019 年 48 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    Valsalva洞動脈瘤のうち無冠尖から右房に突出するもの(今野・榊原分類IV型)は本邦では非常に稀で破裂した際には圧較差から重篤な心不全を来すとされている.今回今野・榊原分類IV型の破裂にもかかわらず,重篤な心不全とならず待機的に手術を行うことができた2例を経験したので,若干の文献的考察も交えて報告する.症例1:71歳男性.労作時呼吸苦を主訴に近医を受診した.心不全の診断で前医を紹介受診した.前医にて経胸壁心エコーを施行し,Valsalva洞動脈瘤の右房内破裂に伴う心不全の診断となった.精査加療目的に当院へ転院した.内科的加療で心不全が改善傾向となったところで,発症24日に待機的に瘤切除およびパッチ閉鎖術を施行した.術後経過は良好で心不全は速やかに改善した.術後14日に軽快退院となった.症例2:41歳男性.近医にて収縮期雑音を認め,当院内科を紹介受診した.経胸壁心エコーを施行したところValsalva洞動脈瘤を認め右房へのシャント血流を認めた.明らかな心不全兆候はなかったがQp/Qs=2.0,左室拡張末期径の拡大を認めたため手術加療の方針となった.待機的に瘤切除およびパッチ閉鎖術を行った.術後14日に軽快退院となった.

[末梢血管]
  • 赤羽根 健太郎, 内田 徹郎, 山下 淳, 水本 雅弘, 黒田 吉則, 貞弘 光章
    2019 年 48 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    気管腕頭動脈瘻は気管切開後に稀に認められる合併症だが,突然の致死的出血を来すことがあり,予後は著しく不良である.症例は10歳,女児.生後10カ月時にムンプス脳炎後の後遺症で重度精神運動発達遅滞となり,5歳時に気管切開術および胃瘻造設術を施行され,他院で加療中であった.気管切開部からの大量出血を来たし,近医に救急搬送された.近医搬送時は心肺停止状態であり,高度の貧血を認めた.心肺蘇生後,CT検査で気管腕頭動脈瘻と診断され,当院に転院搬送され,緊急手術の方針となった.来院時は一時的に止血していたが,麻酔導入時に再出血を認めた.胸骨正中切開下に腕頭動脈を大動脈からの起始部と右鎖骨下動脈分岐部の中枢部で離断し,気管と接する部分は放置した.術後経過は良好で,新たな神経学的後遺症を来すことなく退院した.長期間の人工呼吸管理を余儀なくされる重症心身障害児では気管腕頭動脈瘻の発生頻度はけっして低くないため,発症予防策を十分に講じるとともに発症時の迅速な外科的対応が重要である.

国際学会参加記
U-40 Surgical Skill Sharing―今更聞けない心臓血管外科基本手技
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