〔目的〕心臓弁膜症術後管理におけるトルバプタンの有用性を検討した.〔対象・方法〕対象は2017年2月から2018年に施行した心臓弁膜症手術症例中,慢性透析症例,再手術および緊急手術症例,術後主要合併症を生じた症例を除外した64例を対象とした.当院では,術中からカルペプチド0.0125 γの投与を開始し,内服薬としてフロセミド20~40 mg,スピロノラクトン25 mgを投与し,胸水貯留など対液量の管理に難渋した場合,トルバプタンを投与していた.2018年3月からトルバプタン7.5 mgを全例に投与し(T群32例),それ以前の32例(C群)と比較した.〔結果〕二群間に患者背景,手術内容,手術時間や術中水分バランスに有意差を認めなかった.T群では,2例で尿量過多,2例で肝酵素上昇のため,術後5日以内にトルバプタンを中止した.術後5日目までの尿量には有意差を認めず,両群とも術後1および2日目には体重が増加したが,術後3日目には術前値に復帰した.術後3日目,5日目,退院時の胸部レントゲンによる胸水貯留の評価では,いずれの時期でも,T群で胸水の貯留の頻度は有意に少なく,胸腔ドレナージの頻度は,T群3例(9.4%)に対してC群では14例(43.8%)とT群で有意に少なかった(p=0.004).〔結語〕心臓弁膜症の術後,トルバプタン7.5 mgを投与することは,尿量過多や肝機能の上昇に注意が必要であるが,胸腔ドレナージの頻度は激減し有用であると考えられた.
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