日本心臓血管外科学会雑誌
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48 巻 , 5 号
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巻頭言
原著
  • 水田 真司, 髙橋 信也, 大下 真代, 荒川 三和, 片山 暁
    2019 年 48 巻 5 号 p. 299-304
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    [背景]当院では外来で10m歩行を計測し,開心術の適応あるいは術式選択の参考にしてきた.これを具体的に数値化する目的で,Barthel Index(以下,BI)を用いたADL評価を行い,退院時におけるADL低下の予測因子の検討を行った.[対象と方法]2014年6月から2017年12月末までに当院で待機的に開心術を施行した症例のうち,除外基準に該当しなかった131例を対象とした.退院時に術前よりもBIが低下していた13例に,術後6週間以上の長期入院した6例を加えた19例をADL低下群と定義した.対照群112例を対照群と定義し,この二群間を後ろ向きに比較し術後ADL低下の予測因子の検討を行った.[結果]術後ADL低下の独立した予測因子として,「10m歩行に7.04秒以上を要する」が同定された.

  • 高橋 幸宏, 和田 直樹, 加部東 直広, 小森 悠矢, 雨谷 優, 吉敷 香菜子, 安藤 誠
    2019 年 48 巻 5 号 p. 305-312
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    [目的]本邦において,新生児期および乳児期に施行されたRoss手術の報告は少ない.本研究の目的は,1歳未満でRoss手術を施行した大動脈弁疾患症例の転帰を評価し,この時期にRoss手術を選択する妥当性を検討することにある.[対象と方法]対象は,1996年12月から2017年6月に1歳未満でRoss手術を施行した13例(新生児3例),初期主診断名は大動脈弁狭窄症10例,大動脈弁閉鎖不全症3例である.周術期から術後遠隔期の成績と臨床的問題点,Autograft機能と成長の推移,再手術の必要性を後方視的に検討した.[結果]Ross手術時の日齢は中央値166日(9~356),体重は5.7kg(2.8~8.9)であった.うち9例は左心機能の低下,人工呼吸器管理や強心剤の使用から緊急的にRoss手術を施行した.同時手技は,Konno切開による弁輪拡大2例,大動脈弁輪縫縮1例,大動脈縮窄解除3例,僧帽弁縫縮1例であった.大動脈遮断時間は131±29分,体外循環時間178±37分.ECMO管理2例,胸骨二期的閉鎖7例,術後の腹膜透析施行4例.術後の人工呼吸器管理期間は中央値5日,ICU滞在期間は中央値7日であった.術後の観察期間中央値9.9年で全例生存している.身体の成長に伴い,大動脈弁輪径はほぼ正常値の95%予測区間内で推移した.バルサルバ洞径は正常値を超えて拡大する症例を認めたが,新大動脈弁は全例で圧較差20mmHg未満,閉鎖不全は軽度以下で推移し,弁への再手術介入はなかった.冠動脈狭窄1例と大動脈弁下狭窄1例に対し,冠動脈バイパス術と大動脈弁下狭窄解除術を行った.左心系に対する再手術回避率は1年で100%,5年81.5%,10年81.5%であった.また,右心系への再手術は10例で,再手術回避率は1年84.6%,5年29.7%,10年9.9%であった.[結論]新生児期および乳児期に施行されたRoss手術の生命予後は良好で,新大動脈弁の機能は良好に維持された.Ross手術は,新生児期および乳児期に発症する重症大動脈弁疾患に対して有用な一治療戦略と成り得る.

症例報告
[先天性疾患]
  • 緒方 裕樹, 上田 英昭, 松葉 智之, 山下 雄史, 永冨 脩二, 立石 直毅, 川井田 啓介, 豊川 建二, 今釜 逸美, 井本 浩
    2019 年 48 巻 5 号 p. 313-315
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    心房中隔欠損(atrial septal defect : ASD)の閉鎖術ではシャント遺残に気をつけなければならないが,欠損孔の下縁がない場合には特に注意を要する.初回手術から37年後にASDの遺残短絡に対し再手術を行った症例を経験した.17歳時に他院でASD閉鎖術を受けた54歳女性で,労作時の息切れを主訴に前医を受診し当院に紹介となった.精査の結果,左側相同および心房中隔欠損の遺残短絡とそれに伴う肺高血圧症と診断し手術を行った.術中所見では肝静脈の開口部に跨がるように遺残ASDを認めた.欠損孔の上縁から頭側に向かって前回手術時に直接閉鎖を試みたと思われる縫合線を認めた.いわゆる“下縁欠損ASD”に対し下端の閉鎖が不完全であったための遺残短絡と考えられた.再閉鎖を行い,術後は心合併症なく自宅退院した.ASD下縁の閉鎖は特に確実に行うよう心掛け,術後のチアノーゼ,心不全の発生に留意する必要がある.

[成人心臓]
  • 柴田 講, 松代 卓也, 中村 優飛
    2019 年 48 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    悪性腫瘍およびそれに対する化学療法の合併症としての血栓塞栓症は近年増加しており,がん関連血栓症として注目されている.今回,悪性リンパ腫に対する化学療法開始直後に発症した左室瘤内血栓症に対して低侵襲手術を施行したので報告する.症例は54歳男性.42歳時に前壁心筋梗塞を発症し心尖部左室瘤を生じたため循環器科外来で抗凝固治療を継続されていた.胃リンパ腫に対する化学療法目的で血液内科に入院し初回抗がん剤投与施行後の心エコー検査で左室瘤内に径2.5cm大の可動性の高い血栓が出現したため左小開胸下での血栓摘除および左室形成術を施行した.術後回復は速やかで悪性リンパ腫治療の早期再開が可能であった.

  • 髙山 哲志, 迫 秀則, 安部 由理子, 阿部 貴文, 森田 雅人, 田中 秀幸
    2019 年 48 巻 5 号 p. 320-323
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性.主訴は心窩部不快感とふらつき.前医循環器科にて,重度の大動脈弁閉鎖不全症と僧帽弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全と診断され,入院となった.薬物療法に抵抗性で内科的治療では心不全コントロールが困難であり,外科的治療目的で当院紹介入院となった.当院入院後も心不全増悪傾向を示し,緊急で手術を行った.術中所見では大動脈基部-上行大動脈瘤と,右冠尖と無冠尖の間の交連部に離開を認めた.上行大動脈置換術と,Florida sleeve法に準じた大動脈基部置換術および二弁置換術を行い良好な結果を得た.離開部の病理組織検査では粘液腫様変性を認め,交連部離開の原因となった可能性が示唆された.

  • 小泉 滋樹, 髙﨑 直, 長澤 淳, 小山 忠明
    2019 年 48 巻 5 号 p. 324-326
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    症例は34歳男性.有症候性の孤立性三尖弁閉鎖不全症に対して手術を施行した.心エコーにて腱索断裂による前尖逸脱および三尖弁輪拡大により重度の三尖弁逆流と著明な右室拡大を認めた.術所見では,弁輪まで至る前尖のcleftとその中隔尖側の前尖に付着する腱索が断裂していた.右室の前乳頭筋と前尖逸脱部にCV-5を縫着し,逸脱していない後尖側の前尖と高さを揃えた.前尖の大きなcleftは6-0 Proleneで閉鎖し,Tailor band 31mmで三尖弁綸縫縮を併施した.術中経食道心エコーで,前尖の逸脱は消失し,三尖弁逆流は軽度まで制御された.術後1年が経過し,三尖弁逆流は認めず,右心房,右室は著明に縮小した.先天性cleftおよび腱索断裂,弁輪拡大なる複雑病変による三尖弁閉鎖不全症に対しても,僧帽弁形成術の応用にて弁修復が可能であった.

  • 二村 泰弘, 綿貫 博隆, 杉山 佳代, 岡田 正穂, 松山 克彦
    2019 年 48 巻 5 号 p. 327-329
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性.28歳時にリウマチ性大動脈弁狭窄症に対してStarr-Edwardsボール弁(9A model 2320)を用いた大動脈弁置換術を施行された.2015年4月にNYHA IIIの心不全で入院となった.心エコーで大動脈弁位の圧較差の著明な増大,僧帽弁狭窄症,三尖弁閉鎖不全症の進行を認め手術加療となった.手術は大動脈弁と僧帽弁の2弁置換と三尖弁輪縫縮術を施行した.Starr-Edwardsボール弁のケージの被覆布は破損しており(cloth wear),また弁直下に全周性のpannus増生を認め,これが内腔を狭小化させており圧較差増大の主因と考えられた.本症例は初回手術から術後45年が経過しており,筆者らが検索する限りでは大動脈弁再置換において本邦最長例であった.

  • 仁井 陸冬, 森本 啓介
    2019 年 48 巻 5 号 p. 330-334
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性.近医にて3年前より心雑音を指摘されていたが,消化器外科手術に際しての経胸壁心臓超音波検査により,高度の大動脈弁閉鎖不全症と診断され,手術適応にて当科へ紹介となった.術前経食道心臓超音波検査により,右冠尖と無冠尖の間に過剰弁尖がある大動脈四尖弁と診断し,大動脈弁置換術を施行した.手術所見では術前診断どおりの大動脈四尖弁で,交連部付近の弁尖に多数の有窓化を認めた.今回,われわれは多数の有窓化を伴った大動脈四尖弁の1手術例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

[大血管]
  • 中根 武一郎, 金光 尚樹, 本田 正典, 山下 剛生, 岡林 均
    2019 年 48 巻 5 号 p. 335-340
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    症例は88歳女性.腎動脈下腹部大動脈瘤の診断で局所麻酔下に経カテーテル的腹部大動脈ステントグラフト内挿術 (endovascular aortic aneurysm repair, EVAR)を施行した.術後突然心停止となり,蘇生後の心電図でV2-6のST上昇を認め,心エコーで心尖部の広範囲の無収縮および心基部の過収縮を認めた.冠動脈造影では有意な冠動脈病変は認めず,たこつぼ型心筋症と診断した.血行動態維持のためカテコラミンを要したが,数日後には心機能は正常化した.EVARは低侵襲な術式であるが,たこつぼ型心筋症はその周術期に起こり得る合併症である.たこつぼ型心筋症は重症化する危険性があり,急性期の速やかな診断と治療が重要である.

  • 石田 圭一, 佐戸川 弘之, 高瀬 信弥, 佐藤 善之, 瀬戸 夕輝, 五十嵐 崇, 山本 晃裕, 藤宮 剛, 横山 斉
    2019 年 48 巻 5 号 p. 341-344
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)後の逆行性A型大動脈解離(RTAD)は致死的な合併症である.今回われわれは,bovine型大動脈弓(bovine aortic arch)を有する解離性胸部大動脈瘤に対するTEVAR後に,脳梗塞を伴うRTADを発症し,緊急手術にて救命し得た1例を経験したので報告する.症例は54歳,女性.Bovine aortic archを有し,左鎖骨下動脈直下にentryを認める慢性解離性胸部大動脈瘤が増大してきたため,entry閉鎖目的に中枢側landingをzone 2とするTEVARを施行した.右腋窩-左腋窩動脈バイパス術ならびに左鎖骨下動脈コイル塞栓も併施した.術翌日に右上下肢の不全麻痺が出現し,MRIで脳幹梗塞,CTで逆行性A型大動脈解離を認め緊急手術を施行した.術中所見でbovine trunk起始部の大湾側に短軸方向のtearを認め,同部よりベアステント先端が突出していた.手術はentry切除を行い部分弓部大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で術後37日目にリハビリ目的で転院し,その後麻痺症状は消失し近医外来に通院している.

  • 小笠原 尚志, 大徳 和之, 野村 亜南, 川村 知紀, 谷口 哲, 福田 幾夫
    2019 年 48 巻 5 号 p. 345-350
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    大動脈食道瘻は手術死亡率が高く,予後不良な疾患である.症例は胸部下行大動脈嚢状動脈瘤による嚥下困難を認めた72歳男性.胸部ステントグラフト内挿術施行4カ月後にendoleakによる大動脈瘤の拡大をきたし,食道内視鏡検査で中部食道に突出する壁欠損を伴う腫瘤を認めた.腫瘤内部は血栓で充満していた.大動脈造影ではステントグラフトの小彎側からI型のendoleakを認め,腫瘤内への血流を認めたため大動脈食道瘻と診断した.発熱はなく,血液検査ではCRPの上昇を認めたが,白血球数は正常であった.人工血管に感染が及ぶことが必至と思われたため,開胸人工血管置換術および健常大動脈壁による瘻孔閉鎖を行った.人工血管は大網で被覆し,瘻孔部と隔離した.術後経過は順調で,術後4年のCT検査では食道穿孔部の治癒を確認,9年後の現在健在である.

  • 金澤 祐太, 山田 靖之, 柴崎 郁子, 緒方 孝治, 桒田 俊之, 小川 博永, 武井 祐介, 菅野 靖幸, 福田 宏嗣
    2019 年 48 巻 5 号 p. 351-355
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    全弓部置換術後の稀な合併症として遠隔期食道瘻があるが,予後は不良である.今回食道縦隔瘻,気管支瘻を来し人工血管感染を起こしたが,救命し得た症例を経験したので報告する.症例は74歳男性.当科で胸部大動脈瘤に対し72歳時に全弓部置換を施行していた.嗄声を主訴に近医耳鼻科を受診した.左声帯麻痺を認め,胸部人工血管置換術後であったことから当科紹介受診した.精査目的にCTを施行したところ縦隔内にairを認めたため縦隔炎として入院加療とした.上部消化管内視鏡を施行し食道潰瘍を認め食道縦隔瘻の診断となった.抗生剤加療を行い入院第39病日に右開胸胸部食道亜全摘,食道瘻/胃瘻造設を施行した.人工血管感染に対し抗生剤加療を継続した.一度炎症反応も軽快傾向となり抗生剤を中止したが,第107病日に発熱,CT施行し再度縦隔内にairを認めた.気管支鏡検査にて左主気管支に気管支縦隔瘻を確認した.第110病日に左開胸再全弓部人工血管置換術,大網充填,左主気管支修復術を施行した.フォローのCTを第160病日に施行したところ,再度縦隔内にairを認めた.同日気管支鏡を施行し左主気管支の前回より末梢側に気管支縦隔瘻を確認した.第173病日に気管支縦隔瘻閉鎖術を施行した.その後の経過は良好で,第233病日に胸壁前経路空腸拳上再建にて食道再建を施行した.第244病日より食事を開始した.第250病日に軽快退院となった.

  • 仲井 健朗, 本田 賢太朗, 湯崎 充, 金子 政弘, 國本 秀樹, 長嶋 光樹, 西村 好晴
    2019 年 48 巻 5 号 p. 356-360
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    77歳女性.意識障害,左片麻痺のため救急搬送された.造影CTで急性A型大動脈解離と右総頸動脈の閉塞を認めた.心電図所見で前胸部誘導のST上昇を認め,左冠動脈主幹部(LMT)に解離が進展し急性心筋梗塞を合併したと診断した.心筋虚血を解除するため手術に先行してLMTに対する経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う方針とした.PCI後に上行置換術を行い救命した.本疾患のようなLMTのmalperfusionを合併した場合など,大動脈解離に合併した心筋虚血に対する迅速な虚血解除の方法として,PCIは有効な選択肢の1つとなりえると考える.

  • 中永 寛, 森村 隼人, 平岩 伸彦, 田端 実
    2019 年 48 巻 5 号 p. 361-364
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

    右側大動脈弓に合併したKommerell憩室に対するハイブリッド手術を経験した.症例は62歳男性で,主訴は息切れと嚥下困難感であった.15歳時に心房中隔欠損閉鎖術の施行歴あり.手術適応のある心室中隔欠損症(VSD)と大動脈閉鎖不全症で当科紹介となった.術前CTで偶発的に右側大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈を伴うKommerell憩室を認めた.先にVSD閉鎖術,大動脈弁置換術を施行し,3カ月後にKommerell憩室に対して左総頸動脈-左鎖骨下動脈バイパス,左鎖骨下動脈プラグ塞栓術,右開胸アプローチで下行大動脈置換術を施行した.バイパスと血管内治療を併用することで深部での異所性左鎖骨下動脈の再建を避け,出血や食道・反回神経の損傷なく安全に手術を施行できた.術後経過は良好であった.本症例において当術式は他臓器損傷のリスクを軽減し,確実に瘤の圧排症状をとることができる有効な術式であった.

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