日本栄養士会雑誌
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62 巻, 10 号
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  • 吉池 信男
    2019 年 62 巻 10 号 p. 533-539
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/22
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    わが国の食事基準(dietary standard)は、旧来「栄養所要量」として策定・改定がなされてきた。米国でもRDA(recommended dietary allowance)として第10版(1991年)まで改定がなされてきたが、1993年ごろから拡張した概念枠組みの検討が開始され、1997年に米国・カナダ合同でDRIs(Dietary Reference Intakes)が発表された。ここで最も重要な点は、栄養素の必要量を正規分布と仮定し、個人に 対して不足のリスクをEAR(estimated average requirement)およびRDAを組み合わせて確率として示したことである。また、より適切な利用のために、AI(adequate intake)、UL(tolerable upper intake level)を含めた複数の指標のセットが提案された。これを受けてわが国でも「第六次改定」に向けて情報収集、検討が行われた。その結果、1999年に「第六次改定日本人の栄養所要量―食事摂取基準―」として、 DRIsの概念が一部とり入れられたが、十分なものではなかった。次の改定の「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、DRIsの概念がほぼ全てとり入れられ、さらに「生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」(tentative dietary goal for preventing lifestyle-related diseases)、すなわちDG(目標量)が、独自の指標として作られた。その後、EER等多少の変更はあったものの、この形が「2020年版」まで承継されている。DRIsが提唱されてから約20年が経ったが、米国でも正しい活用がなされていないとの指摘もあり、これはわが国でも課題であろう。

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