日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
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最新号
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原著論文
  • 細川 由美子, 山下 公子
    2026 年31 巻3 号 p. 127-136
    発行日: 2026/09/05
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    【目的】令和6年能登半島地震の周産期医療施設へ応援派遣された助産師の活動実態と制度的課題を明らかにする。【方法】派遣助産師10名へ半構造化インタビューを行い、質的分析を実施した。【結果】「派遣の意思決定」「派遣活動」「情報共有と後方支援」「派遣者の心理」「経験からの学び」の5テーマが抽出された。派遣者は通常の助産ケアに加え、支援活動を通じて災害支援における助産師の専門職の役割を認識した。制度整備、心理的安全性、支援の継続性への課題があがった。【考察】助産師の専門性が災害支援の場面でどのように発揮されていたかが明らかとなり、災害時の周産期医療の継続において助産師が果たす役割の重要性を示していた。制度的支援の有無が派遣の可否や活動の質に直結し、持続可能な派遣体制の構築には制度整備や派遣者間の連携が不可欠である。【結語】助産師の災害派遣は医療と心理支援に貢献し、持続可能な体制整備が課題である。

  • 久保 公佑, 佐々木 宏之, 藤田 基生, 佐藤 健
    2026 年31 巻3 号 p. 137-143
    発行日: 2026/09/05
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    【目的】地震被害想定の負傷者区分を医療現場で用いられる負傷者の外因や重症度の区分に変換し、発災からの時間経過を取り入れた医療需給の評価手法を構築し評価する。【対象と方法】長町–利府線断層帯地震を想定して、仙台医療圏内のICU等を有する災害拠点病院を対象とした。災害拠点病院ごとに診療圏を設定して診療圏内での発生重傷者数を算出し、1995年兵庫県南部地震時における医療機関入院患者のデータに基づいて経過時間別の受診重症者数を推定し、ICU等の使用可能病床数との比から医療需給を評価した。【結果】発災から4時間後および10時間後には、災害拠点病院8病院中5病院で重症者医療需給比が1以上となった。受診重症者に占める熱傷重症者の割合は、延焼想定エリア周辺の災害拠点病院で高くなった。【結語】負傷者を外因や重症度、経過時間で細分化した医療需給の評価手法を構築した。手法を適用し、医療需給の差異を明らかにした。

  • 上田 太一朗, 益子 一樹, 川口 祐香理, 原 義明
    2026 年31 巻3 号 p. 168-173
    発行日: 2026/09/19
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル フリー

    【目的】START法トリアージにおける1人法と2人法を、時間効率および人的資源制約下の処理能力の観点から比較すること。【方法】MCLSプロバイダー資格を持つ救急救命士18人を対象に、傷病者10人へのSTART法トリアージシミュレーションを実施した。単回所要時間および人的資源を考慮した2人法換算時間を算出し、副次的に判定誤りの有無を検討した。【結果】単回所要時間は2人法が有意に短かったが(p<0.05)、2人法換算時間は1人法より有意に長かった(p<0.05)。判定誤りは1人法でのみ認めた。【考察】局所的作業効率では2人法が優位である一方、人的資源が制限される災害現場初動では1人法が時間的に有利である可能性が示唆された。【結語】人的資源が十分な状況では2人法が推奨されるが、災害初動では1人法が有効となる場面もあり、MCLSなどの標準化教育では両者を適切に提示する必要がある。

調査報告
  • 平井 亜里砂
    2026 年31 巻3 号 p. 119-126
    発行日: 2026/09/05
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は、都道府県災害派遣福祉チーム(DWAT)の派遣判断基準の実態を把握し、要綱・マニュアル等に記載された判断要素を整理し、その特性を明らかにすることを目的とする。【方法】富士通総研(2023)で「具体的な判断基準あり」と回答した15都道府県のうち、資料を確認できた11都道府県を対象に、要綱・マニュアルを質的コーディングし、カテゴリ化と図式化を行った。【結果】派遣判断の要素としては「災害の規模」「支援の要請」「柔軟な対応」の3類型に分類され、多くの都道府県が複数要素を組み合わせて運用していた。「災害の規模」では災害救助法等を基準とする記載が多く、「支援の要請」は市町村要請が中心であり、「柔軟な対応」では判断主体・根拠が明記されていない曖昧性がみられた。【考察】判断基準の未整備や抽象性は、災害時に福祉ニーズが存在してもDWAT派遣に至らない要因となりうる。基準の明確化と判断プロセスの可視化が、支援の空白を防ぎ適切な派遣につながると考えられる。

  • 久保田 雅史, 米田 貢, 菊池 ゆひ, 間所 祥子, 森 健太郎, 戸田 悠介, 西村 一志, 松下 功
    2026 年31 巻3 号 p. 151-159
    発行日: 2026/09/18
    公開日: 2026/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は、令和6年能登半島地震により金沢市内に開設された1.5次避難所における日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)の支援実態を明らかにし、リハビリテーショントリアージ区分の変化に着目して必要な支援の視点を検討することを目的とした。【方法】2024年1月8日から4月12日にかけて同避難所に入所した累計1,495名のうち、JRATが受援者基本票を作成し初回評価を行った263名(17.6%)を分析対象とし、後方視的に分析した。【結果】リハビリテーショントリアージが初回から最終までに変化した者は17.1%で、うち6.1%は悪化していた。悪化例では併存疾患を有する方が多く、入所期間が短い傾向にあった。また、置き型手すりの貸与が最も多く、環境整備の重要性が示唆された。【結語】本研究により、1.5次避難所入所者におけるリハビリテーショントリアージ区分が経時的に変化することが明らかとなった。今後は入所時の適切な評価と継続的な支援体制の構築が求められる。

  • 福島 綾子, 和田 悠矢, 橋本 直弥, 田中 愛美, 石川 幸司
    2026 年31 巻3 号 p. 160-167
    発行日: 2026/09/18
    公開日: 2026/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】防災訓練に参加した看護学生が得た学習の内容を明らかにする。【方法】A大学看護学科4年生選択科目「災害看護」履修者(2022–2024年度、162名)の防災訓練参加後の自由記述を後方視的に収集し、質的帰納的にコード化、サブカテゴリー化、カテゴリー化した。分析の妥当性は複数研究者で照合した。【結果】6カテゴリー、13サブカテゴリー、705コードを抽出した。【情報共有と組織化の重要性】【主体的な行動と役割認識】【避難所環境と物資・資源の管理】【被災者支援の重要性】【訓練による防災力の向上】【医療者としての役割認識】が示された。【考察】実践的訓練は災害時の基本原則への理解、平時からの備え、役割認識を具体化し、防災力向上に寄与する。長期的影響の検証が今後の課題である。【結語】防災訓練への参加は、看護学生の防災意識と災害時の行動・役割イメージを高める有用な教育介入である。

  • 安間 圭一, 是枝 大輔
    2026 年31 巻3 号 p. 174-181
    発行日: 2026/09/19
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル フリー

    【目的】令和6年能登半島地震における福祉提供体制の復興過程を構造的に分析し、可逆的停滞が不可逆的構造へ転換するメカニズムを検討する。【対象と方法】能登6市町を対象とした後ろ向き記述的・探索的研究。行政統計資料および調整本部活動記録の定量的記述と、行政担当者への半構造化ヒアリングによる質的把握を組み合わせたデザインを採用し、施設、人材、人口動態の三要素の連関を時系列で検討した。【結果】急性期には福祉、医療、避難者による三すくみ構造が生じ、調整介入により部分的に解消された。復興期には施設復旧遅延、人材確保困難、実人口把握困難の三課題が相互に制約し合う負のスパイラルへと転換した。【考察】需要と供給の同時かつ長期的な不確実性が意思決定の麻痺を生み、実体的変化を通じて不可逆化を加速する構造が示唆された。【結語】三すくみの早期解消と福祉・医療・生活再建の同期的回復が不可逆化防止の鍵となる。

事例報告
  • 酒井 智彦, 吉田 元治, 黒田 舞子, 日野 裕志, 田中 友之, 田中 かおり, 竹内 若菜, 岸本 正文, 織田 順
    2026 年31 巻3 号 p. 144-150
    発行日: 2026/09/18
    公開日: 2026/09/18
    ジャーナル フリー

    大規模災害時には多数の災害派遣医療チーム(DMAT)が短時間に参集するため、参集拠点本部の運営は医療支援活動全体の円滑な開始に重要である。しかし、参集拠点本部の具体的な運営方法や工夫については、学術的に十分共有されていない。令和5年度大規模地震時医療活動訓練において、淡路サービスエリアに設置されたDMAT参集拠点本部の運営を担当した。事前準備に基づき、参集DMATの受付から派遣先説明終了までを10分以内とする数値目標を設定し、情報可視化ツールとして更新可能な情報シールを用いた。掲示エリアを「配分未決定」と「配分決定」に区分し、参集DMATの特性を視覚的に整理した。58チームを対象に派遣調整を行い、参集拠点受付から派遣先説明終了までの平均所要時間は12分であった。事前準備に基づく運営設計、情報可視化、時間指標の設定は、DMAT参集拠点本部運営を円滑に行ううえで有用である可能性が示唆された。

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