日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
Print ISSN : 2189-4035
最新号
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原著論文
  • 石橋 真帆, 三羽 恵梨子, 島田 裕平, 坂井 愛理, 冨尾 淳
    2025 年30 巻4 号 p. 180-187
    発行日: 2025/12/13
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】災害時のトリアージに対する市民の認識を把握する。【方法】全国の20歳以上のウェブアンケートモニターを対象に性・年代、居住地域について均等割付した846名を抽出し、2024年8月にウェブアンケート調査を実施した。【結果】有効回答が得られた841名のうち43.8%がトリアージの意味内容を知っていると回答し、25.2%は「聞いたことはあるが、よく知らない」と回答した。トリアージの情報源としてはテレビドラマが56.7%で最多であった。トリアージへの認識として90.2%が「多くのけが人がいる中で、医療者がトリアージを行うことは許される」と回答し、判定ミスが生じた際の責任帰属については54.3%が「誰の責任でもない」と回答した。【結論】市民は災害時のトリアージを受容していたが、その認識基盤は脆弱な可能性がある。市民理解の内実とトリアージへの同意が内包する課題についてさらなる追究が求められる。

  • 内藤 章子, 本宮 めぐみ, 黒川 貴幸
    2025 年30 巻4 号 p. 194-203
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】災害発生後の時間経過を踏まえ、災害により導入された新生児看護対策の気付きを明らかにするとともに、今後取り組むべき災害対策につき検討する。【方法】医中誌webで「新生児」、「災害」、「看護」により文献を検索し、スコーピングレビューを行った。対象文献の類似点・共通点や相違点につきコードを抽出し、カテゴリー化した。【結果】42文献をレビューし、『提言』、『マニュアル作成・改定』、『教育』のカテゴリーを抽出した。【考察・結語】多くの被災経験由来の知見が蓄積・深化することで、想定外の事態においても参考となる『提言』につながっていた。訓練や被災体験を通じ課題を見出し、『マニュアル作成・改定』を継続することで、次の災害対策につながる。各施設の課題に応じ訓練を企画・実施し、判断能力の習得を目的とした『教育』を繰り返すことが重要である。今後、各カテゴリーにおいて急性期以降の対策に取り組むことが必要である。

  • 山平 大介, 奥山 学, 内海 清乃, 石井 美恵子
    2025 年30 巻4 号 p. 204-211
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】浸水想定地域に位置する災害拠点病院の、水害による孤立を想定した病院内避難(籠城)に関する対応計画およびタイムラインの策定状況を調査し、課題を明らかにすることを目的とした。【方法】国土地理院のハザードマップを基に、浸水区域内の災害拠点病院328施設を抽出し、質問紙調査を実施した。有効回答のあった63施設を対象に、集計・分析を行った。【結果】対応計画策定済みの施設は41%、タイムライン策定済みの施設は19%であり、未策定の施設が半数以上を占めた。病院災害対策本部の設置や診療制限、患者対応に関する判断基準には施設間でばらつきがみられた。【考察】対応計画策定状況の差異には、災害リスク認識の違い、過去の被災経験、立地条件等が影響している可能性が考えられた。【結語】浸水想定地域内の災害拠点病院の多くで対応計画が未策定であり、風水害対策の標準化や策定支援を含む制度的整備が今後の課題であると考えられた。

調査報告
  • 甲斐 彰
    2025 年30 巻4 号 p. 162-170
    発行日: 2025/11/16
    公開日: 2025/11/16
    ジャーナル フリー

    【背景】地震は発生直後から心理的側面の崩壊を及ぼすが、その期間に被災者の心理状態を調査した文献は少ない。【目的】熊本地震発生後1週間における被災者の心理状態を明らかにする。【方法】2016年4月15~22日に発行された熊本地震に関する新聞記事を質的分析した。【結果】「命が助かったことに安堵」「日常生活を喪失したことによる不安感」「非日常的な生活に対するつらさ」「体調が悪化するのではないかという不安」「身近な人の安否や健康への心配」「想像を超える被害に混乱」「地元の象徴が損壊したことによる衝撃」「さらに被害が拡大する可能性への恐怖」「繰り返す揺れで心が折れて逃げ出したい気持ち」「被災者同士で支え合い、役に立ちたいという気持ち」「家族・身近な人・ボランティア・ペットに支えられ乗り越えたい気持ち」「わずかでも回復する日常に安堵」「身近な人の死に対する動揺と自責の念」の13カテゴリーが抽出された。

  • 久城 正紀, 本村 友一, 山内 延貴, 宇田 丞, 柴田 隼人, 江川 孝, 市川 学, 横田 勝彦, 赤星 朋比古
    2025 年30 巻4 号 p. 171-179
    発行日: 2025/12/13
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル フリー

    【目的】近年の自然災害の激甚化に伴い、災害時の医療支援の迅速化が重要視され、ドローンの医療的活用が注目されている。本研究は、2015年以降に行われた一連の実証活動および実災害対応を通じて、災害時におけるドローンの医療的活用の有効性と課題を整理し、今後の社会実装に向けた展望を検討する。【方法】2015年以降の実証活動および「令和元年房総半島台風」、「令和6年能登半島地震」における実運用事例を対象に定性的な分析を行った。【結果】ドローンは孤立地域の情報収集、交通アクセスの把握、医薬品搬送において有効性を示した。一方、実運用人材の確保、遠隔診療・薬剤授与体制の整備、運用に関する法的整備などの課題が明らかとなった。【結論】ドローンは災害医療における有効な支援手段である。今後の実装に向けては、制度整備に加え、平時からの訓練と多機関連携体制の構築により、実災害に即応可能な運用体制の整備が重要である。

事例報告
  • 夏川 知輝, 幅野 由樹子, 五十嵐 豊, 豊國 義樹, 久保 達彦
    2025 年30 巻4 号 p. 188-193
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    2023年トルコ・シリア地震におけるJapan Disaster Relief(JDR)医療チームの活動を基に、海外被災地で大規模・高機能Field Hospital(FH)の設置・運営するための調査と調整についてロジスティックの観点から報告する。第一次隊第一陣として、トルコ南東部OğuzeliにおけるFHの設置場所選定および現地調整を実施した。安全性・医療需要・空間の3条件を満たす旧職業訓練学校の駐車場を選定し、地域の医療機関との協働体制を構築した。その結果、JDR医療チームは約2週間で1,946名を診療し、手術および入院管理を含むEMT Type 2水準の医療支援を提供した。効果的なFH展開には、本隊到着前の調査・調整チーム派遣が有用である。

  • 笠岡 俊志, 内藤 久貴
    2025 年30 巻4 号 p. 212-216
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    自然災害の多い日本では医学部の卒前教育において災害医療教育の重要度が増しているが、実際の災害現場で医療に関する研修や実習を行うことは困難である。今回我々は民間企業と協力して災害現場における医療を疑似体験できるvirtual reality(VR)動画を作成し臨床実習に活用したので、その有用性について報告する。VR動画は大地震の発生により列車が脱線・転覆して多数の負傷者が発生し、大学病院から救護班が出動するというシナリオで作成した。医療チームの医師目線での活動を学ぶことが可能であり、災害現場をCGで表現し、現場の安全管理についても学べる内容とした。令和5年8月から救急部の臨床実習においてVR動画を用いた講義を行うとともに、シミュレータを用いた二次トリアージの実習を行った。実習後の学生アンケートでは学習効果が示唆される結果であり、災害医療の医学部教育におけるVR動画の活用についてさらなる検討が必要と考えられる。

  • 加藤 真嗣, 高橋 善明, 彦坂 宗平, 鈴木 孝嘉, 髙栁 勇太, 吉野 篤人, 渥美 生弘
    2025 年30 巻4 号 p. 217-222
    発行日: 2025/12/27
    公開日: 2025/12/27
    ジャーナル フリー

    病院は消防法における特定防火対象物であり、防火管理者の設置と消防計画の策定、年2回以上の消防訓練(消火・避難訓練)の実施が義務付けられている。当院でも年2回の消防訓練を実施し、災害対策本部の設置、初期消火、避難誘導などを確認していた。2023年8月、当院で病棟火災を経験した。本事案では初期消火と避難については現場レベルで訓練通り速やかに実施され、物的被害は最小限かつ人的被害は発生しなかった。しかし災害対策本部は設置されず、院内外への情報共有遅滞により複数の問題が発生していた。この事案に関し、院内および大学内で検証を行った。出火病棟での活動が円滑であった一方で、小火に終わったことで大規模火災を想定した消防訓練のような全館放送は行われず、結果として災害対策本部は設置されなかった。検証結果より、災害規模によらない本部設置に向けた消防計画の改訂、コードレッドの運用開始に繋がった。

体験レポート
  • 仲里 泰太郎, 河合 謙佑, 池田 載子, 光森 健二, 中出 雅治, 小林 政彦
    2025 年30 巻4 号 p. 155-161
    発行日: 2025/11/13
    公開日: 2025/11/13
    ジャーナル フリー

    ウクライナ人道危機の激化に伴う国内避難民の増加により、ウジュホロド市の医療体制はひっ迫した。国際赤十字赤新月社連盟とウクライナ赤十字社はウジュホロド市にEmergency Clinic (EC)を展開し対応、筆者は薬剤師としてECの構築および業務支援を担当した。特に、医薬品の品質を保証する期限管理や保管条件の維持、患者への安全な提供を担保する運用の徹底において、薬剤師の専門性が不可欠であった。本活動は直接診療を行う形態ではなく、WHOの緊急医療チーム(EMT)分類におけるSpecialized Care Teamの目的の1つである技術支援に合致する「支援型EMT」と言える体制を結果的に採用した点が特徴であった。これにより持続可能かつ現地に根差した医療支援が実現できた。本稿ではこの状況下で薬剤師の専門性がどのように発揮されたかを明らかにし、今後の国際医療支援活動への可能性を探る。

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