歯科材料・器械
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11 巻, 5 号
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原著
  • 内山 誠也, 勝木 紘一
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 719-725
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    シリコーンゴムとアクリルレジンとの接着を発展させて, シリコーンゴムによる金属床のリライニングをも可能にするために, シリコーンゴムを床用金属(Co-Cr合金, Ni-Cr合金および純チタン)に接着させることを目的として, いくつかの方法を試みた.-SiH基を有するモノマー(γ-MPTDMS)を合成してMMAと共重合させた.(4-MET/MMA)コポリマーをプライマーとして, シリコーンゴムをアクリルレジンに接着させる(MMA/γ-MPTDMS)コポリマーを含有する接着剤(γ-MPTDMS接着剤)を用いて, Co-Cr合金に対してシリコーンゴムを接着させたとき, 乾燥時49kgf/cm2の引張り接着強さを得たが, 4℃と60℃の水中に各1分間保つサーマル・サイクリングを500回行う耐水試験に接着試験体は耐えなかった.次いで, (MMA/4-MET)コポリマーと(MMA/γ-MPTDMS)コポリマーとの混合溶液を接着剤として用いたところ, 混合ポリマー中の(MMA/4-MET)コポリマーの割合が高いほど引張り接着強さは低下し, (MMA/γ-MPTDMS)コポリマーのみを用いたときに, もっとも高い接着強さを示した.すなわち, シリコーンゴムとアクリルレジンとの接着剤ポリマーである(MMA/γ-MPTDMS)コポリマーは, シリコーンゴムと金属との接着にも有効であることが明らかになった.このγ-MPTDMS接着剤を用いたとき, 乾燥時にはCo-Cr合金, Ni-Cr合金, および純チタンのいずれの金属もシリコーンゴムに対して良好な接着を示し, それぞれ, 48, 44, 41kgf/cm2の引張り接着強さを示した.また, サンドブラスト処理を行うことによって, 耐水性が向上した.
  • 池田 政明, 桂 啓文, 江連 徹, 神 達宏
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 726-731
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    補綴材料は急激に加熱されたり, 冷却されたりして熱ショックを繰り返し受け次第に脆くなる.特に陶材は熱衝撃が入りやすい材料である.陶材の耐熱衝撃性について, サーマルサイクル試験を連続行い, 曲げ強さ, 変形, 表面応力値などの機械的性質にどのような影響を及ぼすか検討した結果次のような結論を得た.1.金属焼付け陶材の熱衝撃性はサーマルサイクルの回数が増えるごとに, 曲げ強さは弱くなり, 曲げ弾性係数も小さくなり, 靱性は次第に小さくなる.2.金属焼付け陶材の表面応力はサーマルサイクルの影響を受けて次第に解放されて小さくなり, また, 変形は応力開放により楕円形に似た形を呈する.3.化学強化した陶材の耐熱衝撃性は処理しない陶材より強かった.
  • 伊藤 充雄, 原 基, 塩谷 晴重, 輿 秀利, 山岸 利夫
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 732-739
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    合金の鋳造収縮を鋳型の硬化膨張, 加熱膨張によって補っている.しかしながら硬化膨張はパターンに阻害されることによって, 十分発現することが出来ない.この現象によって合金の鋳造収縮を補う事が出来なくなる.埋没材は硬化時に結合材の反応に伴って温度上昇が生じる.この温度上昇を利用してワックスパターンのフローを向上させ, 硬化膨張を十分に生じさせる事が出来ると考えられる.そこで埋没材の練和時間, 並びに埋没材の量と温度上昇との関係について検討した結果, 以下の結論が得られた.1.練和時間が長くなるほど硬化時間は短くなった.2.練和時間が長くなるほど鋳型の温度は高くなった.3.デンチベストだけは練和時間が長いと硬化膨張が小さくなった.4.練和時間によって加熱膨張は影響されなかった.5.デンチベストの鋳造精度は練和時間が長いほど向上した.6.セラミゴールドの鋳造体はすべて過膨張であった.7.セラベストGはリング径が大きくなるほど鋳型の温度は高くなり鋳造精度が良好となった.
  • 加我 正行, 大川 昭治, 塙 隆夫, 小口 春久
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 740-745
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    充填用ガリウム合金とアマルガムの生物学的安全性を検索するため, ラット皮下組織に埋入し, その組織反応を病理組織学的に観察した.試料は1×1×5mmの形状にし、練和20時間後に表面を研磨し, 練和24時間後にラットの皮下背側部に埋入した.埋入後3, 7, 30日目にラットを屠殺し, 試料周囲組織を10%ホルマリンで固定した後, 試料を取り出し, パラフィン包埋して薄切後, ヘマトキシリン・エオジンで染色して光学顕微鏡にて病理組織学的に観察した.その結果, ガリウム合金はラット皮下組織の中で, 表面から剥がれて小さな破片になり, 皮下組織内に散在し, ガリウム合金の周囲には軽度の炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織が認められた.アマルガムの皮下組織に対する反応では亜鉛添加と亜鉛無添加の高銅型アマルガム相互間に差異はみられなかった.アマルガム周囲の組織は線維性結合組織によって被包化され, わずかに炎症性細胞浸潤がみられた.ガリウム合金がアマルガムと同程度の皮下組織反応を示すために, ガリウム合金の改良の必要性が示唆された.
  • 川井 隆夫, 内藤 勲, 寺延 治, 島田 桂吉
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 746-753
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    本論文はヒドロキシアパタイト系材料を, 軟組織の関与する部位へ適用する上で重要な賦形性, 初期の炎症, 長期の組織安定性に及ぼす充填材顆粒の形状ならびに溶出性状の影響について, 市販品3種と著者らが新たに開発した顆粒合わせて4種をラット腹部皮下に埋入して比較検討したものである.顆粒形状が凹凸で安息角が大きく, 溶出量の低いものほど早期より形状が安定し, 変形量も少なく賦形性がよい.顆粒周囲の結合組織は移植後4週で炎症も治まり安定するが, Caが過剰に溶出し, 溶出量の大きいものは安定までに3ヵ月を要した.しかし, 骨および軟組織の共存する領域で使用するためには骨伝導を促すためにCaおよびPの適度な溶出が必要なため, 著者らが新たに開発した, 表面が出来るかぎり緻密で骨の侵入しやすい50〜200μmの開気孔ならびに形状を有した多核粒子顆粒が有利であると考えられた.
  • 齊藤 仁弘, 石川 陽一, 沈 凌, 三野 元崇, 児島 茂, 瀬見 精介, 西山 實
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 754-760
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    アルジネート印象材との組み合わせにより得られた硬質石こう模型の表面アラサを, 試作した非接触型の光学式表面アラサ測定器を用いて測定した.その結果, 次のようなことが判明した.光学式表面アラサ測定器で測定した測定値と触針式の表面アラサ測定装置で測定したRaとの間に, 明確な相関関係が認められた.SEM観察から, 石こうの結晶構造が, 模型面の表面アラサに影響を及ぼす傾向が認められた.以上のことから, 光学式表面アラサ測定器は, アルジネート印象材との組み合わせにより得られた硬質石こう模型の表面アラサを測定する能力があると考えられた.
  • 飯渕 良幸, 中村 健吾, 後藤 真一
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 761-776
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    金を10wt%含み, パラジウムを4.5wt%おきに22.5〜36.0wt%に, 銅を4.5wt%おきに13.5〜22.5wt%に変え残量を銀とする12種の10%Au-Ag-Pd-Cu合金を溶製し, 歯科精密鋳造法に準じて鋳造した.800℃から水中急冷軟化熱処理し, さらに450℃→250℃/30minの炉冷法によって硬化熱処理したときの機械的性質と耐変色性を調べた.軟化熱処理したときの実験合金の引張強さ, 伸び, ビッカース硬さは, それぞれ45〜57kgf/mm2, 11〜22%, 143〜202の範囲にあったが, 硬化熱処理を加えると, 引張り強さは, 80〜99kgf/mm2に, ビッカース硬さは223〜405に増加し, 伸びは1〜15%に低下した.硬化熱処理後最も引張強さの大きい合金の推定組成は, 10Au-44Ag-27Pd-19Cuで推定100kgf/mm2の引張強さを持つが, 伸びは1%以下, 変色試験後のL*は62であった.硬化熱処理後のL*が69以上で, 強度の大きい合金の組成は, 10Au-36Ag-36Pd-18Cuで, 硬化熱処理後の引張強さは80kgf/mm2, 伸びは4%で, ANSI/ADA Spec.No.5 Type IV鋳造用金合金に匹敵する機械的性質を持つ.変色試験後の明度L*は, 軟化熱処理試料で62〜67, 硬化熱処理試料で65〜69の範囲内に分布した.
  • 塙 隆夫, 大川 昭治, 菅原 敏, 近藤 清一郎
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 777-783
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    チタンそのものよりもさらに生体と適合するチタン表面を得るために, リン酸イオンとカルシウムイオンを含む水溶液中で, チタンに対して陽極酸化処理と浸漬処理を行なった.表面処理を施した後の表面を, 走査型電子顕微鏡, X線光電子分光, およびフーリエ変換赤外分光光度計による高感度反射法によって解析した.さらに, 処理後の試料を37℃で30日間ハンクス溶液に浸漬し, その表面を上述の方法で分析した.その結果, 表面処理を施すことによって, ハンクス溶液に浸漬したときのリン酸カルシウムの生成は加速されることがわかった.処理の方法によっては, アパタイトに近いリン酸カルシウムを生成させることができる.
  • 柏木 善彦, 中村 健吾, 後藤 真一
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 784-799
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    80Ni-20Cr合金にMoを0〜12mass%, Siを0〜6mass%内添加した16種の合金を鋳造したときの機械的性質・耐変色性を調べた.Siを約1〜3%, Moを0〜約6%含む領域で引張強さが35kgf/mm2以下に低下し, Si約2.5%以上の組成領域では伸びが約3%以下となった.弾性限はMo, Si量が増すにつれて増加した.耐変色性は全系にわたってほとんど変らず, L*a*b*表色系のL*で71±1であったが, Si約3%の組成範囲で明度がやや向上した.
  • 浅岡 憲三, 吉田 憲一
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 800-807
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    陶材/合金積層板を加熱, 冷却したときに発生するAE波を測定した.同時に, 積層板中の残留応力の緩和と発生を粘弾性応力解析により調べた.測定されたAE挙動を計算結果と比較して, AE源について議論した.加熱過程では積層板中の不適合応力が緩和される600℃付近の温度域でAE頻度が高かった.これは, 陶材の粘弾性変形による応力緩和に関係して弾性エネルギーが解放され, それがAE法により測定できると考えられた.冷却過程については, 700〜500℃の温度域と300℃以下の温度域でAE頻度が高かった.計算結果との比較から, 高温でのAE源は陶材の粘弾性変形であると考えられたが, 低温でのAE源は特定できなかった.合金の板厚が厚いときには, AEの活動度は低かった.この結果は, 合金の板厚が厚くなると陶材内でのせん断粘性流れが低くなるという計算結果と一致した.ここでの研究から, 加熱, 冷却過程での異種材料積層板中の残留応力の緩和と発生の機構を, 動的温度場で, 調べるのにAE法が有効であることが明らかにされた.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 宮川 修, 中野 周二, 本間 ヒロ, 塩川 延洋, 小林 正義
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 808-816
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    遠心鋳造機を用いたチタン鋳造において, あらかじめ内部を真空・アルゴン置換を行った場合の溶湯の流れに及ぼす効果を, 丸穴メッシュパターンを使って実験した.その結果, 鋳造性の変化よりも, むしろ溶湯の充満領域の場所に著しい差がみられた.すなわちアルゴン中ではメッシュ空洞内の最深部に約1/3の溶湯が達しており, この現象は大気中の場合には認められなかった.標識元素による流れの観察なども考慮すると, 大気中では乱流となり, アルゴン中では層流となると結論される.また層流となることで, 遠心鋳造の特徴が顕在化し, かなり複雑な鋳型空洞でも流速が主な駆動力となって鋳込まれる割合の高いことが確認された.
  • 土居 寿, 米山 隆之, 小竹 雅人, 浜中 人士
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 817-822
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    チタンの歯科鋳造の臨床応用が進む中で, 埋没材との反応により生ずる反応層の問題が注目されるようになってきた.本研究では, チタン鋳造体の反応層の機械的性質に及ぼす影響について調べるため, シリカ系埋没材とマグネシア系埋没材を用いて鋳造し, 引張試験と硬さ試験および組織観察を中心に検討した.引張試験の結果, シリカ系埋没材を用いて鋳造したものは, マグネシア系埋没材を用いたものよりも強度が増加し, 伸びが減少するばかりでなく, 応力-ひずみ曲線のばらつきが大きくなった.硬さ試験と組織観察の結果, シリカ系埋没材で鋳造したものは, マグネシア系埋没材を用いた場合よりも表面の反応層が厚く, 多層構造が明瞭であった.シリカ系埋没材で鋳造した場合, 表面の反応層生成の不安定性や, 反応層におけるクラック発生の不規則性が, 機械的性質のばらつきとなって現れるものと思われる.
  • 菊地 聖史
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 823-829
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    支台歯の平行形成は最も基本的かつ重要な歯科切削技術であるが, ハンドピースはフリーハンドにて操作するため, 切削精度の向上を図るにはハンドピースの形成方向に対する傾きを定量的かつ非接触的に知ることが必要である.前報では平行磁界を発生させるコイル中に歯列模型を設置し, ハンドピースに取り付けた磁気センサの出力から傾斜角を求める装置を試作した.しかし操作性を改善し, 臨床応用への発展を目指すにはコイル外の任意の点における傾斜角を測定する装置の開発が必要である.そこで本報では磁界発生用のコイル4個と磁気センサ3個を使用することにより, コイル外での角度の測定を可能とする装置を試作した.試作機においてセンサ部を傾斜ステージに固定し, これを10cm四方の範囲内で平行移動させて角度の測定を行った.その結果, 移動による測定値の変動は2°以内であり, また±20°の範囲内で測定値の直線性は良好であることから, コイル外においても傾斜角が測定可能であることが確認された.
  • 平林 茂, 平澤 忠
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 830-836
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンの光透過性を改善する目的で, マトリックスモノマーとフィラーの屈折率の整合性を改善した光重合コンポジットレジンを調製した.これらは, 新規合成した低屈折率を有する含フッ素芳香族ジメタクリレートまたはジアクリレート6種とTEGDMAの30:70mol%の二成分系モノマーに70wt%のシリカフィラーを配合したコンポジット(実験群)である.また, 対照試料として, TEGDMA100mol%のコンポジットも調製した, これらのコンポジットレジンの硬化深度, 圧縮強さ, 曲げ強さ, 弾性率, 歯ブラシ摩耗量, 吸水量を測定し, 光透過性と物性に及ぼすマトリックスモノマーの組成の影響を調べた.6種の実験群の硬化深度は, 金型中で, Translux CL® 20秒光照射で, 約6.5〜7.2mmであった.また, これらの機械的性質は対照試料に匹敵するものであった.ただ, 鎖員数の短いモノマーを用いたコンポジットでは, やや脆性に富む傾向が認められた.また, ジアクリレートを用いたコンポジットの方が, ジメタクリレートを用いたものに比較して機械的性質が高くなる傾向が認められた.6種の実験群の吸水量はコントロールの約35%と少なかった.以上の結果から, 試験した6種の試作モノマー組成物は光重合コンポジットレジンのマトリックスモノマーとして有用であると結論された.
  • 福島 忠男, 宮崎 光治, 山田 清夫, 本川 渉
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 837-843
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの37%リン酸溶液(PA溶液)処理および10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液(10-3溶液)処理象牙質への接着性に及ぼす水の影響を検討するために, 2-methacryloxyethyl hydrogen maleate(2MEM)含有ボンディング剤を用いて作製した試料の水中浸漬24時間, 1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月および1年後の接着力を測定した.PA溶液処理象牙質への接着力は水中浸漬6ヵ月までは変化なく, それ以上水中浸漬すると有意に低下した.しかし, 10-3溶液処理の場合は接着力の変化は認められなかった.接着界面に厚さの異なる耐酸性象牙質層がSEMで観察でき, 層の厚さはPA溶液処理で約5μm, 10-3溶液処理で約2μmであった.PA溶液処理の場合, 24時間水中浸漬した試料の接着破壊はおもに界面剥離と接着界面近傍の象牙質凝集破壊であった.また, 1年間水中浸漬後のものはレジンの凝集破壊, 象牙質の凝集破壊および接着界面剥離であった.10-3溶液処理の場合も24時間水中浸漬したものは界面剥離と接着界面近傍の象牙質の凝集破壊であった.1年間水中浸漬したものには部分的にレジンの凝集破壊が生じていたが, その他は水中浸漬24時間と殆ど同じであった.
  • 赤尾 剛, 中村 隆志, 丸山 剛郎, 高橋 純造, 荘村 泰治, 木村 博
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 844-848
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ラミネートベニア修復用CAD/CAMシステムの計測システム(第1報)に引続き, 今回はCADシステムを開発した.ラミネートベニア修復の適応症として変色歯, 正中離開, 矮小歯などがあり, それらのラミネートベニアシェルは形態的に異なるため, それぞれ別個のCADシステムを製作した.変色歯の場合は, 唇面形態を新たにデザインするよりも支台歯形成前の形態をそのまま利用した方が良いので, 計測用固定ジグを開発して支台歯形成前後の2つの模型を同じ位置で計測し, 2つの計測データを結合することによりラミネートベニアシェルを設計した.正中離開や矮小歯の場合は, 支台歯データをCG表示したモニタ画面上で, マウスを用いてCAD制御点を入力し, それらを局所の台を持ち制御点を必ず通る性質を有するS-スプライン関数で補間することによって唇面形態を設計した.その結果, 各種のラミネートベニア修復適応症に適したラミネートベニアシェルの形態を設計することができ, CAMシステムに移行するためのデータも得ることができた.
  • 櫨元 健壱
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 849-859
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    気泡は, 歯科修復用材料にとって, 一般的に好ましくない影響を及ぼすと考えられる.その存在は, 材料の重合収縮や, 人歯にあらかじめ形成された窩洞に対する辺縁封鎖性に, 何らかの影響を与えると考えられる.本研究では, 修復用コンポジットレジン中に含まれる気泡量の測定や, 重合収縮に及ぼす気泡の影響, 抜去歯(人歯)を用いての辺縁漏洩に及ぼす気泡の影響などが調べられた.コンポジットレジンペーストの粘度が増加すると, 練和時に材料内に気泡が形成されやすくなる.さらに, コンポジットレジンペースト内に気泡が含まれると, 見かけの重合収縮量が増加し, 窩洞における辺縁封鎖性に悪影響を及ぼすことがわかった.
  • 葦沢 元春, 渡辺 功, 中林 宣男
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻5 号 p. 860-865
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    象牙質への接着メカニズムをより明確にするために象牙質ではなくゾウゲ棒へのMMA-TBBレジンの接着を再検討した.研削ゾウゲへのMMA-TBBレジンの接着強さは14 MPaであったが研削象牙質へのそれは5MPa以下である. 研削ゾウゲに拡散したMMAを重合して得られる樹脂含浸層の幅は50 μmであったが, 象牙質へはMMAは拡散できない.このことから, 象牙質よりもゾウゲの方がモノマーの透過性が格段に高いといえる. 従ってMMAの拡散能を向上させる4-METAはゾウゲへの接着には不要であるが, 象牙質の接着には必須である. 被着体内へのモノマー透過性とモノマーの拡散能の2つの因子がモノマーの拡散に関係する.歯への接着には, 被着体の中へモノマーを拡散させ重合させることが不可欠であると結論された.
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