市販の歯科用銀パラジウム銅金合金に対し, 銅の含有量を増加させた合金およびさらに亜鉛を添加しない合金を試作し, これらの合金について種々の熱処理を施し, 引張試験および静的3点曲げ破壊靱性試験を行い, その破壊特性に及ぼすCuおよびZnの影響について検討した.Cuの含有量を増加させることで合金中のα_1相の体積率が増加することから0.2%耐力は減少するが, 加工硬化量が増加するため, 引張強さは増加する.Znを添加した合金は, Znを含まない合金に比べて, より大きな強度特性値およびより小さな延性値を示す.Cuの含有量を増加させると, より高温の溶体化処理温度を適用することにより, より大きな静的破壊靱性値が得られる.Znを含まない合金の静的破壊靱性値は, Znを含む合金に比べて小さくなる.2種類の試作合金の強度および静的破壊靱性値は, 概して溶体化温度および時効温度が高いほど増加し, 逆に伸びは溶体化温度が高いほど減少する傾向を示し, いずれも市販の合金と同等あるいはそれを上回る力学的特性を示す.Znを含みCuの含有量を増加した合金は, 最大の引張強さおよび静的破壊靱性値を示す.また, Znを含まない合金では, 延性が大きく, したがって加工性がより良好になる.
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