歯科材料・器械
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19 巻, 3 号
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原著
  • 法亢 順光
    2000 年19 巻3 号 p. 259-268
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    象牙質接着における重合開始剤の役割を明らかにするため, TBB, バルビツル酸系, BPO / アミン開始剤をとりあげ, 象牙質界面におけるPMMA / MMAレジンの重合挙動をFT-ラマン分光法により検討した.さらに, それら開始剤の併用がレジンの重合および象牙質の接着に及ぼす影響を検討した.TBBおよびバルビツル酸系では, 接着に効果的な前処理剤で処理すると, 象牙質界面での重合が促進されたが, 接着性に乏しいBPO / アミンではそのような現象は認められなかった.象牙質界面で重合促進作用を示す開始剤では, 接着強さが大きくなる傾向が示唆された.TBBとバルビツル酸系あるいはBPO / アミンの併用は, 重合面ではプラスに作用したが, 接着強さはTBBとの組み合わせに依存していた.BPO / アミンとの併用では接着強さは変わらなかったが, バルビツル酸系との併用では低下した.BPO / アミンをTBBと併用することにより, 現在臨床的に使われているMMA-TBBレジンの性能をさらに高められる可能性が示唆された.
  • 清水 昭博, 吉田 隆一
    2000 年19 巻3 号 p. 269-288
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    機能水(強酸性水2種とソフト酸化水3種)に, 歯科用合金の主成分である金, 銀, 銅を20wt%ごとに変化させた21種の合金を3日間浸漬し, 合金拭料の変色と重量変化, ならびに浸漬液のpH, 酸化還元電位(ORP値), 残留塩素濃度の変化を調べ, 以下の結論を得た.変色では, オムコ5.5と純銀で色差41.3と大きかった.重量変化では, 銀の添加が多いものは増量し, 銅の添加が多いものは減量した.pH変化量では, ソフト酸化水と銀の添加の多い組合せ, 強酸性水と銅の添加の多い組合せで大きかった.ORP値維持率では, 金の添加により高く, 銀, 銅の添加で低下した.残留塩素残留率では, 金の添加により高く, 銀, 銅の添加で低下した.ソフト酸化水のほうが強酸性水より残留率が高かった.
  • 小柳 進祐, 王 暁容, 高橋 裕, 羽生 哲也
    2000 年19 巻3 号 p. 289-293
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    射出成形法マイクロ波重合レジンの総義歯と, 従来の加圧填入法マイクロ波重合レジンの総義歯は, 異なった寸法変化の傾向を示すことが知られている.本報では, 寸法変化に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的として, 床用材料, 二次埋没に用いる石こう, レジンの填入方法, マイクロ波の照射時間および徐冷サイクルを因子として取り上げ, 実験計画法による検討を行った.その結果, 以下の結論が得られた.マイクロ波重合レジンの寸法変化に影響を及ぼす因子は, 床用材料, 義歯の二次埋没に用いる石こうおよびマイクロ波の照射時間であった.
  • 小島 之夫, 小嶋 茂, 福井 壽男, 長谷川 二郎
    2000 年19 巻3 号 p. 294-300
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    歯と歯槽骨とを剛体, 歯根膜を弾性体と仮定して, 上顎下顎すべての歯について初期動揺度を計算した.一般的に, 初期動揺度は, 歯根の表面積が大きくなるほど減少する.近遠心軸(t軸)回りのモーメントによる動揺度θt / Mtは, 歯根表面積とほとんど反比例する.動揺度は, 歯根の形状によっても変化する.歯根部分の厚さhは, 幅wに比べて大きいため, 近遠心方向の動揺度δt / Ptが頬(唇)舌方向のδn / Pnに比べて小さくなる.歯根が複数である大臼歯と上顎第一小臼歯では, 垂直軸(z軸)回りのモーメントによる動揺度θz / Mzが非常に小さくなる.一方, 歯根が1本で, その断面形状が円形に近い上顎第二切歯では, θz / Mzが非常に大きくなる.
  • 門磨 義則
    2000 年19 巻3 号 p. 301-309
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    貴金属合金だけでなく非貴金属合金に対して有効な表面処理剤を調製するために, 貴金属接着性モノマーの4-ビニル安息香酸9, 10-エピチオデシル(EP8VB)と卑金属接着性モノマーの4-メタクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物(4-META)を脱水ベンゼン中に溶解させた.被着体として, 貴金属合金, 非貴金属合金および純チタンを用いた.表面処理剤を鏡面研磨した合金の表面に塗布してから, 1日放置した.接着に先立って, 表面に存在する余剰のモノマーを除去するために洗浄した.2個の合金同士をMMA-PMMA系レジンで突き合わせ接着させた後, 2,000回の熱サイクルを負荷してから, 引張接着強さを測定した.EP8VBと4-METAを併用した表面処理では, EP8VBによる表面処理の場合に比べて, 非貴金属合金やチタンに対する接着強さが著しく向上した.一方, EP8VBの表面処理剤に4-METAを添加することにより, 貴金属合金に対する接着強さは若干低下した.
  • 平口 久子, 内田 博文, 中川 久美, 田辺 直紀, 土生 博義
    2000 年19 巻3 号 p. 310-317
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    親水性ビニルシリコーンゴム印象材による模型の再現性に及ぼす印象の加熱滅菌処理の影響を, 印象厚さを変えて検討した.原型は両隣在歯を配したクラウン支台歯を摸したエポキシ樹詣製模型を, トレーは印象厚さが1, 3および5mmとなるように調整された3種類の寸法の金属製有孔トレーを使用した.加熱滅菌処理はオートクレーブ処理およびケミクレーブ処理によって行った.その結果, ビニルシリコーンゴム印象材では, いずれの印象厚さでも, 印象を加熱滅菌処理することにより模型に寸法変化や変形が生じることが分かった.また, 模型の再現性に及ぼす印象の加熱滅菌処理の影響は, 印象厚さによって異なった.
  • 伴 清治, 松尾 憲治, 水谷 紀輔, 甲斐川 健太郎, 長谷川 二郎
    2000 年19 巻3 号 p. 318-325
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    市販陶材, 化学量論的正方晶リューサイト, セシウムを添加した低温安定型立方晶リューサイト, 長石系ガラス単体および, ガラス転移温度の異なるガラスとリューサイトの混合物の熱膨張曲線を熱膨張計により測定し, さらに, 高温X線回折による格子定数の変化よりリューサイトの熱膨張係数を求め, リューサイトの相変態に伴う熱膨張挙動の変化とガラスの熱膨張挙動との関連を検討した.陶材全体の熱膨張挙動は, リューサイトの600〜650℃の相変態よりも, ガラスマトリックス自体の熱膨張挙動が大きく関与していると考えられた.残留応力を大きく残し, 機械的強さを向上させるためにはリューサイト周囲に接触するガラスマトリックスのガラス転移温度は650℃以上であることが望ましいと考えられた.
  • 小松 光一, 谷本 安浩, 高橋 邦暢, 山本 桂子, 根本 君也
    原稿種別: 本文
    2000 年19 巻3 号 p. 326-332
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    フィラーの種類が光重合型コンポジットレジンの摩擦摩耗におよぼす影響を検討するために, フィラーの異なる試作光重合型コンポジットレジン(不定形シリカ:I-CR, 球形シリカ:S-CR, 超微粒子シリカ:M-CR)および市販ハイブリッド型コンポジットレジン(H-CR)の硬化物を作製し, 回転式摩擦摩耗試験機を用いて摩擦係数を測定した.試験後, 摩耗面の深さ測定およびSEM観察を行った.その結果, S-CRは, I-CRと同じ摩擦係数を示したにもかかわらず, 摩耗深さは, 約4倍の値を示した.さらにS-CRの摩耗面は, フィラーの脱落が多く観察されたことから, 滑走による摩擦摩耗はS-CRとI-CRは異なった挙動を示すことが示唆された.
  • 福井 壽男, 大河内 禎一, 藤城 吉正, 國井 崇, 山田 史郎, 長谷川 二郎
    2000 年19 巻3 号 p. 333-338
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    映像の光軸移動に伴う面内での被写体の変位を利用した長さまたは座標計測システムについて, 歯列模型を用いて至近接写した場合の検討を行った.三次元座標空間における被写体寸法および被写体距離を幾何光学の近軸光線理論を用いて, コンピュータ処理により計測したところ次の結果が得られた.(1)映像上の目盛を実際の長さに変換する係数R1は定数となることが判った.この定数を用いることにより, 正確な測長の計算処理のできることが判明した.(2)至近接写した映像の計算処理により, 歯列模型の歯列幅径, 歯列長径その他長さを正確に求めることができた.
  • 西川 元典, 後藤 隆泰, 足立 正徳, 若松 宣一, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 土井 豊, 森脇 豊
    2000 年19 巻3 号 p. 339-346
    発行日: 2000/05/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    本研究では義歯床用加熱重合レジンの亀裂成長の原因を究明するために, 予亀裂を導入した試験片の定荷重三点曲げ試験により亀裂成長量を測定し, 環境溶液(エタノール, 酢酸, 乳酸, アセトン, クエン酸, 食塩, アスコルビン酸, 蒸留水)の種類とそれらの濃度による効果について検討した.その結果, 義歯床の亀裂成長には応力だけでなく環境溶液も寄与していることが示唆された.特に, エタノール, 酢酸の効果が大きいことから, アルコール飲料や酢のものによって亀裂成長が促進されると推測された.また, いずれの環境溶液でも時間の経過とともに亀裂成長速度が減少した.これは主亀裂の周囲に発生した多数の微小亀裂が応力を分散したためであり, 荷重が増加すればこれらの微小亀裂は亀裂成長のための新たな起点になると考えられた.
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