チタンおよびチタン合金を陽極酸化処理し,歯冠色に近づける方法と色について検討するとともに,摩耗試験をした時の重量および色の変化について調べた. 実験にはTi, Ti-6 Al-4V, Ti-6 A1-7 Nb, 50 at% Ni-Tiの4種類の金属を用い,素材の調整,脱脂,酸洗,陽極酸化,後処理(加熱処理)それぞれの条件に検討を加え陽極酸化処理を行った. その後,この試料に歯ブラシ式の摩耗試験を行い,摩耗試験前後の重量変化量と色差を調べた. その結果,4種の金属すべてで歯冠色相当の色が得られ,陽極酸化皮膜はμmオーダーの厚い皮膜となり,十分な耐摩耗性を示した. この皮膜の厚さは加熱処理条件に大きく影響され,組成や色の違いは,チタン含有率に伴う干渉皮膜の厚さ,および,合金や電解液中のチタン以外のイオンとその酸化物の影響をうけると考えられた.また,摩耗に対する歯冠色範囲の維持性には金属そのものの色が大きな影響を与えることがわかった.
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