歯科材料・器械
Online ISSN : 2188-4188
Print ISSN : 0286-5858
ISSN-L : 0286-5858
3 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 加我 正行, 小野木 正章, 野田坂 佳伸, 渡辺 郁也, 及川 清, 太田 守
    1984 年3 巻2 号 p. 191-198
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Ni-Ta系合金を歯科臨床に使用する場合の生体に及ぼす為害作用を検索するため, 純NiならびにNi-10wt%Ta, N-20wt%Ta, Ni-30wt%Taの合金とヒト歯肉由来の線維芽細胞との親和性について組織培養にて検討した.合金の線維芽細胞に対する生物学的親和性は合金試料周囲の細胞の形態観察ならびに培養皿全体に増殖した細胞数の算定によって評価した.その結果, Ni-20wt%TaとNi-30wt%Ta合金周囲の線維芽細胞は金属イオンによる障害がほとんど認められず, 正常な細胞の形態と細胞増殖が観察された.細胞数の算定では線維芽細胞はいずれの合金試験片についても対照群に相応して経時的に増殖し, その細胞数に大差はなかった.以上より, Ni-20wt%TaからNi-30wt%Ta組成範囲の合金は歯科用合金ならびに生体材料として臨床応用の可能性が示唆された.
  • 天日 常光
    1984 年3 巻2 号 p. 199-208
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    化学強化法を陶材焼付金属体に応用し, その機械的性質および耐久性に及ぼす影響について理工学的検討を試み, 次のような結論を得た.1)陶材焼付金属体の曲げ強さは陶材を引張り側にした場合, 化学強化した場合は未強化の場合より1.5〜2.1倍, 曲げ弾性率は1.2〜1.9倍, レジリエンスは1.8〜2.3倍に改善された.2)陶材焼付金属体の抗張破折試験では, 化学強化した場合は未強化の場合より2.4倍高い破壊荷重を示した.3)陶材焼付体の衝撃試験では, 化学強化した場合は未強化の場合より1.2〜1.5倍衝撃値が高くなり, 耐久性も1.2倍に改善された.4)陶材焼付金属体の内径および隙間の変形量は, 化学強化した場合は未強化の場合に比べて小さかった.5)陶材焼付体の陶材の色調は化学強化した場合と未強化の場合との間に有意差はなかった.6)陶材焼付金属体の陶材表層に存在する応力値は, 化学強化処理すると未強化の場合より9.0倍以上の大きい値を示した.
  • 塙 隆夫, 大川 昭治, 近藤 清一郎, 菅原 敏, 太田 守
    1984 年3 巻2 号 p. 209-216
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Ni-Cr合金の歯科遠心鋳造法による凝固過程の一端を知るために幾つかの実験を行った.高周波遠心鋳造機を改造して円柱形鋳造体の凝固中の冷却曲線を記録し, 得られた鋳造体の断面組織を観察した.また, 組織写真から結晶粒径の算出を行い, 鋳造体の断面をX線マイクロアナライザーで分析した.さらに, くさび形鋳造物の組織観察を行った.得られた鋳造体は等軸晶で満たされており, ニッケルとクロムは鋳造体中にほぼ均一に分布していて, 凝固時間・鋳型温度・過冷度・結晶粒径の間には相関があった.また, くさび形鋳造体の先端部組織は粗大結晶となっていた.以上の結果は, 鋳壁からの遊離によって等軸晶が形成され対流によって運ばれて, 柱状晶の形成前に鋳造体が等軸晶で満たされる, という理論で説明できる.くさび形鋳造体先端部の粗大晶は先端部での対流がないために形成された.
  • 塙 隆夫, 大川 昭治, 近藤 清一郎, 菅原 敏, 太田 守
    1984 年3 巻2 号 p. 217-221
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    ジルコニウムを添加したNi-Cr基合金の結晶粒微細化について調べた.高周波誘導加熱溶解炉を用いて真空溶製したNi-Cr-Zr合金10種類, Ni-Cr-Ti-Zr合金5種類, 市販歯科鋳造用Ni-Cr合金2種類とこれにジルコニウムを添加した合金2種類の計19種類の合金を通法に従って高周波溶解遠心鋳造し, 鋳造体の断面組織を顕微鏡写真撮影して, その組織写真から結晶粒径を測定した.その結果, Ni-Cr合金については, 僅少のジルコニウム添加で結晶粒は微細化し, ジルコニウム添加量が増加しても結晶粒径に大きな変化は認められなかった.また, 0.03wt%のジルコニウムの添加はNi-Cr-Ti合金の結晶粒微細化に有効であった.市販歯科鋳造用Ni-Cr合金は0.03wt%のジルコニウムの添加によって比較的粗大な結晶粒が消失した.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 斉藤 隆裕
    1984 年3 巻2 号 p. 222-226
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科用高分子材料の補修法として溶接について研究を行っているが, 自然状態で溶接すると気泡を生じ, 溶接強度が低く, 溶接が不十分であった.今までに, ポリサルホン, ポリエーテルサルホン, ポリカーボネートについて, 溶接時に発生する気泡を防止する方法として予備乾燥が有効であることを見出し, 各々の予備乾燥条件を明らかにし, 実用可能な継手強度の溶接法を開発した.本報は, ポリサルホン, ポリエーテルサルホン, ポリカーボネートの溶接時に生じる溶接ひずみを抑制するため, メロットモルデンによる固定を試みた結果, 溶接ひずみを減少させることを可能とした.また, 曲げ試験を行い, 強度の面から検討を加えたが, 固定位置による曲げ強度の差は認められなかった.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 宮川 修, 中野 周二, 塩川 延洋
    1984 年3 巻2 号 p. 227-236
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    パラフィン(M.P.56〜58℃)にカルナバワックスまたはダンマルを10%まで添加した混合物を調合し, 円柱状(25mmφ, 25mmH)に作製した試料を一軸に50%圧縮し, 塑性変形挙動, 結晶配向度, 変形回復量を調べた.結晶配向度は調合したすべての試料において約80%であり, 大きな違いは認められなかった.カルナバワックスを添加すると, 降伏値は著しく上昇し, 反対に変形回復量は減少した.ダンマルを添加すると塑性変形挙動はパラフィン単独のそれと類似していたが, 回復量は添加量の増加とともに増加した.これらの結果より, パラフィンまたは上記2成分系ワックスの回復挙動は, それら物質中に存在する非晶質分子のゴム弾性に起因するものであることが確証された.
  • 清水 友, 玉置 幸道, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1984 年3 巻2 号 p. 237-242
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    従来から用いられている, 炭化ケイ素(SiC)や酸化アルミニウム(Al2O3)を主成分とした研削用ホイールと比抵抗の小さい炭化チタンを主成分とし, 導電性を帯びた研削用ホイールの研削効率を比較検討した.また導電性ホイールを用いて複合研削を行った場合, 機械研削との研削効率, 表面状態などを検討し, 以下のような知見が得られた.機械研削効率は, いずれも導電性ホイールのほうが, 従来型よりすぐれ, 立方晶窒化ホウ素(CBN)を微量添加したものは, グリーンカーボランダムに比べ, 約5倍の効率上昇であった.複合研削は, 同一条件で比較した場合, 機械研削より約3〜5倍の効率上昇がみられ, 研削面における荒い研削傷も少なく, 表面あらさも機械研削に比べ3分の1くらいであった.複合研削における諸条件は, 今後検討の余地があるが, 今回の実験では, ホイールの回転数が5000rpm, 電解電流865mA/cm2のとき, 研削効率および研削面の表面状態の点から最も良好な結果をもたらした.
  • 平澤 忠, 奈須 郁代, 平林 茂, 原嶋 郁郎
    1984 年3 巻2 号 p. 243-249
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Bis-MPEPPからなるレジン硬化体を用いて三次元構造を有する歯科用レジンの残留モノマーの定量法について検討し, 薄膜試料からアセトン抽出することによって残留モノマーを溶出し, HPLCで定量する方法を確立した.それを要約すると以下の通りである.1.フィラーを含まない非コンポジットレジンの場合レジン硬化体を150μm以下の厚さに調製する.これを約30mg精秤し, 10mlのアセトンを加え, 23℃で2.5時間あるいは37℃で2時間抽出する.この抽出液をエバポレートし, 10mlのメタノールを加えてHPLC用試料とする.HPLCでは波長230nmのUVで測定する.2.フィラーを含むコンポジットレジンの場合レジン硬化体を100μmの厚さに調製する.これを約50mg精秤し, 10mlのアセトンを加え, 37℃で3日間抽出するか, あるいはアセトン還流下(57℃)で10時間抽出を行う.抽出液をエバポレートし, 10mlのメタノールを加えてHPLC用試料とする.以下HPLCによる残留モノマーの測定は非コンポジットレジンと同様にして行う.
  • 中村 光夫, 阿部 義人, 中林 宣男
    1984 年3 巻2 号 p. 250-255
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    著者らは硬組織への高い接着性を与える疎水性基と親水性基を有するモノマー4-METAを合成し, 歯科的応用を試みてきた.そしてこの4-METAをボンディングライナーに含み, 粉末成分に有機質複合フィラーを用いた新しいタイプのTMPTフィラー/MMA系レジンセメントを試作し, すでに報告してきた.今回は4-METAのほかに新たにシランカップリング剤をボンディングライナーの中に加えることにより, 歯質や歯科用合金のみならず, ポーセレンにも接着するレジンセメントの試作に成功した.接着性試験では, 前処理エナメル質に対し120kgf/cm2, 前処理象牙質に対し45kgf/cm2, アルミナサンドブラスト処理した金合金Type Iを含む各種歯科用合金に対し110〜180kgf/cm2, さらにポーセレンに対し100〜160kgf/cm2という有意な接着強さが得られた.
  • 福島 忠男, 川口 稔, 宮崎 光治, 堀部 隆, 水上 義文
    1984 年3 巻2 号 p. 256-261
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    新しいdiluentを開発する目的で側鎖長の異なるalkylene glycol monomethacrylateを合成し, それらの基礎的性質および歯質への接着性と分子構造の関係を検討した.1)Methacryloyl chlorideと各種のalkylene glycolとの反応生成物についてIR, NMR, 元素分析で構造を調べ, 6HHeMA, 8HOMA, 10HDMAであることを確認した.2)Alkylene glycol monomethacrylateのメチレン鎖数の増加に伴い粘度と水に対する接触角は増大し, 重合収縮率と吸水率は減少した.3)Alkylene glycol monomethacrylateの無処理牛歯エナメル, デンチン質へのDryでの接着力はメチレン鎖数の増加に伴い減少する傾向を示し, wetでは逆に増大する傾向を示した.
  • 木村 博, 荘村 泰治, 岡崎 正之, 堤 修郎
    1984 年3 巻2 号 p. 262-269
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    レーザーの歯科領域の応用やapatiteの金属への溶射などの技術の開発に伴い, apatiteの高温相への興味が増してきている.本研究では人歯エナメル質にレーザー照射しその溶融再凝固したエナメル質apatiteの結晶構造の変化を微小焦点ラウエ法により詳細に調べた.その結果溶融部ではエナメル質apatiteの反射リングがスポット状につながり凝固の際結晶粒の配向が幾分そろう傾向があることがわかったが, 格子定数には変化は認められなかった.しかしこれに付随してapatiteでは説明のできない強度の高い反射が2θ=30.81°に現われた.解析の結果これはHydroxyapatiteの高温相であり, CaO/P2O5状態図において1200〜1600℃の範囲で現われるα-tricalcium phosphateの(441, 170)反射であることが判明し, その存在が明確になった.さらにリングの他の角度からの解析で, 2θ=46.87°および52.92°などに同状態図で1200℃以下で存在するβ-tricalcium phosphateの(4.0.10)および(2.0.20)反射も現われておりα, β両相の存在が明らかになった.
  • 安田 清次郎, 松川 正一郎
    1984 年3 巻2 号 p. 270-283
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科用レジンの改良を分子構造面から検討し, 分子剛直性で耐水性を示すビスフェノールと屈曲性を有するアルコキサイド鎖を交互に主鎖に有する鎖長の異なるEpDMAを合成し, 諸物性を検討したところ, 長鎖になるほど硬さはやや低下するが, 重合収縮, 熱膨張係数および吸水率は小さく, 曲げ強さ, 屈曲性, 耐摩耗性は向上した.また, EpDMA-TEDMAコポリマーの物性を調べたところ, EpDMAの比率が多くなるにつれて, 重合収縮, 熱膨張係数, 吸水率は低下し, 曲げ強さ, 弾性率, 硬さは上昇し, 耐摩耗性はいずれのEpDMAにおいても25〜50mol%で最も良好であった.
  • 坂梨 公彦, 西山 典宏
    1984 年3 巻2 号 p. 284-294
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンの力学的特性を向上させるために, 鎖長の異なるω-Methacryloxy alkyl trimethoxysilane(以下ω-MATSと略す)を合成し, これらを用いて表面処理したシリカガラス板について, 処理面に対する水の接触角およびpoly bis-GMAの接着強さを測定し, ω-MATSの鎖長が処理効果に及ぼす影響を検討するとともに, シラン処理剤の吸着機構を検討した.その結果, アルキレン鎖が長くなるにつれて, 水の接触角およびpoly bis-GMAの接着強さは上昇し, 処理効果は大であった.また, 有機溶媒でシラン処理ガラス面を洗浄して得られた化学吸着層へのpoly bis-GMAの接着強さは, 無洗浄に比べて大きく低下し, 界面ですべて剥離したことから, シラン処理剤の多分子吸着層がレジンとの接着に関し, 重要な役割を果たしていると推定された.
  • 小園 凱夫, 田島 清司, 柿川 宏, 林 一郎
    1984 年3 巻2 号 p. 295-302
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    リン酸塩系埋没材の膨張は, 種々の因子によって変化することが知られている.本報では, 練和条件および製品ロットの違いによる膨張量の相異を調べた.L/P比を小さくすると, 硬化膨張は著しく大きくなり, 熱膨張は逆に小さくなった.コロイダルシリカ溶液濃度のわずかな低下によっても硬化膨張は減少し, 熱膨張もわずかながら減少する傾向にあった.また, 練和をはげしく, 長く行ったほうが硬化膨張は大きくなったが, 熱膨張には大きな変化は認められなかった.これらのいずれの因子においても熱膨張の変化は小さく, 総膨張量に現われる差は主として硬化膨張の変化によるものであった.一方, 製品ロット間にも著しい硬化膨張の変動が認められ, その差は埋没操作可能な範囲内で練和条件を変えたときに得られる変化を上回るほどのものであった.
  • 福井 寿男, 紀藤 政司, 久田 和明, 北岡 正, 長谷川 二郎
    1984 年3 巻2 号 p. 303-309
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    石こう系鋳型材を1680rpmの速度で45秒間機械混和した際に, 発現した最大硬化時膨張が経時的に反転し, 減少していく事実を先に報告した.そしてこの膨張の経時的な反転率は鋳型材の最大硬化時膨張までに到達する時間, すなわち硬化時間が短いほど大きいことが判明した.そこで今回, 硬化時間の短縮と硬化時膨張の反転率との関係を検討するために石こうの硬化遅延剤の一種であるクエン酸ナトリウム溶液にて鋳型材を混和すると共にクエン酸ナトリウムの濃度の影響について実験を行った.その結果, 水で混和した場合に比較して, 0.05%クエン酸ナトリウム溶液で混和した鋳型材の最大硬化時膨張までの時間が延長すると共に最大膨張値の経時的反転の割合が著しく減少し, 硬化時間と相関があることがわかった.また, クエン酸ナトリウム溶液で混和した鋳型材の二水塩の結晶および空隙率が同一条件で水で混和した場合に比較して, より大きいことが判明した.
  • 臼井 潔
    1984 年3 巻2 号 p. 310-316
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    より正確な電気的根管長測定法の確立を目的とする基礎的研究の一環として, 基本的な電気回路を有する市販の電気的根管長測定器を用い, それに自家製の可変抵抗器およびトリオ社製CR発振器を接続し, 電極としてリーマー#15(ピアス社製)を, 電解質溶液として生理食塩水を用いて, 変動要因であると考えられる測定器内の抵抗値および周波数の変化がメータ指示値に及ぼす影響について検討した.リーマーを固定したときのメータ指示値は, 抵抗値を大きくするに従って高くなったが, 周波数を高くするに従ってわずかに高くなる傾向を示した.リーマーを移動したときのメータ指示値は, いずれの挿入深さにおいても, 抵抗値が大きい方が高い値を示し, 周波数が400〜1000Hzではほぼ同じ値を示したが, 150Hzではそれより低い値を示した.
feedback
Top