二種類の市販陶材焼付用非貴金属合金表面の酸化層について, 酸化処理前後におけるその物理化学的性質の変化をX線微小部分析装置, X線光電子分光分析装置, 走査型電子顕微鏡, X線回折装置を使用して分析を行い, 検討を加えた.
その結果, Ni-Cr合金の場合, 酸化処理を行う前の合金表面に存在する酸化物はNiO, Ni, Cr
2O
3, MoO
2であった.また, 酸化処理後ではNi2p, Cr2p, Mo3dピークのケミカルシフトが起こり, 合金表面に存在する酸化物はNiO, Cr
2O
3, MoO
3となった.さらに合金表面酸化層の構造は, 外層にNiO, Cr
2O
3, MoO
3が存在し, AlとTiの酸化物はその内層に存在した.
一方, Co-Cr合金の場合は, 合金とBonding agentがその界面で緊密に接着している様相が認められ, 陶材-Bonding agent-合金という接着機構は安定した接着力を得るために有効であることが示唆された.
以上のことから陶材との接着にとって合金表面の酸化物は極めて重要なfactorであり, またその酸化物は極めて微妙な性質を持ったものであることが判明した.
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