歯科材料・器械
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4 巻, 4 号
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原著
  • II. 円形トレーの形態と圧力分布
    荒木 吉馬, 川上 道夫, 菊池 雅彦
    1985 年4 巻4 号 p. 299-306
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    前報において, トレー内の圧力分布は, 用いるトレーの形態に強く依存するものであることを指摘したが, 今回これをさらに具体的に実証するため, 3種の円形トレー, すなわち平板状のFタイプ, 同心円状のV字形溝を付したVタイプおよびVタイプの周縁にふちどりを付したRタイプにおいて内部圧力分布を測定するとともに, そのトレー形態による効果を流体力学的に検討した.
    各点の圧力は, Rタイプ, Vタイプ, Fタイプの順に大きかった.VタイプとRタイプのV字形溝より内側の圧力分布はほぼ平坦な形であり, 溝の部分で急激な圧力降下を示した.また, Rタイプのふちどり部分においても著明な圧力降下がみられた.
    これらの特徴は解析結果とよく対応している.つまり溝およびふちどり部分では, 試料のせん断速度が高くなり, さらに溝の部分では流動路も長くなるので, それぞれの部分において特に圧力降下が著しくあらわれることになる.
    以上の結果から, トレー形態や筋圧形成が圧力分布に及ぼす影響はかなり明確に把握できるものと思われる.
  • -とくにその物性について-
    加藤 幸紀, 山賀 谷一郎
    1985 年4 巻4 号 p. 307-314
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    石こう系仮封材は硬化時の膨脹により, 完全な辺縁の封鎖を期待することができる.また, タンニン, フッ化物合剤は象牙質中の有機成分の溶解を抑制, 無機成分の耐酸性を向上, そして象牙細管を封鎖することにより, 2次う蝕の減少や歯髄の保護が期待できる.
    タンニン, フッ化物合剤を添加した石こう系仮封材の物性を調べた結果, (1)混水比, 硬化時間, 崩壊率, 硬化膨張そして内部の気泡はタンニン, フッ化物合剤の添加量の増加とともに増加した.(2)ブリネル硬さそして圧縮強さはタンニン, フッ化物合剤の添加量の増加とともに減少した.(3)また硫酸カルシウム・2水塩の結晶形態はタンニン, フッ化物合剤の添加量が12%以下では変化が見られなかった.
    以上の結果, タンニン, フッ化物合剤を4〜8%添加した石こう系仮封材は臨床上使用出来るものと思われる.
  • 河村 勝之, 長山 克也
    1985 年4 巻4 号 p. 315-333
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    二種類の市販陶材焼付用非貴金属合金表面の酸化層について, 酸化処理前後におけるその物理化学的性質の変化をX線微小部分析装置, X線光電子分光分析装置, 走査型電子顕微鏡, X線回折装置を使用して分析を行い, 検討を加えた.
    その結果, Ni-Cr合金の場合, 酸化処理を行う前の合金表面に存在する酸化物はNiO, Ni, Cr2O3, MoO2であった.また, 酸化処理後ではNi2p, Cr2p, Mo3dピークのケミカルシフトが起こり, 合金表面に存在する酸化物はNiO, Cr2O3, MoO3となった.さらに合金表面酸化層の構造は, 外層にNiO, Cr2O3, MoO3が存在し, AlとTiの酸化物はその内層に存在した.
    一方, Co-Cr合金の場合は, 合金とBonding agentがその界面で緊密に接着している様相が認められ, 陶材-Bonding agent-合金という接着機構は安定した接着力を得るために有効であることが示唆された.
    以上のことから陶材との接着にとって合金表面の酸化物は極めて重要なfactorであり, またその酸化物は極めて微妙な性質を持ったものであることが判明した.
  • 第1報 埋没材の膨張の測定方法
    上新 和彦, 藤井 孝一, 有川 裕之, 井上 勝一郎, 蟹江 隆人
    1985 年4 巻4 号 p. 334-338
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造においては, 加熱時の鋳型のひび割れを防止するため, また埋没材の膨張が抑制されるのを緩和するため, 鋳造用リングや裏装材が用いられている.よって, 鋳型の膨張は鋳造用リング, アスベストやアルミノシリケートなどの裏装材, 埋没材の膨張が各々影響しあって生じるものである.
    したがって, 埋没材の膨張は鋳造時の条件のもとで測定されることが望ましい.
    本報では, 硬化時膨張・熱膨張を連続的に測定する新しい方法を考案した.そしてこの新しい方法による測定結果から, 裏装材の吸水性やまき方が鋳型の膨張に非常に大きな影響をおよぼすことが明らかにされた.
  • 第2報 石こう系埋没材を用いた場合
    上新 和彦, 藤井 孝一, 有川 裕之, 井上 勝一郎, 蟹江 隆人
    1985 年4 巻4 号 p. 339-343
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    前報で記した方法によって, 石こう系埋没材の硬化膨張(吸水膨張を含む)と熱膨張を測定する.次に埋没材の膨張測定時と同じ条件のもとで, MOD型鋳造体を作製した.そして, これら鋳造体の縦方向(咬合面〜歯頚部辺縁)と横方向(近・遠心方向内側幅径)の寸法を万能投影機をもちいて測定した.
    本研究では, 埋没材の総膨張と鋳造体の寸法変化との関連性を検討した.その結果, 埋没材の総膨張量と鋳造体横方向の寸法との間には相関性がみとめられなかった.しかし, 埋没材の硬化時膨張がワックスパターンに抑制されているだろうことを考慮して, 相関性を見出すことができた.
  • -添加Zr粉の酸化膨張による鋳造体の適合性の改善-
    都賀谷 紀宏, 鈴木 政司, 井田 一夫, 中村 雅彦, 上村 達也, Susumu OKUDA
    1985 年4 巻4 号 p. 344-349
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    チタンの歯科鋳造において, 主要な未解決の問題の一つである鋳造体の適合性の改善を目的として, 前報2)のAl粉添加による硬化膨張法を提案したが, 鋳造体の実用的な適合性と操作性を得るには, 若干の問題を残していた.本研究では, マグネシア系鋳型材中にZr粉を数%添加し, 加熱時の金属粉の酸化による永久膨張を利用することにより, 焼付きや肌荒れなど, 鋳造体の表面性状を低下させることなく, 実用上十分に支台歯と適合する鋳造体を得ることに成功した.
    本報告では, 上記の適合性にすぐれる鋳造体を得るための, 最適のZr粉の添加率, 埋没の様式および加熱スケジュールについて検討した.
  • 第4報 Na2SiF6を用いたフッ素化アパタイトの合成
    岡崎 正之, 高橋 純造, 木村 博
    1985 年4 巻4 号 p. 350-355
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    以前(HFを用いた場合)と異なり, Na2SiF6を用いてフッ素化アパタイトを80℃と60℃で合成した.両フッ素化アパタイトとも, フッ素の置換に伴うa軸格子定数の減少, 結晶性の変化はHFを用いて合成した以前の結果と類似の傾向を示した.ただ, HFの場合に比べて2割程度, 余分のF供給量が必要であった.赤外吸収スペクトル分析, 示差熱分析の結果もHFの場合と類似の傾向を示したことから, Siによるフッ素化アパタイト結晶への顕著な影響はないものと考えられる.見掛けの溶解度も, HFの場合とほぼ同様に極低濃度のフッ素含有領域で, 急激な減少を示した後, 緩慢単調な減少をとげ結晶性に見られたような特異的挙動との間に, 何ら密接な相関性は見い出せなかった.
  • -MMA-PMMA系レジンの諸性質に及ぼす重合条件の影響-
    陳 三餘, 小島 克則, 門磨 義則, 増原 英一
    1985 年4 巻4 号 p. 356-362
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    MMA-PMMA系の粉液タイプのアクリルレジンを種々の重合条件下で硬化させ, 重合開始方法と硬化したレジンの諸性質の関係を調べた.重合方法は過酸化ベンゾイルによる加熱重合, 過酸化ベンゾイル-芳香族第三アミン系およびトリ-n-ブチルボランによる常温重合とし, いずれの重合方法においても, 同一の粉液比, 同一のポリマー粉末を採用した.硬化レジンの曲げ強さ, 引張強さ, 圧縮強さ, ブリネル硬さなどの機械的強度や, 吸水率, 線膨張係数, 軟化点, 分子量などを測定した.また4-METAなどのモノマー添加物の影響も併せて検討した.これらの結果から, MMA-PMMA系レジンの諸性質が重合開始方法に大きく依存していることが明らかになった.
  • 駒村 浩一
    1985 年4 巻4 号 p. 363-376
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造における脱蠟法は現在加熱焼却法によっているため, ワックスの不完全燃焼によって生じた炭素により石膏の熱分解が促進されるおそれがあり, またCO, CO2その他の有害ガスや臭気を発生して環境を汚染する危険も大きい.本研究は, 周波数2, 450 MHz, 平均高周波出力500 Wの電子レンジを用いて大形鋳型内のワックスを脱蠟する方法を工夫検討したもので, 石膏系埋没材では蠟型の約90%, りん酸塩系埋没材では約80%のワックスをいずれも数分間の加熱により脱蠟回収することができた.その際, 埋没材の破砕抗力, 熱膨張, 面アラサなどの物性には変化がなく, さらに鋳肌荒れ, 鋳造体の変形, 鋳造収縮率などにも特に差は認められず, 実用に供し得る脱蠟法であることがわかった.また, この方法で脱蠟した鋳型は650℃の炉内に直ちに入れて急速加熱しても, 鋳型の亀裂発生や変形もなく, 満足できる鋳造体を得ることができた.
  • 形状記憶効果におよぼす合金組成および熱処理の影響
    木村 博, 荘村 泰治
    1985 年4 巻4 号 p. 377-384
    発行日: 1985/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    前報でのべたTi基Ti-V-Fe-Al形状記憶合金の60〜90℃での形状回復率を高めるため, 組成の調整や熱処理を施した.まず, 溶体化処理材ではTi-11V-2Fe-3Al, Ti-11.5V-2Fe-3Al, Ti-11.5V-1.7Fe-3.3Alが150℃以上では良い回復率を示したが80℃ではTi-11.5V-2Fe-3Alの34%が最高であった.しかしTi-11.5V-1.7Fe-3.3Al合金において溶体化処理材を400℃で5秒程度の時効を行った後-15℃で曲げ変形させた所, 80℃では96%の形状回復を示した.これは時効による析出物ですべり変形が抑えられたためと思われる.またこの試料につき室温と80℃で引張試験を行い, その間における回復応力を求めた所, 歪量2%において, 溶体化処理材では8 kgf/mm2であったが, 時効材では17 kgf/mm2と増加した.また時効材の室温での耐力は34 kgf/mm2, 引張強さ70 kgf/mm2であった.回復応力についてはTi-Niの40 kgf/mm2より劣るので, 今後更に改善を試みる.耐食性については, Ti-11V-2Fe-3Alの37℃1%NaCl水溶液中でのアノード分極を測定し検討した.その結果2, 000 mVまでではTi-Niのような急激な電流増加もなく, ほぼTiなみの耐食性をもつと考えてよいであろう.以上の結果からこの合金は歯科用インプラントとしての応用の可能性をもつといえる.
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