歯科材料・器械
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9 巻, 2 号
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原著
  • 猪俣 勝廣
    1990 年 9 巻 2 号 p. 121-132
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    石こうの機械的性質や表面粗さを改質することを目的として, 石こう結晶生成に有効な結晶核を添加し, これらより成長する石こう結晶が互いに結合, あるいはからみあいにより, より緻密な構造の硬化体を形成し, 石こうの機械的性質, 表面粗さを向上させることを期待した.本研究では, リン酸水素カルシウム(CHP), リン酸水素カルシウム二水和物(CHPD)および二水石こうを半水石こうに添加し, これら添加結晶が石こうの機械的性質, 表面粗さ, 硬化膨張および硬化反応に及ぼす影響を検討した.その結果, CHPDは石こうの圧縮および曲げ強さなどの機械的強度を向上させるのに有効であることが判明した.また, CHP添加では, 石こうの硬化時間は大幅に遅延するが, CHPD添加では, 逆に硬化時間は著しく短縮された.硬化膨張は, CHPおよびCHPD添加のいずれにおいても減少した.一方, 表面粗さも, CHPおよびCHPDのいずれの単独添加, ならびに混合添加において改善が認められた.以上の効果に関する機構, 原因究明のため, 二水石こうに対して過飽和な溶液を調製し, その溶液にCHPDを添加, 原子吸光分析にて経時的にカルシウム濃度の定量ならびに沈殿物についてフーリエ変換赤外分光, X線回折および電子線マイクロアナライザにて分析した.その結果, 二水石こうはCHPDを種結晶としてエピタキシーを起こし成長するのに対し, CHPにはそのような働きの全くないことが考えられた.すなわち, CHPDが石こう結晶生成に有効な結晶核となり, これを核として短い二水石こうが多数生成するとともに互いに結合またはからみ合いを起こし, より緻密な構造の硬化体を作り, 石こうの機械的性質と表面粗さが向上したものと考えられた.
  • 山根 史考
    1990 年 9 巻 2 号 p. 133-145
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    水酸化アパタイトセラミックスの機械的性質の向上を目的とし, 金属との直接接合による複合体作成の可否を固相拡散接合法を用いて検討した.接合は生体活性セラミックスであるHAPと白金, 陶材焼付用金合金, コバルト-クロム合金, チタンおよびチタン合金, ジルコニウム, ニオブ, およびアルミ合金等の金属に対して, 高真空・高温度下にて行った.これらの界面における影響, すなわち相互反応及び熱膨張率差の割合等はSEMによる破断面観察, X線回折法, EPMAなどにより分析された.以上の結果, 接合処理法および金属との組み合せによってはレジン系接着材による接合強度とほぼ同程度の接合強度が得られた.又, 接合強度は界面近傍に於る金属元素とセラミックスとの拡散および反応により生じる事が解った.
  • 垣内 英也, 今井 弘一
    1990 年 9 巻 2 号 p. 146-158
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    義歯安定剤の細胞毒性をin vitroにおいてしらべるために, 市販の9製品(粉末状3製品, ゴム状3製品, クリーム状2製品, テープ状1製品)について, マウス結合織由来のL-929細胞, ヒト喉頭由来のHEp-2細胞, 正常ヒト歯肉由来のGin-1細胞の3種類を用いて, 細胞障害からの回復度を指標とした細胞回復度試験法を中心に, 寒天重層法ならびに浸漬法も活用して研究を行った.その結果, 試料を添加した培養液のpH値は粉末状の1製品であるファストンのみ低かった.一方, 同種のリジデントではわずかにアルカリ傾向を示した.しかし, 他試料ではほぼ中性に近いpH値を示した.細胞回復度試験法では, 粉末状3製品およびクリーム状2製品とテープ状1製品で中等度の, ゴム状3製品では低い細胞回復度をそれぞれ示した.一方, 寒天重層法では逆に粉末状3製品の細胞毒性は強くあらわれた.テープ状, クリーム状, ゴム状製品でも粉末状製品につぐ細胞毒性を示した.さらに, 浸漬法では各製品にわずかの細胞毒性が認められたものの, いずれもその程度は軽微であった.また, 細胞種間ではGin-1細胞で高い細胞回復度の傾向が認められた.以上の結果を材料の組成ならびに形状および試験法の観点から考察した.今回のin vitroにおける結果を直ちに臨床に応用できないのは当然であるが, 今後, 義歯安定剤の開発にあたっては, 本実験結果をはじめとする生物学的な面からの考慮がはらわれるべきである.
  • 長山 克也, 日比野 靖, 黒岩 昭弘, 清田 俊一, 和田 賢一, 富岡 直哉, 橋本 弘一
    1990 年 9 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    歯学教育・実習用に使用されている, 抜去歯, メラミン樹脂模型歯, 結晶化ガラス模型歯(Bioram M)の切削中における硬さ, 粘り, 切削感について比較実験を行った.実験には, エアータービンハンドピースとダイヤモンドバーを使用した.実験の結果から, Bioram Mは模型歯として好ましい諸性質を有しており, また口腔内生活歯と非常に切削感が近似していることが示唆された.
  • 若松 宣一, 後藤 隆泰, 足立 正徳, 井村 清一, 林 憲司, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 行徳 智義, 柴田 俊一, 堀口 敬司, ...
    1990 年 9 巻 2 号 p. 165-177
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    金属表面にコーティングする場合と同様な方法で作製したハイドロキシアパタイト(HAP)セラミックスの破壊応力に与える水の効果を評価するために, 四点曲げ試験を0.5mm/minの条件で空気中(20℃, 相対湿度73%)と蒸留水中(37℃)で行った。そして得られた強度データを2-パラメータワイブル統計を用いて解析した。各条件において, 曲げ強さのデータは単一モードのワイブル分布に従った.このデータの表面欠陥モデルを仮定したワイブル解析は, 空気中でワイブルパラメータm=7.8, σ0=26.2MPaと蒸留水中でm=8.1, σ0=18.5MPaを与えた.曲げ強さの平均値は空気中で27.3MPaと蒸留水中で18.2MPaであった.この結果より, 水のような腐食性環境が定応力速度で測定される破壊応力に影響を与えることは明らかである.この影響は試料が破壊するよりも低い応力レベルで起こるサブクリィティカルなクラックの成長が原因であると考えられる.また, 本研究で推定したワイブル分布関数を用いて, 試料の寸法と試料中の応力分布が破壊応力の平均値に与える影響を予測した.
  • 若松 宣一, 後藤 隆泰, 足立 正徳, 井村 清一, 林 憲司, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 行徳 智義, 柴田 俊一, 堀口 敬司, ...
    1990 年 9 巻 2 号 p. 178-188
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    特定の応力分布, 環境そして部品の寸法という条件での脆性材料の寿命と生存確率がSPT線図から予測できる.本研究の目的は, ガラスを介して金属表面にコーティングしたハイドロキシアパタイト(HAP)焼結体のSPT線図を描き, 37℃蒸留水中での安全作動応力を評価することである.37℃蒸留水中で行った動疲労試験から求めたHAP焼結体の疲労パラメータnは19であった.このパラメータは材料や環境にのみ依存する定数であり, nの値が大きい程疲労破壊に対する抵抗性は大きい.従って, 水の存在する条件下でのHAP焼結体は疲労破壊に対する抵抗性が低い事が明らかになった.SPT線図を描くために, 1mm/minで測定した破壊応力と破壊時間のデータを固定点に用いた.得られたSPT線図から, 例えば20年の寿命と99.9%の生存確率を保証する安全作動応力は3.2MPaと推定された.また本研究で得られたSPT線図の精度に及ぼす疲労パラメータの精度の影響を調べた.
  • 三木 利彦, 浅岡 憲三, 桑山 則彦, 河田 照茂
    1990 年 9 巻 2 号 p. 189-196
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    有限要素法を用いて歯の初期動揺を調べ, その結果から歯根膜の力学的性状の推定を行った.解析には, 8節点アイソパラメトリック要素よりなる軸対称体有限要素法を用いた.上顎中切歯の歯軸方向に荷重を負荷したときを想定した.軟組織の応力-歪関係に見掛けの弾性係数の考え方を導入した.すなわち, 歯根膜および歯肉のような軟組織が応力依存の弾性係数をもつと考えた.最初のステージでは, 歯周組織の応力-歪分布は従来の方法で計算した.次のステージから, 計算に軟組織の見掛けの弾性係数を導入した.すなわち, 軟組織の見掛けの弾性係数を, 前ステージで計算された相当応力をもとに求めた.計算は, 変位量が収束するまで繰り返した.次のような結論を得た.1.歯の初期変位量は, 負荷荷重に対して比例関係でなく n 乗式で近似される非線形な関係を示し, 在来の臨床的実験結果と一致した.2.歯根膜は, 部位により異なった弾性係数をもつと考えられることが明らかになった.また, 弾性係数は歯槽縁および根尖部で低くなった.3.歯根膜の相当応力は, 歯槽縁および根尖部で顕著に低くなった.以上より, 見掛けの弾性係数の考え方が歯の初期動揺を調べ, 歯根膜の力学的性状を推定するために有用であると考えられた.
  • 細田 裕康, 山田 敏元, 中島 正俊, Ludek PERINKA
    1990 年 9 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    3種のセメント硬化物の研磨面が, セメント試料にダメージを与えることなく, -160℃に凍結した状態で, クライオSEMを用いて観察された.またセメント試料(リン酸亜鉛セメント, ポリカルボキシレートセメント, 及びグラスアイオノマーセメント)はEDXを用いて分析された.更に, 組成像がイメージアナライザに入力され, 研磨面上のCore対Matrixの面積比が算出された.得られた知見は以下の如くである.
    1.クライオSEMを用いることにより, 硬化したセメント硬化面を試料にダメージを与えることなく明瞭に観察出来た.
    2.イメージアナライザにより, リン酸亜鉛セメントとグラスアイオノマーセメントの研磨面に於けるコアとマトリックスの面積比は約2:8, 一方ポリカルボキシレートセメントのそれは約3:7であることが明らかとなった.
    3.リン酸亜鉛セメントに検出された元素は, Ca, Zn, Mg, Al及びPであり, ポリカルボキシレートセメントでは, Ca, Zn, Mg, Si, 及びSr, グラスアイオノマーセメントではAlとSiであった.
  • 山田 敏元, 細田 裕康, 鶴貝 隆男
    1990 年 9 巻 2 号 p. 205-217
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    6種の市販されているコア用コンポジットレジンがSEMとEDXにより分析し, それらの結果に基づき, 細田により提案されているコンポジットレジンの分類に従い, 2種に分類した.更にそれらコア用レジンの機械的性能について検討を行なった.得られた知見は以下の如くである.
    1.Bell Feel Core, Clearfil Core, Clearfil PhotoCore, Core MaxおよびCore Max IIレジンはセミハイブリッドレジンに, Microrest Coreレジンはハイブリッドタイプに分類された.
    2.EDXにより検出されたレジン中の元素は, Si, Zr, Al, Ba, 及びLaであった.
    3.これらレジンの機械的性能は, 重合後1日ないしは1週後から非常に安定していた.
    4.レジンの機械的性能の点からして, 支台歯形成及び印象採得は次回の治療時に行なう方が望ましいものと考えられた.
  • 森田 直久
    1990 年 9 巻 2 号 p. 218-239
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本発明の目的は, 鋳造床程度の大きさの純チタンを電解研磨により鏡面にまで仕上げることである.
    従来から, チタンの電解研磨は, その強い酸化傾向のために困難とされてきたが, 今回非水系の電解液を用い, 被研磨体の形状や電解条件などに工夫を加えた結果, 30cm2程度の大きさの純チタン板を電解研磨により鏡面仕上げすることができた.
    まず, 小型試片の電解研磨条件を見いだした.しかし, 大型試片の場合には同じ条件では, 研磨面の中程に顕著な梨地を生じ, 均一な研磨はできなかった.梨地部分は, 表面あらさ値が大きく, このままでは生体材料に適さない.
    このような梨地は電解液面を貫く被研磨体の面積を小さくすることで阻止できることを見いだした.
    また, 純チタン鋳造体の電解研磨は, 加工材の場合と同一の研磨条件で可能であった.
    さらに, アルコールを主成分とする電解液の溶媒成分の配合を変えることによって, より安全で, ふかみのある鏡面研磨が可能で, 疲労しにくく, 使用回数などの制限の比較的緩やかな優れた電解液を開発した.
    例 エチルアルコール70ml  iso-プロピルアルコール30ml
     塩化アルミニウム6g  塩化亜鉛25g
     電解条件 電圧30V  通電時間6分  電解液温25℃
  • 田上 順次, 杉崎 順平, 細田 裕康
    1990 年 9 巻 2 号 p. 240-246
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    レジン材料を象牙質に接着させるためには, 現在では酸性溶液による前処理が不可欠となっている.このさいに適用される様々な前処理によるスメア層の除去効果については主としてSEM観察による報告がなされている.本研究では, 接着性レジン修復に伴う各種象牙質前処理による象牙質の水分の透過性の変化量を, Pashleyの方法により測定し比較した.その結果, 以下のような結論が得られた.
    1.リン酸ゲルおよび水溶液, 10-3溶液, 10-20水溶液による40秒処理では, Tenure Conditioner, Scotchprep, Gluma2による所定の処理および10-20ゲルによる40秒処理の場合と比べて, 水分の透過量がより大きく上昇した.
    2.プライマーとして用いられる接着性モノマーを含むScotchprepやMirage Conditionerによる処理でもスメア層やスメアプラグが除去され, 水分の透過量は大きく上昇した.
    3.Clearfil Photobondを1分間塗布した後レジンを十分に洗い流しても, 細管内にはスメアプラグ様のものが残っており, 水分の透過量に変化はみられなかった.
    4.被処理象牙質面のSEM観察のみでは, 透過量の変化が予測できない場合があった.
  • 石塚 直治, 山賀 谷一郎
    1990 年 9 巻 2 号 p. 247-256
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, タンニン・フッ化物合剤(HY剤)の象牙質に対する効果を調べることである.HY剤を象牙質表面に作用させ, 37℃の石灰化溶液中に浸漬したときの, HY剤中の各成分の歯質への取り込み状態および象牙質の表面性状の変化について調べた結果, 次のことが明らかになった.
    1.象牙質表面には石灰化溶液に由来するCaイオンとHY剤の成分であるFイオンとの反応により, CaF2が生成していることが, X線回折により確認された.
    2.F, Zn, SrそしてCaイオンの象牙細管への浸透がEPMAにより確認された.
    3.HY剤を象牙質に7日間作用した結果, 硬さは約10%上昇した.
    4.HY剤を象牙質に7日間作用した結果, 接触角は約3%上昇した.この基礎的研究から, HY剤を作用させた象牙質は, 無機質と有機質の両面から, 物理的にも化学的にも安定化されることが示唆された.
  • 大江 陽一郎, 門磨 義則, 今井 庸二
    1990 年 9 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    フッ素系ポリマーであるフッ化ビニリデン, ヘキサフルオロプロピレンよりなる共重合体, またはフッ化ビニリデン, テトラフルオロエチレン, ヘキサフルオロプロピレンよりなる共重合体と, 4種類のメタクリル酸フルオロアルキルモノマーを組み合わせた新しい可視光線重合型の軟質レジンを試作し, 軟質裏装材料としての応用を考慮しつつその理工学的性質を検討した.水に対する接触角は90度以上となり, エステル側鎖を長くしフッ素をより多く導入する程高くなった.硬さは最も軟らかい組合せでは硬度50(JIS A)以下になった.10週間の吸水率は全体に3〜4.5%程度であった.溶解率は0.1〜0.3%, モノマー溶出率も0.2%以下と非常に少なかった.従来の軟質材料と比較して, ほぼ同等かそれ以上の物性のものが得られた.
  • 川口 稔, 福島 忠男, 堀部 隆
    1990 年 9 巻 2 号 p. 265-270
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    ウレタン系ジメタクリレート(UDMA)6種(IP-HEMA, IP-HPMA, XY-HPMA, MC-HPMA, UEDMAおよびUPDMA)について, 可視光線重合型コンポジットレジンを試作し, 硬化深さおよび硬化物の機械的性質の測定を行った.脂肪鎖骨格を有するUDMAをベースモノマーとするコンポジットレジンは骨格内に芳香環やシクロヘキサン環を有するUDMAに比較して, 水中浸漬環境下における機械的性質の低下率が大きくなる傾向を示した.XY-HPMAをベースモノマーとするコンポジットレジンは他のコンポジットレジンに比べ良好な硬化深さを示し, 照射時間と硬化深さから求めた光透過率も最も高い値を示した.
  • 若林 則幸, 藍 稔, 奥野 攻
    1990 年 9 巻 2 号 p. 271-278
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    Ti-6Al-4V合金を超塑性成形することにより製作した義歯床の機械的性質を明らかにするため, 種々の曲げ試験を行った.最初にTi-6Al-4V合金超塑性成形体とCo-Cr合金や金合金の鋳造体との曲げ特性の比較を行った.次に顎堤モデルを用いて表面形態や口蓋の深さの違いがTi-6Al-4V合金超塑性成形体の曲げ特性に及ぼす影響を検討した.Ti-6Al-4V合金超塑性成形体は, 厚さがほぼ同じなら鋳造したCo-Cr合金と同程度の曲げ強さを示した.また幅方向に湾曲を付与し樋状にすると曲げ強さは増し, 長さ方向にアーチ状に湾曲を付与した場合は減少した.後者の場合, 超塑性成形では板厚が薄くなるために曲げ強さが減少するものと考えられ, 実際の臨床例においては口蓋のかなり深い場合がこれに該当する.臨床模型によるTi-6Al-4V合金床でも同じ傾向を示した.そこで口蓋が深くても, Co-Cr合金鋳造体と同程度のたわみにくさを得るために必要な成形前のTi-6Al-4V合金板の厚さを明らかにした.
  • 黒岩 昭弘, 和田 賢一, 日比野 靖, 吉田 修, 覚本 嘉美, 胡内 秀規, 長山 克也, 橋本 弘一
    1990 年 9 巻 2 号 p. 279-288
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    純チタンおよびチタン合金は, 優れた生体親和性, 耐蝕性, 金合金の約1/4の比重, そして歯科応用に適した機械的性質を持っている.しかしチタンの融点は高く, また高温時の化学的活性が高いことなど, 好ましくない性質を持っている.今回著者らは, 鋳型温度が鋳造性とチタン鋳造体の機械的性質におよぼす影響について実験を行い検討を加えたところ, 鋳造性は各鋳型温度とも良好であった.しかし, 鋳型温度が上昇するにつれて埋没材の付着が(焼着現象)が認められた.さらにその部位のEPMA分析においては, チタン鋳造体表層にSi-rich層が認められ, その層は鋳型温度が上昇するにつれ, 増加する傾向が認められた.ビッカース硬度試験においても鋳型温度が上昇するにつれ, 硬化層の増加が認められ, 硬化層とSi-rich層との間に相関性があると思われた.引張試験において, 鋳型温度が上昇すると伸びが減少し, わずかながら引張強さが増加した.
  • 堀江 恭一, 佐藤 暢昭, 河北 浩, 細田 裕康
    1990 年 9 巻 2 号 p. 289-294
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    口内における臼歯用コンポジットレジンの咬耗を予測するための磨耗試験法が, 新しい概念に基づいて開発された.すなわち臼歯用コンポジットレジンの臨床試験の結果から導かれたその概念は, レジン修復物は食物によって擦過されるばかりではなく化学的にもまた繰り返し圧縮を受けることによっても劣化するということである.そこで数種の臼歯用レジンに対して, ハブラシ磨耗試験と対比しながらこの新しい磨耗試験が種々の条件下のもとに行なわれた.本試験法では, レジン試片を0.1N-NaOH溶液(37℃)に6日間浸漬した場合に臨床試験成績に近似した.しかしながら, ハブラシ磨耗試験では劣化した試片にたいしても臨床試験成績とは一致しなかった.本研究は, 口内におけるコンポジットレジンの咬耗を再現し得る磨耗試験にとって試片の劣化および繰り返し圧縮は必須であることを示唆している.
  • 木村 博, 荘村 泰治, 渡辺 隆司
    1990 年 9 巻 2 号 p. 295-300
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    歯の三次元形状計測をより効率良くかつ正確に行うため, 入射ビームに対して対称に±45°の方向から受光ビームを検出するように位置検出センサーを配置した, 複眼式レーザー変位計を用いた計測システムを開発した.これによって, これまでの単眼式変位計による計測の場合のように, 影の部分のエラーを補うための回転計測をする必要がなくなった.この計測器によって複雑な傾斜面を計測したところ, 両出力間に差が生じた.この場合, 受光ビームと計測面の間の角度が大きい方のセンサーが計測面による二次的な散乱が少なく, 正確な値を示すことが分かったので, その値を選択するようにプログラムした.このような考え方でデータ処理をし, 6の大臼歯の計測を試みたところ, 単眼式では影になりエラーを生じた場所も計測でき, さらに咬合面の咬頭や裂溝等の複雑な形態などは, 単眼式変位計と同程度の精度で計測できた.計測に要した時間は, 単眼式変位計の約1/3の10分程度に短縮され, CGで形状を再現する時に複雑なデータ結合の手続きが不要になるなど, 能率が大幅に向上した.クラウン用支台歯のように大きな傾斜や辺縁部を持つ場合や, アンダーカット部を計測する場合は, 傾斜計測によって精度の向上を図った.従来の単眼式変位計の場合は支台歯を4つに分けて回転および傾斜計測するという複雑な手続きが必要で, 計測に1時間半程度を要した.しかし, 複眼式変位計では回転の必要がなく傾斜計測のみで正確な計測ができたため, 計測時間は約40分に短縮され, データ結合およびCG化は約5分で行えた.さらに, 重なりのある部分はデータを選択し, エラーのない完全な三次元形状データを保存することができた.このようにして得られたデータは, 今後CAMを行う際にクラウン内冠の切削データを与えることができるものと思われる.このように, 今回開発した複眼式レーザー変位計によって, 歯三次元形状計測の手続きは大幅に簡略化でき, かつ高い精度の計測が可能になった.
  • 今井 誠
    1990 年 9 巻 2 号 p. 301-313
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は, 歯科用ポーセレンと接着性レジンとの接着力の強化を目的としてポーセレンのエッチング処理およびシランカップリング処理に改良を加えたものである.両処理で良好な接着強さが得られる処理条件を求めるとともに, シランカップリング剤塗布と加熱処理を併用した方法について検討した.その結果, 初期接着強さにおいては, エッチング処理した場合30%フッ化水素酸60秒処理が495kgf/cm2と最も高い接着強さを示した.また, シランカップリング処理では接着材と親和性の高いビニル基を持つシランカップリング剤が効果的であった.特に, γ-MPTSは濃度2%で425kgf/cm2と高くさらに150℃で10分間加熱すると523kgf/cm2と接着強さが向上した.また接着耐久性試験においては, #600サンドペーパー研磨面やγ-MPTSを塗布しただけの場合は, 20, 000回のサーマルサイクリング試験で全部が脱落したのに対し, 加熱処理すると20, 000回のサーマルサイクリング試験においても接着強さが初期値の74%を維持しており30%フッ化水素酸60秒処理とほぼ同等の耐久性を示した.
  • 小田 豊, 船坂 満, 住井 俊夫
    1990 年 9 巻 2 号 p. 314-319
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    TiにAl, Cu, Niを添加した二元合金を作製し, アノード分極, 自然電極電位, 分極抵抗, 変色, 腐食減量, 添加元素溶出量について添加元素の濃度との関係を調べ, Ti合金の耐食性を評価しようと試みた.(1)TiにAlを5〜50at%添加した場合, Al濃度の増加と共に耐食性は向上する.しかし10at%以上の添加は孔食が発生しやすくなると予測された.(2)TiにCuを5〜70at%添加した場合, 耐食性はCu濃度の増加と共に低下し, 特に50at%以上で顕著に腐食し易くなるものと考えられた.(3)TiにNiを5〜70at%添加した場合, 50at%がTiの耐食性を大きく損なわずに添加できる限度と考えられた.
  • 秋元 隆宏, 門磨 義則, 今井 庸二
    1990 年 9 巻 2 号 p. 320-325
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    象牙質に対するMMA-TBBOレジンの接着メカニズムを理解するためのモデル実験として, フッ化第二銅(CF), フッ化第二鉄(FF), および一般に象牙質への処理液として使われている塩化第二鉄(FC)のクエン酸(CA)溶液で処理した脱灰象牙質シート存在下にMMA-TBBOレジンの重合を検討した.MMA-TBBOレジンの硬化時間は, 適度な濃度のFC-CA, CF-CA, FF-CA溶液で処理した脱灰象牙質シート存在下で速くなった.MMA-TBBOレジンの重合はフッ素イオン存在下において促進された.PMMAの分子量は重合した場所により異なり, 適度な量の鉄イオン, 銅イオン存在下では脱灰象牙質シートの内側で重合したPMMAの分子量が最も大きく, 外側で重合したPMMAの分子量が最も小さかった.これらの結果は, 脱灰象牙質に吸着された鉄塩がMMAの重合に関与し, その結果として象牙質へのMMA-TBBOレジンの接着にも影響を及ぼしているだろうということを示唆している.
  • 細谷 誠, 片倉 直至, 川上 道夫, 飯島 一法, 本間 久夫
    1990 年 9 巻 2 号 p. 326-335
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    重付加型シリコーンゴムの力学的性質に及ぼす石英フィラーの影響について検討するため, 2種類の分子量の異なるシリコーンプレポリマーに配合比を変えて石英フィラーを添加した試料を作製した.まず流動性として回転粘度計で粘性率を測定した後, 硬化させた試料について動的粘弾性測定と引張試験を行った.その結果, フィラーの配合比が大きくなるに従って, 粘性率ηや貯蔵弾性率G'および引張応力σは増加した.しかし分子量の大きいシリコーンプレポリマーを用いるとG'とσは小さくなり, よりしなやかになった.このことからフィラーばかりでなくシリコーンプレポリマーの特性も本印象材の物性に深く関わっている.したがって, 用途に応じた多種多様な性質を作り出すためには, シリコーンプレポリマーの適切な分子設計とそれに併せたフィラーの合理的な配合を考慮することが重要であると思われる.
  • 福本 良平
    1990 年 9 巻 2 号 p. 336-356
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    すぐれた耐熱性, 大きい熱伝導率, 小さい熱膨張係数などの耐熱衝撃性を有するジルコン(ZrSiO4)に着目し, 埋没から乾燥, 脱蠟, 予熱, 鋳造を短時間で行う迅速鋳造法への応用を試みた. 弱酸性酸化物であるジルコンと, ジルコンに対して安定である低濃度の正りん酸溶液を用いて, 耐熱衝撃性にすぐれたコーティング用埋没材を試作し, 粒度配合, 混液比, 流動性, 硬化時間, 硬化膨張, 熱膨張, 熱分析, 生型および焼成強さなどを調べた. 最終的には次の組成のジルコンスラリーが選ばれた. コーティング用  ジルコンフラワー #600 30% ジルコンフラワー #350 10% ジルコンサンド   CP 60% サンディング用 ジルコンフラワー #200 練和液      15%正りん酸水溶液 混液比      0.1 正りん酸水溶液混液比0.1正りん酸は, スラリーの流動性と操作性を向上させる働きがあり, その結果小さい混液比で使うことが可能となった. コーティングした後, コーティング層は熱衝撃によって乾燥, 焼結, 脱蠟を行う.この熱衝撃は, 温風乾燥(50℃, 5分), 熱衝撃(900℃, 3分), 再乾燥(220℃, 3分), 脱蠟(550℃, 3分)の4ステップからなる加熱が必要であった. 上述のジルコンスラリーと熱衝撃法を用いて, 純チタンおよびK-メタルの小型試片の迅速鋳造に成功した.その際, 鋳造体の寸法は, 二次埋没材の影響を受け, 膨張量の大きい二次埋没材を用いると, 補償不足値は0に近付いた.
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