幼児期の子ども達が, オニ役割・コ役割それぞれの役割を意識して鬼ごっこ遊びを行うようになる過程について, 発達的に検討した。実験は, 4歳児15名, 5歳児18名, 6歳児12名を対象とし, 仲の良い同年齢児3名に, 実験者1名を加えた4名で鬼ごっこ遊びが行われた。その結果, 4歳児ではオニ役割からコ役割, およびコ役割からオニ役割への役割交代が困難である場合が多く, 5・6歳児ではこれらの役割交代が可能である場合が多いことが明らかとなった。オニ役割において, 4歳児は複数の仲間を追いかけることは少なかった。また, 6歳児は, 捕まえようとする対象を変えながら, 複数のコ役割を追いかけていた。コ役割においては, 4歳児, 5歳児は, 6歳児と比べて, コ同士が接近した逃げ方をしていた。この結果から, 子ども達は加齢に伴い, オニ役割において集団全体を追いかけるコとして意識するようになり, 複数のコ役割を追いかけるようになることが示唆された。また, コ役割において子ども達は, 加齢に伴いオニとコとの関係を意識しながら, 他の仲間と距離をとって逃げるようになることが示唆された。以上の結果から, 実際の鬼ごっこ遊びで見られる仲間集団に向けられた意識が考察された。
抄録全体を表示