発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
18 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 常田 美穂
    原稿種別: 本文
    2007 年 18 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 2007/08/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,乳児期の対面相互交渉において子どもとの注意共有の状態を作り出すための養育者の行動に着目し,養育者の注意に関する支持的行動が二者間の共同注意の成立にいかに寄与しているのか,また二者間に成立した注意の質がいかにして共同注視から共同注意へと発達的に変化していくのかを明らかにすることを目的とした。家庭における1組の母子の対面相互交渉場面を乳児が2〜9カ月の時期に渡って縦断的に観察し,母親の行動と乳児の注視パターンおよび情動表出との関係を分析した。その結果,母子の相互交渉は「顔を見る,見せる」関係から発展し,母親による全面的な調整によって共同注視が成立する段階から,母子が互いの動きに協働して注意を向け合うことで共同注視が成立する段階,一時的に共同注視から始まる相互交渉が持続しなくなる段階を経て,二者の注意の対象が外的対象から心内対象へと移行し共同注意が成立する段階へ到達するというプロセスをたどった。またこの過程において,注意に関する母親の支持的行動は子どもの姿勢運動能力の発達に応じて変化し,こうした母親の支持的行動の変化が新しい相互交渉パターンの出現を導いていることが示された。このことから,養育者の注意に関する支持的行動には,子どもの共同注意行動を形成する役割のあることが示唆された。
  • 日潟 淳子, 齋藤 誠一
    原稿種別: 本文
    2007 年 18 巻 2 号 p. 109-119
    発行日: 2007/08/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    青年期は時間的展望の獲得期とされ,自己の人生に対して時間的な視野が広がるが,それと同時に現実と非現実が分化し,未来に対しては期待とともに不安も抱くことが示唆されている。本研究では高校生と大学生を対象に,過去,現在,未来に対する時間的展望の様相と精神的健康との関係をとらえ,青年が心理的に安定した状態で時間的展望の獲得を促す要因を検討することを目的とした。その結果,高校生,大学生ともに過去,現在,未来に対してポジティブな時間的展望を持つ者は精神的健康度が高かった。しかし,未来に対する時間的態度においては違いが見られ高校生では未来のみにポジティブな態度を示している者は精神的健康度が低かったのに対して,大学生では低くはなかった。高校生と大学生では未来を志向することに対する心理的影響が異なることが示唆された。また,過去,現在,未来に対してポジティブな時間的展望をもっている者は,過去,現在,未来の出来事をバランスよく想起しており,過去の出来事へのとらえ直しや,未来の出来事に対して現実的な認知を行っている様子が見られ青年期が心理的に安定した状態で時間的展望を抱く要因として自己の過去,現在,未来におけるライフイベントに対する関与の強さと的確な認知をしていることが示唆された。
  • 柴山 真琴
    原稿種別: 本文
    2007 年 18 巻 2 号 p. 120-131
    発行日: 2007/08/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,保育園児を持つ共働き夫婦が子どもの送迎分担をどのように調整しているのかを質的に分析した。データは,私立J保育園を利用する28家族についての送迎記録表と,2001年3月から8月の間に10家族を対象に実施したインタビューによって得た。分析の結果,送迎分担には,(I)母専任型,(II)父母分担型, (III)父専任型,(IV)祖母依存型(下位タイプ:(a)父母+祖母型,(b)母+祖母型),(V)ベビーシッター利用型,の5タイプがあることがわかった。この送迎分担タイプと夫婦間での調整過程(調整過程で使用される相互作用様式,送迎分担についての妻の考え,調整過程での妻の主導的役割の有無)との間には対応関係があった。父親が送迎を分担しない家族(I,IV(b),V)では,妻の多くが送迎は自分の仕事と考え,夫に働きかけて話し合うこともなく,妻が送迎の方針を決めて送迎を実行していた。特に前二者のタイプでは,「暗黙の了解」「話し合いせず」「話し合い不成立」という夫婦間で調整をしない相互作用様式が使用されていた。一方,父親が送迎を分担する家族(II,III,IV(a))では,妻の多くが送迎は夫婦で分担すべきであると考え,夫が送迎を分担するよう積極的に働きかけ,「話し合い」によって形成したルールに従って夫婦で送迎を分担していた。
  • 上村 有平
    原稿種別: 本文
    2007 年 18 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2007/08/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,(1)青年期後期において,自己受容が高く他者受容が低い者と,自己受容が低く他者受容が高い者の特徴を記述すること,(2)自己受容と他者受容がバランスよく共存していることが,より適応的かつ成熟した状態にあることを明らかにすること,(3)自己受容と他者受容の関連を,発達心理学的観点から検討することであった。124名の大学生(平均年齢20.46歳)を対象に,自己・他者受容尺度と個人志向性・社会志向性PN尺度を実施した。自己受容および他者受容得点の高低によって調査対象者を4群に分類し,各群の特徴を検討した。その結果,自己受容が高く他者受容が低い者は,自己実現的特性が高い反面,社会適応的特性が弱いという特徴が見出された。自己受容が低く他者受容が高い者には,自己実現的特性が弱く,過剰適応的傾向が強いという特徴が見られた。また,自己受容と他者受容がともに高い者には,4群の中で最も適応的かつ成熟した特徴が見られ,青年期後期において,自己受容と他者受容がバランスよく共存していることが,より適応的かつ成熟した状態にあることが明らかにされた。
  • 奈田 哲也, 丸野 俊一
    原稿種別: 本文
    2007 年 18 巻 2 号 p. 139-149
    発行日: 2007/08/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,内面化過程へ直接的にアプローチしたRatner et al.(2002)の研究を踏まえ,ソースモニタリングエラー(バイアス)の生起を内面化の指標として用い,内面化過程をより詳細にしていくことであった。そのため,小学3年生を対象に,プレテスト(単独学習),他者との協同活動セッション,ポストテスト(単独学習)という手順のもとに,最短ルートで指定された品物を購入してくる買い物課題を行わせた。また,協同活動セッションでは,課題を問題解決活動の下位活動である,プランニング活動,決定活動,実行活動の3つにわけ,それぞれの活動でソースモニタリングテストを行った。その結果,自分の考えと他者の考えをやりとりする決定活動場面で最もエラーバイアスが生じるとともに,エラーバイアスを示した実験参加者は,ポストテストでより短いルートで地図を回れるようになっていた。このことは,エラーバイアスを示した実験参加者ほど,他者とのやりとりを通して,最短ルートを発見していくのに有効な知的方略を内面化させることができ,ポストテストでその知的方略を遂行できるようになったことを示している。また,エラーバイアスを示した実験参加者は,協同活動において,自己修正方略(一度決めたルートを最終的に提案する前に,さらに良いルートはないかを,吟味・検討し直す)の有効性に気づき,それを取り入れ実行していく関わり方を示すという新たな知見が得られた。
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