発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
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22 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 麻生 武, 加藤 義信
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 335-338
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
  • 河本 英夫
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 339-348
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    発達には,それぞれの局面で経験そのものの再編が含まれる。そうした経験そのものの再編を含むような変化を考察するさいには,経験の組織化がどのような仕組みで起きているのか,またそのことは能力の開発形成の誘導を行う発達障害児の治療で,どのような介入の仕方を可能にするのかという問にかかわることになる。発達にかかわる議論では,いくつか難題が生じる。発達段階論は,図式的な発達論の派生的な問題である。そうした難題に関連して,1.で三点に絞って考察している。第一に「発達するシステムそれ自体」に,観察をどのように届かせるのかにかかわり,第二に発達というとき,「何の発達か」という問にかかわり,第三に発達の段階そのものは,どのような仕組みで成立するかにかかわっている。それらの検討を受けて,2.では,脳神経系の事実から,発達論の基礎となる構造論的な論理を設定している。また発達という生成プロセスをどのように捉えるかを考察した。これは発達障害の治療では,決定的な治療介入の変更を示唆する。
  • 多賀 厳太郎
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    胎児期から乳児期の脳の発達に焦点を当て,脳のマクロな構造とネットワーク形成に関する解剖学的変化,脳が生成する自発活動と刺激誘発活動の変化,脳の機能的活動の変化について,近年の脳科学研究でわかってきた知見を俯瞰する。それを基に,乳児期の行動発達の動的な変化を理解するための,脳の発達に関する3つの基本原理を提案する。(1)胎児期の脳では,まず自発活動が生成され,自己組織的に神経ネットワークが形成された後で,外界からの刺激によって誘発される活動が生じ,さらに神経ネットワークが変化する。(2)脳の機能的活動は,特定の機能に関連しない一般的な活動を生じた後で,特定の機能発現に専門化した特殊な活動に分化する。(3)脳ではリアルタイムから長期的な時間にわたる変化まで,多重な時間スケールでの活動の変化が生じるが,異なる時間スケールの間の相互作用機構を通じて,構造と機能とが共に発達する。このように脳の発達は極めて動的な変化であり,段階的に見える行動の発達も,脳,身体,環境の相互作用から生じる創発的な過程であると考えられる。
  • 佐々木 正人
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 357-368
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    乳幼児が屋内で出会う複数の段差が行為に与えることについて縦断的に観察した。観察した段差は,ベビー布団と床との縁,床上の建具突起,浴室や洗面所への境界にある段差,ベッド,ソファー,父親の膝,子ども用イス,階段であった。各段差はユニークな性質をもつことを,乳児の行為の柔軟性が示した。素材,高さ,形状,周囲のレイアウトの中での位置などから,各段差の意味について考察した。42の事例からこの時期の段差にまつわる行為を記号化し,それを一枚の図に表示した(Figure 23)。段差と行為からもたらされる系は,「落下」「繋留」,「飛越」に大別できることが明らかになった(Figure 24)。3種の系を発達の図にマッピングして(Figure 25)考察した。これらの段差に包囲されることが,移動を開始するまでの0歳児の行為の発達に多様性と制約をもたらすことが示された。
  • 中垣 啓
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 369-380
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,ピアジェの発達段階論の紹介と解説を通して,認知発達において発達段階を設定することの意義と射程とを明らかにすることであった。まず,ピアジェの知能の発達段階は主体の判断,推論を規定する実在的枠組みである知的操作の発達に基づいて設定されたものであり,知的操作は順序性,統合性,全体構造,構造化,均衡化という5つの段階基準を満たす,認知機能の中でも特権的な領域であることを指摘した。次に,形式的操作期の知的新しさがこの時期の知的操作の全体構造から如何に説明されるか,具体的操作期の全体構造から形式的操作期の全体構造が如何に構築されるかを明らかにすることを通して,形式的操作の全体構造がもつ心理的意味を探った。最後に,ピアジェ発達段階論の意義と射程を理解する一助として,発達心理学の古典的問題である発達の連続性・不連続性の問題,最近の認知発達理論の一大潮流である理論説が提起する認知発達の領域固有性・領域普遍性の問題,そしてこの特集号の編集責任者から提起された形式的操作期の一般性・普遍性の問題を議論した。
  • 赤木 和重
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 381-390
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,障害研究における発達段階の意義を再検討することであった。定型発達児と同様の発達段階を想定しにくい自閉症スペクトラム障害を対象とした。第一に,田中昌人らによる「可逆操作の高次化における階層-段階理論」をとりあげ,障害領域における発達段階論の特徴を検討した。第二に,発達段階論に代わって台頭し,障害特性論の象徴でもある「心の理論」障害仮説を検討した。「心の理論」障害仮説は,領域普遍・質的変化という発達段階の中核的な構成概念を否定したところで構成されていることを述べた。第三に,「心の理論」障害仮説を批判する形で出されてきた知見を紹介し,自閉症の障害を説明する際には,機能連関・発達連関という視点が重要であることを指摘した。以上をふまえ,機能連関・発達連関を想定した場合,実践のあり方がどのように変容しうるのかを検討した。具体的には,ある障害がみられる能力のみを支援するのではなく,その障害を生起させている発達連関・機能連関に働きかける支援がありうることを提起した。
  • 高木 光太郎
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 391-398
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    「年齢の問題」(Vygotsky,2002a)における年齢時期区分論は年齢時期ごとの発達的特徴を個体的な水準に定位し,また文化普遍的な現象として記述するオーソドックスな形式をとっている。これは心的過程の歴史的,文化的,社会的起源と発達の文化的多様性を強調し,個体的な水準ではなく相互行為的な水準での現象の解明をめざす現代的なVygotsky理論の理解とは矛盾するようにも見える。しかしVygotsky(2002a)の理論構成を検討してみると,個体的な水準に位置づく人格と,その外部の社会的環境をそれぞれ異なる内的な構造と展開の論理をもつシステムとして捉え,それらの部分的な接続から人格と社会的環境の双方向的な変化が生じるとする「閉じつつも開かれた」システムを想定していること,人格と社会的環境の普遍的な関係の様式が,文化的多様性を排除するのではなく,それに対する制約として機能しうることが確認できる。Vygotsky(2002a)の年齢時期区分論のこのような枠組みは,個体的な水準と歴史的,文化的,社会的水準の関係や,文化的多様性と普遍性の関係をめぐる現代の理論的探求にも重要な示唆を与えるものである。
  • 上野 直樹
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 399-407
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    この論文では,ソフトウェアにおけるオープンソースを中心に野火的活動における社会的なつながりのあり方を「オブジェクト中心の社会性」および有形,無形の資源の「交換形態」に焦点を当てて明らかにする。また,こうした作業を行った上で,学習を見る観点の再定式化を試みる。ここで言う野火的な活動とは,分散的でローカルな活動やコミュニティが,野火のように,同時に至る所に形成され,ひろがり,相互につながって行く活動をさしている。野火的な活動は,Wikipediaの編集やLinux開発の例に見られるように,制度的な組織や地域コミュニティを超えて多くの人々が協調して何かを生み出すピアプロダクションという形で行われている。しかし,野火的な活動は,インターネットに限定されるものではなく,例えば,赤十字,スケートボーディングや地域における街づくりのための市民活動といったものの中にも見いだすことができる。また,「オブジェクト中心の社会性」とは,社会的ネットワークは,人々だけから構成されているのではなく,むしろ,共有するオブジェクトによって媒介されたものだという理論的観点である。
  • 渡辺 恒夫
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 408-417
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    内面から見られた人格(パーソナリティ)である自己の発達に焦点を当て,人格発達の著しい質的転換点とみなされてきた第二の誕生の謎に肉薄する。Rousseau以来,第二の誕生は思春期の到来の時期に想定されてきたが,青年期静穏説の台頭によって最近は影が薄い。2節では,自己の発達について考察すべく,代表的な自己発達理論として,Neisserの5つの自己説を検討し,私秘的自己のみが未解明にとどまっていることを見出した。次にDamonとHartの自己理解発達モデルを検討し,自己の各側面間の発達的ズレ(デカラージュ)という知見を得た。3節では,古典的青年心理学で第二の誕生として論じられた自我体験と,その日本における研究の進展を紹介し,4節で,第二の誕生の秘められた核は自我体験であり,その奥には私秘的自己と,概念的自己など他の自己との間の矛盾の気づきがあるという仮説を提示した。5節では,私秘的自己の起源をメンタルタイムトラヴェルによる自己の二重化に求めるアイデアと,自己理解と他者理解の間のデカラージュを克服しようとする運動そのものが新たに矛盾を生じるという,生涯発達の構想が提示された。6節では,第二の誕生のテーマを再び見出すため,一人称的方法による人格発達研究の復権が唱えられた。
  • やまだ ようこ
    原稿種別: 本文
    2011 年 22 巻 4 号 p. 418-427
    発行日: 2011/12/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    「発達心理学」は,かつての「児童心理学」のように特定の対象や領域をさすのではなく,心理現象を時間的な発生・変化プロセスからとらえる学問になった。しかし成人になるまでを研究対象とし,発達初期に焦点をおいていた。「生涯発達心理学」では,成人以降の発達へと時間軸を拡張し,人間をとらえる「ものの見方」を根本的に変化させた。人間発達はいつの年齢でも起こる可塑的で多次元的であるという見方や,社会・文化・歴史的文脈のなかに埋め込まれており,具体的な人間の発達プロセスは,それらとの相互作用を抜きに研究できないという文脈主義的な見方が不可欠になった。しかし,このような「ものの見方」の変化にもかかわらず,生涯発達心理学においても,「何歳で何ができるか」という問い方は変わらず,横軸に年齢をとり,縦軸に個人の能力レベルをとり,上昇と下降を数量化する図式は保持されたままであった。ナラティヴ理論から,発達理論のマスター・ナラティヴを批判的に問い返すと,根底には「個人主義」「線形・進歩主義の人生観」「座標軸と数量的尺度化」「一方向にすすむ不可逆的時間」などの概念があると考えられる。本論では,「文脈主義」「人生の意味づけを重視する人生観」「質的ナラティヴによる記述」「サイクルする時間概念」にもとづく,「生成的ライフサイクルモデル(GLCM)」を提案し,新しい発達観の可能性を提示した。
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