本研究は古見・子安 (2012) において,成人で確認されたロールプレイがマインドリーディングに及ぼす効果について,マインドリーディングの発達過程にあると考えられる児童期でも同様の効果が表れるかを検討した。また,Keysar, Barr, Balin, & Brauner (2000) 以降用いられている“コミュニケーション課題”と従来の心の理論課題をはじめとする他者の心の理解課題との関連についても確認した。46名の小学3年生から小学5年生の児童は,心の理解課題に回答した後,ロールプレイ群とロールプレイなし群に分けられ,コミュニケーション課題を行った。その結果,ロールプレイ群のほうがロールプレイなし群よりも誤答率が低く,また心の理解課題の得点が満点であった参加児は,そうでなかった参加児よりも誤答率が低かった。さらに,心の理解得点が低い参加児のグループのほうが心の理解得点が満点であった参加児のグループよりもロールプレイの効果が大きく表れていた。これらの結果から,児童期においても成人と同じようにロールプレイはマインドリーディングにポジティブな影響を及ぼすことと他者の心の理解が未発達な子どものほうが,ロールプレイの効果がより強く表れるということが明らかとなった。40名の成人参加者の結果と比較すると,成人では反応時間がロールプレイによって速くなっているが,児童ではその差は見られなかった。
抄録全体を表示