発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
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25 巻, 3 号
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原著
  • 大浦 賢治
    2014 年 25 巻 3 号 p. 207-220
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    思考については,これまで多くの心理学的研究がなされてきたが,実用的推論スキーマ説(Cheng & Holyoak, 1985)は,その中でも有力な学説である。この考え方では,「許可」や「義務」のような日常の生活経験から引き起こされた抽象的な知識構造を用いることによって人は推論をなすとされている。Nakamichi(2004),中道(2006)は,幼稚園児を対象としながら条件文の解釈課題を用いて子どもに対する実用的推論スキーマ説の妥当性を検討した。そして,その結果は否定的なものであった。しかし,これらの調査では条件文によって示された許可的な規則に対して前提条件を課すことの理由が付与されていない。これとは対照的にCheng & Holyoak(1985)における条件文の4枚カード問題では,前提条件に関してそれがなぜ必要なのかという理由を付与した場合に大人の課題遂行が促進されている。本研究の目的は,こうした理由を付与した2つの経験的課題を用いながら許可的条件文の解釈に対する実用的推論スキーマ説の妥当性を発達的な観点から検討することである。その結果,2つの経験的課題の間には著しい成績の相違が見られ,子ども達の条件文解釈は許可スキーマよりも既存の知識や経験の影響を大きく受けていることが示された。また,Piagetの発達理論との整合性も見られた。以上のことから幼児期と児童期の子どもに対する実用的推論スキーマ説の妥当性は限定的であると考えられる。
  • 伊藤 大幸, 中島 俊思, 望月 直人, 高柳 伸哉, 田中 善大, 松本 かおり, 大嶽 さと子, 原田 新, 野田 航, 辻井 正次
    2014 年 25 巻 3 号 p. 221-231
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,既存の尺度の因子構造やメタ分析の知見に基づき,養育行動を構成する7因子(関与,肯定的応答性,見守り,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰)を同定し,これらを包括的に評価しうる尺度の開発を試みた。小学1年生から中学3年生までの7,208名の大規模データに基づく確認的因子分析の結果,7因子のうち「関与」と「見守り」の2因子を統合した6因子構造が支持され,当初想定された養育行動の下位概念をおおむね独立に評価しうることが示唆された。また,これらの6因子が,子ども中心の養育行動である「肯定的養育」と親中心の養育行動である「否定的養育」の2つの二次因子によって規定されるという二次因子モデルは,専門家の分類に基づくモデルや二次因子を想定しない一次因子モデルに比べ,適合度と倹約性の観点で優れていることが示された。子どもの向社会的行動や内在化・外在化問題との関連を検討した結果,「肯定的養育」やその下位尺度は向社会的行動や外在化問題と,「否定的養育」やその下位尺度は内在化問題や外在化問題と相対的に強い相関を示すという,先行研究の知見と一致する結果が得られ,各上位尺度・下位尺度の構成概念妥当性が確認された。
  • 柳岡 開地
    2014 年 25 巻 3 号 p. 232-241
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,スクリプト(Schank & Abelson, 1977)の実行中に起こる「いつもと異なる」状況において後戻りを用いて対処することに,プラニングと実行機能がどのような影響を与えるのか検討を行った。年少から年長の幼児94名を対象として,オリジナルに作成した人形課題,プラニングを測定するケーキ課題,抑制を測定する赤/青課題,シフティングを測定するDCCSと絵画語い発達検査を実施した。人形課題では,「幼稚園服を着るスクリプト」を幼児に実際に行ってもらった後,邪魔なアイテムを脱がして,後戻りをしなければならない状況を設定した。人形課題の成績により,最短で成功した最短群,余分に手順を要したが成功した非最短群,最後まで着せられなかった群を誤答群と分類したところ,年少児では誤答群が有意に多く,年長児では最短群が有意に多かった。さらに,実行機能の下位機能であるシフティングの成績が,後戻りを実施するか,しないかを予測し,プラニングの成績がスクリプトの変更をより少ない手順で実行するかどうかを予測することが示された。これらの結果より,「いつもと同じ」状況でスクリプトを実行することはほとんどの年少児で可能であるが,「いつもと異なる」状況において後戻りを用いてスクリプトを変更することには,シフティングとプラニングがそれぞれ異なる役割をもつことが示唆された。
  • 近藤 龍彰
    2014 年 25 巻 3 号 p. 242-250
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,幼児は他者の情動を推測する際,「他者情動はわからない」ことを認識するのか,およびその認識の発達的変化を検討することであった。また,具体的に関わる人物(具体他者)と関わることのない架空の人物(一般他者)であれば,「わからない」認識に違いが見られるのかも検討した。年少児27名(平均月齢=49.81),年中児31名(平均月齢=61.45),年長児34名(平均月齢=73.74)を対象に,自分(自己),友達(具体他者),架空の人物(一般他者)の情動を,両義的状況手がかりから推測する課題を行った。その際,「わからない」ことを示す選択肢(「?」カード)を設定した。その結果,自己条件よりも他者条件で「わからない」反応が多いこと,年長児は年少児よりも「わからない」反応が多いこと,が示された。また,年長児は年中児よりも,一般他者条件において「なぜわからないのか」について言語的に理由づけできていた。このことから,「他者の情動がわからない」ということは,5,6歳ごろから認識され出すこと,具体他者と一般他者では「わからない」認識に質的な違いがあることが示唆された。
  • 田渕 恵, 三浦 麻子
    2014 年 25 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者が自分自身の経験とそこから得た知恵や知識を,次世代に伝授するという利他的行動場面において,聴き手の反応が高齢者の「語り」にどのような影響を与えるかについて,実験的に検討することであった。中高年男性34名(60歳–82歳)(平均年齢68.38±3.53歳)を対象に,知識や知恵を伝授するという「語り」場面を設定し,それに対する聴き手の反応(ポジティブ反応・非ポジティブ反応)および聴き手の世代(実験参加者と同世代の高齢者・若者世代)を厳密に操作した。実験で得られた「語り」行動の内容分析を行ったところ,分析対象となる発話から,3つの大カテゴリ(教訓・回想・期待)とそれらに属する7つの小カテゴリが抽出された。各小カテゴリについての発話人数の比率が,各実験条件下でどのように異なるかを検討した結果,聴き手が同世代の高齢者である場合よりも若者世代である場合の方が「教訓」についての発話が認められた人数比率が高く,さらに,聴き手が若者世代である場合のみ,聴き手がポジティブに反応した場合に,次世代に対する利他性をより含んだ「失敗経験からの教訓」について発話した人数比率がより高かった。
  • 島 義弘
    2014 年 25 巻 3 号 p. 260-267
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    親の養育態度は子どもの社会的適応に影響を与えている。これまでに,親の養育態度の認知が子どものアタッチメントに影響を与えること,及び子どものアタッチメントが自身の社会的適応に影響を与えることが示されていることから,本研究では親の養育態度と子どもの社会的適応の関連が内的作業モデルによって媒介されているというモデルを設定し,大学生191名を対象とした質問紙調査を行った。その結果,親のケアを低く評価しているほど内的作業モデルの“回避”が高く,親を過保護であると認知しているほど内的作業モデルの“不安”が高かった。さらに,内的作業モデルの“不安”が高いほど個人的適応の指標である自尊感情が低く,対人的適応の指標である友人関係における“傷つけられることの回避”が高かった。また,“回避”が高いほど自尊感情が低く,友人関係における“自己閉鎖”と“傷つけられることの回避”が高かった。以上のことから,親の養育態度をネガティブに評価していることが不安定な内的作業モデルにつながり,内的作業モデルが不安定であることが社会的適応を困難にするというモデルが成立することが示された。
  • 鈴木 豪
    2014 年 25 巻 3 号 p. 268-278
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,多様な考え方の共通点・相違点を考えることと,最も良い考え方を選ぶことが,小学生のデータの代表値を用いた判断を伴う課題解決に及ぼす影響の差異を検証した。本実験では,小学5年生(N=46)を対象とし面接調査を行った。実験参加者は,介入課題において多様な考え方の共通点・相違点を考える共通相違群と,最も良い考え方を選ぶ最良選択群に割り当てられ,事後課題に取り組んだ。事後課題は主に,(A)平均が妥当でないときに平均以外の代表値で判断できるか,(B)多様な代表値を用いて判断できるかを問う課題であった。対数線形モデルのあてはめによる分析の結果,課題(A)正答者では,課題(B)で自発的に複数の代表値を用いた児童が共通相違群で多く最良選択群で少なかった。また,課題(B)で自発的に複数の代表値を用いた児童の回答内容を検討したところ,平均に対する最大(小)値の影響を述べるなど,平均が常に正しいとは限らないことに言及した児童が,共通相違群で多い傾向にあった。
  • 小川 翔大
    2014 年 25 巻 3 号 p. 279-290
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究は中学生,高校生,大学生を対象に,親しい友人から受ける慰め方の違いによる,慰めの受け手に生じる感情の違いを検討した。慰め方の種類は,“励まし”,“共感”,“何もせずそっと離れる”の3つであった。調査対象者には,人間関係のトラブルで親しい友人から慰められる話を読んでもらい,それぞれの慰め方で慰められた時の感情を評定してもらった。その結果,励ましや共感は,何もせずそっと離れる場合よりも,受け手の感謝が高く,反発が低かった。この結果から,慰めをする人が親しい友人の場合,あえて何もせずにそっとしておくより,励ましや共感の言葉かけをした方が,受け手にとって効果的な慰めになることが示唆された。また,慰め方の種類ごとで,学校段階による慰められた時の感情の違いのパターンが異なっていた。励ましと共感を受けた場合では,大学生は中高生よりも感謝が低く,反発が高かった。何もせずそっと離れた場合では,高校生は中学生と大学生よりも感謝が低く,反発が高かった。各学校段階によって生じる慰められた時の感情の違いは,友人に対する期待や欲求の発達的な変化によって生じていると考察された。
  • 富田 昌平, 野山 佳那美
    2014 年 25 巻 3 号 p. 291-301
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    人間はしばしば怖いものを「怖い」と知りながらもあえて見ようとする。本研究では,怖いもの見たさの心理を,虚構と現実の区別を認識したうえで,安全な距離から怖いものと向き合い,「現実ではない」「でも,もしかしたら」と現実性の揺らぎを楽しむ遊びとして定義し,幼児期の発達においては,虚構と現実の区別の認識が獲得されるに従って,怖いものをあえて見ようとする行動をよく行うようになるのではないかとの仮説に基づき実験を行った。具体的には,保育園年少児20名,年中児33名,年長児39名に対して,動物またはお化けが描かれた「怖い」カードと「怖くない」カードを伏せた状態で提示し,どちらか1枚だけ見ることができるとしたら,どちらを見たいかを尋ねる課題(怖いカード選択課題)を行った。また,見かけ/本当の区別課題,想像/現実の区別課題も併せて行い,関連性について検討した。研究の結果,怖くないカードよりも怖いカードを見ようとする行動は加齢に伴い増加し,そうした行動は特に年長児において想像/現実の区別の認識と関連があることが示された。また,男児は女児よりも怖いものを好む傾向があることが示された。
  • 加藤 弘美, 加藤 義信, 竹内 謙彰
    2014 年 25 巻 3 号 p. 302-312
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,ビデオ映像を用いて,マークテストとリーチングテストの達成の発達的関係を調べることによって,自己とモノの映像の性質に関する理解に2~3歳児では違いがあるか否かを明らかにすることを目的とする。実験では2歳6カ月から3歳7カ月の幼児43名を対象に,まず,マークテストを実施し,その後,前方リーチングテスト(隠されたモノが子どもの前方に出現する)と,後方リーチングテスト(モノが子どもの背後に出現する)を実施した。さらに,前方と後方の両方に同時につい立てを置き,どちらか一方だけにモノを置いた場合,子どもがモノの映像だけを見て正しい位置にリーチングするかどうかを見た。その結果,(1)後方リーチングテストはマークテストより通過が困難であること,(2)後方リーチングテストは前方リーチングテストより困難であること,(3)つい立てが前後両方に現れる課題では,モノが後方に置かれる場合には,実際の場所と反対を探索する「お手つき反応」がより多く出現することが示された。この傾向は,マークテストを通過できる子どもにも同じく認められた。以上から,自己映像を対象とするマークテストに通過できた子どもでも,モノの映像の十分な理解が,とりわけ映像空間内と実空間内でのモノの位置の対応関係の理解が,必ずしも可能となっているわけではないことが示唆された。
  • 古見 文一, 小山内 秀和, 大場 有希子, 辻 えりか
    2014 年 25 巻 3 号 p. 313-322
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    年中児,年長児39名(平均年齢5歳4ヶ月,男児18名,女児21名)を対象に誤信念課題,PVT-R,ストーリーテリング課題を行った。本研究で作成されたストーリーテリング課題は,参加児が絵本の読み聞かせの動画を視聴した後に,その内容について他の参加児に説明を行うという内容であった。この時,説明を聞かせる相手が,一緒に動画を見た相手である“共同体験あり条件”と一緒に動画を見ていない相手である“共同体験なし条件”の2つの条件に分け,全ての参加児が両条件とも行った。また,事前に参加児を半数ずつ“演技群”と“統制群”に割り付け,演技群には説明の際に“先生のように説明する”ように教示した。統制群にはそのような教示は行わなかった。その結果,条件間,群間で総発話量には差がなかったが,共同体験なし条件の方が,共同体験あり条件よりも物語の登場人物の名前を説明に組み込んでいた。また,演技群の方が統制群よりも同様に物語の登場人物の名前を説明に組み込んでいた。これらの結果から,幼児は他児の知識状態,および自己の役割によって発話の質を変化させることが示唆された。
  • 小松 孝至, 紺野 智衣里
    2014 年 25 巻 3 号 p. 323-335
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,記号的媒介(semiotic mediation)の考え方から展開されたpresentational self(Komatsu, 2010, 2012)の視点から,子どもの自己をその内面にある実体ではなく,子どもの表現から観察者が感知するものとして捉え,小学校3年生が家庭で書き,それに担任教諭がコメントする形で10カ月間続けられた日記(26名・632篇)から抽出した例を用いて,子どもの自己の読み取りの可能性を論じた。まず,理論的な基礎として,表現における意味を対立的な複合体として捉え得ること,それが時間の中で変容すること,その意味構築過程から読み手に書き手(語り手)の固有の自己が意識されるとする考え方を論じた。次に,予備的な分析を行い,日記の内容や他者への言及の頻度を数量的に示した。その上で,4名の日記(計12篇)から,この年齢の特徴とされる,経験した出来事を順序に沿って書く時系列的表現を基礎にしつつ,そこから,生起した出来事の細部,自身の内面,未来や過去などへの展開がみられることが,書かれた対象との関係における個々の子どもの固有性を読み手に意識させることを例示し,その過程で子どもの周囲の他者への言及が重要性をもつ可能性を論じた。
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