発達心理学研究
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27 巻 , 4 号
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特集序文
特集
原著(依頼)
  • 河﨑 道夫
    2016 年 27 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    遊びをテーマとする発達心理学研究の一つの方法論が問題提起された。著者は,研究者が願いをもち,社会的実践に参加することによって,はじめて意味ある事実に遭遇すると考える。発達心理学の研究にあたって,研究者は,当の研究対象としての子どもや青年となんらかの形で人間関係を結び,影響を与えていることを自覚しなければならない。実践は常に地域と時代とに規定されそこで行われる。したがって問題とする研究テーマの歴史的根拠が分析されるべきである。本論では子どもの遊びの歴史と,遊びを規定する社会的歴史的条件のいくつかが論じられた。同様に,発達心理学で問題となる「発達」そのものの歴史性をとりあげ,必然的に現実の発達は,「標準」の逸脱ではなく,ローカルでユニークな性質をもつことが論じられた。

  • 川田 学, 白石 優子, 根ケ山 光一
    2016 年 27 巻 4 号 p. 276-287
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,沖縄の離島である多良間島の子守風習と保育所の歴史的関係を,アロマザリング・システム(社会化された子育てシステム)のダイナミックな変容過程においてとらえる作業を通して,人間発達研究に時代性と地域性を含むための方途を探った。第一に,沖縄地方に独特な子守である「守姉」の経験の時代推移と,村立保育所の開設契機およびその後の展開に関して,聞き取り調査に基づいて分析した。その結果,守姉は1950年前後生の世代で経験者がピークで,その後段階的に減少し,近年になってやや増加の傾向にあった。保育所の開設(1979年)は,当時の母親たちによる「教育」への期待が背景にあった可能性が示唆された。第二に,守姉と保育所を含む島の子育てのあり方に大きな影響を与えたと考えられる,ライフラインと保育・教育施設の整備,また,人口動態について,資料をもとに分析した。その結果,守姉経験のピーク時期の人口構成は,大人に対して子ども(とくに3歳未満児)が極めて多く,その後は大人増加のトレンドに転じたこと,沖縄返還(1972年)をはさんだ時代に島のライフラインと保育・教育制度が急速に整備されたこと,とくに利水環境の整備が島の子育ての変化とも関わっている可能性があることなどが推察された。最後に,多良間島という固有の地域性と時代性をもつ位置から,現在の発達心理学に内在するいくつかの前提について議論した。

  • 内藤 美加
    2016 年 27 巻 4 号 p. 288-298
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,対人理解の能力とその発達について,これまで心の理論と呼ばれてきた従来の理論を批判的に検討し,その代替となるような理論枠組みを提案する。この枠組みは従来の認知主義に対して,第1に近年活発になっている現象学的視点に基づく相互作用説に依拠しつつ対人理解を説明する。第2にこの理論枠組みでは,現象学的な相互作用説でも十分説明できない社会文化的構成としての発達の過程とその(構成物としての)結果とが区別される。そのために,まず従来の心の理論研究の認知主義的背景と理論的立場を概観する。次いで現象学的視点から見た心の理論説への批判と身体化された相互作用の中での対人認知の発達をたどり,誤信念課題の達成に関する最近の知見と議論も併せて検討する。最後に,相互作用説に基づく社会的認知の多重あるいは二重過程モデルが,現象学だけでなく心理学的な説明としても最も有力で現実的であるものの,このモデルでも対人認知の社会文化的な構成過程には十分言及されていないことを指摘する。さらに,心の理論研究が陥っていた誤謬を明らかにする。

  • 小塩 真司, 脇田 貴文, 岡田 涼, 並川 努, 茂垣 まどか
    2016 年 27 巻 4 号 p. 299-311
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    自尊感情はこれまでの心理学の歴史の中で非常に多くの研究で取り上げられてきた構成概念のひとつである。近年では,多くの研究知見を統合するメタ分析が注目を集めている。その中でも本稿では,平均値等の統計量をデータが収集された調査年ごとに統合することで,心理学概念の時代的な変化を検討する時間横断的メタ分析に注目する。小塩ほか(2014)は日本で報告されたRosenbergの自尊感情尺度の平均値に対して時間横断的メタ分析を試み,自尊感情の平均値が近年になるほど低下傾向にあることを見出した。また岡田ほか(2014)は,近年になるほど自尊感情の男女差が小さくなる可能性を報告した。本稿ではこれらの研究の背景と研究知見を紹介し,時代変化という要因を考慮に入れたうえで今後どのような研究の方向性が考えられるのかを展望した。具体的には,研究の継続性,検討する指標の多様性,行動指標への注目,関連性の変化への注目,社会状況の変化との照合という観点が提示された。

  • 田中 真理
    2016 年 27 巻 4 号 p. 312-321
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,障害者差別解消法元年(2016年)にあたるこの時代性のなかにおいて,障害への合理的配慮reasonable accommodationを支える観点として,大きくふたつの観点から論じた。第一に,状況−関係のさまざまなありようのなかで障害児に内在する多義性についてである。そのありようを個に帰属させるだけではなく,関係に帰属するというみかたでもとらえることは,障害児者の生活世界を理解していくにあたって必須の視点となってくることを示した。そして,発達障害児の自己理解研究を取り上げながら,この多義性を映し出すための発達研究の方法論的考察を行った。第二に,生活者としてのそのひと全体のありようは環境や個人特性との関係のなかで可変であることを,国際生活機能分類International Classification of Functioning, Disability and Healthにおける統合モデル(ICF統合モデル)に基づき論じた。ひとの発達を生物学的な固有の側面だけではなく,時代性地域性等の社会によって規定される側面の両方から理解していくなかでこそ,真の合理的配慮が遂行できることを考察した。障害児支援を考えるためには,これらふたつの観点から,時間や歴史性,地域空間的な文脈の具体性,固有で特殊ななかでの意味の解釈を問うことを可能にするモノサシの存在が不可欠であることを示した。

  • 熊谷 晋一郎
    2016 年 27 巻 4 号 p. 322-334
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症の疫学研究や歴史社会学的研究をふまえると,診断基準の中にある社会的コミュニケーション・相互作用という概念が,本来,地域性や時代性に応じて揺れ動くinter-personalな現象を,永続的でintra-personalな現象に誤認させ得ることが示唆される。社会関係以前に存在する個体側の永続的な身体特徴は,自閉スペクトラム症といっても個々人で多様である可能性が高いため,ケースごとに個体の不変項を抽出する必要がある。そうした目的の下,我々は自閉スペクトラム症の診断を持つ綾屋と8年にわたる当事者研究を行ってきた。その結果,1)内臓感覚に由来する長期的目的の下で,行動を制御したり,記憶の取捨選択やsystem consolidationを遂行することの困難や,2)外受容感覚と統合されずに強度を増した内臓感覚によって,自他感情の認知や内発的意図を構築することの困難,感覚過敏や鈍麻,予測誤差への敏感さなどが生じている可能性が示唆された。当事者研究は,多様なimpairmentを記述するディメンジョンの候補を提起するという学術的な意義だけでなく,自分の通状況的な不変項を自ら把握することで本人のウェル・ビーイングに貢献する可能性がある。

  • 乾 彰夫
    2016 年 27 巻 4 号 p. 335-345
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本論は,若者の移行研究の立場からの,発達心理学研究への若干の問題提起と問いを意図している。欧米でも日本でも,若者の大人への移行の期間は近年,安定した就労,離家,結婚など主要な指標に照らして長期化した。こうした変化に応ずる形で,欧米においては,例えばアーネットの主張するemerging adulthoodのように,この延長された期間をとらえるための新たな理論が提起され,またそれらの是非をめぐる激しい論争が展開されている。とくに重要な争点は,emerging adulthoodが先進国における新たな普遍的発達段階といえるか否かということである。アーネットはその普遍性を主張するが,他の研究者からは,これはもっぱら大学進学が可能なミドルクラスの若者にのみあてはまるもので,低階層の若者たちの経験が無視されているとの批判を受けている。日本の発達心理学には青年期を対象とした研究は少なからずあるとはいえ,移行の長期化に注目した研究は未だそれほど多くない。さらに,青年期研究のほとんどが高等教育機関に在籍する学生やその卒業生を対象としていることも,重大な問題であるように思われる。大学等に進学しないような若者たちは日本の発達心理学には存在しないのだろうか。

  • 岡田 努
    2016 年 27 巻 4 号 p. 346-356
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究は青年期の友人関係の現代的特徴について検討を行ったものである。研究1では,青年の友人関係に変遷が見られるかどうかについて,1989年から2010年にかけて実施された調査に基づいて検討した。各研究で共通する項目についての項目得点の平均値を比較した結果,明確な変容は確認されなかった。青年全体の特徴についで,研究2では,青年の現代的特質についての個人差について検討した。青年の対人的な敏感さを示す現象として注目される「ランチメイト症候群」傾向について,同じく現代的な対人不適応の型とされる「ふれ合い恐怖的心性」を取り上げ,これと友人関係,自己意識,および自己愛傾向との関連について比較を行った。その結果,ランチメイト症候群傾向が高い者ほど過敏性自己愛が高い傾向が見られた。またふれ合い恐怖的心性が高い者は友人関係から退却することで不安から逃れ安定する傾向が見られるのに対して,ランチメイト症候群傾向を示す者は他者の視線を気にすることで,不安定な状態にとどまることが示された。青年の全体像だけではなく,差異にも注目することが,発達心理学が青年期の時代的な姿を明らかにする上で有効であろう。それとともに,その発生のメカニズムについて明らかにすることが必要となるだろう。

  • 柴山 真琴, ビアルケ(當山) 千咲, 高橋 登, 池上 摩希子
    2016 年 27 巻 4 号 p. 357-367
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,国際結婚家族の子どもが二言語で同時に読み書き力を習得するという事態を,個人の国境を越えた移動に伴う国際結婚の増加というグローバル化時代の一側面として捉え,こうした時代性と子どもの言語習得とのインターフェースでどのような家族内実践が行われているのかを,ドイツ居住の独日国際家族の事例に基づいて紹介した。特に子どもの日本語の読み書き力形成にかかわる家族内実践にみられる特徴として,(1)現地の学校制度的・言語環境的要因に規定されつつも,利用可能な資源を活用しながら,親による環境構成と学習支援が継続的に行われていること,(2)家族が直面する危機的状態は,子どもの加齢とともに家庭の内側から生じているだけでなく,家庭と現地校・補習校との関係の軋みからも生じているが,家族間協働により危機が乗り越えられていること,が挙げられた。ここから,今後の言語発達研究に対する示唆として,(1)日本語学習児の広がりと多様性を視野に入れること,(2)子どもの日本語習得過程を読み書きスキルの獲得に限局せずに長期的・包括的に捉えること,(3)子どもが日本語の読み書きに習熟していく過程を日常実践に埋め込まれた協働的過程として捉え直すこと,の3点が引き出された。

原著(公募)
  • 坂上 裕子, 金丸 智美, 武田(六角) 洋子
    2016 年 27 巻 4 号 p. 368-378
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,幼児期前半における自己の発達の遅延を示唆する証左が近年提出されていることに鑑み,2歳代の自己の発達の一指標として従順行動,不従順行動を取り上げ,その経年変化を検討した。2004・2005年度(I期)の2歳児111名,2010・2011年度(II期)の2歳児95名を対象に,母子での自由遊び後の玩具の片付け場面における行動を観察し,分析を行った。その結果,片付けを要請したストレンジャーに対して拒否を示した子どもの割合は,I期よりもII期において低かった。また,母子での片付け場面では,II期の子どもの方が母親に対して従順な行動をより多く示し,反抗や拒否を示した子どもの割合は,I期よりもII期で低かった。これより,自己と他者の意図の違いを意識化し,自身の意志を明示するという点において,最近の幼児の自己の発達には遅延が生じている可能性があることが示唆された。子どもの従順行動,不従順行動の経年変化の背景には,自己の発達を支える子どもの他の行動面での変化や親の対応の変化,親子を取り巻く環境の急速な変化がある可能性を指摘し,考察を行った。

  • 川本 哲也, 遠藤 利彦
    2016 年 27 巻 4 号 p. 379-394
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,東京大学教育学部附属中等教育学校で収集されたアーカイブデータを縦断的研究の観点から二次分析し,青年期の健康関連体力の発達とその年次推移を検討することであった。健康関連体力の指標として,スポーツテストの持久走と握力の結果を用いた。分析対象者は,持久走については附属学校に1968年から2001年までに入学し,持久走のタイム計測を1回以上受けているもの3,763名(男子1,893名,女子1,870名),握力については附属学校に1968年から1987年までに入学し,握力の計測を1回以上受けているもの2,137名(男子1,065名,女子1,072名)であった。潜在成長曲線モデルを用いた共分散構造分析の結果,男子では持久走,握力ともに青年期を通じてパフォーマンスが向上していくことが示された。一方,女子では持久走のタイムは青年期を通じて大きく変化せず,握力は青年期の前半に少し大きくなった後に横ばいになることが示された。また,持久走のタイムや握力の発達軌跡が出生年度によってどのように変化してきているのかを併せて検討したところ,持久走のタイムは男女ともに出生年度が遅いほどタイムも遅くなってきていることが示された。また握力については,男子は出生年度が遅いほどパフォーマンスが向上してきているが,女子では若干の低下が見られることが示唆された。

原著
  • 村山 恭朗, 伊藤 大幸, 大嶽 さと子, 片桐 正敏, 浜田 恵, 中島 俊思, 上宮 愛, 野村 和代, 高柳 伸哉, 明翫 光宜, 辻 ...
    2016 年 27 巻 4 号 p. 395-407
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    ソーシャルサポートは児童生徒のメンタルヘルスを維持する要因の一つと指摘されている。本研究は,一市内の全小中学校の高学年児童(4~6年生)と中学生(n=5,223)を対象として,メンタルヘルス問題(抑うつ症状と攻撃性)に対するソーシャルサポートの横断的効果を検証した。属性(性別と学年)およびストレッサーを統制した一般線形モデルによる分析の結果,友人および大人からのソーシャルサポートを知覚する児童生徒ほど抑うつ症状が低いことが示された。また男子よりも女子でサポートと抑うつ症状の関連が強かった。攻撃性については,友人からのサポートは負の効果を示したが,その効果は非常に低いものであった。大人からのサポートは攻撃性に有意な効果を示さなかった。ソーシャルサポートの性差を検証したところ,いずれのソーシャルサポートも女子で高かった。学年の影響については,学年の上昇に伴って,友人からのサポートは増大する一方で,大人からのサポートは減少することが示された。

  • 吉住 隆弘
    2016 年 27 巻 4 号 p. 408-417
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    我が国では生活困窮世帯の増加とともに,子どもの貧困問題に注目が集まっている。経済的問題は単なる生活環境への影響に止まらず,他者との社会関係にも影響を及ぼしうる。本研究の目的は,生活困窮世帯の子どもの社会関係に着目し,その機能的側面の特徴をソーシャルサポートの観点から明らかにすることであった。生活保護世帯の子どもを対象とした学習支援に参加する中学生132名および一般世帯の中学生256名に対し,ソーシャルサポートおよびQuality of Life(QOL)の質問紙を実施した。親,学校の先生,そして友だちからのサポートを所属世帯間で比較した結果,生活困窮世帯の中学生は一般世帯の中学生と比較して先生サポートが少ないことが明らかとなった。また一般世帯の中学生では,親,先生,友だちサポートすべてがQOLと関連したのに対し,生活困窮世帯の中学生では,QOLと関連したサポートは主に友だちサポートであり,先生サポートはQOLと関連しなかった。本研究の結果から,生活困窮世帯の子どもへの学校におけるサポートが必要とされていることが示された。

  • 五位塚 和也
    2016 年 27 巻 4 号 p. 418-428
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,先行する場面における他者の好意の明示性の有無が曖昧な挑発場面における児童の社会的情報処理様式に及ぼす影響について発達的に検討することであった。小学4年生から6年生までの男女計283名に対して調査を行い,247名を分析対象とした。社会的情報処理の各変数間の因果関係について検討するために共分散構造分析を行った。その結果,他者の好意が明示される条件と明示されない条件の両方に共通して,敵意帰属が友好的目標設定を媒介し,攻撃的行動と抑制的な応答行動の選択に影響を与えるプロセスが示された。また,他者の好意の明示性の有無と対象児の年齢,性別が社会的情報処理の各変数にどのような影響を及ぼしているかを検討するために三要因分散分析を行った。その結果,(1)先行場面において他者の好意が明示された場合,年齢群にかかわらず,敵意帰属と言語的攻撃は減り,非敵意的帰属と友好的目標設定は高まることが示された。(2)高学年になるほど友好的目標設定は低く,攻撃的行動が選択されやすくなることが示された。(3)特に敵意帰属傾向は,他者の好意が明示されている条件において,5年生は6年生よりも敵意帰属を行いやすいことが示された。以上の結果より,児童期では学年が上がるにつれて否定的な社会的情報処理様式を示しやすい一方で,他者から好意を明示される経験によって否定的な社会的情報処理様式が緩和される可能性が示唆された。

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