発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
28 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 今岡 多恵, 庄司 一子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 123-132
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,罪悪感の機能に焦点をあて,中学生の学校生活における罪悪感の程度と学校適応感との関連について明らかにすることを目的とした。まず研究1では,中学生における罪悪感機能尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した。因子分析の結果,罪悪感機能には“自己改善”,“自省”,“ネガティブ感情喚起”,“他者配慮”の四つの機能が存在することが明らかになった。研究2では,罪悪感機能と中学生の学校生活における罪悪感の程度,学校適応感の関連について検討を行った。その際,中学生の学校生活における罪悪感の程度は罪悪感機能の先行要因となり,また,罪悪感機能は学校適応感に影響を及ぼすという仮説を立てて検討を行った。その結果,中学生の学校生活における罪悪感の程度は罪悪感機能に正の影響を及ぼし,罪悪感機能の“自己改善”,“自省”,“他者配慮”は学校適応感に正の影響を及ぼした。その一方で,罪悪感機能の“ネガティブ感情喚起”は学校適応感に負の影響を及ぼした。これらの結果から,中学生の罪悪感機能の違いが学校適応に異なる影響をもたらすことが示唆された。

  • 本島 優子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 133-142
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,母親の情動認知と乳児のアタッチメントとの関連性に着目し,母親の敏感性を統制したうえで,母親の情動認知が乳児のアタッチメント安定性を独自に予測するかについて,縦断データを用いて実証的検討を行った。生後2ヵ月に日本版IFEEL Picturesを用いて母親の情動認知を測定し,また母子相互作用場面における母親の敏感性について測定した。そして,生後18ヵ月に家庭での観察に基づき,アタッチメントQ.ソート法を用いて乳児のアタッチメント安定性の評定を行った。階層的重回帰分析の結果,生後2ヵ月にIFEEL Picturesを用いて評定された母親の情動認知の特性が,母親の敏感性とは独立して,生後18ヵ月の乳児のアタッチメント安定性を予測したことが認められた。すなわち,乳児表情写真において喜びや悲しみの情動をより的確に認知していた母親の乳児ほど,後のアタッチメント安定性がより高かったのである。母親の情動認知の特性が乳児のアタッチメント形成に一定の役割を果たしていることが示唆された。

  • 石橋 優美
    2017 年 28 巻 3 号 p. 143-153
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,児童の因果的説明に着目することで,地理学的事象に関する理解は学年とともにどのように発達するのかを検討した。公立小学校3年生25名,5年生26名に対する個別実験において,3つの産業(畜産農業,耕種農業,飲食サービス業)が,特定の地域で盛んな理由を,それぞれ絵カードを提示しながら尋ねた。さらに補足の質問として,児童が回答した内容の因果関係をつなぐ要因を尋ねることに加えて,「児童が回答した要因だけで当該事象を説明できるか」を問うことで児童が回答した要因とは別の要因への着目を促した。児童の回答内容を分析した結果,(1)学年間の変化として,3年生から5年生にかけて社会的条件に着目した説明と経済的条件に着目した説明が増加する一方で,準自然的条件に着目した説明と人道的条件に着目した説明が減少したこと,(2)産業に応じた説明の選択に関しては,3年生から自然的条件に着目した説明を畜産農業と耕種農業に利用できる一方で,社会的条件に着目した説明を飲食サービス業に対して利用したのは5年生であったこと,(3)補足の質問の有効性については,5年生かつ補足の質問の前に少なくとも一つの地理学的条件に着目した説明を行った児童において,地理学的条件に着目した説明の増加がみられたこと,以上の3点が示された。

  • 江上 園子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 154-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,キャリア女性の出産前後にわたる「母性愛」信奉傾向の変化を量的・質的に分析・検討したものである。具体的には,研究Iでは先行研究の1,260名のデータを用いて「母性愛」信奉傾向が「女性による子育ての正当化」と「母親の愛情の神聖視」の二次元に分類される可能性を確認的因子分析にて検証し,研究IIでは初産女性10名と経産女性10名を対象にしてそれぞれの因子得点の出産前後での変化の有無と女性たちが語る内容の変容をテーマティック・アナリシスにより探ることとした。結果として,初産の女性においては産後に「母親の愛情の神聖視」得点が上昇するが,経産の女性に関しては産前産後の得点変化が見られなかった。同様に,初産の女性では産後に「母親の愛情の神聖視」にかかわる肯定的な内容が多く語られたが,経産の女性ではそのような変化も見られなかった。また,初産女性の産前産後の変容の背景には①「母性愛」信奉傾向に対する印象の変化や②母親としての自分の評価や③自分のキャリアの再定義という大きな3つのテーマが関連していることが示唆された。

feedback
Top