運動障害を主症状とする脳性まひのある子どもたちに対するリハビリテーションは,1950年代に台頭してきた神経発達学的アプローチを中心に学習理論等の影響を大きく受けて展開されてきたが,2001年に国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF)が世界保健機関(WHO)で採択されて以降,世界の小児リハビリテーションの流れは徐々に変化してきている。しかし,わが国では旧態依然とした方法論に基づくリハビリテーションからの脱却に苦悩している現状がある。本稿では,環境(人を含む)支援の視座から日常の臨床を再考するとともに,子どもたちの障害や運動をどのように理解すべきかを述べ,子どもたちが環境世界とよりよく出会うために現代の理学療法が取り組んでいる環境適応,姿勢制御,移動経験への支援の実際を紹介する。とりわけ,重力と折り合いつつ移動経験を積んでいくことの心身への発達的意義を指摘し,幼児期早期からの電動車椅子導入を推進するための制度整備の必要性を議論する。
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