日本の発達研究の国際化と国際貢献については,以前からの課題であった。本研究では,2017年度発達心理学会で開催された3つのシンポジウム「海外情報発信の飛躍」;「日本発信の可能性」;「発達心理学を世界に発信する―若手研究者の挑戦」の内容を踏まえ,発達研究の海外発信について,以下の3つの観点から考察する。
第一の観点では,海外発信と「発達研究の文化依存性」について,発達研究の欧米(特に英語圏)からのパラダイムの輸入,研究と学位システムの制度化,国際比較研究の意義(意味ある国際比較とは)から考察する。第二の観点では,発達研究の「日本発海外発信の現状と学問的動向」について,近年の多様な分野の研究者による質の高い発達研究の事例を基に研究の学際化・細分化・国際化を考える。第三の観点は,今後の「さらなる躍進」のために,発達心理学会と学会誌「発達心理学研究」の役割と可能性を検討し,国際化への研究者支援として何が可能かを考えてみたい。最後に,海外発信を目指す研究者が見落としがちな研究の根底にあるべきものについて触れたい。
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