発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
30 巻 , 2 号
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原著
  • 廣澤 愛子, 武澤 友広, 織田 安沙美, 鈴木 静香, 小越 咲子
    2019 年 30 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,9歳から11歳の知的障害のない自閉スペクトラム症の児童6名,支援者6名,参与観察者3名による療育活動の参与観察分析を通して,児童の社会性の発達と,それに伴う支援者の係わりを明らかにした。児童と支援者の相互作用を量的・質的に分析した結果,どの児童に対しても支援者は,活動前半には,共感的に児童の言動に耳を傾けたり,逆に自分の意見を伝えたりしながら関係作りを行い,さらに,児童同士が係われるよう仲介していた。そして活動後半には,誤りを指摘したり,児童の思いを明確化するなどして各児童の発達課題にアプローチし,さらに,児童ら自身で協働活動が行えるよう支援していた。

    一方,児童の社会性については,全児童において,活動終盤には自他境界を意識した言動もしくは他児との協働活動の増加が見られ,社会性に係わる言動の増加が見られた。但し,そのプロセスについては,「自己中心から他者理解へ」「集団の辺縁から集団の中心へ」「孤立から他者との関係性の芽生えへ」の3つに類型化され,個別性が見られた。今後は,このような社会性の発達と密接に係わる自他理解の発達過程が,自閉スペクトラム症の子どもと定型発達の子どもとの間でどのように異なるのかを明らかにすることが課題である。

  • 千島 雄太, 茂呂 輝夫
    2019 年 30 巻 2 号 p. 74-85
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,小学6年生を対象とした小中連携による集団宿泊活動が,中学校生活への期待と不安に及ぼす効果について明らかにすることであった。集団宿泊活動では,同じ中学校に入学予定であり,現在は異なる小学校に通う6年生がコミュニケーションワーク等で交流を行うとともに,中学校教師による出前授業を受けた。予備調査では,中学校生活への期待と不安を測定するための尺度を作成するため,小学6年生180名を対象に質問紙調査が行われた。因子分析の結果,学業と友人関係の領域で,それぞれ期待と不安を測定する4因子モデルが採用された。また,信頼性と妥当性についても検証が行われ,十分な結果が得られた。本調査では,予備調査で作成された尺度を用いて,小学6年生155名を対象に,集団宿泊活動の効果測定が行われた。調査時期は,集団宿泊活動1週間前のpre,直後のpost,約3ヵ月後のfollow-upの3回であった。分析の結果,小学校における別室登校を希望する不登校傾向が高い児童において,集団宿泊活動の後に中学校での友人関係への期待が高まっており,その効果は,3ヵ月後のfollow-upでも持続していた。

  • 直原 康光, 安藤 智子
    2019 年 30 巻 2 号 p. 86-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,父母の別居・離婚後に子どもが体験した父母葛藤と父母協力の実態を明らかにすることであった。5歳から15歳までに父母が別居又は離婚した10代後半から40代前半までの男女14名に半構造化面接を行い,語りの内容を分類した結果,別居・離婚後の父母葛藤には,「他方親否定」,「板ばさみ」,「父母間の葛藤」が含まれ,父母協力には,「経済的支援の面での協力」,「別居親との交流のサポート」,「最低限の父母の信頼関係」が含まれていた。父母葛藤及び父母協力に加え,別居親との交流等をカテゴリー変数に変換し,コレスポンデンス分析等で類型化したところ,「父母協力・交流安定群」,「板ばさみ・交流不安定群」,「他方親否定・交流なし群」の3つに分類された。「父母協力・交流安定群」では,離婚を乗り切る上で友人等が支えになったことや,父母が離婚してほしくなかったと感じつつ,離婚は仕方がなかったと両価的な思いを語った者が多かった。「板ばさみ・交流不安定群」では,父母間の葛藤が高く家庭外の大人を頼りにして乗り切った者が多く,「他方親否定・交流なし群」では,直接の父母間の葛藤には晒されていないものの,別居親を否定される体験を積み重ね,周囲の大人や友人を支えに感じていた者が少なかった。後の2群では,多くの者が自分自身に否定的な影響があったと感じていた一方で,父母の離婚については肯定的に捉えている者が多かった。

  • 楠見 友輔
    2019 年 30 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,社会文化的アプローチの観点から中度知的障害生徒の学習過程と,学習を促す教師のフィードバックの特徴を明らかにすることである。1名の中度知的障害生徒を対象とし,知的障害特別支援学校における7日間の数学の授業をビデオカメラで記録し,示された商品の「ちょっと上」の硬貨でお金の支払いをする課題における教師と生徒の相互行為を分析した。結果として,対象生徒は授業開始時には失敗を避けるために教師の表情をうかがったり友達の答えを模倣したりする行為を多く行っていたが,教師による生徒の学習意欲を維持しながら自分で考えることを促すフィードバックが,それらの行為を自分で考えて課題を解決する行為に変える機能を有していたことが明らかになった。対象生徒の学習については以下の2つの特徴が明らかになった。第一に,授業の開始から対象生徒が自分で考えて課題に取り組むようになるまでと,考えた行為が正答に結びつくまでに2つのタイムラグがみられた。第二に,学習の成果は環境的・心理的な要因とメタ認知機能の制約によって完全な理解としては現れなかったが,対象生徒が考えて課題に取り組むという正答可能性の向上として現れた。これらの結果は,知的障害生徒の主体性に基づく学習においては,生徒の学習を長期的な視点から支援し,正答率にではなく正答可能性の向上に着目して評価するという学習過程に注目する視点が重要であることを示唆している。

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