発達心理学研究
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7 巻, 2 号
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  • 綿巻 徹, 西村 辨作, 佐藤 真由美, 新美 明夫
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 107-118
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    ダウン症児における呼称発達の個人差と共通性を明らかにするために, 対象物名の理解と産出, 音声模倣の発達経過を3歳から6歳まで3か月毎に観察した。あわせて発達年齢(DA)の推移を津守式発達質問紙で評価し, 後年, 学童期のIQを評価した。トリソミー21型の児9名と転座モザイク型の児1名の縦断資料を検討した。呼称発達の経過には, 理解産出連関型, 理解産出分離型, 非名称型, 未萌芽無発語型の4主要類型があった。調査した語に関して理解語数が3語を超えた時点のDAは, 語理解発達が早い児と遅い児で異なっていた。語理解発達の早い児, つまり3歳末までに理解語数が3語を超えた児はDAが平均21か月だった。4歳以後に遅れた児はDAが36か月以上で, 語理解発達がDAから期待されるよりも遅かった。後者の児は学童期のIQが低かった。音声模倣や感覚運動語を含む調音発声が6歳末までに顕在化し充実しなかった2名は学童期も無発語に留まっていた。話しことば産出の獲得の臨界期が6歳末で終わることが示唆された。一部の児では話しことばの基底にある聴覚言語理解と調音発声が異なるタイミングで独立に発達していた。聴覚言語理解発達は知的機能に連関するが, 調音発声発達は聴覚言語理解ほど知的機能に連関していなかった。そのために生じる調音発声と聴覚言語理解の発達タイミングのずれがダウン症児の呼称発達に異なる類型を生じさせていることが論じられた。
  • 中村 浩
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は, 幼児の因果関係知覚とその出現における触運動的経験の役割を明らかにすることを目的として, パソコンのモニター上に提示された対象の動きを自ら操作するという経験が幼児の因果関係知覚に対してどのような影響を与えるかを調べた。4歳〜6歳の保育園児100名に, モニター上を水平に移動する対象をキー押しによって停止させるという練習課題を与えたところ, 練習前に比べて練習後の因果関係知覚出現率が上昇した。それに対して, 因果刺激を繰り返し観察した43名の保育園児においては, 刺激に対する知覚内容に変化は生じなかった。この結果から, 幼児の因果関係知覚が触運動的経験と密接に関連していることが明らかとなった。また, この結果について, モニター上の対象に操作可能性というアフォーダンスを発見することによって新たな知覚一運動作業空間(Newell, 1986)が形成され, その作業空間に因果刺激が取り込まれて, この刺激事象における不変項である2物体間の力学的作用が知覚され易くなったという解釈を試みた。
  • 別府 哲
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 128-137
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ジョイントアテンション行動としでの後方向の指さし理解における, 自閉症児の障害を検討することである。その際, 指さしと言う行動が, 指さすものと指さされるものの関係の理解を必要とする行動であり, しかも対象を相手と共有する目的で行う行動でもあるという, 2つの能力を必要とする行動と捉える。前者の能力を調べるため, 後方向の指さし理解課題を用い, 後者の被験者が対象を相手と共有したい要求をもてる文脈を形成するために, 自閉症児も興味をもちやすいシャボン玉を指さしの対象とした。実験は, 5カ月から1歳8カ月迄の健常乳児53名, 実験では就学前の通園施設に通う自閉症鬼23名を, 各々被験者として行い, 比較検討した。その結果, (1)自閉症児も健常乳児と同様, 一定の発達年齢(1歳1カ月)以上では, 後方向の指さし理解が可能となること, (2)しかし健常乳児では同時期に, 後方向の指さしに振り返った後, 指さしや発声を伴って再び大人を見て注意を共有したことを確認する共有確認行動が半数近くの被験者に出現するのに対し, 自閉症児ではそれがほとんどみられない, という特徴が示された。自閉症児が, ジョイントアテンション行動としての指さし理解に障害を持つという結果を, 他者認識との関連で考察した。
  • 田村 隆宏
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 138-147
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    新奇語命名課題(Callanan, 1989)を用いた本研究で, 大人がある対象に新奇語を命名する状況, 及び子どもがそれを解釈する状況に関わる3つの要因, すなわち, (1)標本事例の数, (2)判断事例の概念水準, (3)判断事例の提示方法の効果を検討した。被験者は4〜5歳児120名であった。結果については, 1つの標本事例に新奇語が命名された場合, 被験者は新奇語を判断事例の最も低い概念水準の名称として解釈しやすく, その解釈は複数の判断事例が同時に提示された場合に容易になされた。2つの標本事例に新奇語が命名された場合, 被験者は新奇語をその2つの事例が含まれる概念水準の名称として解釈しやすかった。これらの結果は, 4〜5歳児の語意味の獲得において, 大人がある対象に新しい語を命名する際の状況や子どもが語を解釈する際の状況が重要な役割を果たしていることを示唆している。
  • 井上 (中村)徳子, 外岡 利佳子, 松沢 哲郎
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 148-158
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    西アフリカ, ギニアのボッソウにおいて継続研究されている野生チンパンジーの道具使用行動の形成過程について検討した。1990年から設置されている野外実験場では, おもにチンパンジーのヤシの種子割り行動に関する直接観察およびピデオカメラによる録画がおこなわれてきた。本稿では, 1992年度と1993年度におこなった2回の調査で録画したピデオテープ資料をもとに, とくにチンパンジー乳幼児6個体(0歳以上3歳未満)におけるヤシの種子割り行動の発達過程を分析した。逐次記録法により, 各個体にみられるヤシの種子割りに関連する行動すべてをリストアップし, 全部で計310の行動事例からなる行動目録を作成した。この行動目録を(1)種を扱う行動, (2)石を扱う行動, (3)種と石の両方を扱う行動, (4)他個体に関わりつつ種や石を扱う行動, (5)ヤシの種子割りをする他個体に関わる行動, という5つの行動カテゴリーに分類した。さらに各行動カテゴリー内の行動事例を, 操作の方向・段階・複雑性などに着目して, 2〜4つのサブカテゴリーに分類した。こうした行動カテゴリーないしサブカテゴリーに属する行動事例の相対頻度を年齢群ごとに比較したところ, 加齢とともに, (1) 種と石の両方を扱う行動が増加する, (2)種や石に関する2種類以上の操作を連鎖する行動が増加する, (3) 種や石を同時並行に操作する行動が増加する, (4) 他個体の扱う種や石に対して働きかける行動が増加する, (5)他個体に接触しないで観察する行動が増加する, ことなどが明らかになった。チンパンジー乳幼児がヤシの種子割り行動を形成するには, エミュレーションによって自らの試行錯誤を繰り返しながら, これらの柔件を満たすことが必要であると示唆された。
  • 園田 菜摘, 無藤 隆
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 159-169
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 51組の2, 3歳児とその母親の内的状態への言及について, 場面差と母親の個人差による検討を行った。各家庭で, ごっこ遊び, 本読み, 食事の3場面での母子相互作用の観察を行い, インタピューと質問紙で母親の個人差を測定した。その結果, 内的状態への言及にはかなりの場面差があることが示された。ごっこ遊びは母親が感情状態に言及しやすく, 本読みは母子ともに思考状態に言及しやすく, 食事は母親が欲求に言及しやすい場面であることが明らかになった。また母親の個人差についても, 母親には内的状態への言及しやすさという個人差があり, その個人差は子どもとの相互作用においても反映することが示された。さらに, 内的状態に言及しやすい母親の子どもは内的状態に言及しやすい, という子どもへの影響も見られた。このことから, 子どもが内的状態への理解を発達させていく目常生活の中で, どのような場面を経験し, どのような個人差を持つ母親と相互作用をしているのか, ということを考慮に入れる重要性が示唆された。
  • 安藤 寿康
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 170-179
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    発達心理学では, 家庭環境の影響を示すために, 親の与える家庭環境の指標と子どもの行動指標との相関を用いる。しかしそこには遺伝的影響が関与している可能性がある。本研究では秋田(1992)が行った「子どもの読書行動に及ぼす家庭環境の影響に関する研究」に対して, 行動遺伝学的視点から批判的追試を行った。小学6年生の30組の一卵性双生児ならびに20組の二卵性双生児が, その親とともに読書に関連する家庭環境に関する質問紙に回答した。子どもはさらに読書行動に対する関与度についても評定が求められた。親の認知する家庭環境の諸側面は子の認知するそれと中程度の相関を示した。図書館・本屋に連れて行ったり読み聞かせをするなど, 親が直接に子どもに与える環境を子が認知する仕方には, 遺伝的影響がみられた。また子どもの読書量についても遺伝的影響が示唆された。だが子どもの読書に対する好意度には, 遺伝的影響ではなく, 親の認知する蔵書量が影響を及ぼしていた。
  • 佐々木 正晴
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 180-189
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    開眼手術後の, 形を捉える視・運動系活動とそれを支える内的システムについて, その触・運動系活動との関連において, 開眼者の言語報告を組織的に取り出す方法を主軸に検討した。本稿に登場する開眼者SMは, 先天性白内障のために両眼とも失明し, 2歳のときに左眼の眼球摘出手術を, 12歳のときに右眼の水晶体摘出手術を受けた。この有眼手術から19年後, 実験が始まり, このとき, 手で触れば即座に同定し得る形でも眼で見てはその識別が困難な状況にあった。その後, SMは, 頭部の運動あるいは図形対象そのものの移動を介した視点の動きによって形の属性を取り出すようになり, 形の識別は成立の兆しをみせた。この時期, SMが内的に保持しているシステムに関する言語報告を組織的に取り出すと, 視・運動系と触・運動系の2つの系に各々依拠する別種の形態像が保持されていることが見出された。すなわち, 触・運動系においては形の全体的な形態像が保持され, 一方, 視・運動系では形を捉える際の頭部の動きとその動きによって取り出された形の属性が同時に言語化されて保持されていた。そして, SMが眼前の形を見てその形態名を判断するまでには, 眼で敢り出した形の属性を内的に保有する知識と比較照合する過程が存在した。この過程は, 形を捉える際の所要時間として現れ, 内的に比較照含する個数が少なくなる弁別事態ではその所要時間は短くなった。
  • 豊田 秀樹
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 190-191
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 大野 久
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 柴崎 正行
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 2 号 p. 193-195
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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