発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
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7 巻, 1 号
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  • 石崎 理恵
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は, 絵本を媒介とした母親と子どもの対話を縦断的に分析することによって, (1)フォーマットはどのように形成されて, 変化するのか (2)フオーマットの使用に第一子と第二子の個人差はあるのかについて調べることを目的とした。第一子は8カ月から3歳0カ月まで, 第二子は1歳0カ月から3歳0カ月まで観察した。その結果次のことが明らかになった。(1)フオーマットの獲得は, 形成期(母親が主導する), 習得期(子どもが参加する), 使用期(母親と子どもが役割交替をする)へと進むが, 2歳台では文化差の存在が示唆された。 (2)第一子と第二子に対して使用されるフォーマットには違いがみられた。第一子との対話には質問反応型が多く, 第二子との対話には情報提供型が多く使用された。その要因として, 第一子と第二子に対する母親の子育て観の違い, 第二子と母親の対話への第一子の同席状況, 子どもの言語習得スタイルなどが考えられた。
  • 古屋 喜美代
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    子どもは文字を読み始める前から, 自分で絵本を開き, 絵を見てその内容を言語で表現し始める。この初期の絵本読み場面について, 1事例について2歳から4歳まで縦断的に約月1回資料を収集し, 以下の点について検討を加えた。第1点は, 「語り」についての子どもの認識の発達であり, 第2点は, 子どもがどのように登場人物とかかわっているかである。この2点から, 絵を見て絵本を読む時期には次の4つの発達的段階が見いだされた。任)絵本を「読む役割」に興味をもって, 絵を見て物語の内容を表現し始める。他者に向けて言語化するという意識は弱い。(2)セリフと母親に直接語りかけるような話し言葉的ナレーションで物語を表現し, 始まりと終わりを宣言する必要を理解している。ここまでの段階では, 子どもは物語の中に引き込まれた発話をすることがあり, 物語世界の外にいる自分を登場人物と対立的に意識してとらえてはいないと考えられる。(3)子どもは絵本の登場人物に対する自分自身の思いを, 感想や疑問として表現する。このことは, 子どもが物語世界の外にいる「読者」としての自己の立場を認識していることを示唆する。(4)セリフと書き言葉的ナレーションで表現する。子どもは作者の語り口をとる「語り手」としての自己を意識し, その語り口を保持する。
  • 高井 直美, 高井 弘弥
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 生後2年日の1人の子どもが, 日常生活において身ぶり動作と音声言語を発達させる過程を, 詳しく観察した。そして, 初期シンボル形成における身ぶり動作の意義と, その消失の理由を明らかにしようと試みた。その結果, 1歳3カ月半ばを境にして, 身ぶり動作の質的な変化が観察された。前期では, 対象の名前を表す身ぶり動作が多く出現したが, 後期では, 対象の状態や動作を表す身ぶり動作のみが出現した。また, これらの対象の状態や動作を表す身ぶり動作では, 後期には, 音声言語を伴って出現する傾向が見られた。さらに, 後期にはもとの状況から離れた状況でいくつかの身ぶり動作が使用されていることが観察されたが, その場合も音声言語を伴うようになっており, このことから, 脱文脈化の過程と音声言語の出現との間に何らかの関係があることが示唆される。対象の状態や動作を表現するもののうちのいくつかでは, 最初は身ぶり動作のみで表現していたものが, 多語発話になることをきっかけに, 身ぶり動作を伴わずに音声言語のみで表現するようになってきた。このことから, 身ぶり動作が消えていくにつれて, 音声言語での文構造が発達している様子が窺える。
  • 数井 みゆき, 無藤 隆, 園田 菜摘
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 子どもの発達を家族システム的に検討することである。家族システムの3変数として, 子どもの愛着, 母親の認知する夫婦関係, 母親の育児ストレスをとりあげている。対象者は, 48組の母子で, 子どもの平均年齢は3.4歳であった。子の愛着の安定性には, 夫婦関係の調和性と親役割からのストレスとが関連していた。特にこの2つの変数の交互作用の要因が有意で, 親役割からのストレスが高くかつ夫婦関係が調和的でないときに, その子の愛着がもっとも不安定に予測された。また, 社会的サポートは親役割ストレスを低くする方向で関連していた。さらに, 家族関係の機能度という視点より, 柔軟性が適度に保たれている家族は, 家族システム的にも良好であった。母親の心理的状態や子どもへの行動・態度は, 夫との関係のありようと密接に関連しているという結果であり, 子どもの心理的状態を研究する上で母親ばかりではなく父親(夫)との相互作用・関係を考慮にいれなければならないことを示唆した。
  • 大芦 治, 岡崎 奈美子, 山崎 久美子
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は, 虚血性心疾患の危険因子として知られるタイプA行動パターンの発達モデルを検討しようというものである。検証したモデルは, 両親の有名大学を志向する社会・文化的な価値観が子どもに対して学習, 進学に関する過干渉, 過保護を主とした養育態度を生起させ, それが, 子どものタイプA行動パターンの発達を促進するというものである。被験者は, 大学生(子ども)とその両親である。子ども側には, タイプA行動パターンに関する質問紙を, 両親側には有名大学を志向する価値観の質問紙, 養育態度に関する質問紙をそれぞれ実施した。結果はパス解析を用いて分析された。仮定されたモデルはほぼ支持されたが, 子どもが男子の場合と女子の場合で若干差がみられた。すなわち, 男子では母親からの影響が, 女子では父親からの影響がそれぞれ大きかった。この性による違いを考察する中で, 本研究で扱った進学や教育に関する要因以外に様々な社会・文化的な要因が介在することが予想され, 今後に検討課題を残すこととなった。
  • 栗山 容子, 荻原 美文, 足立 実絵
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    他者との関わりが不可欠なピー玉獲得課題を用い, 社会的相互交渉の活動を通して自己・他者・対象の三項関係が成立し, 目標志向的な社会的行動へと統合される過程を, 遊び方略の変化として検討した。被験児は同性, 同年齢の2人1組で, 低年齢群(3:7-5:6), 中年齢群(5:7-7:6), 高年齢群(7:7-9:6)の各28組, 計84組であり, 10試行2セッションのゲーム過程はすべてVTRに記録され, 所定のカテゴリにより分析した。ピー玉獲得数は低年齢群に多く, 中年齢群では一且減少し, 高年齢群では第2セッションで増加する傾向がみられ, 『順番』に関する行動が獲得数に関わっていること, 『順番』に関する行動は, やり方やルールの提案により効果的となることが明らかにされた。相互交渉は, 僅少, 一方的なものが相互的になり, 認知・行動面及び感情の表出においても発達的特徴が明らかにされた。これらの認知的, 社会的, 情緒的な総体としての社会的行動を特徴づける発達的概念として遊び方略を定義し, 3つの発達水準を恭順獲得方略, 個人獲得方略, 相互的競争方略と互恵的獲得方略として, 発達的特徴を明らかにした。
  • 高坂 聡
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    おもちゃを巡るいざこざ場面で幼稚園の年少組に属する3歳児がどのように相手に対し働きかけているのかを自然場面で観察した。全部で65のエピソードが収集され, それらは特定の働きかけ(方略)が生起しているエピソードを1単位として, エピソードの生起頻度の点から分析された。その結果, 子ども達は言語方略以外にもおもちゃを相手から遠ざける, おもちやをしっかり握って離さない, おもちやを持って逃げるなどの行動方略を多く用いていることが明らかになった。また, おもちゃを所持している子ども(ホルダー)と使おうとする子ども(テイカー)とでは, ホルダーの方がおもちゃを所持する割合が高いこと, 用いる行動方略がそれぞれで異なることから両者の非対称性が示唆された。さらに, おもちゃに「接触」するとテイカーがおもちゃを所持する割合は高くなっていることを示した。これらの結果から3歳児は用いる方略をおもちゃの特性やいざこざ時の立場に合わせていると考えられた。
  • 落合 良行
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 73-74
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 中澤 潤
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 74-75
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 達哉
    原稿種別: 本文
    1996 年 7 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 1996/08/01
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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