本研究の目的は,在日中国人の親において,子どもの問題行動がソーシャルサポートを媒介して育児ストレスに影響を及ぼすモデルを仮説とし,その実証的検討を行うことで,在日中国人の親の育児ストレスに,子どもの問題行動及びソーシャルサポートが果たす役割について示唆を得ることであった。本研究では,発達障害児を持つ在日中国人の親43名,定型発達児を持つ在日中国人の親194名を対象としたオンライン調査を実施した。媒介分析の前提を確認するため,子どもの問題行動及び育児ストレスの相関関係を算出したところ,内在化問題と外在化問題は育児ストレスと正の相関がみられ,向社会的行動と育児ストレスは負の相関がみられた。発達障害児群と定型発達児群の2群による多母集団同時分析を行ったところ,両群ともに子どもの外在化問題はソーシャルサポートを媒介して親の育児ストレスに関連することが確認された。ブートストラップ法によってソーシャルサポートの間接効果を検証したところ,子どもの外在化問題と育児ストレスの間においてのみ,ソーシャルサポートの間接効果が確認された。以上の結果から,在日中国人の親の育児ストレスを改善する方策を検討する上で,子どもの外在化問題とソーシャルサポートが重要な役割を果たす可能性が示された。
【インパクト】
本研究では,在日中国人の親を対象に,定型発達児と発達障害児の観点から育児ストレス,子どもの問題行動及びソーシャルサポートの関連性を検討した。その結果,子どもの発達障害の有無にかかわらず,在日中国人の親の育児ストレスと子どもの外在化問題の間にソーシャルサポートが媒介することが明らかにした。さらに,本研究では在日中国人の親の育児ストレスを低減する支援に具体的な方向性を示した。
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