発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
早期公開論文
早期公開論文の2件中1~2を表示しています
  • 劉 娟, 山根 隆宏
    論文ID: 36.0069
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/04/14
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究の目的は,在日中国人の親において,子どもの問題行動がソーシャルサポートを媒介して育児ストレスに影響を及ぼすモデルを仮説とし,その実証的検討を行うことで,在日中国人の親の育児ストレスに,子どもの問題行動及びソーシャルサポートが果たす役割について示唆を得ることであった。本研究では,発達障害児を持つ在日中国人の親43名,定型発達児を持つ在日中国人の親194名を対象としたオンライン調査を実施した。媒介分析の前提を確認するため,子どもの問題行動及び育児ストレスの相関関係を算出したところ,内在化問題と外在化問題は育児ストレスと正の相関がみられ,向社会的行動と育児ストレスは負の相関がみられた。発達障害児群と定型発達児群の2群による多母集団同時分析を行ったところ,両群ともに子どもの外在化問題はソーシャルサポートを媒介して親の育児ストレスに関連することが確認された。ブートストラップ法によってソーシャルサポートの間接効果を検証したところ,子どもの外在化問題と育児ストレスの間においてのみ,ソーシャルサポートの間接効果が確認された。以上の結果から,在日中国人の親の育児ストレスを改善する方策を検討する上で,子どもの外在化問題とソーシャルサポートが重要な役割を果たす可能性が示された。

    【インパクト】

    本研究では,在日中国人の親を対象に,定型発達児と発達障害児の観点から育児ストレス,子どもの問題行動及びソーシャルサポートの関連性を検討した。その結果,子どもの発達障害の有無にかかわらず,在日中国人の親の育児ストレスと子どもの外在化問題の間にソーシャルサポートが媒介することが明らかにした。さらに,本研究では在日中国人の親の育児ストレスを低減する支援に具体的な方向性を示した。

  • 板川 知央, 佐々木 銀河
    論文ID: 36.0103
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/04/14
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究の目的は仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)を参考に,療育者の困難感とバーンアウトおよびワークエンゲージメントの関連性を検討することであった。全国児童発達支援協議会に加盟する児童発達支援事業所,放課後等デイサービス,児童発達支援センター計50団体に勤務する療育者計177名から回答が得られた。分析の結果,療育者の困難感から情緒的消耗感に正の影響が見られた。また,情緒的消耗感から脱人格化およびワークエンゲージメントにそれぞれ正の影響と負の影響が見られた。さらに,ワークエンゲージメントから脱人格化と個人的達成感にそれぞれ負の影響と正の影響が見られた。加えて,組織環境性から情緒的消耗感とワークエンゲージメントにそれぞれ負の影響と正の影響が見られた。本研究の結果から療育者の困難感(仕事の要求度)は情緒的消耗感を介して脱人格化を強める可能性が示唆された。また,療育者の困難感は情緒的消耗感を介してワークエンゲージメントを弱めることが考えられた。さらに,仕事の資源のうち,組織環境性はワークエンゲージメントを介して脱人格化を弱めることが考えられた。

    【インパクト】

    JD-Rモデルに基づく分析によって,1)療育者の困難感とメンタルヘルス(バーンアウトおよびワークエンゲージメント)の関係性が明らかになった。さらに,2)療育者個人の資源(コーピング)や仕事の資源(ソーシャルサポートおよび組織風土)が困難感とメンタルヘルスにどのような影響をもたらしているかが示され,彼らの心身の健康を高めるために必要な支援の一端が明らかになった。

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