本研究では,「論争中の病」の一種であり,労作後の極度の疲労感を主症状とするME/CFSを青年期までに発症した人が,自分の身体を調整しながら,病いを抱えつつ生きることを意味づける過程を検討した。9名分のインタビューデータをM-GTAにより分析した結果,病者はこの疾患特有の症状に苦しむ中で,医療および学校,社会とのかかわりに困難や助かると感じる経験をしながら,身体不調やそこから派生する諸経験を自分の人生の文脈に位置づける過程として進展することが示された。客観的指標も治療法もない本疾患は,長期間診断がつかず,病者は医療および学校,社会からの理解や支援を得にくいと感じ,不調を疾患として捉えられない混沌状態に陥る。診断確定後,身体的不調を疾患として捉えることが可能となり,病いを認めながらも自分らしい生き方を模索する探求的意味づけ過程が進む。しかし,我が国におけるこの疾患の認知度の低さ,および身体に関する日本特有の文化的信念から,医療や社会からの理解や支援を得にくいと感じる経験は多く残り,自己の断絶感と未来への不安といった混沌状態に陥ることもある。考察においては,この混沌状態において,青年期の発達課題であるアイデンティティの確立を困難にする状況が生じる可能性を論じ,この時期に大事な学校での理解や支援を促進するには,早期診断体制の整備,学校関係者による認知の向上が重要であることなどを示した。
【インパクト】
我が国において認知・理解度が非常に低いME/CFSについて,身体・心理・社会的に重要な発達段階である青年期までに発症したケースに焦点を当て,病者が身体不調をどう意味づけるかを,病者をとりまく医療,学校,社会との関係から明らかにし,青年期および日本に特有の過程があることを示した。さらに,キャリア形成や生き方の模索のために重要な学校生活上の支障をどう解消し支援するかに関する手がかりを得ることができた。
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