視覚・判断・手指機能に依存する電子部品製造職場の音圧波形検査作業を例として, 現場調査ならびにそのシミュレーション実験を実施し, 作業適性に及ぼす男女差の影響を生理的・心理的機能変動, 作業遂行能力, 疲労感などの観点から明らかにした.
(1) 現場波形検査作業の負担の特徴は, 単調労働型負担パターンを示すものの, 疲労感, 局所筋負担, 蓄積的負担の訴えは少なく, 女子作業者の作業への適合性が示唆された.
(2) 波形検査をシミュレートした作業においても, 男女の負担パターンはともに現場作業と同様の単調労働型負担パターンを呈した. しかし, 男女の負担の出現状況には差異が観察された. すなわち, 眼調節機能には顕著な男女差はなく, かつ局所筋負担に関する女子の訴えは高いものの, 男子に比較して女子の大脳皮質の活動水準の低下は少なく, 作業からの変化の希求や倦怠感情の発生も弱く, かつ疲労感や作業意欲の低下も少ないことが示唆された. さらに作業遂行能力に関しては, 女子の選別ミス, 小物扱い手指機能の把持ミスの出現が少なかった.
これらの現場調査, シミュレーション実験の結果から, 単純繰り返し波形検査作業に対する女子の作業適合度は, 男子に比較して高いものと推測される.
抄録全体を表示