液体, ゲル, 固形の3種類の性状の食品について, それら食品の味と嗜好性との関係を男女大学生を対象に一対比較法を用いて調べた. 実験1では, 塩化ナトリウムとショ糖について最も好ましい液体濃度はそれぞれ0.59%, 3.96%であった. この濃度についてゼラチン2.58%を加えて液体, ゲル, 固形の3種類をつくり, 嗜好性を調べた. 塩化ナトリウム, ショ糖ともに固形が最も好まれる傾向があった. 実験2では, 固形試料と液体試料を感覚的等価濃度にして比較したところ, 塩化ナトリウム, ショ糖ともに固形が好まれた. 実験3では, 試料にグルタミン酸ナトリウム (Monosodium Glutamate: MSG) を加えると, 液体試料, ゲル状試料, 固形試料では, 塩化ナトリウムは固形試料が最も好まれたが, ショ糖はゲル状試料が最も好まれた. 実験4では, 塩化ナトリウム+MSG, ショ糖+MSGについて, 最も好まれた性状と基準となる液体試料を感覚的等価濃度にして嗜好性を調べた. 塩化ナトリウム+MSGは固形試料と液体試料の好みにほとんど違いがなくなり, ショ糖+MSGでは液体試料よりゲル状試料が好まれた.
以上より, 液体試料, ゲル状試料, 固形試料の間では塩化ナトリウム, ショ糖とも単独の味では固形試料が好まれる傾向があったが, これらにMSGを加えると好みの性状が異なる傾向がみられ, 食品の物理的性状と嗜好性の関係には, 味質やその濃度が強く関与することが示唆された.
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