人間工学
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32 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 永田 久雄, 大野 央人, 小美濃 幸司
    1996 年 32 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本論において, 立位姿勢保持に及ぼす靴ヒール高の影響を, 開発したリニアアクセラレータを用いて実験的に究明した. 20歳前後の12人の女性を一連の実験に参加させ, 裸足とヒール高の異なる4種類の靴別に, リニアアクセラレータの走行台上に乗せて, 倒れるまで立位姿勢を保つようにさせた. 加速パターンは時間軸に対してステップ状の波形となるようにした.
    検査結果から, 水平加速外力を負荷した場合, 姿勢バランスを失わせる限界加速値とその持続時間の逆数とに直線的な関係がみられた. 姿勢前方へ加速外力を負荷した場合には, ハイヒールと裸足での限界加速値に有意差がみられた. また, 姿勢前方へ加速外力を負荷した場合には, ハイヒール (ヒール高89mm) はローヒール (ヒール高12mm) と比較して, 限界加速値が38%減じている. 立位姿勢の保持限界の観点からは, 靴ヒール高は30mm以下が推奨できる.
  • 三浦 佳世, 難波 精一郎, 桑野 園子, 村石 喜一, 大川 平一郎
    1996 年 32 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    オフィスビルの外観の印象とそれを規定する諸要因について, 入りやすさ・親しみやすさの観点から, SD法と質問紙法による検討を行った. その結果, 建物の印象は3群に大別でき, 以下の特徴を有することが示された. (1) 個性的で変化のある建物 (type A): 建物全体のデザインやガラス壁に特徴があり, 好印象を与えるもの. (2) 落ち着いた印象の調和のとれた建物 (type B): すっきりした窓と外装材料に基づく明るく暖かな色彩および凹凸感をもち, 高級感とともに親近感を感じさせるもの. (3) 平凡で陳腐な印象を与える建物 (type C): 平凡な窓, くすんだ色彩, のっぺりとしたコンクリート壁を有し, 外観に対する評価は低いが, 実質的な入りやすさを感じさせるもの. また, 入りやすさに関しては, 直観的な判断と吟味した後の判断が異なることも示された.
  • 市原 茂
    1996 年 32 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    配色と織り方の異なる105枚の綿布を20の印象評定項目のそれぞれについて7段階評定させたところ, 一部の評定項目を除き個人差が非常に大きくでた. このような個人差は, 対象によって引き起こされる印象どうしの因果的な結びつきが各個人によって異なるために生じると考えた. そこで, それらの印象どうしの因果モデルを6つ想定し, 個人ごとに共分散構造分析を実施し, 各個人がいずれの因果モデルに適合するのかをみた. 45名中25名にいずれかのモデルがあてはまった. 一方, 綿布に対する好みのデータから, 45名の被験者全員をクラスター分析により分類したところ, 3つのグループに分かれた. これと因果分析の結果を比較したところ, 両者にゆるい関係があることがわかった. 以上より, 官能検査の個人差を生む人間の感性情報処理の一部が明らかにされた.
  • 劉 建中, 久保 光徳, 青木 弘行, 寺内 文雄
    1996 年 32 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 5名の男子学生を被験者とし, 弛緩状態での座姿勢と仰臥姿勢において, 2-20Hzの垂直正弦振動を受ける人体の振動伝達特性を, 伝達率と位相差によって検討した. 伝達率は, 人体上の振動加速度実効値を振動台垂直加速度実効値に対する比率で表したものとし, 位相差は, 人体と振動台間の振動加速度の位相角で表した. また振動刺激に対する身体各部位の揺れの感覚について主観評価を行った. その結果, (1) 2Hzでは座姿勢, 仰臥姿勢ともに体全体が1つの剛体として, 振動台とほぼ同じ振幅と位相で振動した. (2) 5Hzと8Hzでは身体の振動が強くなって, しかも姿勢と被験者により各部位の振動状況がかなり異なった. (3) 11-20Hzの範囲では足部と頭部の振動を強く感じる一方, 腹部と胸部はほとんど減衰していることが明らかとなった. 本実験の結果から, 人体における振動の伝播は振動刺激の種類, 方向, 周波数, 強度のほかに, 被験者の体型と姿勢などから大きな影響を受けていることが明らかとなった.
  • 四宮 孝史, 佐藤 陽彦
    1996 年 32 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    奥行弁別作業における焦点調節機能に関わる要因の比較実験を通して, 微細領域における奥行弁別に優位な観察方法や, 視機能訓練の方法について考察を加えた. 今回の実験結果から, (1) 視標が眼の焦点深度内に入った後の注視点の決め方が, 調節による奥行弁別精度を高める大きな要因であることが確認された. (2) 弁別閾値近傍のわずかな奥行量を識別する場合, 短時間注視 (7秒以下) の有効性が明らかになった. また, 長時間継続注視 (10秒以上) では, 弁別感度 (精度) の低下をきたすことが明らかになった. (3) 奥行弁別作業時の両眼視, 利き眼または非利き眼による単眼視における調節能力の比較では, 両眼視の弁別能力が高いことが明らかとなった. 単眼視においては利き眼, 非利き眼にかかわらず, 左眼より右眼の弁別能力が優れていた. (4) 実験により, 双眼鏡や実体顕微鏡などの使用時に左右像の融像困難な者に対して, 短時間で有効な融像訓練方法を提案することができた.
  • 中曽根 恵美子
    1996 年 32 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
  • 運搬動作の解析
    堀尾 強, 河村 洋二郎
    1996 年 32 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1996/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    集団給食施設での調理従事者の作業は, 家庭での調理とは異なり多人数分を調理するため, 長時間の立位作業, 同じ動作の繰り返し, および大きく重い調理器具の運搬・清掃などに特徴がある. 本研究では, 大きな鍋を含む重い調理器具の運搬の効率と姿勢との関係を明らかにするため, 男女大学生13名を対象に, 鍋を用いた運搬動作を人間工学的に解析した. (1) 鍋が重いほど作業時間がかかり, 特に大鍋運搬時には高いところへの上げ下ろしに時間を要した. また, 床から床へといった低いところでの横方向への運搬に時間がかかった. (2) 運搬作業中の脊柱直立筋, 足の大腿直筋, 前脛骨筋といった下半身の筋肉の筋電図振幅は, 鍋の重さに関係がないのに対して, 腕の浅指屈筋, 橈側手根屈筋, 上腕二頭筋, 三角筋, 背の僧帽筋といった上半身の筋肉の筋電図振幅は, 鍋が重いほど大きくなった. (3) 垂直方向の移動動作より水平方向への移動動作のほうが筋の負担が少なかった. (4) 負担の少ない水平移動の動作において, 上腕や肩の筋は移動する高さと関係がないのに対して, 指や手首を動かす筋は低いところでの移動ほど負担が少ないことが示唆された. (5) 鍋を持ち上げるときの指に加わる圧は, 大鍋ではどの指に加わる圧も小鍋の場合より大きく, 小指を含めてどの指にも大きな圧が加わっていた. ただし, 人差し指に加わる圧が少し大きかった. これらの結果から, 重い調理器具を運搬するとき, 運搬方向や位置により身体各部位への負担が異なることが示唆された.
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