メンタルワークロードの計測には, 課題が要求するディマンドに着目する考えと, 残存効果ともいえる精神疲労に着目する考えがある. 我々は前者の考えを拡張し, 課題の困難度と時間の要因について, 副課題成績, 主観的負担度, 情緒的状態評価, 脳波および心拍などの生理指標を用いて反応パターンの検討を行った. 被験者は, 円形追跡トラッキング課題と記憶検索課題を組み合わせた二重課題を, 操作された低・中・高困難度の各条件ごとに1ブロックあたり約10分, 計3ブロック断続して遂行した. その結果, 困難度の増大に伴い, 主課題に対するTLX得点が増大し, かつ副課題に対するERPのP300振幅値が減少するという時間要因と独立した変化が確認された. 一方, 時間と困難度の複合的効果が, 低・中困難度の場合は, 覚醒感の低下, 高困難度の場合は, リラックス感の低下, いらつきや不快感の増大という主観的変化として観察された. なお疲労感は, 時間要因のみに従属して増大した. 今回の結果は, メンタルワークロードの測定において, 作業困難度と作業時間の要因を分けて考えることの必要性を裏付けるものである.
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