人間工学
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36 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 末長 修
    2000 年 36 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2000/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究は, 人間の認知特性を活用した訓練システムを構築するための基礎研究として, 手動制御系における人間の学習特性に対する聴覚刺激による注意喚起の効果を検討する. 注意は認知の感度の増強と処理速度の増大をもたらすという知見をもとに, ある目標値形状の発生に対して, 注意を被訓練者に喚起する訓練を試みる. そこでまず, 同一のランダム信号を5回反復させた目標値を作成し, その3番目の信号が発生する直前に聴覚刺激を被訓練者に提示した. このような訓練を繰り返し被訓練者に課した. その結果, 聴覚刺激を提示した信号ばかりではなく他の信号に対しても, 聴覚刺激の効果は波及し, すべての信号に対する制御が改善されることを確認した. しかし, その改善の速さは各信号により異なることも明らかにした. その一要因として, 注意の種類 (受動的, 能動的注意) の差異が起因し, さらにこれらの注意の存在が効率的な制御改善に寄与している可能性を示した.
  • 岡田 有策, 井上 慶太, 大橋 毅夫
    2000 年 36 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2000/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究は新たに開発された可変速式ムーブレーンに関して, 利用者の安全, 安心といった観点から検討を行った. まず, 実機を用いた実験を行い, 運行速度による利用者の行動や心理の変化を調査した. その結果, 乗降口では2.1km/時, 中間の高速部では3.8km/時程度が好ましいことがわかった. ただし, 車椅子やベビーカー, およびヒールなどの身体バランスがとりにくい靴での利用等が考えられる場合には, さらに低い速度設定などの対策が必要であると考えられた. 次に, 降り口部での利用者の接触や衝突という事態を防ぐための方策をいくつかの実験より検討した. このようにして, 利用者が安心して可変速式動く歩道を利用できるためのいくつかの提案を行った.
  • 中沢 信明, 梶川 伸哉, 猪岡 光, 池浦 良淳
    2000 年 36 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2000/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本論文では, 対象物体を把持する場合の人間の指先軌道特性について調べた. 正面方向からの把持動作においては, 指先を過度に広げることなく, 親指と人差し指のほぼ中間に物体が位置するように軌道が生成されている. 左右方向からの把持動作の場合には, 指先を開くタイミングが正面の場合より遅くなる. 初期位置から物体近傍までの軌道は物体の幅に大きく依存し, 幅が狭い場合には最短経路を通る. 一方, 幅が広い場合には, 物体近傍において正面方向からの回し込み動作が行われる. 手首の軌道と比較すると, 左方向からの把持動作の場合には親指, そして右方向からの把持動作の場合には人差し指がそれぞれ手首と類似した軌道を描く. 指先を閉じる速度が最大となる時刻については, 手先の初期位置に関係なく, 手首の動きが収束する時刻とほぼ一致する. さらに, 軌道モデルを提案し, モデルのパラメータから軌道の類似性が確認でき, 解析上の有効性を示した.
  • 山崎 信寿, 諸永 裕一
    2000 年 36 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2000/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    短時間休息用安楽寝椅子のコンパクト化を実現するために, クッション厚さを省略でき, かつ全体デザインを単純化できる剛体支持面方式を採用し, その形状設計を行った. 男女63名 (平均29.3歳, 169.4cm, 62.8kg) について, 水平に対して背もたれ角30°, 座面角15°に設定した16分割形状可変実験椅子と角度可変オットマンを用い, 剛体平板状態から各支持面を好みの支持面高さに調節させた. その結果, 支持面形状の好みの違いは背もたれ面形状の肩甲部と腰殿部に表われ, 座面形状は共通化できることがわかった. このため, 肩甲部の好みを平と凹, 腰殿部の好みを平と凸に分類し, それぞれの平均形状を組み合わせた4種類の背もたれ形状の好みを調べた結果, 肩甲部を凹 (最大6mm), 腰殿部を凸 (最大8mm) とする支持面形状の許容度が高いことがわかった. 本支持面形状によれば, 成人の体格差によらない短時間高適合支持が可能になる.
  • 事例 (自動車の乗降における快適さの評価)
    岡田 有策, 森口 喜代, 八田 一利, 堀江 良典
    2000 年 36 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2000/02/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    快適性という言葉は広く用いられているものの, その工学的な定義は不明瞭で, 製品設計に利用できる概念として形成されるには至っていない. そこで本研究では, 快適性に関係する諸特性の調査を通して, 製品設計に応用できる快適性評価方法の開発を主眼とした. まず, 従来の人間工学にかかわる知見等をもとに, 作業に関する快適性に影響を与える要因 (快適性形成要因) を抽出した. これをもとに種々の製品について快適性形成要因との関係をアンケート調査によって分析し, その特徴を明らかにした. 次に, インターフェイスの各仕様変更に伴う快適性の変動を評価する方法を検討した. すなわち, (1) 対象とした製品, およびその使途での快適性形成要因の選定, (2) 快適性形成要因がその製品の快適性に及ぼす影響係数の算出, (3) インターフェイス仕様の設定, (4) 快適性形成要因に対するインターフェイス仕様のかかわり具合の決定, (5) インターフェイス仕様から快適性評価値を推定する式の導出, である. さらに, この快適性評価の方法を, 自動車の乗降のしやすさの評価に事例的に適用したところ, 快適性に対する主観評価値と非常に相関の高い快適性評価値を得ることができ, その有効性が確認されるとともに, 快適な製品設計への応用の可能性が確認された.
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