本研究では, 反応時間の変動に伴って背景脳波にどのような特徴的変化が現れるか検討した. 実験では, 覚醒を積極的に低下させるための視覚刺激を5分間反復呈示した後に, 反応を要求する視覚刺激を15回繰り返し呈示するという, 一連の流れを4セッション繰り返した. α波が明瞭に見られた7被験者を対象にした結果, 最初と比べて最後のセッションで, 覚醒感, 集中感の低下, 疲労感の増加と, 反応時間の遅延が認められ, 主観的, 行動的には異なる覚醒状態にあることが示唆された. そこで, 両セッションを比較対象として反応要求刺激直前の脳波を分析した結果, 反応時間遅延時に, 頭頂部周辺でのα波帯域ピーク周波数の低下と, 全頭的なθ2帯域, α1帯域のパワの増加が認められた. また, α波帯域の周波数ゆらぎの白色化が認められた. これらの脳波特徴は, 今後, 覚醒低下の他覚的, 簡易的評価手法の確立に向けて, 1つの手がかりを与えるものと考えられた.
抄録全体を表示