本研究では, 商品あるいはサービスを広告対象としたテレビコマーシャルを視聴する際の眼球運動に基づき, 視聴意図を推測する方法論を提案する. 視聴意図とは, テレビコマーシャルの視聴者が, 明示的ではないものの, 無意識的に持っていると推測できる意図を指している. 本分析方法は, 視聴意図に合致した仮想的な注視点移動軌跡を想定し, その軌跡と視聴者の注視点移動軌跡との一致度を測定することで, 視聴者の行動を明らかにするというアイディアに基づいている. 分析では, 視聴の状態を表現する注視移動軌跡一致率と有効注視率という2種類の指標に基づき, 視聴意図を推測していく. 実際のコマーシャルに対する視聴実験を実施し, 得られたデータに対し分析方法を適用した結果, 被験者の視聴意図が適切に推測できることが示された. さらに, 2種の保険会社のコマーシャルに対する評価を目的とした視聴実験を実施した. この結果, これらのコマーシャル視聴中の視聴意図の違いを観察することができた. また, これらのコマーシャルに対しては, 広告商品には直接関係がないような, シーンの中でおこるできごとを理解する意図を被験者が持つ傾向を観察することができた. さらに, 視聴行動と被験者の記憶間で対応をとることで, コマーシャルの表現方法に対する評価を行った. 一連の分析により得られた示唆等から, 本分析方法の有用性を示した.
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