【目的】立体映像表示での視機能に悪影響を与えない両眼視差 (以下視差) 条件を探るために, 三次元ディスプレイ上での立体像注視時の調節ステップ応答を測定した.
【方法】調節の測定には赤外線オプトメータを用い, 遠方視標を1mの距離に近方視標を50cmの距離に設定し (調節刺激量: 1D), 右眼の調節ステップ応答を測定した. 遠方視標は, 黒色のスターバーストを, 近方視標には, パララックス・バリア方式三次元ディスプレイに円図形を呈示した. 円図形の視差条件は, 同側性に-0.5°と-1.0°,-1.5°,交差性に+0.5°と+1.0°,+1.5°および視差を0°の7とおりとした. 調節波形の解析は, 各視差条件で記録される波形の調節応答量を計算した.
【結果】調節ステップ応答の平均波形の観察では, 視差0°のときと比較して, 同側性では応答が少なく, 交差性では多くなった. 特に, 視差を交差性に+1.0°と+1.5°にした場合には, 調節刺激量よりも過剰な応答 (調節 lead) が観察された. 調節応答量の平均値±標準偏差は, 視差+1.0°と+1.5°でそれぞれ1.06±0.12D, 1.26±0.16Dとなり, 調節刺激量を超えた.
【結論】両眼視差を用いた場合の立体映像の視差は, 少なくとも交差性に+1.0°以上とることは避けたほうがよいと考えられる.
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