ダイニングチェアの座り方に関するアンケート調査によって, 食後には, あぐらや立て膝, 正座などの姿勢も多くとられていることがわかった. 支持面を16分割した形状可変実験椅子を用い, それぞれの姿勢に適した支持面形状を探索した結果, 正座では座面を平らにすることを好み, あぐらと片足あぐらでは座面の前端部を凹型にすることを好み, 立て膝では座面を伸ばして座面前端を凸型にすることを好んだ. このため, 座面を前後に2分割し, 前の座面を伸長, 傾斜できるようにした. 背もたれは, あぐらと立て膝で腰部をへこませた形状を好む被験者と平面形状を好む被験者がおり, また, 棘突起が背もたれに接する被験者は痛みを避けるために胸背部で支持することを好んだ. このため, 背もたれに横Rをつけ, さらに下部のクッションを柔らかくし, 腰で押されると凹むようにした. 肘掛けはあぐら時に大腿が干渉しない形状寸法とした. 試作した椅子を市販椅子3脚と比較して官能評価を行った結果, すべての姿勢で高い評価を得た. また, 多姿勢をとることにより, むくみの軽減や圧迫部位を変えるなどの負担部位の交換ができ, 長時間の着座を維持できることがわかった.
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