人間工学
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43 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 仲村 彰
    2007 年 43 巻 6 号 p. 291-296
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    これまで, 多くの国において, 射出脱出に関する統計的な研究は行われており, その多くは緊急事態の種類, 射出座席の性能, 脱出者の生存率, 傷害程度及び部位に関するものであった. 日本においても同様の研究がなされているものの, 最大の死亡理由は脱出決心の遅れであり, 人的要因であることから, 本研究は, 操縦者に関する変数に焦点を当て, 統計的分析を行い, 操縦者要因の脱出成否への影響を調査することを目的とした. そこで方法として, 航空自衛隊における全射出脱出事例の資料から, 飛行経験, 機内の操縦者数等のデータを抽出し, 分析を行った. その結果, 死亡した操縦者の総飛行時間が生還した操縦者より有意に長い一方, 事故機種飛行時間に関して差は見られず, 総飛行時間が射出脱出に関する成否に影響することが観察された. また, 機内の操縦者数が脱出成功率に影響しない事が確認された.
  • 堤 教彰, 嶋田 博行
    2007 年 43 巻 6 号 p. 297-302
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では音声インターフェイスを用いたシステムに関して安全性評価の基礎実験を行った. 近年, 音声インターフェイスを採用したデバイスが数多く登場し, 利用されている. そこで, 音声インターフェイスを利用した場面を単純な刺激と反応に還元し実験を行った.
    単純空間身体反応に及ぼす音声入出力に関する二重課題を用いた実験を行った. 実験の結果, 単純な空間身体反応に, 単に音声入力を受けるだけ, あるいは単に音声出力を行うだけでは影響が無いことが分かった. しかし, 思考を伴う音声反応を行う場合, 単純空間身体反応の時間が有意に遅れることがに影響を与えることが分かった.
  • 先行車減速状況と出会い頭状況について
    大谷 亮, 宇野 宏, 藤田 和男
    2007 年 43 巻 6 号 p. 303-314
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    実際には客観的な危険が存在するにもかかわらず, ドライバがその危険度を過小評価すると, 回避行動のための運転行動に遅延が生じ, 衝突のリスクが高まる可能性がある. 本研究では, 先行車減速状況と見通しの悪い交差点での出会い頭状況を対象に, 過小評価を誘発する交通状況中の要因と, 過小評価が運転行動に及ぼす影響を調査した. 運転シミュレータによる実験の結果, 客観的危険度として設定した初期衝突予想時間が同じでも, 初期車間距離, 先行車の種類, および対向車の有無により, 先行車減速状況では, 主観的危険度が小さく, 過小評価が生じた. 一方, 出会い頭状況では, 先行車減速に比べて危険度が大きく評価された. 過小評価の生じる先行車減速状況では, ドライバの反応時間が遅延したため, 衝突のリスクが増大した. 交通事故数の削減のため, 客観的な危険の低減に加え, ドライバが交通状況中の危険度を過小評価しない対策を講じることが重要である.
  • 堀井 健, 小谷 賢太郎
    2007 年 43 巻 6 号 p. 315-322
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Catch-up saccade の運動特性と smooth pursuit の運動特性との間の加算関係については, まだ明確にされていない点がある.
    本報告では実験により, smooth pursuit 時の追従速度と catch-up saccade の持続時間ならびにピーク速度との間にそれぞれ加算関係が成立することを実証した. また, 得られたデータの定式化により, 次の三つの特性を導き出すことができた. (1) smooth pursuit の追従速度に依存することなく, 持続時間が一定値 (約70.6ms) となる跳躍条件がある. (2) 跳躍量に依存することなく, 潜時が一定値 (約240ms) となる追従速度条件がある. (3) ピーク速度の取りえる最大値は約460deg/sとなる.
    これらの特性値は臨床神経科学分野における神経変性障害などに対して, 初期診断用マーカーとして活用できる可能性がある.
  • 胡 祖武, 李 傳房
    2007 年 43 巻 6 号 p. 323-328
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Ergonomic considerations are important for a well-designed bicycle. The aim of our research is to evaluate the influence of seat height on the rider's physical factors, including anthropometry of the human body and joint angles, as well as psychological responses and subjective sensations. A questionnaire utilizing both Borg's scale and the Likert scale were used to determine riders' subjective opinions regarding preferable riding condition. The relationship between preferable riding condition and seat height was then established from the regression curve of the riders' subjective sensations with respect to the seat height. Using the regression curve, one can determine the preferable seat height for a comfortable riding posture. The results of this study can be used to develop a riding simulation model on a computer, which may benefit bicycle designers and manufacturers who are looking to improve the ergonomic design of their products. Research using CAD systems requires standard parameters of bicycle construction to set up a computer-simulated riding model. After creating a data bank of riders' physical factors and psychological responses, one can analyze the parameters of the preferable riding model with computer simulation, including seat height and height of handlebars.
  • 中村 孝文, 北濱 由佳, 田内 雅規, 平田 宏一, 宮崎 恵子
    2007 年 43 巻 6 号 p. 329-340
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    健常者を被験者として車いす特性や環境評価に関する研究を行う際, 上位脊髄損傷者では顕著に認められない下肢や体幹の活動を伴う可能性を考慮する必要がある. 今回, 拘束条件のない状態での健常者の車いす駆動特性に関する基礎資料を得るため, 登坂時の上肢・下肢筋活動, 足底荷重, 体幹移動等について分析した. その結果, 上肢筋活動の様相はこれまでの低位脊髄損傷者における報告と類似し, その活動量は傾斜勾配が増すとともに増加した. 一方, 下肢筋では勾配の急な登坂時において, 駆動終期から惰行期初めにかけて平目筋, 腓腹筋の足底屈筋群の活動が顕著にみられた. また大腿直筋など他の下肢筋活動も勾配とともに増加した. 体幹は急勾配登坂時で駆動期における前傾が顕著であり, 足底荷重は駆動初期から駆動後期にかけて減少し, 駆動終期から惰行前期にかけて増大した. このように, 健常者では, 車いす登坂時に, 駆動力増大と安定走行のために下肢や体幹を積極的に利用する状況が示された. そのため, 健常者による脊髄損傷者の障害シミュレーションでは下肢や体幹の利用を制約する考慮が必要であると考えられた.
  • 平柳 要, 佐藤 誠, 中村 泰輔, 白松 葉子, 夏野 豊樹, 山口 喜久, 滝口 俊男
    2007 年 43 巻 6 号 p. 341-348
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カー・シミュレーション動画像による視聴覚刺激をフェイスマウントディスプレイで被験者に負荷した際に, 抗催吐性などを有する試験成分の入ったガムが, 動揺病をどの程度抑制できるかを検討した. 動揺病既往のある健常男女各12名 (平均23.2歳) を対象とした. 安静後に5段階の視覚刺激を順次負荷し, 負荷区間の前後に2種類の質問票を用いて動揺病の主観評価を行った. 試験品として, (1) 澱粉, (2) 澱粉にショウガエキス250mgとカフェイン50mgとビタミンB6 10mgを混ぜたもの, (3) 試験成分の量を (2) の2倍としたもののいずれかのカプセルを, 負荷開始30分前に頓服するか, (4)ペパーミント味, (5) ペパーミント味にショウガエキス27.8mgとカフェイン5.6mgとビタミンB6 1.1mgを加えたもの, (6) 試験成分の量を (5) の2倍としたもののいずれかのガムを, 負荷開始30分前から10分交換で噛んでもらった. その結果, 板ガム1枚あたりペパーミント味にショウガエキス27.8mgとカフェイン5.6mgとビタミンB6 1.1mgの入ったガムが動揺病による悪心・嘔吐などを最も軽減することがわかった.
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