人間工学
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45 巻, 1 号
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原著
  • ―取り出し動作および収納動作を含めて―
    山際 孝幸, 堀井 健, 吉村 勲
    2009 年 45 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,モバイル機器の使用が歩行に与える影響を,取り出し動作や収納動作といった周辺動作を含めて検討することを目的とした.24名の実験協力者(全員20代男性)にモバイル機器の使用行動(取り出し,運搬,操作,収納)を課し自由歩行の場合と比較した.評価は歩行の安定性をモーションキャプチャを用いて運動学的な側面から検討した.この際,安定性を表す指標δstを新たに創案した.また下肢の筋電位分析によって生理学的側面から検討した.その他環境因子の影響について考察を加えた.この結果,モバイル機器使用時の歩行の安定性は,通常歩行の場合に比較して低下することが確認され,周辺動作時の安定性低下も確認された.また周辺動作時に下肢筋電位の上昇傾向が認められた.よって周辺動作を含めた歩行中使用の危険性を明示し啓発する必要がある.
  • 松河 剛司, 横山 清子, 梅谷 智弘, 永田 雅典
    2009 年 45 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,直観的に理解しやすい動作解析を行うための,動作解析システムの開発を目的とする.提案システムは,光学式モーションキャプチャにより動作を,無線式生体アンプにより筋電信号を測定する.可視化は,人体の骨格形状,筋肉の位置や形状を正確に反映した3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)人体アバターが,モーションキャプチャで測定した動作を再現し,その動作に伴う筋活動の大きさを筋肉の色で表現するものである.提案システムは,従来の動作解析システムと比較し,動作と生体状態を同時に可視化するため,身体全体の総合的評価,および,生体状態の時間変動評価に適している.3DCGを用いた可視化のため,動作を任意の注視点から観測することができる.本論文では,動作解析システムの構成,可視化手法,車室内スイッチ操作時の動作解析を対象とした使用例,および,システムの特徴を述べる.
  • 石橋 基範, 土居 俊一
    2009 年 45 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    自動車運転者の精神疲労研究では,運転支援における人間・機械系の適合性向上の視点から精神疲労の個人差を理解する手がかりが必要と考えられる.PavlovやEysenckによると脳には刺激に対する応答のタイプがあると仮定され,疲労発生に関係し,内向性・外向性の性格(向性)に現れるという.最初に視覚刺激呈示実験で刺激応答タイプを調べた結果,外向性は刺激呈示に伴いα波周波数が上昇する「興奮型」タイプと,内向性は一過性下降の後に上昇する「抑制型」タイプと対応した.次に,精神的負荷(刺激に相当)と向性(刺激応答タイプに相当)の相互作用が作業後の精神疲労の大きさ(脳活性の低下)に影響するとモデル化した.運転模擬作業実験での脳波α波周波数,心理状態,反応時間標準偏差の解析から,低負荷課題では外向性群で精神疲労がより大きく,高負荷課題では内向性群でより大きいと考えられる結果となり,モデルは概ね妥当であることを示した.
  • 曽我 知絵, 三宅 晋司, 和田 親宗
    2009 年 45 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    複雑な現代社会において日常的に受けている精神的ストレスを定量評価するための様々な研究が行われている.先行研究にて,生理反応は,作業中の周囲の状態によって生じる感情変化の影響をうけることが報告されている.そこで本研究では,難易度の異なる精神作業を行わせることによって,被験者の感情を変化させ,生理反応と感情変化の関連性を明らかにすることを目的とした.21~32歳の健康な男子大学院生に難易度の異なる計算作業を遂行させ,種々の自律神経系指標を計測するとともに,主観的ワークロード,気分および作業に対する感情を評価させた.その結果,精神作業によって誘発される生理反応には,実験そのものに対する不安などの感情が影響しており,皮膚電位水準と血圧がそれらの要因に敏感に反応することが示された.
  • -肢体不自由者のための楽曲演奏システム-
    武田 泰治, 杉山 利明, 島 圭介, 植野 洋美, 柴 建次, 福田 修, 辻 敏夫
    2009 年 45 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本論文では,重度の肢体不自由者のために筋電位信号を利用した新しいミュージック・インタフェースを提案する.まず計測した筋電位信号から筋活動発生のタイミング,筋活動の持続時間,筋活動レベル変化率の3つのパラメータを抽出する.そして,これらのパラメータを用いてあらかじめ打ち込まれている楽曲のテンポ,ニュアンス,音量を制御する.これにより操作者は,随意的に筋電位信号をコントロールすることで,指揮者感覚で楽曲演奏が可能となる.重度の肢体不自由者でも演奏可能であることを確かめるため,口角下制筋の左右に電極を2対取り付け,頚椎損傷患者による操作実験を行った.その結果,3動作を識別し演奏できることを示した.さらに市販のMIDIキーボードと比較し,テンポ,ニュアンス,音量の操作性について検証した.その結果,統計学的に有意な差は見られず,操作者の演奏意図を反映した演奏がある程度可能であることを確かめた.
  • 國澤 尚子, 新村 洋未, 小川 鑛一
    2009 年 45 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,注射器薬液の圧力測定システムと圧力変換器の開発である.注射器で扱う薬液や血液の圧力が連続的に測定可能になると,その圧力の大きさ,圧力の時間変化,所要時間,圧力パターンなどをそのデータから読み取ることができる.これを用いて,看護学生と看護師の注射器操作技術の差異を明らかにしたり看護学生の習熟過程を把握することができる.注射器薬液の圧力測定原理は,注射器から薬液を外部に誘導し,その薬液の圧力を測定するというものである.圧力変換器は,改造した注射器の内部にひずみゲージ式超小型圧力変換器を封入することにより圧力校正が不必要になった.この測定法を応用して,測定値をすぐに提示できる解析プログラムを作成し,注射器操作練習用シミュレータを考案した.通常の練習をした群と本シミュレータを用いた群を比較した結果,感覚的に習得していた力の加減を同じ技術として身につけさせられることを実証できた.
短報
資料
  • 長谷 和徳, 梶 大介, 留置 昌幸, 平手 庸介, 李 唯実
    2009 年 45 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2009/02/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    健康増進やリハビリ効果を謳った機器や装具が数多く開発されているが,その効果の科学的根拠を示すことは健康福祉分野の研究開発や産業の発展のためにも重要である.本研究の目的は,草鞋の機能を模擬したとされる足部装具が歩行運動や立位姿勢に与える影響を運動力学計測に基づき明らかにすることである.実験では健常成人男子10名に対して,足部装具の有無の条件で,歩行動作,立位姿勢,ならびに足指屈曲力の運動計測を行った.計測には光学式運動計測装置,床反力計,筋電計を用い,それぞれ運動データを取得した.さらに被験者に足部装具を1ヶ月間装着させ,その後同様の計測を行った.これらの実験から,本足部装具には歩行時の足指間距離の短縮,蹴り出し力の増大,足圧中心軌跡長の短縮などの効果があることを認めた.これらの効果は本足部装具の指掛け紐による足指間の皮膚感覚への刺激によってもたらされていると推察された.
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