人間工学
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45 巻, 4 号
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原著
  • 村田 厚生, 森若 誠, 王 曙光
    2009 年 45 巻 4 号 p. 209-218
    発行日: 2009/08/15
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,高齢者群と若年者群を対象に,非統合スイッチとの比較実験によって,統合スイッチの有効性を検討した.また,ディスプレイの階層化がスイッチ操作にいかなる影響を及ぼすかを明らかにした.高齢者のスイッチ操作の平均作業時間とトラッキング誤差は,それぞれ若年者の約2倍程度と約1.6~1.7倍程度であった.ディスプレイの階層化に関しては,両年齢群ともに,作業時間,正答率,トラッキング誤差への影響が認められなかった.見やすさ,操作しやすさの主観評価の観点からは,両年齢群ともに,統合スイッチの有効性は見出されなかった.若年者群の単独課題,二重課題および高齢者群の単独課題では,スイッチタイプと設置位置が作業時間に及ぼす影響が認められ,非統合スイッチをステアリング部に設置した場合の作業時間が有意に短く,省スペース効果がある統合スイッチのパフォーマンスは必ずしも高くならなかった.高齢者群の二重課題条件では,スイッチタイプと設置位置が作業時間に及ぼす影響は認められなかったことから,二重課題条件下ではいずれのスイッチタイプと設置位置の組み合わせ条件も能力の限界を超えた作業条件であり,ステアリング・スイッチの正の効果が認められなかったのではないかと推測された.
  • 長谷川 勝久, 福田 康明, 斎藤 真
    2009 年 45 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 2009/08/15
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究はコンベヤ生産をモデル化した単一作業と,セル生産をモデル化した組合せ作業の生体負担を生理的評価技法と心理的評価技法を用いて測定し,単一作業と組合せ作業における作業者の生体負担の比較,検討を行った.
    実験条件は,単一作業と組合せ作業を3種類の合計4条件とした.また被験者は21から24歳の健常かつ対象作業に経験のない男子大学生とし,各実験条件につき7名とした.生体負担の評価は,フリッカー値,ピンチ力,自覚症状しらべ,NASA-TLXを用いた.各実験作業とも90分間行い,開始前後に生体負担を測定した.
    単一作業のフリッカー値およびピンチ力は組合せ作業に比べて有意に低いことが示された.NASA-TLXは,単一作業では単調感が強く,組合せ作業では時間的切迫感が強い.さらに自覚症状しらべは,単一作業では単調感の影響が強く,組み合わせ作業ではそれぞれの作業内容の特性を反映することが示された.
    生理的負担と心理的負担を総合した結果,組合せ作業は単一作業と比較して生体負担が低いことが示された.
  • -ポイント精度・速度を保証する条件と移動方向の影響の同定-
    村田 厚生, 三宅 貴士, 森若 誠
    2009 年 45 巻 4 号 p. 226-235
    発行日: 2009/08/15
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では視線入力装置を利用し,視線入力で快適にパソコンを扱えるブラウザを開発するための基礎的な研究として,高いポイント精度,速いポイント速度を保証する条件を同定する実験と視線移動方向の影響を明らかにする実験を実施した.その結果,ターゲットの横方向配置のほうが縦方向配置よりもポイント精度が高かった.両配置ともに,ポイント精度を高めるには,20ピクセル以上のターゲット間隔,40ピクセル以上のターゲットサイズにすべきであることが示された.また,両配置ともにポイント速度を速くするためには,ターゲットサイズをできるだけ大きくすべきで,ターゲット間隔はポイント速度にほとんど影響しないことが示された.また,マウスと視線入力のポイント速度の差は,若年者よりも高齢者のほうが大きくなり,視線入力システムは手指の運動機能の低下した高齢者には有効であることが示唆された.視線移動方向の影響に関しては,下方向のターゲットに対するポイント時間が他方向よりも長くなった.
  • 夏野 豊樹, 平柳 要
    2009 年 45 巻 4 号 p. 236-241
    発行日: 2009/08/15
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    生姜抽出物の経口摂取による人でのエネルギー消費等を,冷え性気味の健常若年女性19人を対象としたランダム化交差比較試験により検討した.被験者は室温23~24℃,湿度30~40%の環境下において,(1)プラシーボ(澱粉),(2)生の生姜10 g相当,(3)生の生姜20 g相当をそれぞれ別の日にカプセルで摂取した.サンドイッチと適量の水をとった後,カプセルを飲み,1時間,2時間,3時間経過時に,エネルギー消費量,手と足の指先の体表温,脈拍数および収縮期・拡張期血圧の測定を行った.その結果,食事による影響を取り除いた生の生姜10 g相当摂取時は安静時に対する増加率で,1時間後7.4%,2時間後8.2%,3時間後6.6%で,1時間後を除いて有意な増加であった.また,生の生姜20 g相当摂取時のエネルギー消費量は1時間後10.5%,2時間後11.6%,3時間後8.6%と有意に増加した.結論として,人での研究において,生姜非摂取時に比べ,生姜摂取によってエネルギー消費量が有意に高まることが初めて明らかになった.
短報
資料
  • 田中 悠也, 江原 義弘, 水澤 一樹, 古川 勝弥
    2009 年 45 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2009/08/15
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,スポーツ分野やリハビリテーション分野などへの広い適応の可能性を有する筋張力の推定方法である最適化手法のうち,様々なパラメーターの違いによる推定筋張力の変化の傾向を調査および考察し,最適化手法の発展の一助となることを目的とした.被験者は2人,動作はスクワット動作とし,筋骨格モデルは矢状面に限定した下肢3関節11筋モデルとした.我々の調査したパラメーターは最適化手法に用いられる筋張力の最大値の制約と評価関数の分母の違いであった.その結果,筋張力を小さく制限する制約では解が得られない場合が生じてしまい,その他の制約では筋張力への影響はみられなかった.評価関数の分母では各筋の分母の組み合わせの比率によって筋張力が変化していることが示され,評価関数の分母の違いによる筋張力への影響は筋によって12.5~79.9 N(4.5~26.1%)の違いであった.
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