人間工学
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46 巻, 3 号
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原著
  • 吉川 雅博, 三田 友記, 三河 正彦, 田中 和世
    2010 年 46 巻 3 号 p. 197-207
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    多自由度筋電義手を操作するため,識別器を用いて筋電位信号から手の動作意図を推定する手法(動作識別法)が研究されてきた.しかし,前腕切断者について動作識別法の有効性は十分に調べられていない.そこで,本研究では筋電位に基づいて動作識別を行うための訓練を受けていない,幅広い属性を持つ7名の前腕切断者を対象に,動作識別法の有効性を検討した.決まった順序で提示される5種の動作例に従って筋収縮した時の筋電位を計測し,この筋電位から抽出される筋電位パターンに対して,4種の異なる識別器を用いた動作識別法により動作識別実験を行った.この結果,すべての動作識別法において91%以上の識別率を得た.最も識別率の高かったサポートベクターマシンを用いた動作識別法では,被験者平均で94.1%を示し,最も高い被験者で98.0%,最も低い被験者でも90.9%であった.この結果より,筋電位に基づいて動作識別を行う訓練経験のない,幅広い属性を持つ前腕切断者に対しても,識別器を用いた動作識別法が有効であることが示された.
  • 新村 猛, 赤松 幹之
    2010 年 46 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    従来,外食産業は調理コストと味はトレードオフにあると考えられてきた.本研究は,商品の製造原価低減と味覚品質向上との両立を目指して,調理プロセスの最適化を見出すための実験を行った.最初の実験では,従来の生産方式である店舗調理,工場調理方式に加え,調理プロセス最適化を試みた工程組換方式で煮穴子を調理し,各方式の製造原価を計算するとともに,成人30人を被験者として各方式で調理された煮穴子の官能検査を実施した.続く実験では,各調理方式の調理条件と味覚品質との関係を把握するため,K値(素材の鮮度・熟成指標)を計測した.これらの実験の結果,1)工場での集中調理と調理師による店舗調理を組み合わせることによって,店舗調理よりも味覚品質を高めるとともに製造原価が削減できること,2)素材の輸送時間と熟成時間を制御することにより,店舗消費時点での味覚品質を高めることができることがわかった.
  • 田中 悠也, 江原 義弘, 水澤 一樹, 古川 勝弥
    2010 年 46 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    筋電図情報を取り入れた最適化手法(EAO)により推定した筋張力は高い妥当性が報告されているものの,すべての筋からの筋電図の導出が必要であった.本研究では筋電図を貼付していない腸腰筋の筋活動に従来の最適化手法(OPT)により推定した筋張力を用いる方法を発案し,この方法により推定した歩行時の下肢筋の筋張力の妥当性を検証した.健常男性5名は5試行の歩行を実施した.モデルは下肢3関節,矢状面の11筋とし,そのうち8筋の筋電図を測定した.推定筋張力と筋電図の波形的な一致度としてPearsonの相関係数を求めた結果,r=0.74~0.84と高い一致度であった.腸腰筋の筋張力にはモデル化していない他の筋の張力が含まれていると考えられたが,本研究の筋張力の組み合わせは関節モーメントを満たしており,腸腰筋以外では筋電図との波形的な一致度が良好であったことにより,間接的に腸腰筋の妥当性を示唆していると考えられた.
  • 菅間 敦, 瀬尾 明彦, 土井 幸輝, 山口 眞美子
    2010 年 46 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    製造現場では,手作業時や手持ち工具使用時に作業者が上肢を挙上し,静的な筋負担を引き起こすなどの問題が生じている.本研究では,手持ちドライバ使用場面に着目し,ねじ締め作業時の作業面高が筋骨格系負担に及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした.ねじ締めを行う作業台の高さ4種類を実験条件として,センサが組み込まれた装置に手動ドライバを用いてねじを締結するという作業を10名の被験者に行うよう指示した.この結果を筋電図,作業姿勢,押圧力,主観的な負担感及び作業のしにくさの指標を用いて解析したところ,目の高さの条件において筋骨格系負担と主観的負担感が最も大きくなり,上肢挙上が作業者に与える影響が大きいことが示された.また,頭上での作業時には,頸部の後屈により首まわりに大きな負担を与えることも示された.
  • 山田 英治, 大須賀 美恵子, 橋本 渉, 井上 裕美子, 中泉 文孝
    2010 年 46 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    健康増進および介護予防において,運動をすることは有効である.しかし,自発的に運動を継続することは難しい.本論文では,家庭で簡単に利用できる身体活動を促進するシステムの構想と,継続的に利用してもらうにはシステムからの働きかけが必要であるという考え方を提案した.最初の試みとして,ロボットが運動ゲームの開始を働きかけるものを試作した.実体のあるロボットからの働きかけに対して被験者が受ける印象をSD(Semantic Differential)法を用いて評価した.ロボットの2次元画像を比較対象とした.実験は書面でインフォームドコンセントを得た,16名の20代の工学系男子大学生を対象に行った.比較の結果,28対の形容詞対のうち6対の形容詞対で実体のあるロボットに対して高い評価が得られた.このことから,実体のあるロボットからの働きかけが有効であることが示唆された.
短報
資料
  • 山下 利之, 守山 綾華, 簑下 成子
    2010 年 46 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,能面の表情認知における動的変化の効果を調べるために,傾きや陰影が動的に変化する能面画像を用いて,その能面が表す感情認知に関する実験を行った.中間感情を表すとされる小面の9つの静止画像および24の動的画像の各々について,特定の感情をどの程度表していると思うかに関する評定を,43名の被験者に行わせた.因子分析の結果,“ポジティブ感情”,“ネガティブ感情”の2因子が抽出された.また,能面の陰影や傾きを動的に変化させた場合,静止画像よりも認知される感情強度が強くなる傾向が示された.特に,ポジティブ感情の表情からネガティブ感情の表情へ変化させた場合と,逆にネガティブ感情の表情からポジティブ感情の表情へ変化させた場合の方が,ポジティブ感情どうし,ネガティブ感情どうしの変化よりも感情強度が強くなることが示された.
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