人間工学
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47 巻, 5 号
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原著
  • 東瀬 朗, 高野 研一
    2011 年 47 巻 5 号 p. 171-182
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,チームトレーニング手法の開発を最終目的とし,職種毎に重視されるチームワーク(TW)要素のプロフィールについて,職業人約1000人を対象に調査を行い,以下について検討した.1)質問紙によるTW要素の因子分析からTW因子の抽出(尺度の構成),2)職種毎に強化すべきTW因子の違いの明確化,3)TW因子の現実のチームパフォーマンスへの影響.その結果,TW因子は,チームメンバへの関心,開放性,斉一性など5因子で構成されることが示唆された.また,トレーニングで目標とするTW状態(目標レベル)と現状でパフォーマンスが高いTW状態(現状レベル高)に有意差が認められず,現状レベル高と現状レベル低の間には有意差が認められた.したがって,トレーニング開始前に対象チームに目標及び現状のチーム状態を尋ねることにより,強化すべきTW因子を把握できる可能性が示唆された.これにより,事前にトレーニング内容と目標を検討できる.
  • 齋藤 健治, 細谷 聡, 増田 正, 岡田 守彦
    2011 年 47 巻 5 号 p. 183-189
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,急激な力発揮(Rapid)時の表面筋電図の特徴を,最大随意収縮(MVC)時の表面筋電図を比較対象として,正規化と運動単位(MU)活動の観点から調べることであった.そのために,肘関節屈曲力と平均整流値(ARV),中央周波数(MDF),筋線維伝導速度(MFCV)といった表面筋電位変数を用いた.
    その結果,屈曲力とARVの関係から,Rapid時の表面筋電図振幅が屈曲力の割に大きくなる被験者群(グループI)とそうでない被験者群(グループII)に分けられた.すなわち,グループIIの場合は,従来の正規化手法の適用が可能であるのに対し,グループIの場合は,それに加えて何らかの較正が必要になることが示唆された.さらにこのことから,Rapid時の表面筋電図をMVC時の表面筋電図で正規化する際には,対象となる被験者がどちらのグループに属するかを別途明らかにしておく必要があることも示唆された.
    上記のような特徴に加え,MFCVはグループIとIIの間,あるいはRapidとMVCの間で差が認められなかった.これらのような,屈曲力と表面筋電位変数の特徴から,Rapid時のMU活動には,活動参加MU数がMVC時より少ないことや,少数のFタイプMU(収縮速度,収縮力およびサイズが大きなFastタイプMU)が優先的に活動参加し同期する,などの可能性があると推察された.
  • 村田 厚生, 越智 啓太, 森若 誠
    2011 年 47 巻 5 号 p. 190-197
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    視線データからディスプレイ上の視線位置を表示する手法として, 適応的移動平均法を提案して,移動平均法(10点),注視点直接表示とパフォーマンスを比較し,さらにカーソルを非表示にした場合のパフォーマンスへの影響を明らかにした.コマンド名の表示領域から隣接する選択領域に直接視線が入ることで選択したと見なすI-QGSM(Improved-Quick Glance Selection Method)法をメニュー選択法として用い,メニュー選択作業を被験者に実施させた.作業完了時間,エラー率,作業しやすさ・眼の疲労度の主観評価の観点から,提案した適応的移動平均法が望ましいことが示された.カーソル表示と非表示条件での作業完了時間とエラー率には,ほとんど差がなかった.また,主観評価を通して,カーソルを表示する場合よりカーソルを表示しない場合の方が,操作性の評価が高くなり,眼への疲労度も低いことがわかった.
  • 村田 厚生, 家守 進, 森若 誠
    2011 年 47 巻 5 号 p. 198-208
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    触覚警報によって危険場面に対する反応時間の短縮を図り,安全性を向上させることを目的とし,仮現運動による警報提示,単一の振動刺激による警報提示,警報なしの3条件を比較し,最適な触覚警報提示方法を明らかにした.被験者には,トラッキング作業,スイッチ操作,前後方向の危険場面に対する判断作業の三重課題を行わせ,トラッキング誤差,スイッチ操作の正答率,前後方向の危険場面に対する反応時間・正答率を計測した.若年者,高齢者ともに触覚刺激提示のある方が有効であり,高齢者は特に脚への提示によって後方の危険場面に対する反応時間,正答率が向上した.また,触覚警報の提示方法に関しては,仮現運動を利用した提示よりも単一の振動刺激のほうが反応時間が速くなった.
  • 高橋 祐一朗, 山崎 信寿
    2011 年 47 巻 5 号 p. 209-216
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    近年の歯科治療では医師の腰痛防止や治療精度向上のために患者を仰臥位にすることが多いが,患者は落下の恐れや座位から仰臥位に変わる時の顔面の充血などを感じていた.このため,角度・形状可変実験椅子を用い,頭部水平を保持してできるだけ体幹を起こすための許容背もたれ条件を求めた結果,上顎90°でも胸部は32°まで起こせることがわかった.また,背もたれ長は高齢女性身長5パーセンタイルから成人男性身長95パーセンタイルまで対応するように,腰部と脊柱を支える逆T字形クッションと肩甲部を支えるハの字形クッションに分割して伸長できるようにした.試作評価によれば,従来は背もたれ支持が不足していた高身長男性でも背もたれ上部端の圧迫が無くなった.また,姿勢変換前後の顔面血流量変化が9%減少し,仰臥位による不安感も改善した.
短報
資料
  • ―速度抑制効果の持続性とその波及性―
    中井 宏, 臼井 伸之介
    2011 年 47 巻 5 号 p. 222-228
    発行日: 2011/10/15
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,T字型無信号交差点内に敷設された台形ハンプが,非優先道路から優先道路へ右折する車両に及ぼす影響を観察調査により分析した.5つの時期(ハンプ敷設前,敷設直後,3ヶ月後,半年後,1年後)に記録された2740台のデータを分析したところ,ハンプは通行車両の速度を低下させる効果があるものの,その有効性は時間経過とともに小さくなることが示された.また,ハンプ敷設直後から3ヶ月後にかけては,ドライバーの左右確認回数が一時的に増加し,正の波及効果が認められた.その一方,一時停止率はハンプ敷設前が最も高く,負の波及効果が生じた.これらの結果から,道路安全対策の有効性評価に際しては,一時的な効果だけでなく持続的な効果測定が必要であり,また狙いとする側面以外への影響についてもリスク補償行動の観点から検証することが重要と言える.
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