ウェルビーイングの増進は世界保健機関(WHO)の目標の一つであり,国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3でも掲げられている.国際人間工学連合や日本人間工学会では,人間工学の目標は,ウェルビーイングとシステム全体のパフォーマンスとの最適化を図ること,としているが,ウェルビーイングの方法論については発展の途上にある.ウェルビーイングを高めるために物や環境,運用方法や社会制度を人間工学的に設計し,実践するためには,具体的な方法論が必要である.ここではその重要性をリサーチ・イシューとして述べ,基礎となる指標の一つとして遊び度を取り上げた.ここでの遊びの定義は,生存を直接の目的とせず,内発的動機づけによる自己の意思決定と行為による脳内報酬系の賦活,とされる.遊び度は,12項目からなる主観評価法である.ウェルビーイングの増進に資する研究や,指標を開発することが,人間工学研究者に求められる.
国際人間工学連合の改訂コア・コンピテンシーや,本学会から提言された持続可能な人間工学目標などにおいて,ステークホルダ協働を新たな学術研究課題として認識することが提言されている.本リサーチ・イシューでは,ステークホルダのウェルビーイングに配慮しながら人間工学知見を活用してチーム・ビルディングを行うための要素を「束ねる科学を実践するための7つの人間工学Tips」として紹介し研究課題として提言する.人間工学専門家には人々の暮らしが良くなるような選択をナッジするアーキテクチャであり,ステークホルダの相互作用をデザインし,社会課題を解決するアントレプレナーとしての役割が求められている.
座位時の姿勢と動作の研究においては,体圧分布と骨盤傾斜角の二つの計測がよく用いられている.筆者らは研究に先立ち,複数の家具メーカーが独自のデザインに基づいてそれぞれに製造したソファを対象に,市販の計測装置を用いて体圧分布と骨盤傾斜角の計測を学ぶ研修会を行った.その結果,自由な着座姿勢を許容するソファの計測においては市販の計測装置よりウェアラブル計測が適当であるとの発想が得られた.そこで大腿骨と腰椎のサジタル(矢状)面における体圧分布(圧プロファイルと呼称する)と骨盤傾斜角を同時計測するためのウェアラブル計測装置を開発した.計測時に自由な姿勢を許容する家具や福祉用具の計測では,市販の装置よりもウェアラブル計測が適切であることが示唆された.