人間工学
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61 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
リサーチ・イシュー
  • 鳥居塚 崇
    2025 年61 巻3 号 p. 147-153
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/06/21
    ジャーナル フリー

    本稿は人間工学(HFE:Human Factors and Ergonomics)が地球規模の問題に対応するために果たすべき役割について検討するものである.HFEはこれまで,人間の安全や健康,効率,快適さなどに主眼を置き,人間が関わる対象物との相互作用に着目して発展してきたが,近年では,システムズアプローチによる,より広い視野からの貢献が求められている.とりわけ,持続可能な社会の実現に向けて,従来の枠組みを問い直し,人間と環境・社会,さらには自然との関係を再構成する視点が必要とされている.本稿では,多様なステークホルダを考慮する必要があることを示しながら,HFEの可能性と今後の課題について考察する.

  • 中西 美和
    2025 年61 巻3 号 p. 154-159
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/06/21
    ジャーナル フリー

    自然言語処理(NLP)および大規模言語モデル(LLM)を用いて事故調査報告書として公開されている文書データを解析することで,事故やインシデントの要因や関連するヒューマンファクターを抽出しようとする研究開発が始まりつつある.本稿では,社会技術システムの事故調査を対象に,その効率化と質向上をねらいとした新たな方法論としての人工知能(AI)の活用可能性について,著者らの研究グループによる萌芽的研究を紹介しつつ考察した.特定の航空事故報告書を対象に,GPT(Generative Pretrained Transformer)にHFACS(Human Factors Analysis and Classification System)による原因(要因)同定の分析を行わせた結果から,生成AIを事故調査に応用することのよりよい方向性,限界および課題について検討し,ヒューマンファクターズ領域の果たす役割について再考した.

  • 申 紅仙
    2025 年61 巻3 号 p. 160-164
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/06/21
    ジャーナル フリー

    四半世紀にわたり蓄積されてきたパーソナリティ・行動尺度データを分析する機会を得た.5年分約19万人分の蓄積データを二次利用し,各パーソナリティとエラー傾向,妥当性低位と関係を探った.この分析プロセスにおいて,倫理上の問題や分析結果の取り扱いなど留意すべき問題がいくつかあった.そのほか今後考慮すべき問題としてオプトアウトなど収集後の対応,平均・分析対象数・標準偏差など研究成果の二次活用に向けた配慮についても整理した.

  • 村木 里志
    2025 年61 巻3 号 p. 165-171
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/06/21
    ジャーナル フリー

    人間工学は理論と実践の往還を通じて,作業,仕事,製品,環境,システムの設計に貢献する学問領域である.本稿では,人間工学誌の編集に携わってきた経験と一人間工学専門家としての視点から,理論と実践の現状を整理する.さらに,両者の共栄と往還を促進し,人間工学を次のステージへと発展させるための課題を明確にし,今後の展望を示す.

実践報告
  • 多田 竣汰, 中野 匠, 中嶋 良介, 志田 敬介
    2025 年61 巻3 号 p. 172-180
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/07/25
    ジャーナル フリー

    多品種少量生産において,作業者は多様な作業手順を習得する必要があり,作業の標準化と習熟の促進は重要な課題となっている.本研究では,デジタル技術を活用した作業の分析・管理システムを提案し,リアルタイムに組立作業を監視し,日々の作業履歴データを収集・分析することで,作業の進捗状況や各部品の組立時間,組立順序のばらつきを可視化するシステムを開発した.これにより,従来では困難であった詳細なレベルで作業の現状を把握でき,改善すべき作業を明確化することが可能となった.また,作業者間の習熟度や組立作業のばらつきの差異を評価できるようになった.実際の生産現場に導入した結果,作業改善の優先順位を明確にし,作業の標準化や習熟向上に寄与する新たな情報として活用できることが示された.本研究は,開発したシステムを多品種少量生産における有効な作業管理手法として提案し,実際の生産現場での実証を通じてその有用性を示すものである.

原著論文
  • -映像脈波ピーク検出の精度評価-
    竹内 大樹, 鎌倉 快之, 大須賀 美恵子
    2025 年61 巻3 号 p. 181-189
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/07/25
    ジャーナル フリー

    VDT作業者の状態評価は,作業者の健康管理および作業環境の最適化に不可欠である.覚醒状態や注意集中などの評価には自律神経系指標や脳波・眼球運動に関連する指標が有用であるが,従来の計測手法ではセンサやデバイスの装着が必要であり,作業者の負担や作業動作による計測不備が課題となる.そこで,汎用RGBカメラを用いて複数の指標を一度に非接触計測する手法を開発した.本報告ではそのうち脈波に焦点を当て,SVMを用いて誤検出ピークを検出し除去・補完する手法を実装して評価した.インフォームド・コンセントを得た健康な成人男性13名を対象に,約8 minのVDT作業中のデータを取得し解析した.脈波ピーク検出精度の評価は,指尖脈波から得られるピークを正値とし,偽陽性率5.85%,偽陰性率5.61%,誤検出ピーク除去後の平均脈拍数の比較では,MAE 0.70 bpm,RMSE 0.44 bpmを達成し,実用に耐える性能が得られた.以上より,提案手法は,VDT作業者に負担をかけずに平均脈拍数を推定できるという点で有用であるといえる.

  • -視線推定と瞬目解析の精度評価-
    竹内 大樹, 鎌倉 快之, 大須賀 美恵子
    2025 年61 巻3 号 p. 190-198
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/07/25
    ジャーナル フリー

    VDT作業者の状態を把握する技術は作業効率の向上や健康管理に有用である.作業者の状態や無意識の反応を捉えることができる生理反応の利用を想定し,装着の負担がないRGBカメラを用いた計測手法を開発した.第1報では自律神経系指標を取り上げたが,本報告では集中度や認知的負荷を示す指標である瞬目や視線推定に焦点を当てた.第1報と同じ,13名の健康な成人男性の約8 minのVDT作業中のデータを解析対象とした.顔映像から顔の特徴点を抽出し,瞬目波形と視線を推定した.眼電図を基準として瞬目検出精度を評価し,既存研究より良好な結果を得た.視線推定は視点移動時点と方向の把握には有用だが,注視領域推定は目標とした精度は得られなかった.提案手法の優位性は,特別なハードウェアを要せずCPUのみで実時間処理できることと,低解像度映像から瞬目波形を推定できることにある.これらより,本手法は現場での実用性が高いといえる.

    Editor's pick

    日本人間工学会研究奨励賞 2026年受賞論文

  • 小野 真子, 中西 美和
    2025 年61 巻3 号 p. 199-211
    発行日: 2025/06/15
    公開日: 2025/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,事前学習によって単語の意味を学習させることで文脈を捉えてモデル構築する自然言語処理手法の一つであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いて,航空安全報告制度(ASRS:Aviation Safety Reporting System)によって収集された大量のヒヤリハットデータを対象に,航空分野のレジリエンス・コンピテンスを網羅的に同定することを目的とした.Narrativeと呼ばれる自由記述の報告文575件を用いて,レジリエンスを構成する4能力(予見,監視,対処,学習)も考慮して抽出するモデルを構築した上で,このモデルを用いて42,938件のデータを分析した.Sentence-BERTを用いて,レジリエンスの各能力(予見,監視,対処,学習)が含まれるとされた文をベクトル化し,k-means法でクラスタリングして各クラスタを意味解釈することで,航空関係者がヒヤリハットを事故に至らしめないために活用しているレジリエンス・コンピテンス31項目を見出した.この項目群は,同様の目的を持つ先行研究と比較しても十分な網羅性があることを確認した.また,ここで見出されたレジリエンス・コンピテンスの実務への応用例についても議論した.

    Editor's pick

    日本人間工学会研究奨励賞 2026年受賞論文

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