2020年1月以降,新型コロナウィルス(COVID-19)に対するリスク対応が喫緊の社会課題である.このようなCBRNE災害(Chemical, Biological, Radiological, Nuclear and Explosive)に対し,人間工学が果たせる貢献のひとつにリスクコミュニケーションがあげられる.本稿では次の4視点で人間工学におけるリサーチイシューを整理した:1)CBRNE災害におけるCERC要素とそのリサーチイシュー,2)社会不安へ対応する行動志向型コミュニケーションのリサーチイシュー,3)COVID-19の公衆衛生危機に対する人間工学研究と実践のリサーチイシュー,4)人間工学コミュニティが果たす役割.これら4視点からCOVID-19による社会不安軽減に向けた人間工学研究の方向性を示すこととした.
日本人間工学会研究奨励賞 2021年度受賞論文
Safety-1では,「安全とは悪いアウトカムの数ができるだけ少ない状態にあること」,Safety-2では「安全とは成功のアウトカムができる限り多い状態にあること」とされている.本研究では,状況変動に応じたSafety-1及びSafety-2両モードの使い分けの有効さを実験的に検証すること,及び両モードを切り替えるべき状況変動の定量的な目安を導き出すことを目的とした.火災発生時の消火活動を想定したシミュレーション実験の結果から,1)状況変動が大きくなるほど,Safety-1モードからSafety-2モードに切り替えて対応するケースが増えるが,一方で定常状態に比して15倍を超えるような状況変動が生じない限りSafety-2モードへの切替には慎重であること,2)状況変動が大きくなるほど,Safety-1モードで対応するよりSafety-2モードで対応する方が,成功のアウトカムは増し,成功のアウトカムを得るためのよりよい切替のタイミングの目安は,状況変動の大きさが定常状態に比して4~6倍であること,を示した.
一般に,非接触型の視線入力装置では,使用開始前にキャリブレーションを必要としている.しかし,知的な遅れがあり身体を思うように動かすことが難しい重度重複障害者にとって,キャリブレーションの操作指示に従い視線を移動させることは困難である.専用の機器を必要とする手間がかかることも視線による意思表示を難しくしている.本研究では,意思表示に必要な分解能を維持しつつキャリブレーションを必要としないリアルタイム視線領域推定システムを構築した.通常のwebカメラを用い,目や顔の情報を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で学習することにより視線領域推定を実現している.次に,画面上に36か所の注視点を設け,カメラと顔までの相対的な距離および顔の姿勢角を変化させて評価実験を行った.その結果,基本姿勢において,距離については1,200 mm,位置では100 mm下方まで実用的な精度が維持されていることが確認された.姿勢角については1人の被験者のみを対象とした結果であるが,ヨー角10度,ピッチ角15度,ロール角15度までは精度が保たれることが確認された.
日本人間工学会論文賞 2021年度受賞論文
運転中に前方に発生する異常事象をいかに素早く発見するかに着目すると,運転士の注視行動(注視対象物や注視時間)のあり方が重要だと考えられる.本研究では,異常事象発見のための有効な視覚探索方略を明らかにすることを目的とした.鉄道事業者の現役の運転士121名を対象に,視線検知装置付き運転シミュレータを用いた実験を行った.運転シナリオは二重課題とした.メインタスクは事前に知らされた地上設備故障の手前で一旦停止する課題,サブタスクは約90 km/hで走行中に事前に知らされていない隣接線の陥没を発見し停止するという課題であった.陥没箇所を発見し通り過ぎる前に停止した運転士を「発見群」,陥没箇所を通り過ぎた運転士を「非発見群」と分類した.運転士の注視行動を分析した結果,発見群は非発見群と比較して,前方正面の総注視時間が長く,一回あたりの注視時間も長かった.
日本人間工学会研究奨励賞 2020年度受賞論文
床暖房起動時における床温や室温の変化が生理的および心理的反応に及ぼす影響を検討するため,実験住宅にて実験を行った.実験は冬服(0.9clo)を着用した健康な若年女性8人を対象に,立ち上がり加温速度の異なる4条件で,床暖房起動時と安定時における皮膚温,深部体温,温冷感,快適感などをそれぞれ210分間測定した(30分の休憩を含む).その結果,起動時に急激に床温が上昇した場合,環境温の変化に対し平均皮膚温の変化が追いつかず,一方で深部体温が低下した.さらに床温が40℃という高温にもかかわらず温冷感は「暖かい」程度にとどまるため,暖かいほど快適と感じる傾向が認められた.また温冷感は,足底部皮膚温や平均皮膚温のみならず深部体温の低下に関係していた.床暖房起動時は自身の温冷感や快適感に基づき温度設定を行うと,必要以上に環境温を上昇させてしまう可能性が示唆された.
日本人間工学会研究奨励賞 2019年受賞論文
サーキットのコーナー進入における旋回制動時のプロドライバと一般ドライバの運転挙動の比較
公開日: 2011/02/14 | 46 巻 1 号 p. 68-78
原中 喜源
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反応時間研究の歴史と現状
公開日: 2010/03/11 | 21 巻 2 号 p. 57-64
大山 正
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特集③人間工学のための計測手法
公開日: 2016/11/05 | 52 巻 1 号 p. 6-12
中川 千鶴
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感覚・知覚測定法 (I)
公開日: 2010/03/11 | 4 巻 1 号 p. 37-47
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E1-2 聴覚的クロノスタシスに及ぼす空間的注意の影響
公開日: 2017/09/07 | 53 巻 Supplement1 号 p. S148-S149
中尾 美咲, 石橋 圭太, 岩永 光一
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日本人間工学会大会講演集
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