床暖房起動時における床温や室温の変化が生理的および心理的反応に及ぼす影響を検討するため,実験住宅にて実験を行った.実験は冬服(0.9clo)を着用した健康な若年女性8人を対象に,立ち上がり加温速度の異なる4条件で,床暖房起動時と安定時における皮膚温,深部体温,温冷感,快適感などをそれぞれ210分間測定した(30分の休憩を含む).その結果,起動時に急激に床温が上昇した場合,環境温の変化に対し平均皮膚温の変化が追いつかず,一方で深部体温が低下した.さらに床温が40℃という高温にもかかわらず温冷感は「暖かい」程度にとどまるため,暖かいほど快適と感じる傾向が認められた.また温冷感は,足底部皮膚温や平均皮膚温のみならず深部体温の低下に関係していた.床暖房起動時は自身の温冷感や快適感に基づき温度設定を行うと,必要以上に環境温を上昇させてしまう可能性が示唆された.
日本人間工学会研究奨励賞 2019年受賞論文
複雑化した社会技術システムの安全を確保する概念として,Hollnagelは2種類のアプローチを提言している.すなわち,リスクを低減するSafety-Iならびに成功を拡張するSafety-IIという安全の概念である.また,Safety-IIを具現化する手法としてレジリエンスエンジニアリングが提唱されている.本研究は,これまで失敗や過誤に注目して分析されてきた福島第一原子力発電所事故対応の「さらなる事故進展を食い止めた」側面に着目し,レジリエンスエンジニアリングを用いて3号機の注水回復の事例を分析した.その結果から,既存の事故調査の事故対応の捉え方と異なった視点をもつ安全性向上の学習のあり方を明らかにした.
日本人間工学会論文賞 2019年受賞論文
我が国の鉄道のプラットホームで発生する鉄道人身障害事故やプラットホームからの転落の約60%は酔客が原因である.本研究の目的は,プラットホームに設置している防犯カメラ映像を分析し,プラットホームからの転落や列車接触に至った酔客の転落・列車接触時の行動パターンと転落前に見られる前兆行動を明らかにすることである.その結果,酔客の転落・列車接触時の行動パターンが3種類,転落前に見られる前兆行動が5種類あり,それぞれの行動の発生確率が判明した.また,酔客は転落・列車接触の直前までホーム上で静止しており,動き出してから数秒の間に転落・列車接触に至ったケースが全体の約90%を占めていた.このことから,駅員が前兆行動中の酔客を発見した場合は,速やかに酔客に声をかける等して,酔客の安全を確保することが重要である.
日本人間工学会研究奨励賞 2018受賞論文
本研究では,ドライバエージェントの受容性を明らかにする為に,エージェントに対する主観的評価実験を行った.評価者は,高齢者を含む幅広い年齢である.評価するエージェントは「音声」「映像」「ロボット」の3種類の形態である.エージェントに対する評価の結果,「親しみを感じる」等の評価項目では,高齢層と非高齢層に共通して,ロボットエージェントの評価が高かった.また,「邪魔だと思う」等の評価項目では,音声・映像よりも,ロボットエージェントの評価が低かった.このことから,ロボットエージェントは受容性が高く,阻害要因になりにくいと考えられる.また,ドライバエージェントを繰り返し使用することで,評価結果が変化したことから,継続利用の影響も示唆された.今後の研究課題として,最も受容性の高かったロボットエージェントを対象とした運転後の行動変容や長期利用に伴う変化等について検討が必要である.
日本人間工学会論文賞 2018受賞論文
日本人間工学会研究奨励賞 2017年受賞論文
セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題
公開日: 2010/12/03 | 45 巻 5 号 p. 263-269
市原 茂
Views: 1,330
反応時間研究の歴史と現状
公開日: 2010/03/11 | 21 巻 2 号 p. 57-64
大山 正
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特集③人間工学のための計測手法
公開日: 2016/11/05 | 52 巻 1 号 p. 6-12
中川 千鶴
Views: 717
特集③人間工学のための計測手法 第4部:生体電気現象その他の計測と解析(1)
公開日: 2016/09/28 | 51 巻 6 号 p. 400-405
増田 正
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感覚・知覚測定法 (I)
公開日: 2010/03/11 | 4 巻 1 号 p. 37-47
Views: 681
日本人間工学会大会講演集
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