バーチャルリアリティ(VR)を利用した時に発生する酔いを軽減する目的で,モーションベースという装置を用いて体全体を動かし前庭刺激を与える手法がしばしば用いられる.本研究では,VR酔いを誘発しやすい映像とされている回旋性視運動刺激を対象として,VR酔いに関連する不快な情動反応を軽減するモーションベースの制御方法について実験的な検討を行った.本実験では,20名の大学生を対象に,モーションベースの制御が異なる3条件下で同一の回旋性視運動刺激を観察させ,Self-Assessment Manikinを用いて感情尺度を測定し,さらに回旋性の眼球運動の様子を観察した.その結果,モーションベースを回旋性視運動刺激の回転方向,もしくはその逆方向に傾斜させることが不快感の抑制に効果的であることがわかった.さらに,不快感の抑制メカニズムが,モーションベースの制御方向により異なることが示唆された.
日本人間工学会研究奨励賞 2022年度受賞論文
本研究では,航空管制に代表される複雑かつ認知的負荷の高い業務を対象に,人の視覚的特性を考慮した画面を設計することにより,ユーザーのタスクパフォーマンス向上や作業負荷低減の実現を目指している.今回筆者らは,視覚的注意に影響の大きい情報の誘目性に着目し,業務支援のための機能表示に色の誘目性を活用したときの,タスクパフォーマンス,状況把握,および作業負荷への影響を明らかにする実験を実施した.実験参加者は熟練航空管制官6名であった.実験タスクは現場の管制業務を模したマルチタスクとし,管制指示タスクをメインタスクに,航空機受け渡しタスクをサブタスクに設定した.そして,管制指示タスクにおける航空機の重要度に応じて色の誘目度を高中低の3段階に割当て,高と低の誘目度の差が(a)ない,(b)小さい,(c)大きい,の3パターンの実験条件を設定した.結果,情報間の色の誘目度の差が小さい画面条件では,メインタスクのパフォーマンスが相対的に高く,認知的負荷についても良好な傾向が見られた.
日本人間工学会論文賞 2022年度受賞論文
2020年1月以降,新型コロナウィルス(COVID-19)に対するリスク対応が喫緊の社会課題である.このようなCBRNE災害(Chemical, Biological, Radiological, Nuclear and Explosive)に対し,人間工学が果たせる貢献のひとつにリスクコミュニケーションがあげられる.本稿では次の4視点で人間工学におけるリサーチイシューを整理した:1)CBRNE災害におけるCERC要素とそのリサーチイシュー,2)社会不安へ対応する行動志向型コミュニケーションのリサーチイシュー,3)COVID-19の公衆衛生危機に対する人間工学研究と実践のリサーチイシュー,4)人間工学コミュニティが果たす役割.これら4視点からCOVID-19による社会不安軽減に向けた人間工学研究の方向性を示すこととした.
日本人間工学会研究奨励賞 2021年度受賞論文
Safety-1では,「安全とは悪いアウトカムの数ができるだけ少ない状態にあること」,Safety-2では「安全とは成功のアウトカムができる限り多い状態にあること」とされている.本研究では,状況変動に応じたSafety-1及びSafety-2両モードの使い分けの有効さを実験的に検証すること,及び両モードを切り替えるべき状況変動の定量的な目安を導き出すことを目的とした.火災発生時の消火活動を想定したシミュレーション実験の結果から,1)状況変動が大きくなるほど,Safety-1モードからSafety-2モードに切り替えて対応するケースが増えるが,一方で定常状態に比して15倍を超えるような状況変動が生じない限りSafety-2モードへの切替には慎重であること,2)状況変動が大きくなるほど,Safety-1モードで対応するよりSafety-2モードで対応する方が,成功のアウトカムは増し,成功のアウトカムを得るためのよりよい切替のタイミングの目安は,状況変動の大きさが定常状態に比して4~6倍であること,を示した.
一般に,非接触型の視線入力装置では,使用開始前にキャリブレーションを必要としている.しかし,知的な遅れがあり身体を思うように動かすことが難しい重度重複障害者にとって,キャリブレーションの操作指示に従い視線を移動させることは困難である.専用の機器を必要とする手間がかかることも視線による意思表示を難しくしている.本研究では,意思表示に必要な分解能を維持しつつキャリブレーションを必要としないリアルタイム視線領域推定システムを構築した.通常のwebカメラを用い,目や顔の情報を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で学習することにより視線領域推定を実現している.次に,画面上に36か所の注視点を設け,カメラと顔までの相対的な距離および顔の姿勢角を変化させて評価実験を行った.その結果,基本姿勢において,距離については1,200 mm,位置では100 mm下方まで実用的な精度が維持されていることが確認された.姿勢角については1人の被験者のみを対象とした結果であるが,ヨー角10度,ピッチ角15度,ロール角15度までは精度が保たれることが確認された.
日本人間工学会論文賞 2021年度受賞論文
反応時間研究の歴史と現状
公開日: 2010/03/11 | 21 巻 2 号 p. 57-64
大山 正
Views: 934
特集③人間工学のための計測手法
公開日: 2016/11/05 | 52 巻 1 号 p. 6-12
中川 千鶴
Views: 421
セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題
公開日: 2010/12/03 | 45 巻 5 号 p. 263-269
市原 茂
Views: 294
C1-1 足底への刺激と立位安定性の関連
公開日: 2017/09/07 | 53 巻 Supplement1 号 p. S138-S139
齋藤 誠二, 正木 良典, 村上 智大
Views: 282
日本語版NASA-TLXによるメンタルワークロード測定
公開日: 2010/03/12 | 32 巻 2 号 p. 71-79
芳賀 繁, 水上 直樹
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日本人間工学会大会講演集
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