体外循環技術
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23 巻, 1 号
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  • 主に免疫学的副作用を中心に
    高橋 雅彦, 田所 憲治
    1996 年 23 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    輸血副作用には,軽微な蕁麻疹から重篤な副作用であるABO不適合,輸血関連肺障害,輸血後GVHDなどが報告されている。本稿では,免疫を介して起こる輸血副作用について,その機序,臨床的事項,頻度,対症療法などについて簡略に述べた。更に,赤十字血液センターが展開している医療機関の自発報告に基づく全国的な副作用調査から,特に非溶血性副作用と輸血後GVHDについても報告した。非溶血性副作用の報告が全報告数の約3/4を占め,血小板輸血にアナフィラキシーが多く,赤血球輸血に発熱反応が多く報告された。また,重篤な副作用ほど即時型で輸血開始5~10分以内に発現するものが多かった。輸血後GVHDはマイクロサテライトDNA多型解析によって10例(1994年)が確定された。患者危険因子は,担癌手術,開心術患者などへの輸血,高齢,初回輸血などであった。このような疾患に同種血輸血を施行する際は,放射線照射した血液の使用が望まれる。今後、輸血副作用を予防するため,原因究明を急ぐとともに,輸血の適応を厳密に行い,緊急避難的に同種血輸血を施行する際は,副作用を考慮した説明と同意が必要となる。
  • 杉浦 辰美, 坂本 亮輔, 早川 政史
    1996 年 23 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腎不全患者11症例に対し開心術を施行した。体外循環中の血清電解質,高窒素血漿およびヘモグロビン値の維持補正を目的に,血液透析法および血液濾過法を併用し,ほぼ正常にコントロールすることができた。装置は人工心肺装置の血液貯血槽に血液解析装置ならびに血液濾過装置を組み込み,生体循環に関与しない方法で行い,安全に施行することが可能であった。
  • 森田 高志, 見目 恭一, 関口 敦, 会田 治男, 田畑 喜朗, 片倉 健二郎, 笹川 繁, 吉田 譲, 菊池 寛二, 大木 康則, 福山 ...
    1996 年 23 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1991年1月より1995年12月までの冠動脈バイパス手術の際,軽度低体温下に間歇的大動脈単純遮断法でのAnoxic Clamp症例(N=32)と,心筋保護液使用症例(N=34)とを比較検討した。間歇的大動脈単純遮断法は,グラフト吻合1本あたりの動脈遮断時間と体外循環時間の短縮,体外循環中の水分出納バランスの改善,輸血量削減に良好な結果を得た。また,人工心肺は輸液量削減による除水施行症例の減少,心筋保護液注入装置が不要なことから,システムのコスト削減,簡素化が計れた。また,繰り返す大動脈クランプからのプラーク飛散が原因と考えられる脳障害は経験しておらず,本法は術中,術後経過などから,心筋保護液使用症例と遜色ないものと考えられる。
  • 完全閉鎖型人工心肺回路の臨床応用に向けて
    百瀬 直樹, 前田 孝雄, 安藤 勝信, 又吉 盛博, 北村 麻夫
    1996 年 23 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    循環血液流量(送血流量)と循環血液量を独立して管理できる完全閉鎖回路の臨床応用に向けて,体外循環の主な血流が貯血槽を通らない人工心肺回路(半閉鎖回路)を作製した。本回路の特徴は,従来の人工心肺回路のように主な血液の流れの中に貯血槽を置かないことと,簡単に完全閉鎖回路とすることができることである。本回路には,脱血回路に混入した気泡を貯血槽で除去できない大きな問題点がある。対策として人工肺およびエアトラップにより気泡除去を行うこととした。in vitro testにおいて混入させた気泡は,全て人工肺で除去できることが解った。本回路を92例に臨床応用し,安全に体外循環を行うことができた。今後,完全閉鎖回路の臨床応用が課題である。
  • 西分 和也, 林 哲也, 尾嶋 良恵, 木下 昌樹, 新田 功児, 和田 英喜
    1996 年 23 巻 1 号 p. 22-24
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回我々は,ヘパリンコーティング人工心肺回路を使用する機会を得た。従来の人工心肺回路と比較し,1995年10月~1996年4月までに,待機的に行った冠動脈バイパス術(CABG)16例を対象として,TAT・PIC・遊離ヘモグロビン・血小板数・術後出血量・抜管までの時間について検討を行った。両群とも背景因子,体外循環法について有意差は認められなかった。TAT・PIC・遊離ヘモグロビン・術後出血量・抜管までの時間においては有意差は認められなかったたが,血小板数においては体外循環中有意にヘパリンコーティング回路において温存傾向を示した。
  • ―タインド型およびスクリューイン型電極の比較―
    中尾 一俊, 宮之 下誠, 池水 一則, 黒瀬 満郎, 曽原 寛, 網谷 滋, 宮原 健吉, 古賀 正哲, 野崎 周作, 三角 一浩, 坂元 ...
    1996 年 23 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    一度植え込まれたペースメーカー心内膜電極を抜去する事は通常ありえないが,感染を引き起こし菌血症となるとペースメーカー本体はもとより,電極そのものを抜去しない限り感染を治癒させることは極めて困難である。感染リードの抜去法に関してはこれまで多くの報告があるが,いずれも確実性や安全性,あるいは経済性の点で問題があると言わざるを得ない。そこで今回我々は,スクリューイン型電極とタインド型電極の慢性期抜去時に要する張力を,雑種成犬を用いて実験的に比較検討する機会を得た。結果:スクリューイン型電極の抜去に要する張力は,タインド型電極の4分の1にしかすぎず,慢性期においても比較的容易にかつ用手的に抜去できるものと考えられた。スクリューイン型電極の急性期および慢性期の刺激閾値の安定性については最近の臨床で証明されており,従って感染などを考慮した場合タインド型電極より,むしろスクリューイン型を選択すべきと考えられた。
  • 川脇 雄次, 内田 雄三, 森義 顕
    1996 年 23 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    遊離ヘモグロビン除去可能な血液濃縮器を用いて,通常の使用法(正濾過法)および中空糸外部灌流方式による逆濾過法を実験的に用いて実験を行った。除水効率,ヘマトクリット値,血漿総蛋白値,遊離ヘモグロビン値を比較検討した。また灌流後,中空糸の内外表面を走査電子顕微鏡にて観察した。除水効率,'血液および血漿総蛋白の濃縮度は,逆濾過群が有意に高かった。遊離ヘモグロビン除去能は,正濾過群が30分まで有意に高かったがそれ以後は有意差はなかった。血漿総蛋白の篩係数は逆濾過群が低値であった。未使用の中空糸内外表面膜の細孔に比し,正濾過法の内表面細孔,逆濾過法の外表面細孔とも蛋白の付着物にて孔径が縮小していた。逆濾過群が除水効率は良好であり,アルブミン成分保存に優れているものと考えられた。遊離ヘモグロビン除去は正濾過群が良好であった。
  • ― 中等度低体温法との比較―
    成田 安志, 樗木 等, 古川 浩二郎, 土井 一義, 井上 次人, 馬場 英明, 伊東 正広
    1996 年 23 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    開心術時の体外循環(以下,CPB)により,血中補体活性化が起こり,術後の臓器不全や異常出血を来たすことが知られている。我々は,CPBを用いた開心術において,中等度低体温法非コーティング回路使用群(以下,NC群),ヘパリンコーティング回路使用群(以下,HC群)と軽度低体温体外循環法ヘパリンコーティング群(以下,THC群)のCPB前後で補体各成分,血小板数,24時間出血量等の計測を行い臨床的有用性を検討した。対象は1993年11月から1996年6月までの18例。C3aはICU帰室時でTHC群,HC群で低く,血小板数は1PODでHC群が高かった。術中大動脈遮断解除からCPB離脱までの時間も,HC群では短かったがTHC群では延長傾向でであった。THC群で補体活性化は抑制傾向にあったが,血小板温存は認められず,術後24時間出血量もHC群に比して増加傾向であった。これらより,今回行った検討では,軽度低体温体外循環法は臨床的有用性は低かったが,いくつかの問題点もあり,今後の検討が必要と思われる。
  • 竹内 邦夫, 川上 恭司, 向井 省吾
    1996 年 23 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    常温体外循環下(Warm群11例,36℃)と軽度低体温下(Cold群9例,32~34℃)で,開心術後2週間の凝固-線溶系の変動を比較検討した。手術術式は冠動脈バイパス術に限定して行い,WBC(白血球),Plt,Fbg,TAT,PIC,C3,C4,CH50を術前,人工心肺開始60分,人工心肺終了後60分,術後2,7,14日に測定した。血小板数,補体活性においてはWarm群が高い傾向を示し,白血球数は体外循環中から術後にかけてWarm群が有意に低い値を示していることより,常温体外循環は,生体への侵襲が極めて少ないことが予測された。これらにより,常温体外循環は,出血,凝固機能の温存に有効で,しかも,免疫機能温存の可能性が示唆された。
  • 鈴木 一郎, 尾越 登, 千葉 美樹
    1996 年 23 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年,体外循環中の自己白血球カミ活性化し,開心術における再灌流障害の原因のひとつとして考えられている。血液心筋保護液中の微小塞栓除去フィルターに,白血球を減少させる機能を合わせ持つ,血液心筋保護液用フィルターBC1Bを成人開心術症例に使用(BC群)し,非使用例(Control群)と比較しその有効性,安全性について検討した。2群の人工心肺条件はほぼ同等であり,副作用の発現は両群とも認めなかった。白血球数は,フィルター出口にて有意に低値となり,血液2l通過時の白血球除去率は98.24%で,白血球数,血小板数,赤血球数についても有意差を認めた。圧力損失は,△4.41±2.6mmHgであった。LDH, CPK, TnT, BNPは,BC群で低値をとる傾向を示したが有意差は認めなかった。術後の心機能や合併症の発生にも両群間に差はなく,BCIBフィルターは安全に使用が可能であった。
  • 久保田 充稔, 久保田 浩光, 金子 ゆかり, 赤池 祝昭, 鹿野 直幸, 桜井 勝, 矢部 順一, 広瀬 善弘, 香内 信明, 鈴木 隆三
    1996 年 23 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    心筋保護付加剤の有用性について、術中術後4群間で比較検討した。心筋保護液はSt.Thomas液のみ(A群)、A群にニトログリセリンを付加(B群)、A群に塩酸ニカルジピンを付加(C群)、およびC群の心筋保護液を使用し人工心肺回路ヘニトログリセリンを追加(D群)に分け、6時間ごと48時間に渡り12誘導心電図の最大ST上昇値、最高CPK-MB値などについて、冠動脈バイパス術を施行した63症例で測定した。再灌流障害、周術期心筋梗塞、冠動脈spasmなどの、何らかの心筋障害の指標となりえる最大ST上昇値、最高CPK-MB値は、A群に比しB群症例でのみ有意に低かった(p<0.01)。またC、D群ではほとんど変化は認めなかった。cold crystalloid cardioplegiaでのSt.Thomas液にニトログリセリン付加した心筋保護法の有用性が示唆された。なお、心筋保護液注入時に灌流圧が著しく低下するために注意を要する。
  • 山内 良司, 飯塚 嗣久, 笹盛 幹文, 吉岡 政美
    1996 年 23 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    新しい外部灌流式模型人工肺SPIRAL GOLD▲R▼と,従来使用していたUNIVOX GOLD▲R▼ とのガス交換能の比較検討を行った。UNIVOX GOLD▲R▼を使用した,冠動脈バイパス術(以下,CABG)単独人工心肺症例20例と,SPIRAL GOLD▲R▼を使用したCABG単独人工心肺症例20例とを,平均体外循環灌流量3.0l/min以上4.0l/min未満,4.0l/min以上5.0l/min未満と, Flow Rate別に, PaO2, PaCO2, FiO2, V/Q比を体外循環(以下,CPB)開始後5分,30分,60分,復温時について比較検討を行い,その結果,SPIRAL GOLD▲R▼を使用した症例が有意にガス交換能は良好であった。また,CPB時間が120min以上の症例に対する比較についても,同様の結果が得られた。人工肺SPIRAL GOLDはFlow Rate, CPB時間に左右されず,安定したガス交換能を有した人工肺と考えられた。
  • 吉岡 政美, 飯塚 嗣久, 笹盛 幹文, 山内 良司
    1996 年 23 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当施設では, MENOX AL-6000を使用した非冷却体外循環が行われている。 AL-6000は膜面積が1.2m2と小さいため,非冷却体外循環時に体表面積が大きくなるほどガス交換能に差がでてくるように考えられる。そこで体表面積別にガス交換能について比較検討した。体表面積1.3~1.5m2をI群,1.5~1.7m2をII群,1.7~1.9m2をIII群,1.9m2以上をIV群に分類し, PaO2,PsCO2,ガス/血流量比,酸素濃度について検討した。 AL-6000の酸素添加能や炭酸ガス排出能は,酸素濃度やガス/血流量比が高めながらも良好に維持され,ガス交換能としてある程度の余裕があると考えられた。しかし,体表面積が大きくなるにつれ余裕は少なくなっていった。経時的には,ガス交換能の低下はみられず,常に安定したガス交換能を得られた。これらのことによりAL-6000は,常温体外循環での一般開心術にも問題なく使用し得ると考えられた。
  • 石曽根 明浩, 曽根 慎一, 大塚 勝哉, 梅園 直樹
    1996 年 23 巻 1 号 p. 63-64
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    疎水性である膜型人工肺の中空糸は,界面活性剤により親水化され,血漿リークを起こしてガス交換能を低下させる可能性があることから,界面活性剤エキソコルポールが人工肺に与える影響を検討した。臨床例でエキソコルポール使用群と非使用群で体外循環中の酸素化能を比較した結果,使用群の方がやや低値を示した。また,実験例でも界面活性剤により人工肺のウェット化が認められ,ガス交換能が低下した。以上により,臨床ではエキソコルポールの使用方法について十分考慮する必要性が認められた。
  • 山崎 隆文, 安田 剛, 小山 貴史, 皆川 宗輝, 増山 尚, 堀 和芳
    1996 年 23 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    近年,技術の進歩に伴い血液分析器も小型軽量化が進められ,今日では携帯可能な血液分析器が開発されている。そこで今回,小型軽量(443g)のポータブル血液分析器i-STAT社製i-STAT200専用カートリッジGE7+を用い,7項目の測定(pH, PCO2, PO2, Na, K, iCa, Hct)を術中の血液検体を用いて,比較機器との相関を求め,更にBland-Altman法を用いて比較検討を行った。その結果,全てのパラメータにおいて良好な相関関係を認めた。各測定項目で若干のBiasを生じたが,臨床上大きな問題はなく有用な装置であると考えられた。
  • 田畑 喜朗, 関口 敦, 会田 治男, 片倉 健二郎, 森田 高志, 菊池 寛二, 笹川 繁, 吉田 譲, 大木 康則, 福山 智明, 見目 ...
    1996 年 23 巻 1 号 p. 72-74
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当施設では弓部大動脈瘤の手術の際,落差式脳分離体外循環を用いている。1995年12月~1996年5月までの7例に対し,本回路を流用し逆行性冠灌流カニューレ(DLP社RCSP15Fr)を用いて,落差式逆行性脳灌流を施行した。落差式逆行性脳灌流は,20℃ の超低体温下循環停止とし,注入圧40mmHg以下で心筋保護液を注入した。次に,同冠灌流カニューレを上大静脈へ挿入し上大静脈圧30mmHg以下,脳灌流量は250~350ml/minを目標に落差式逆行性脳灌流を行った。結果は,上大静脈圧は平均30.6mmHgで,落差は平均115cmを必要とした。脳灌流量は平均193.8ml/min,灌流時間は平均60分であり,7例中5例で目標流量が得られた。従来の落差式脳分離回路の利点を全て活かし,かつ順行性脳分離体外循環時と同等の操作で行え,カニュレーション操作も1本で済むため時間の短縮ができた。また,過去の経験から順行性の場合でも問題が少ないので,超低体温下循環遮断法と併用し,症例に応じて順行性,逆行性を適時使い分けることが望ましいと考えられる。
  • 坂本 亮輔, 杉浦 辰美, 早川 政史
    1996 年 23 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    輸血による合併症が問題となり,小児の開心術に対しても無輸血体外循環が積極的に施行されている。当院においても,身長,体重,術前検査値,症例をもとに検討し無輸血体外循環を行い,過去2年間に116例の小児無輸血体外循環を施行した。今回,この116例に対し,体重別,体外循環時間別,および症例別の無輸血率を調べ,体外循環中の体重別Hb値およびSvO2値の推移について検討した。今後,乳幼児,小児に対する無輸血手術の適用は増加していくと考えられるため,施行するための体外循環装置,回路などの改善が必要と考えられたが,体外循環の安全をも確保していかなければならないことも痛感した。
  • 会田 治男, 見目 恭一, 笹川 繁, 関口 敦, 田畑 喜朗, 森田 高志, 片倉 健二郎, 菊池 寛二, 吉田 譲, 朝野 晴彦, 織田 ...
    1996 年 23 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    我々は、血液充填時の電解質補正や臓器障害物質の除去を目的に、白血球除去フィルターを使用し、希釈・限外濾過を行う簡便な方法を施行し、体外循環・術後について有用性を検討した。電解質の補正効果はNa+は体外循環中、およびICU帰室時においても有意に低く、K+は処置前後の変化で7.4~4.1mEq/lに低下していた。灌流圧は有意に高く、大量希釈や充填血液に含まれているブラディキニンなどによる低下が抑制されたためかと考えられた。術中総水分バランスは有意に少く、体外循環中も除水量が有意に多く、低灌流圧の抑制や水分バランスに本法は有用である。また特別な方法を要せず、緊急時、大人の症例にも応用でき、簡便で有用な方法と考えられる。
  • 山中 雅郎, 北原 啓, 谷口 裕子, 大島 一公, 竹内 靖夫, 五味 昭彦, 中谷 速男
    1996 年 23 巻 1 号 p. 84-86
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    各施設においてBio Pumpを用いた様々な補助循環回路が使用され臨床応用されている。当院においても3年前にPCPS回路を緊急時における心肺補助などに備え作製した。今回,回路に改良を施すことを余儀なくされた補助循環を経験し,新たに回路を作製した。この回路は,従来型PCPS回路を基に,Blo-Pumpの脱血側に静脈リザーバーを組み入れ,OpenとClose双方に対応可能としたほかに,動脈フィルター回路や付属部品を別途作製し,必要に応じて使用できるなど,使用目的に応じた様々な補助循環に柔軟に対応できるシステムとした。
  • ―その流量制御とシャント回路の意味―
    赤松 伸朗, 佐谷 誠, 宮本 勝彦, 畑口 吉弘, 脇坂 佳成, 妙中 義之
    1996 年 23 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回我々は,体重5kg 以下の乳幼児に対して,遠心ポンプを用いた補助循環で,300ml/min以下の低流量域の流量制御を容易にするために考案した,シャント回路を組み込んだ小児用小児用Extracorporeal Membrane Oxygenation(以下,ECMO)回路を試作し,本回路の水力学的性能および溶血に関する基礎的検討を行った。水力学的性能の測定結果により,本回路は従来型回路のHQ曲線の傾きをほとんど変えることなく,遠心ポンプ駆動回転数を高回転化させて低流量域の流量調節を可能にした。また,溶血試験の結果から従来型回路の流量調節方法よりも溶血が少なく,抗血栓性においても有用であると考えられた。
  • 吉田 譲, 見目 恭一, 関口 敦, 会田 治男, 田畑 喜朗, 森田 高志, 笹川 繁, 菊池 寛二, 片倉 健二郎, 許 俊鋭
    1996 年 23 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    TCI社製植え込み型補助人工心臓HEART MATE2000システムを,拡張型心筋症の男性に,心臓移植までのブリッジ使用を目的として40日間装着し,駆動管理,合併症およびQOLについて,東洋紡社製補助人工心臓VCT-30装着29日間以上の4症例と比較検討した。本システム装着患者の術後経過は良好で,早期に抜管,経口摂取およびリハビリが可能で,血行動態の安定,栄養状態および生体機能の回復をみたが,26日目,ポンプ脱血側グラフトコンディット部からの出血に起因すると思われる脳梗塞にて,患者を失った。本システムは,心拍数自動制御による完全充満・完全拍出方式で,常に最大流量が得られる機構であり,植え込み型ポンプ,小型装置,左室脱血による高流量維持のため,比較対象装置に比べ,管理が容易で,生体適合・抗血栓性,および感染防止に優れており,長期使用に適し,QOLの向上に有効であった。
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