体外循環技術
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34 巻, 1 号
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  • 古平 聡, 藤井 正実, 佐藤 正憲, 東條 圭一, 宮本 隆司, 宮地 鑑, 小原 邦義
    2007 年 34 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】心室中隔欠損症に対する術中無輸血開心術40症例(平均体重6.3±3.6kg)における血液希釈と周術期因子との関連について,体外循環開始後Hct20%以上をA群,20%未満をB群とし術前,術中,術後の各因子と術後血液データについて比較検討した。両群間で年齢,体重,術前Hct,血液希釈率,灌流指数,WBC,CPK,GOT,LDH,CRPにおいて有意差を認めた。CPBHctは年齢,体重,術前Hct,血液希釈率に左右されるが,術後経過および退院時Hctには影響を及ぼさないことが推察された。B群におけるCPK,GOT,LDHの上昇データについては,溶血の可能性が高く,WBC,CRPの上昇は,回路接触面積の増加による炎症反応の可能性が考えられた。今後A群のような条件で無輸血体外循環を行っていくには,患児の体格,生体情報に注意を払い,回路の低容量化を含めた安全な人工心肺システムにしていく必要がある。またB群の結果に当てはまるような条件が1つでもあった場合,灌流条件の変更などにより条件が改善されるかどうかを総合的に判断し対処する必要があると考える。
  • 伊藤 康宏, 堀口 敦史, 海江田 章, 石川 隆志, 日比谷 信, 渡邉 浩次
    2007 年 34 巻 1 号 p. 4-6
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】白血球除去フィルター(LG-6:日本ポール)の効果を,マクロファージなどの免疫活性を制御する酵素indoleamine2,3-dioxygenase(IDO)によってトリプトファンから代謝されたキヌレニンを指標として検討した。体外循環は血液中の白血球やマクロファージを活性化するが,活性化白血球はサイトカインを産生するなどして術後症候群の原因ともなる。今回はインターフェロン(IFN)γによって活性化されるタイプの白血球を,LG-6がどの程度の効率で除去できるかについて体外循環後の活性化残血で測定した。その結果,血中キヌレニン濃度は20分のフィルトレーションで有意に減少した。この結果からIFNγ で活性化されるタイプの白血球はLG-6で除去できることが示された。IFNγで活性化される白血球にはマクロファージが多く,LG-6は活性化マクロファージの除去に有用であることが示唆された。この結果は,積極的に白血球除去を行うことが,術後のリカバリーにある程度の効果をもたらす可能性を示唆している。
  • 杉森 美幸, 伊藤 康宏, 石川 隆志, 山内 章弘, 海江田 章, 豊崎 正人, 三澤 健治, 榊原 未和, 山本 賢, 石田 沙織, 日 ...
    2007 年 34 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】必須アミノ酸であるトリプトファンの肝臓での代謝に注目し,体外循環がトリプトファンの主要な代謝経路であるキヌレニン経路にどのような影響を及ぼすのか検討した。体外循環を用いた開心術前後の血漿および部分尿を採取した。トリプトファンとその初期の代謝産物であるキヌレニンの血中濃度,肝臓のみでトリプトファンから産生されるキヌレン酸,アンスラニル酸,キサンツレン酸,3-ヒドロキシアンスラニル酸およびキノリン酸の尿中濃度をそれぞれの高速液体クロマトグラフィー法で測定した。その結果,血中トリプトファン,キヌレニンおよび尿中キヌレン酸とキサンツレン酸は手術前後で差はなかったが,尿中のアンスラニル酸と3-ヒドロキシアンスラニル酸は有意に増加していた。これらの結果から,体外循環によって肝臓でのトリプトファン代謝系が亢進していることが示された。また,これらの物質は生理活性が強いことから,生体内での過剰な蓄積は臓器組織に障害をもたらす可能性がある。したがって,この結果は体外循環中の腎機能の維持や除水の重要性を示唆している。
  • ―JMS社製フィルティアFT-50―
    菅原 誠一, 千葉 二三夫, 渡部 悟, 那須 敏裕, 根本 貴史, 小林 暦光, 古川 博一, 小川 泰正, 河原畑 茂樹
    2007 年 34 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】JMS社製動脈フィルタ フィルティアFT-50を用いて実験を行う機会を得た。TERUMO社製動脈フィルタCX-AF-125Xとdideco社製動脈フィルタD734とのプライミング時間,圧力損失,気泡捕捉量を測定し比較検討した。模擬回路を作製し,循環液には血液Ht35%,37℃に相当するグリセリン水溶液(45w/w%,粘性4cP,25℃)を用いた。その結果,プライミング時間はFT-50:1分33秒と短時間で従来品と比較しプライミング性の向上が認められた。圧力損失は7.0L/minにおいてFT-50:44mmHgと他2種と同等かそれ以下であった。気泡捕捉量はFT-50:30mL,捕捉率:60%であった。また,臨床使用後の走査電子顕微鏡観察においても血栓血小板,血球成分の付着は少量であった。FT-50は円盤プリーツ構造により従来品と同様のフィルタ面積を確保しつつ,低充填量,プライミング性の向上を実現し,従来の動脈フィルタの持つ課題を解決した。これにより人工心肺システムのセットアップ時間の短縮が可能となる。FT-50は緊急時においても安全かつ迅速に対応できる動脈フィルタであり,臨床使用においても有用であった。
  • 篠田 悟, 新美 伸治, 洞 博之, 長谷川 静香, 林 裕樹
    2007 年 34 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】脳機能障害の原因のひとつと考えられる,CPB回路内微粒子や微小異物の確認とPBFによる除去効果の検討を行った。方法は,顕微鏡法に即した方法(微小栓子分析キット)を選択し,当院の充填方法による検討を行うため,プライミングラインおよびリザーバー内の両フィルターを使用するU群と,注射剤をCPB回路内へ充填操作を行うことによる注射剤内の変化などの確認を行うため,使用しないNu群に分け分析を行った。その結果,U群では,充填液中に存在した捕捉物は,透明な樹脂片や繊維様異物が確認され,繊維様異物はすべて40μm以上の大きさであった。人工肺,血液回路充填後に79個/20mLと最も多くの捕捉物が確認され,Nu群では,注射剤のリザーバーへの充填操作後に114個/20mLと最も多くの捕捉物が確認された。また,繊維様異物も確認され,その他に円柱状の異物が確認された。両群ともにPBF使用後は除去率100%と濾過メンブレン上には確認可能な捕捉物は認められなかった。PBFの除去効果は,微小栓子分析キットによる検討では,高い除去効果を示した。
  • 原田 智昭, 小林 広樹, 高平 真
    2007 年 34 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当院では開心術による空気塞栓低減を目的に心嚢内へ炭酸ガスを吹送している。そこで,模擬胸腔での基礎実験および2006年1月から4月までの成人開心術10症例において,1)炭酸ガスの心嚢内吹送方法,2)心嚢内炭酸ガス濃度測定,3)吹送された炭酸ガスの体外循環への影響を検討した。炭酸ガス吹送方法は,吹送チューブの先端流速を低下させる必要があり心嚢内の炭酸ガス濃度を維持できる十分な吹送流量が必要であると考えられた。炭酸ガス濃度は幾つかの因子によって大きな影響を受けることが確認された。吹送された炭酸ガスの影響を受け,炭酸ガス分圧はベント・サッカー回収血が著しく高値を示し,静脈血よりも人工肺入口血において高値となった。上昇した血中炭酸ガス分圧を補正するためには,人工肺への混合ガス付加量を増加させなければならず,炭酸ガス除去能力の低い人工肺を使用した場合に高炭酸ガス血症を引き起こす危険が示唆された。
  • ―気泡捕捉能を中心に―
    神谷 典男, 北本 憲永, 小出 昌秋
    2007 年 34 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】現在市販されている3種類の小児用静脈貯血槽(VR-R,M,D)を用いて気泡捕捉能の実験に加えブレークスルー・ボリューム(BV),ダイナミック・ホールドアップ・ボリューム(DV)を測定し,若干の知見を得たので報告する。BV測定は乳酸リンゲルを,DV,気泡捕捉能実験には牛血を使用した。気泡捕捉能は各条件下でのVR出口の気泡数と気泡径を測定した。結果から静脈部のBV,DVおよびカーディオトミー部のBVはVR-Rが最も少なく,優れたレスポンス性能を持つことが伺えた。気泡捕捉能は,低流量ではVR-Rが気泡検出0であったものの高流量では最も気泡検出数が多かった。VRレベルで気泡数,大きさに変化があると考えられたが,レベル50mLと200mLでは有意差は見られなかった。3種類のVRは混入した気泡は完全に除去することができず,マイクロバブルとして送血されてしまうことが危惧され,どのVRレベルにおいても1.0L/min以上の血流量では捕捉は不可能でVRの限界を感じた。
  • 中島 康佑, 小森田 翔, 與座 千沙子, 河藤 壮平, 東郷 好美, 井上 堅司, 伊藤 新一, 永田 和之
    2007 年 34 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年,心臓外科領域でも内視鏡を用いた低侵襲手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)が行われてきている。当院でも弁膜疾患,心内修復術を対象としたPort-Accessシステムによる低侵襲手術を行っている。当院では,体外循環に際し特殊な医療用具を使用しないように工夫した。全身麻酔後右内頸静脈に留置したガイドワイヤーを清潔に術野へ誘導し,左大腿静脈より中心静脈ラインをとって手術を開始した。送血管を右大腿動脈より,下大静脈側の脱血管を右大腿静脈より挿入,上大静脈の脱血には大腿動脈送血用のカニューレを使用した。落差脱血では完全体外循環量が確保できない場合はVAVDを使用した。胸腔鏡補助下右小開胸は早期回復および美容面で患者に対して満足度が高い。カニューレがポートより挿入されていることを除いては,通常の体外循環と同じであるため突然の手技の変更やトラブル時にも速やかに対応することが可能である。これらのことから特殊な医療用具を使用しないで行える本法は有用であると考えられた。
  • 鹿島 裕, 菊地 慶太, 金築 一摩, 山岡 啓信, 今井 健介, 樋上 哲哉
    2007 年 34 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】僧帽弁形成術(MVP)における新しい術中評価法として,大動脈遮断中に逆行性冠灌流法を行い心拍動を再開することで,収縮期における僧帽弁の逆流評価を直視下に行う方法(Retrograde cardioplegic beating test:RC-beating test)を行っている。MVP中はcold blood cardioplegiaによる逆行牲持続的冠灌流法により心筋保護を行う。形成完了10分前に37℃ のTerminal Warm Blood cardioplegiaを注入し,その後37℃ の血液を150~250mL/min,注入圧30~40mmHgで持続注入すると自己心拍が再開する。Coronary sinusから注入された血液がテベシアン静脈を介して左室を充分に充満することで左室収縮期圧が70mmHg以上に達する。以上により,大動脈遮断下に僧帽弁の収縮期における閉鎖性が直視下に評価できる。RC-beating testは,大動脈遮断中の僧帽弁の逆流評価法として極めて有用な術中評価法であると考えられた。
  • ―JMS社製動脈フィルターFT-50について―
    佐藤 正憲, 古平 聡, 武田 章数, 早速 慎吾, 新保 年弘, 河原畑 茂樹
    2007 年 34 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】JMS社製フィルティアFT-50低充填量動脈フィルターと,現在当院で使用しているテルモ社製動脈フィルターCX-AF125Xとで水系実験を行い,比較検討を行った。圧力損失,マイクロバブル捕捉能,気泡捕捉量の計測,プライミングの操作性比較,キシレノールオレンジを用いた可視化撮影を行い検討した。その結果,フィルティアFT-50は動脈フィルターとしての必要な機能を持ちながら,充填量削減,セットアップ時間短縮ができ,臨床使用上有用であると考えられた。
  • 岩田 浩一, 阿部 敬二朗, 宇都宮 精治郎
    2007 年 34 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】すべての体外循環行為において気泡の送血は,空気塞栓などの極めて重大な結果を招く可能性が高い。そこで,PCPSの脱血側の分枝ラインを閉鎖し忘れた場合に気泡が入らないような回路構成を考案した。プライミングラインにテルモ社製ファイナルフィルター,清潔野気泡抜きラインにテルモ社製シュアプラグを組み込み,それぞれ閉鎖し忘れた場合を想定し,バブルディテクタにて気泡を1分間測定した。その結果,シュアプラグ,ファイナルフィルターともに回路に組み込むことにより40μm以上の気泡は検出されなかった。
  • 中野 孝, 原 和信, 高橋 浩子, 山根 薫, 近藤 宏
    2007 年 34 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】輸血による合併症を発症するとその死亡率は95%以上と高く,発症を予防するため各施設で無輸血手術を行うための工夫がなされている。当施設においても,脳分離体外循環に用いる人工肺をテルモ社製Capiox-Eから泉工医科工業社製Primeに変更し充填量を200mL削減した。そこで今回,Capiox-Eを使用した予定症例5例,緊急症例8例(C群)とPrimeを使用した予定症例5例,緊急症例8例(P群)の他家血輸血量,自己血輸血量,体外循環中の最終Ht値について比較検討した。予定症例ではC群に比べP群で自己血輸血量は減少し,最終Ht値が上昇した。また,他家血使用量は両群とも使用しなかった。緊急症例ではC群に比べP群でわずかながら他家血使用量は減少し,最終Ht値が上昇した。これはP群の充填量削減による希釈率の減少によるものと考えられ,最終Ht値だけでなく体外循環中も持続的に高めであったことより,脳への酸素供給量が増えたと考えられた。今後,更に輸血量が削減できるよう検討していきたい。
  • 奥田 晃久, 田口 英昭, 石井 宣大
    2007 年 34 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    体外循環中の安全対策として,人工心肺災害対策マニュアルに従い,体外循環を継続した状態で避難する場合と避難できない場合の防災訓練を実施した。その結果,準備時間は避難する場合で20分30秒,避難できない場合で2分12秒であった。また,人工心肺災害対策マニュアルの問題点が判明し,見直しおよび問題点の改訂が行えた。今後は,定期的にアクシデント対策訓練とともに体外循環中の防災訓練を行う必要があると考える。
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