体外循環技術
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35 巻, 1 号
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  • 古平 聡, 東條 圭一, 北野 智子, 菅原 充宏, 宮地 鑑, 小原 邦義
    2008 年 35 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨小児開心術において予防的抗菌薬の濃度測定を行い、体内動態パラメータに対する影響因子に関する検討を行った。心臓血管外科手術の主な感染起因菌である黄色ブドウ球菌の全症例、表皮ブドウ球菌の体外循環終了後2例以外の症例においてMIC90以上の濃度が得られていることが確認され、SSIはなかった。体外循環中のABPC、SBT比は、製剤中の濃度比である2:1を維持して推移していたが、低い尿中の抗菌薬排泄率と、DUF、MUFによる体液、血液バランスの急激な変化が原因と考えられるABPCの血中濃度上昇が認められた。また、体外循環中の体温調整の違いにより半減期の延長率に有意な差が見られた。体外循環中は非生理的な循環状態により抗菌薬の体内動態が変化することから使用抗菌薬の濃度測定を行い、SSIを引き起こさない適正濃度にするために必要な基礎疾患、麻酔方法、手術時間、体外循環法に見合う適切な投与量、投与方法を決定する必要があると考えられた。特に臓器の発達が未熟な低年齢児に対する除水では、除水量や膜の特性に十分注意が必要であると考えられた。
  • 境 真生子, 上原 圭司, 古田 朋之, 中井 紀裕, 佐竹 麻美, 高田 裕, 長嶋 隆夫, 梶川 竜治, 増田 詩織, 高杉 嘉弘
    2008 年 35 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨自己血回収装置による洗浄赤血球の機能低下は臨床上重要な問題である。本研究は、回収処理による赤血球膜の脆弱化と保存時間の影響について赤血球形態、浸透圧抵抗性、血清カリウムイオン濃度の経時的変化、更にグルコース添加の効果について検討した。1.血液に10回の回収処理を行い、回収処理による赤血球形態の比較、保存時間による赤血球形態変化、処理血へのグルコース添加の影響を光顕によって観察した。2.赤血球浸透圧抵抗試験(Parpart法)によって室温(25℃)と37℃保存による赤血球膜の脆弱化について検討した。3.未処理血と処理血の血清カリウムイオン濃度変化を測定した。この結果、回収処理によって赤血球形態変化が生じたが、グルコース添加により形態変化は回復した。処理血の浸透圧抵抗性は、室温保存では未処理血との間に相違は認めなかったが、37℃ 保存では低下した。処理血の血清カリウムイオン濃度は経時的に増加した。回収処理血はATPレベルの低下により機能低下を来たし、グルコース添加は機能低下の防止に有効である。
  • 上塚 翼, 荒木 康幸, 笠野 靖代, 高宗 伸次, 岩崎 麻里絵, 川野 洋眞, 三隅 寛恭, 平山 統一
    2008 年 35 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨当施設で緊急時にPCPSが必要な場合,テルモ社製Emergency Bypass System(EBS)を選択している。しかし,長期補助循環を目的とした場合に,人工肺の耐久性が問題となる。そこでEBSの送血側と脱血側の二箇所をそれぞれ二股のループ状にし,更にそれぞれの片側にワンタッチコネクターを採用するなど,回路を改良し,その有用性について検討した。バブルトラップ装着および長期間用人工肺追加などの回路増設や開心術への対応も充分可能となり,ループにすることで片方を遮断しても,もう一方のラインで循環は維持されるため補助循環停止を行わずに対応することが可能となった。また,バブルトラップや人工肺の増設により,安定した循環補助を患者へ提供でき,同一回路で1週間以上の長期使用が可能な回路に改良できた。これにより,患者の状態が循環停止に耐えうる程の回復を待ったうえで,離脱または回路交換の選択ができる点では有用である。しかし,10日以上の使用では遠心ポンプの耐久性を考慮し,回路交換で対応すべきと考えられた。
  • 岡原 重幸, 高橋 秀暢, 高上 準二, 二宮 伸治, 徳嶺 朝子, 池田 光輔, 守谷 忠義, 黒崎 達也, 末田 泰二郎
    2008 年 35 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨酸素流量調節は、開始時、離脱時などでは、貯血レベルなどに意識が集中することで、酸素ガス吹送忘れなどのインシデントが発生する恐れがある。マスフローコントローラ(MFC)を使用し、灌流量に連動した酸素流量調節の自動制御化を目的とした基礎実験を行った。送血ポンプから灌流量をアナログ信号にて出力し、任意でV/Qを決定できる変換回路を介しMFCに入力して自動制御を行った。基礎実験として、換気・脱酸素用人工肺および遠心ポンプを閉鎖回路とし、廃棄用赤血球濃厚液を定常化して循環させた。各灌流量ごとに静脈血を調整後、換気用人工肺への酸素流量、応答時間および血液ガス値を測定した。各灌流量において、酸素流量は瞬時に追従した。血液ガス値は正常値範囲であった。温度、Htなどの生体情報が変化する状況では、その微調整が必要であると考えられるが、灌流量に対して酸素流量が追従し換気が適切に行われることが確認できたため、酸素流量調節忘れなどのインシデント発生回避には有用であると考えられた。
  • 樋口 毅, 菱沼 浩孝, 森 光晴, 笠原 啓史, 鈴木 亮, 申 範圭
    2008 年 35 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨胸部大動脈手術におけるシンプルかつ安全な脳分離体外循環(SCP)を目指し、遠心ポンプでの右腋窩動脈一側SCPを近赤外線組織酸素モニター(NIRO)下に行い、良好な初期成績を得たので報告する。対象は、2005年7月から2007年11月に行った大動脈手術10例。NIRO装置を装着、右腋窩動脈送血による人工心肺確立後、膀胱温25-27℃ まで冷却。弓部3分枝をソフトクランプで遮断し,右腋窩動脈からの一側送血のSCPに移行。遠心ポンプの回転数を一定に保ち、送血部の灌流圧監視下に,クランパーにて送血流量を10~14mL/min/kgに調整。NIROで脳組織酸素化指標が左側で有意に低下する、あるいは左総頚動脈と左鎖骨下動脈からの充分な逆行性血流を認めない場合には、送血ライン側枝を用いて両側脳分離体外循環に移行した。3例で両側SCPに移行した。早期および遠隔死亡なく、術後脳合併症も認めなかった。脳虚血が疑われたときに速やかに両側送血に移行可能な本法は、体循環からSCPへの移行がスムーズで安全な脳分離体外循環法と考えられる。
  • ―下大静脈腫瘍栓を伴う腎癌手術におけるV-Vバイパス循環補助の有用性について―
    植田 隆介, 西田 雅彦, 高見 宏, 平石 泰三, 目黒 則男, 木内 利明, 宇佐 美道之, 和泉 匡洋, 淡田 修久, 神原 紀子, ...
    2008 年 35 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨下大静脈(IVC)浸潤を伴う癌に対する切除とIVC再建術では、安定した循環動態の確保が困難であり、至適補助手段はいまだ確立されていない。我々はIVC浸潤を伴う腎癌に対する癌切除・IVC再建術において、大腿静脈脱血-内頸静脈送血のV-Vバイパスを補助循環として6例に用いた。V -Vバイパス回路は遠心ポンプを組み込んだ閉鎖回路に、IVC切開時の出血に備えて吸引回路を接続したものを使用した。灌流指数はV-Vバイパス開始前の血圧を維持するように送血量を調節し、結果として0.8~1.OL/min/m2で適正な血圧を維持することができた。死亡例および重篤な合併症を起こした症例はなく、また、V-Vバイパス中の循環動態は安定していた。IVC切開時に多量の出血が起こった場合には、吸引回路で回収して迅速に閉鎖回路に返血できたので、安定した循環動態を維持することができた。IVC浸潤を伴う腎癌に対する切除・再建術において、V-Vバイパスを用いた補助循環は安定した循環動態下で手術を行うのに有用であった。
  • 戸田 久美子, 前田 恒, 花田 琢磨, 中嶋 勉, 安野 誠
    2008 年 35 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨当院では通常、TERUMO社Sarns社製Centrifugal pumpを使用し、定常流送血を行っている(C群)が今回、遠心ポンプによる拍動流送血を実施した。使用した遠心ポンプはTERUMO社(T群)とSORIN社COBE revolution pump(S群)である。対象は、弁置換症例とし、各7症例について検証した。なお、肝機能および腎機能障害例は対象外とした。各群間における遊離Hb変化率、LDH変化率に有意差は認めなかった。体血管抵抗は、C群よりT群・S群の方が有意に低かった。T群・S群間に有意差は認めなかった。拍動流送血時における血圧の脈圧は、最大・最小とも群間に有意差は認めなかった。これらより定常流送血と拍動流送血の両者間、使用した両群の遠心ポンプ間での溶血への影響は、同等であることが示された。脈圧はT群・S群とも良好に得られ遠心ポンプにおける溶血の影響は同程度であり、定常流送血時と比較しても同等であった。2社の遠心ポンプともに同等な拍動流送血を行うことができる。
  • 増井 浩史, 村松 明日香, 田中 良樹, 神谷 典男, 北本 憲永
    2008 年 35 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨D905EOSPhisio(EOS)を使用する機会を得たのでCAPIOX-RX15(RX)と比較検討し報告する。酸素化能は有効肺血流率(Qp/Qt),動脈血酸素分圧,酸素添加量,炭酸ガス交換能は換気血流比(V/Q),動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)について比較した。炭酸ガス交換能は両群ともV/Qが0.68前後でPaCO2を適正に保つことができ,最大血流量以上の血流量で使用した環境下でもV/Qを大きく変化させることなくPaCO2を適正に保つことができた。酸素化能はEOS群とRX群で大きな差はなく今回使用した範囲の最大血流量域(5.5L/min)での使用でもQP/QtはEOS群0.77±0.12,RX群0.79±0.13,酸素添加量もリニアに上昇し安定した酸素化能を有していた。最大血流量域で人工肺を安全に使用するためには,血液性状の変化に対して迅速な対応がとれるよう連続ガス分圧モニタは必要不可欠である。人工肺の最大血流量域での性能を理解することで,人工肺の性能を最大限に引き出し安全に使用することが可能と考える。
  • ―空気引き込み防止回路の作製―
    配野 治, 杉本 響
    2008 年 35 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨脳分離体外循環中の空気引き込みを防止する目的で安全弁付簡易回路を作製し、実験を行った。実験に用いた安全弁は、人工肺出口が陽圧であれば閉じ、圧力が低下すればただちに安全弁は開く特性を持つ。実験でメインポンプと脳灌流それぞれローラーポンプを用い、メインポンプが停止した状態で脳灌流ポンプ流量を増加させたときに、人工肺より空気を引き込むか検証した。その結果、我々が作製した安全弁付回路を用いることで人工肺出口での脳灌流ポンプ流量が2000mL/minまで空気を引き込まず、脳分離体外循環の安全性が向上し有用であると考えられた。
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