体外循環技術
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35 巻, 4 号
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  • 笠野 靖代, 荒木 康幸, 黒崎 亮輔, 上塚 翼, 高宗 伸次, 岩崎 麻里絵, 川野 洋眞, 原武 義和, 三隅 寛泰, 平山 統一
    2008 年 35 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:我々は2005年より高度の心機能低下を含む症例に対し、持続的常温血液冠灌流(Continuous Warm Blood: CWB)を用いた心拍動下体外循環を施行し、その有用性については前回、体外循環技術にて報告した。今回、新たな症例を追加し、方法別に大動脈ルートカニューレを用いてCWBを行った心拍動下症例(RB群)と心停止下症例(RA群)、冠動脈流入口へ直接カニューレを挿入して選択的にCWBを行った心拍動下症例(SB群)と心停止下症例(SA群)の4群に分類し比較検討した。CWBは、体外循環を確立させたのち、体外循環回路血液を心筋保護液注入ポンプで回路内圧や先端圧を確認しながら温度33℃ で行った。RB群とRA群、SB群とSA群で心肺時間、遮断時間、手術前後の生化学データを比較した結果、RB群はRA群に比べCKに上昇抑制が認められ、心肺時間が有意に短縮されていた。SB群とSA群の比較では、データの有意上昇を認めなかった。CWBを用いた心拍動下体外循環は方法を工夫することで、安全に行えることが示唆された
  • 定 亮志, 松尾 光則, 花岡 正志, 佐々木 康之, 平居 秀和, 中平 敦士, 末廣 茂文
    2008 年 35 巻 4 号 p. 396-399
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:近年、欧米を中心に閉鎖回路が臨床使用され、本邦でも注目されつつある。我々は、閉鎖回路では血液と空気の接触がないことから体外循環がもたらす強力な凝固線溶活性を抑制するのではないかと考えている。今回、メドトロニック社製閉鎖回路、レスティング・ハート・システム(RHS: R群)と従来の人工心肺システム(C群)を比較し、術中術後の凝固線溶活性に影響を及ぼすかを検討した。対象は心停止下CABG症例のうち、C群、R群それぞれ9例とした。比較項目は、術後24時間出血量、 TAT、 FDPとし、採血ポイントは術前(T1)、体外循環離脱直前(T2)、体外循環終了後3時間(T3)の3ポイントで測定した。術後24時間出血量はR群が少ない傾向にあったが有意差は認めなかった。TAT、 FDPはそれぞれT2、 T3でR群が有意に低値を示した。以上の結果から、 RHSのような血液と空気の接触がない閉鎖回路では凝固線溶活性の抑制に大きく寄与したと考えられる。
  • 笹山 幸治, 内田 文也, 河瀬 勇
    2008 年 35 巻 4 号 p. 400-404
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:人工心肺運転中の末梢循環を知る新たな指標として皮膚灌流圧(SPP)が期待される。カネカ社製SensiLaseTMPAD3000を使用し、左足底部でSPPを測定し、灌流量(CO)、灌流圧(MAP)の変化および末梢血管抵抗(SVR)、体温(BT)が末梢循環に及ぼす影響およびCPB運転中の管理方法を検討した。対象は2005年7月~2007年10月に体外循環(CPB)を施行した連続43症例の弁膜症患者を対象にした。その結果、 SPPとCOの関係は、r=0.267(p=0.087)と正相関の傾向にあるものの有意ではなかった。 SPPとMAP・SVRの関係は、 r=0.611・r=0.462(p<0.0001・p<0.001)と有意な正相関を認めた。BTについては、明らかな関係は見られなかった。SPPはCO・BTに影響され難いことが示唆され、SPPを維持するために、COを増加させることは効果的でないことが示された。また、末梢循環を維持するには、CPB運転中のMAPを術前SPP以上に維持することが重要である。適切な薬剤使用量を決定する指標として、SVRに相関のあるSPPが重要であると考えられ、安全なCPBを確立するうえで極めて有用であると考える。
  • 北本 憲永, 神谷 典男, 小出 昌秋
    2008 年 35 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:システムの小型化を行うことは輸血使用量の軽減、体外循環開始前の血液洗浄と調節の簡素化、異物反応の軽減など、さまざまな利点が期待できる。今回、体外循環の小型化が体外循環管理にどのように影響するか検討した。対象は体重4kg未満、月齢1ヶ月以下の児で充填量220~280mLの前期群26例と、充填量160~170mLの後期群30例で比較した。初期充填量と輸血量は前期群848.3±224.9mL、688.5±197.7mL、後期群は678.1±164.3mL、535.7±147.2mLと低充填化され、洗浄に要する時間は前期群61.4±18.5分、後期群46.3±8.1分と短縮された。追加輸血量は前期群86.2±197.7mL、後期群98.2±105.2mLであり後期群全例に血小板輸血を離脱前に行った。離脱時の血小板値は前期群6.3±4.7万/mm3、後期群13.5±3.1万/mm3と後期群で有意に高値を示した。また、術中の出血量は前期群303.0±485.7mL、後期群125.9±160.7mLと減少傾向となった。システムの小型化により離脱前に血小板を投与することで、体外循環直後の止血効果が期待された。
  • 渡辺 英樹, 増田 紅美, 中野 悦子, 秋本 久美子, 中村 光男, 磯村 正, 小田 利通
    2008 年 35 巻 4 号 p. 409-411
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    要旨:拡張型心筋症に対する左室形成術において、心機能を温存する目的で心拍動下体外循環が実施された症例(B群:24例)と心停止下で行われた症例(A群:30例)の術後の心筋酵素の変動を比較し、心拍動下体外循環の効果を検討した。体外循環は上行大動脈送血、上・下大静脈2本脱血、大動脈および左房ベントを挿入し、灌流指数2.5L/min/m2、膀胱温35℃、ヘモグロビン値8.0g/dLを目標とした。また、B群は大動脈遮断をせずに心拍動下体外循環として行った。B群ではA群と比較して、若年で(p=0.0016)術前LVDd値が高値(p=0.0351)であった。体外循環に関しては時間が短く(p=0.0377)、体温が高かった(p=0.0004)。術後のCKおよびCK-MB値はB群で高い傾向が認められたが有意差は認められなかった。指標とした心筋酵素は心拍動下体外循環で高い傾向があり、本法の心筋障害防止効果は実証できなかった。今後、患者背景(特に術前の心筋障害の程度)や心筋障害の指標などを考慮し、さらに検討が必要と考えられた。
  • 山鹿 章, 開 正宏, 蜂須賀 章友, 清水 大輔, 萩原 啓明, 伊藤 敏明, 宮田 完志, 服部 敏之
    2008 年 35 巻 4 号 p. 412-415
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:人工肺出口に3/8inchポートと1/4inchポートが設けられている泉工医科社製NHPエクセラン、マッケ社製Jostra Quadrox、JMS社製OXIA LP MO-BTT 、テルモ社製CAPIOX RX-15の4種類の人工肺を対象とし、それぞれの流出ポートから採取した血液のガス分析測定を行い比較検討した。今回検討した人工肺では、3/8inch出口ポートと、1/4inch出口ポートから流出する血液のガス分析測定値が異なる製品が存在した。人工肺取り扱いに関する添付文書では、記載以外の目的に1/4inch出口ポートを用いることは推奨されていない。患者側送血を目的として1/4inch出口ポートを使用する場合にはガス分析測定による確認が必要と考えられた。
  • 倉島 直樹, 芝本 隆, 小堺 昭, 山村 晃光, 中島 智史, 廣瀬 夕紀, 藤巻 愛子, 荒井 裕国
    2008 年 35 巻 4 号 p. 416-419
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:我々は遠心ポンプ送血時に混入したエアーを短時間で排除する自動エアー排除システム(OAPS)を試作し、その有用性について検討した。本装置は、エアー混入後自動的に送血を停止させマイクロバブル排除ラインを開くシステムで送血停止時間(CT)とエアー排除ライン開放時間(OT)の設定が可能である。遠心ポンプ手前より20mLのエアーをbolus投与し、動脈フィルター(AF)パージラインを閉鎖したコントロール群(C群)、AFパージ開放群(FO群)、人工肺パージ開放群(OO群)、短時間エアー排除目的にパージラインとして6mmチューブとOAPSを使用(CT30秒、OT60秒)したAFパージライン(群6FO群)、CP-OX間にY(10×10×6mm)コネクターを接続し6mmコネクターにパージラインを接続した群(6C-0群)を比較した。40μm以上のマイクロバブル数はC群に対しFO、OO、6FO群に有意差はなく、6C-0群でマイクロバブル除去が優れていた。送血にCPを使用したエアー混入実験では、AF、OXパージラインの継続開放やAFパージライン流量の増加に対し効果的なエアー除去は困難であり、送血停止中にCP-OX間でエアーを排除する方法が有用である。
  • 岩岡 健, 川上 千乃, 宮下 誠
    2008 年 35 巻 4 号 p. 420-423
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:今回、市販されている成人用ラインフィルター・バブルトラップの気泡捕捉実験を行う機会を得た。実験は牛血を用い、マクロバブルとマイクロバブルを人為的に作り出し対象検体へ送り込むものとした。評価検体前後には気泡検知器を設置し評価検体の気泡捕捉能を測定した。その際、気泡に対しての対策としてベントポートの開放が有効であるかの実験も行った。結果、ラインフィルター4種、バブルトラップ1種のいずれの評価検体もベントポートの開閉に関わらず40μm以上の気泡が検出された。静脈血リザーバより混入した気泡は人工肺を通過する際に粉砕され、それらの微小化した気泡を捕捉することは困難であると言える。人工肺・ラインフィルタに気泡を送り込まないためにもレベルセンサ・バブルトラップなどの安全装置の装着は必須と考える。
  • 加藤 優, 長谷川 武生, 田村 秀朗, 千原 伸也, 大江 祥, 河江 忠明, 長谷 守, 栗本 義彦, 森 和久, 成松 英智, 浅井 ...
    2008 年 35 巻 4 号 p. 424-428
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:今日のPCPSは従来の循環器領域における適応のみにとどまらず、救命救急領域へとその適応を確立しその普及をみている。また、院外心肺停止症例においてPCPSを用いた場合の蘇生率は施設問により異なるが、当施設においては十分な成績が得られ、もはや次の段階の蘇生法を模索する時期に来ている。PCPSによる蘇生の成功は、開始数分後に心拍の再開として得られるが、あくまでも心拍の再開であり、脳蘇生の観点からは何も得られてはいない。本研究では院外心肺停止症例のrSO2を搬入直後から測定し、PCPSによる循環再開後、脳灌流が維持されているのかを灌流量および自己心拍出との相関から臨床研究による検討を行った。検討結果から、全例においてPCPS開始時におけるrSO2との関係は正の強い相関を示し、管理中および離脱時においても強い相関を示す症例が多かった。これらの結果から、搬入時より行うrSO2の測定は脳灌流をモニタリングする上で有用であり、PCPSによる循環補助が適切に開始されたかの指標となりえることが示唆された。
  • 遠藤 義幸, 坂井 伸行, 中村 薫, 齋藤 恭子, 西山 英隆, 堀 貴行, 星 義弘, 田山 雅雄, 曽川 正和, 諸 久永
    2008 年 35 巻 4 号 p. 429-432
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:右鎖骨下動脈起始異常を伴う遠位弓部真性大動脈瘤手術に対する選択的4分枝脳分離体外循環を施行し、良好な結果を得たので報告する。症例は85歳男性。検診時胸部X線写真で異常陰影を指摘された、近医で胸部CT撮影を行なったところ、胸部大動脈瘤と診断された。術前検査で行なったMRAで右鎖骨下動脈起始異常が発見された。体外循環に際しては、椎骨脳底動脈領域の灌流不全の危険を回避するため、選択的4分枝脳分離体外循環をすべく、当施設の3分枝脳送血回路の1分枝に6mmY字コネクターと6mmチューブを取り付けた。脳分離送血流量は4枝合計で600mLとし、rSO2の値を参考に脳送血流量を調節した。体外循環時間は3時間16分、大動脈遮断時間は2時間41分、選択的脳送血時間は1時間37分であった。術後覚醒も良好で、神経学的異常は見られなかった。選択的順行性4分枝脳灌流を用いて脳合併症を回避できた。
  • 兼城 悠司, 星 利也, 佐藤 尚, 大川 修, 土田 善之, 布谷 大輔, 五十嵐 善浩, 白井 美江子, 舘田 武志, 幕内 晴朗
    2008 年 35 巻 4 号 p. 433-435
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:当院では、人工心肺を用いる心臓血管手術時に空気塞栓発生の低減を目的として、術野にCO2吹送を行っている。体外循環中に、人工肺出口に設置したCDI500にて測定しているPCO2が急激に上昇したため、人工肺への混合ガス吹送量を通常よりも増やさなければならない経験をした。術野に吹送しているCO2が人工心肺回路内血液に影響を与えていると考え、カプノメーターを用いて人工心肺のリザーバー内のCO2濃度を測定し、高CO2血症防止に対するアラームとしての有用性を検討した。CO2濃度上昇後、CDI500のPCO2が上昇し、人工肺への混合ガス吹送量を調整していることを確認した。ハードシェルリザーバー内のCO2濃度測定は、高CO2血症を防ぐモニタリングへの応用の可能性が示唆された。
  • 冨貞 公貴, 平賀 健一, 山本 仁, 松山 法道, 米田 勇, 濱野 公一
    2008 年 35 巻 4 号 p. 436-439
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:当院では、エチレンオキサイドガスの排出、微小異物の除去、回路接続部の漏れの確認などのため、回路内洗浄を行っている。この中で、異物除去に着目し、充填液中に存在する微小異物の分析を行い、回路内洗浄および、プレバイパスフィルター(PBF)使用による異物除去効果の検討した。洗浄・PBFも使用しない場合をA群、洗浄は行いPBFを使用しない場合をB群、洗浄を行わずPBFを使用する場合をC群、洗浄・PBFともに使用する場合をD群とし各2検体を対象とした。充填完了から10分後に充填液を12mL採取し、光学顕微鏡により顕微鏡粒子測定法にて微小異物の計測を行った。結果は、A群39個、37個、B群14個、17個、C群4個、0個、D群5個、4個であり、40μm以上の異物も見られた。また、繊維片、樹脂片、ガラス片様の異物も確認された。回路内洗浄を行うことで微小異物は59.2%除去された。また、PBFの使用により、回路内洗浄の有無とは関係なく99.4%、88.2%の異物除去率であり、高い異物除去効果が示された。
  • 染谷 忠男
    2008 年 35 巻 4 号 p. 440-442
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:臨床工学部の7名の技士によって、心臓カテーテル関係や血液浄化など、10種類以上の業務を行っている。当施設では当直体制を求められているため、各部員がすべての業務を行うことができなければそれを遂行することは不可能である。中でも体外循環業務は、患者の心肺を代行し生体の管理を行うという最も危険度の高い業務である。そこで、体外循環業務に携わる技士の育成方法として、まず、当直時の緊急手術に対して使用する診療材料や周辺装置の準備と操作する熟練技士の助手として対応できるように指導し、次に体外循環業務全体の準備や基本操作を習得させ、最後に術式、体外循環方法、操作手順などを理解できるようなカリキュラムとしている。しかし、個人の能力により研修期間が一定ではなく、複数の指導者が関与するため知識や技術の習得の評価が曖昧で、技術の習得に偏重しており事故対策訓練が未成熟であるという問題点があった。これらを解決するために評価シートを導入し、知識や技術の未習得部分を明確にして的確な教育を行うことと、また模擬訓練による事故対処方法や手順を体得させることを考えている。
  • 塩谷 泰子, 日比谷 信, 中井 滋, 加治屋 貴裕, 猪島 裕貴, 佐橋 広信, 竹内 敬昌
    2008 年 35 巻 4 号 p. 443-446
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:当施設小児循環器グループのインフォームド・コンセントにおいては、我々臨床工学技士が患者家族に人工心肺の説明を行ってきた。今回、臨床工学技士による説明に関して患者家族にアンケート調査を行い、その妥当性、効果、問題点について検討した。2007年4月に小児循環器科小児心臓外科に入院、または外来受診した患者のうち、臨床工学技士による説明を受けた経験のある患者家族45名にアンケートを依頼した結果、43名から回答を得た(回収率95.6%)。臨床工学技士による説明は、全員が必要であるとの回答であった。説明の単語が難しいという指摘、口頭や写真より実物や図のようにポイントを絞った説明の方がわかりやすいとの結果より、平易な説明が要求されており、資料が少ない、時間が短すぎるといった意見が多いことから、患者家族が期待する説明に至っていないと判断された。インフォームド・コンセントに臨床工学技士が参加する意義は双方にとって大きく、患者家族の理解が進めば、人工心肺に対する不安は軽減できると推察されることから説明方法の検討を進めている。
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