体外循環技術
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41 巻, 2 号
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原著
  • 中村 淳史
    2014 年 41 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    人工心肺(cardiopulmonary bypass:CPB)を使用した開心術では、血液温やヘマトクリット値の変化に伴い、血液粘度がCPB開始時から終了時まで変動する。血液粘度は患者の循環動態に影響を及ぼすため、CPB中の有効なパラメータであると思われるが、一般的なモニタリング項目とはなっていない。本研究では、現在のCPBにおいて使用されている限外濾過回路を利用してリアルタイムに血液粘度を測定できるシステムを構築し、その性能を評価した。本システムを使用してグリセリン水溶液、キサンタンガム水溶液、牛血の粘度を測定した結果は、回転粘度計の測定結果とほぼ同一となり、誤差は±10%以内であった。100~500mL/minの流量では、血液濃縮器内の流れは層流となるため、Hagen-Poiseuilleの式を利用して流量と圧較差から粘度を算出することの有用性が示された。血液粘度の変化は血管抵抗やCPB回路の回路内圧にも影響を与える。本手法を用いることにより、リアルタイムに血液粘度を測定することが可能であり、粘度変化を定量的に認識することにより、患者末梢循環やCPB回路の血液粘度を考慮した適切な灌流状態の評価が可能になると考えられる。
  • 笹山 幸治, 柿本 将秀, 平本 芳恵
    2014 年 41 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    人工心肺中のマイクロバブルの発生と対処法について、基礎実験で実証されたデータをもとに臨床データを示し、発生防止について検討した。基礎実験は全て新品の人工心肺器材を用いて模擬回路を作製した。回路は牛血で充填し、血液の状態を調整後、ローラーポンプを用いて空気を脱血回路に連続混入した。マイクロバブルは人工心肺器材別の入口と出口でCMD20マイクロバブルカウンターを用いて測定した。基礎実験の結果、すべての静脈血貯血槽で貯血レベルに関係なくマイクロバブルを放出した。充填量に関係なく人工肺はマイクロバブルを放出し、圧力損失の上昇に伴ってマイクロバブルの除去効率が上昇した。動脈フィルターを人工肺下流に配置することで送血回路に混入したマイクロバブルの減少を認めた。人工肺でのマイクロバブル除去率は混入した空気量の増加に伴って減少した。結果を踏まえ、臨床データを評価した。基礎実験と同様に送血回路にマイクロバブルが混入し、特に人工心肺開始時、右房切開時、心臓脱転時などで増加した。マイクロバブルは浮力が小さいために血流へ乗りやすく、血液内では溶解速度も延長する。そして、ガス状微小塞栓の原因であるマイクロバブルは臨床結果に重要な影響を持っている可能性がある。従って、人工心肺中の脱血回路に空気が入らないように手術手技は注意しなければならない。
  • 曽山 奉教, 吉田 秀人, 瀧本 順三郎, 高橋 幸博
    2014 年 41 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/10
    ジャーナル フリー
    アルカレミア環境下で血液が過度に希釈される状況では、体外循環開始後早期およびmodified ultrafiltration(MUF)施行後の再循環回路内に血液凝集塊の形成をもたらす。我々はトリス塩酸緩衝液を用いて調整した4種類のpH条件(pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9.0)で、倒立型ルーチン顕微鏡を使用し赤血球形態を観察した。更に、pH7.5とpH9.0の条件でトリス塩酸緩衝液下にアルブミンとデンプンをそれぞれ0.5%と5.0%の濃度に溶解し、コロイドの赤血球形態保護作用を観察した。結果、pH9.0トリス塩酸緩衝液で13.9%あった「いが状赤血球」の出現頻度は、同緩衝液に0.5%、5.0%の割合でアルブミンを溶解することで、それぞれ3.5%(p<0.01)、1.2%(p<0.01)、同じくデンプンの溶解で7.6%(p<0.05)、2.1%(p<0.01)まで特異的に減少した。人工心肺回路充填液へのアルブミン製剤や人工膠質液の投与は「いが状赤血球」起因の血液凝集塊形成を抑制するものと考える。
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